日本消化器外科学会雑誌
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56 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 森分 和也, 杭瀬 崇, 濱﨑 友洋, 中村 峻輔, 三又 明日香, 柳光 剛志, 山野 寿久, 高木 章司, 池田 英二
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 12 号 p. 643-652
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/28
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    目的:外科専攻医が安全に待機的腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy;以下,LCと略記)を執刀し修練認定を得るために必要な症例数と適切な執刀症例選択の指標について検討する.方法:2018年4月から2021年12月の期間に当科専攻医5名が執刀した待機的LC症例124例を対象とした.それぞれの専攻医の手術時間について累積和(cumulative sum;以下,CUSUMと略記)法を用いてラーニングカーブを作成し習熟に必要な症例数について検討した.また,手術時間と13項目の術前因子との関連を調査した.結果:年齢の中央値は61歳,男女比は64対60であった.術中所見について,手術時間は中央値105分,出血量は0 mlで開腹移行や術中副損傷は認めなかった.術後在院日数の中央値は3日で,Clavien-Dindo分類II以上の術後合併症を認めた症例はなかった.CUSUM解析の結果から,本術式の習熟が得られるまでには平均10.4例を要した.また,手術時間との関連が認められたのは13項目の術前因子のうち胆囊壁肥厚の有無のみであった(P=0.005).結語:外科専攻医における待機的LCの修練認定にはおよそ10例の執刀経験が必要であった.また,胆囊壁肥厚を有する症例では手術難度が高くなる可能性があり,指導医はそのことについて十分に配慮したうえで適切な症例を選択することがのぞましい.

  • 後藤 健太郎, 成田 匡大, 出川 佳奈子, 宗景 史晃, 大倉 啓輔, 中西 保貴, 山岡 竜也, 松末 亮, 畑 啓昭, 山口 高史
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 12 号 p. 653-661
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/28
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    目的:鼠径ヘルニア術後慢性疼痛(chronic postoperative inguinal pain;以下,CPIPと略記)は患者のQOLを損なう重篤な合併症の一つである.当院のアンケート調査ではCPIP発症割合は7.6%で,侵襲的加療が必要な難治例を2.2%に認めた.本研究の目的はガイドラインで推奨される術中神経確認の励行がCPIP発症減少に寄与するか検証することである.方法:疼痛評価は6段階Numerical Rating Scale(以下,NRSと略記);0–5で行い,CPIPは術後3か月目のNRS 3以上と定義した.当科で2016年~2018年に待機的鼠径ヘルニア根治術を受けた198例(207病変)を対象に以下の介入を行った(①手術記録テンプレートを用いた術中神経確認,②術後3か月後の外来受診).術後3か月の外来でアンケートを行い日常生活の疼痛強度を調査した.結果:鼠径部切開法で鼠径ヘルニア根治術を受け術後3か月の外来を受診した105例(108病変)が評価された.66%で3神経全てが同定された.CPIPは2例(1.9%)に認めた.2例の疼痛は経時的に改善した.結語:術中神経確認の励行を行った今回のデータでは,以前のデータからCPIPの発生割合が減少傾向にあった.鼠径部切開法による鼠径ヘルニア根治術では術中神経確認の励行がCPIP発症を軽減する可能性が示唆された.

症例報告
  • 川島 賢人, 伊藤 哲, 平松 和洋, 青葉 太郎, 有元 淳記, 加藤 岳人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 12 号 p. 662-669
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/28
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    症例は37歳の女性で,上腹部から左腰背部にかけての激痛と頻回の空嘔吐にて当院救急外来を受診した.造影CTにて胃軸捻転症と診断し緊急内視鏡的整復を行った.内視鏡的整復から1か月後,非吸収糸(2-0 PROLENE®)を用いて経皮内視鏡的胃壁固定術を施行し,その後は無再発経過中である.胃軸捻転症とは,胃が生理的範囲を超えて捻転する疾患である.場合により絞扼や壊死,穿孔に至ることもあるため,まれでありながらも急性腹症を来す重要な疾患である.治療としては,経鼻胃管による減圧や内視鏡的整復,外科的治療などがあるが,経皮内視鏡的胃壁固定術の本邦報告例はまだ少ない.今回,我々は胃軸捻転症に対して非吸収糸を用いた経皮内視鏡的胃壁固定術を経験したため報告する.

  • 今西 涼華, 高橋 佑典, 加藤 健志, 森 清, 徳山 信嗣, 河合 賢二, 俊山 礼志, 酒井 健司, 竹野 淳, 後藤 邦仁, 宮崎 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 12 号 p. 670-676
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/28
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    症例は34歳の女性で,臀部の腫脹を主訴に当科を紹介受診した.身体所見では臀部に弾性軟の皮下腫瘤を認め,画像検査では臀部皮下から骨盤腔内につながるだるま型の6 cm大の囊胞性腫瘍を認めた.診断的治療の目的に経仙骨アプローチを併用し,腹腔鏡下に腫瘍切除術を行った.腫瘍は臀部皮下から尾骨周囲で肛門挙筋の間隙から直腸間膜の背側および骨盤腔内に連続していた.病理組織診の結果,表皮囊腫と診断した.特に合併症なく術後8日目に退院となり,以降は再発を認めていない.表皮囊腫は日常診療の中で経験する頻度の高い良性疾患で,粉瘤とも呼ばれる.まれではあるが悪性化の報告もあるため,遺残のない切除が推奨される場合もある.臀部から仙骨前面にまで進展した表皮囊腫に対して腹腔鏡アプローチ併用経仙骨的切除は,合併症なく施行でき有用な手術アプローチと考えられた.

  • 片山 哲也, 垣内 慶彦, 黒田 新士, 近藤 喜太, 菊地 覚次, 重安 邦俊, 寺石 文則, 香川 俊輔, 藤原 俊義
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 12 号 p. 677-684
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/28
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    症例は44歳の男性で,胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清,Billroth-I法再建を施行し,病理組織診断はpT2N0M0 Stage IBであった.術後1年目のCTおよびPET-CTにて,#6リンパ節郭清領域にリンパ節再発を示唆する所見を認めたため腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行し,病理組織診断でデスモイド腫瘍であった.デスモイド腫瘍は術前診断が困難であり,その発生機序の一因として手術による機械刺激が挙げられるため,胃癌術後に発生した際は再発との鑑別が困難である.再発リスクの低い症例では化学療法などを施行する前に,診断的治療を目的とした手術を行うことは有用であり,術中迅速検査などで再発が否定できるのであれば,他臓器合併切除は極力避けるべきである.胃癌術後にリンパ節再発との鑑別を要したデスモイド腫瘍の1例を経験した.

  • 穐山 竣, 横田 満, 山口 賢二, 長久 吉雄, 稲村 幸雄, 河田 健二, 増井 俊彦, 岡部 道雄, 北川 裕久, 板倉 淳哉, 河本 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 12 号 p. 685-690
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/28
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    症例は40歳の女性で,2か月持続する下腹部痛の増悪を主訴に当院を受診した.血液検査や尿検査で特記異常所見はなく,妊娠反応も陰性であった.CTおよびMRIで大網由来と考えられる7 cm大の単房性囊胞性腫瘤を認め,その他症状の原因となりうる器質的異常は認めなかった.症状の原因と判断し腹腔鏡下に摘出術を行った.術中所見で腫瘍は大網と連続し,骨盤内臓器との連続性は認めなかった.病理組織学検査では7 cm大の単房性囊胞性病変で,囊胞壁は一層の線毛上皮に被覆されていた.免疫染色結果ではPAX8に陽性を示し,卵巣の漿液性囊胞腺腫と相同の病変と考えられた.術後,症状は消失した.漿液性囊胞腺腫は典型的には卵巣に発生するが,後腹膜腔以外では後縦隔に発生した報告がまれながらある.大網発生の報告はないが,卵管や卵管采の上皮が異所性に迷入し発生したと推測された.本症例のように有症状となった場合,手術適応と考えられた.

編集後記
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