胆嚢癌は高率に胆石を合併しているところから, 癌の発生と, 胆嚢結石との間には密接な関係があるといわれる.そこで炎症, 結石, 胆汁などが相互に影響しているなかで, 胆石症, 胆嚢炎の胆嚢粘膜の変化, とくに良性異型細胞について, 細胞診の立場から検討した.
良性異型細胞には, 核優性, 不整型の核, 核縁肥厚, クロマチンは多くは微細網状でその分布は不均等, 核小体の増大などの所見が得られた.これはいわゆる癌細胞判定規準からみれば, いずれも個々の所見に悪性徴が乏しく, とくにクロマチン形態に著しい.そこで細胞異型の良性と悪性との鑑別には, 個々の特徴を取りあげることはもちろん必要ではあるが, その中でもクロマチンの凝集像が最も役立ち, さらに悪性の特徴が重複しているかが, 重要な鑑別点となる.
すなわち良性疾患である胆石症, 胆嚢炎の胆嚢粘膜には, その上皮細胞に種々の程度の異型細胞が存在している.
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