日本消化器外科学会雑誌
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26 巻, 9 号
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  • 岡本 英三
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2261-2270
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1973年教室開設以来20年間に経験した肝癌551例の肝切除例を通じ, 肝癌の病態と外科的治療に関する概究成績を述べた.まず担癌肝の90%は肝硬変を頂点とする慢性肝疾患を合併し, これが肝切除の安全性を著しく阻害している.教室では1980年末, 病態肝の肝切除安全限界を予測する重回帰式を確立して以来, 肝不全による死亡率を皆無となしえた.次いで, 肝癌の流出静脈は肝静脈ではなく門脈にあり, かつ腫瘍内圧の亢進が肝内転移形成の原因であることを明らかにした. この病態に即し, たとえ区域・亜区域レベルの小範囲切除にあっても, 担癌門脈枝を含むグリソン枝一括処理を先行する系統的肝切除術式の必要性を述べた.門脈侵襲の程度 (Vp, IM因子) と癌の核DNA量ならびに切除の治癒度が5生率を左右する主要な予後因子であるが, 10年生存率でみると, 治癒的切除が最も重要な因子であることが明らかになった.
  • 他の成因による急性出血性胃粘膜病変と比較して
    佐藤 浩一, 榊原 宣, 渡部 洋三, 津村 秀憲, 矢吹 清隆
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2271-2279
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    急性出血性胃粘膜病変 (出血性acute gastric mucosal lesions;AGML) を術後出血性AGML (以下, 術後AGML) と他の成因による出血性AGML (以下, 他のAGML) とに分類し, その治療成績を検討した.術後AGMLでは他のAGMLと比較し, 露出血管が多く存在し, ショック状態を呈する症例が多かった.しかし止血有効率, 再出血率, 死亡率とも他のAGMLとの間に有意差はみられず, 基本的には両群のストレッサーの強さに差がないと考えられた.術後出血性AGMLに対する手術療法の死亡率は100%と, 手術成績はきわめて不良なため, H2受容体拮抗剤間欠静注法あるいはsecretin持続点滴静注法を主体とした保存的療法を試みるべきであると考えられた.
  • 森脇 義弘, 須田 嵩, 鬼頭 文彦, 今田 敏夫, 岡田 賢三, 岡田 卓子, 福澤 邦康, 秋山 浩利, 竹村 浩, 中村 宣子
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2280-2286
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃切除後10年以上を経過した残胃に発生した癌 (以下R癌) 15例について, 胃上部初発癌 (以下C癌) 123例と比較し, 臨床的検討を加えた.R癌の早期癌は22%でC癌の早期癌26%と差がなかった.組織型は分化型が67%, 浸潤度はα が31%とC癌のそれに比べやや多かった.切除率は87%でC癌の92%に比較して有意に低かった. 治癒切除率は67%でC癌と差を認めなかった.生存率は術後1年半まではC癌より不良であったが, 長期的には差がなかった.残胃の進行癌は全例2型, 3型であったので, 2型, 3型に限った生存率をみるとR癌では不良であった.絶対治癒切除例に限ってもR癌の生存率は不良であった.核DNA量ヒストグラムパターンは, R癌ではaneuploid (A型) が75%, S期細胞分画 (SPF) の平均は25%と, C癌のそれや諸家の初発胃癌の報告よりも高く, R癌の悪性度の高さを示すものと思われ, これがR癌の予後を不良なものとする一因と考えられた.
  • 渡辺 明彦, 山田 貴, 澤田 秀智, 山田 行重, 矢野 友昭, 上山 直人, 棚瀬 真宏, 中野 博重
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2287-2292
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    75歳以上の高齢者胃癌切除症例78例を80歳未満 (54例) と80歳以上 (24例) に分け, その手術成績や遠隔成績を比較検討した.80歳以上では80歳未満に比べ心疾患や糖尿病などの術前併存疾患が多いため, 硬膜外麻酔を併用したり, 切除範囲やリンパ節郭清の縮小化により手術侵襲を少なくする配慮を行ったにもかかわらず, 術後合併症の発生頻度は70.8%と高く, 特に呼吸器合併症 (33.3%) や術後誰妄 (33.3%), 心不全 (20.8%) などの発生率が高かった.また転帰からみると, 80歳以上では術後合併症や他病死による死亡例が多く, 胃癌による死亡例が少なかった.したがって80歳未満の胃癌症例に対しては根治手術をめざした積極的な手術が必要と考えられるが, 80歳以上の症例に対しては硬膜外麻酔を併用したり, 術後譫妄や肺炎予防を含めた綿密な術前術後管理のもとで, 切除範囲やリンパ節郭清の縮小化をより一層徹底する必要があると考えられた.
  • 山本 清孝
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2293-2301
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    十二指腸浸潤下部進行胃癌に対する第3, 4群リンパ節拡大郭清の適応指針を得ることを目的に, “第3, 4群リンパ節転移程度は十二指腸浸潤部分の癌の容積に比例する” か否かについて臨床病理学的研究を行った.まず癌の容積を, 術前の画像診断で十分判定可能な, 1) 十二指腸浸潤長, 2) 幽門輪上の深達度, 3) 幽門輪上の周占居率, 4) 十二指腸浸潤様式の4因子で代表し, おのおのの第3, 4群リンパ節転移率から以下の結果を得た.(1) 十二指腸浸潤長が10mm以上, 幽門輪上の深達度がpm以上, 幽門輪上の周占居率が1/2周以上, 十二指腸浸潤様式が深層型, 全層型に第3, 4群リンパ節転移率が高かった.(2) この4因子をスコア化して判別分析を行い, 第3, 4群リンパ節転移に対する有用な線形判別式が得られた.今後術前の画像診断により各因子をスコア化し, これをもとに線形判別式から第3, 4群リンパ節転移の推定が可能であり, 拡大リンパ節郭清の指針が得られると考えられた.
  • 小峰 規靖, 初瀬 一夫, 斎藤 理, 庄野 聡, 青木 秀樹, 出井 雄幸, 村山 道典, 酒井 良博, 柿原 稔, 玉熊 正悦
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2302-2307
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    種々の疾患による閉塞性黄疸 (以下・閉黄) においてその減黄前後, 肝繊維化マーカーである血清IV型コラーゲン・7S (以下・7S) を測定し, 減黄率および黄疸遷延化因子との関係を検討した.対象とした閉黄24例の減黄前の7Sは, 正常対照に比べて有意に高かった (p<0.001).年齢, 性別, 閉塞部位による差はなく, 閉塞持続期間との相関もなかった.減黄率b値を減黄効果の指標とし, 良好群 (b<-0.09), 比較的良好群 (-0.09≦b<-0.05), 不良群 (b≧-0.05) の3群に分けると, 不良群の7Sは良好群に比べ有意に高く (p<0.01), 減黄率b値と7Sの間には, r=0.571, p<0.005の有意な相関を認めた.また胆汁細菌陽性例の7Sは, 陰性例に比べて有意に高く (p=0.016), さらに白血球数とは, r=0.536, p<0.01の有意な相関を示した.また3群とも, 減黄後の7S値に大きな変動は認めなかった.以上から減黄前7S値は, 黄疸遷延症例を予測するうえで, 有用な指標になると思われた.
  • 大森 吾朗, 浜本 勲, 田中 聰
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2308-2314
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    急性腹膜炎による呼吸機能障害に及ぼす閉塞性黄疸の影響と機序を知る目的で, 閉塞性黄疸に腹膜炎を併発させた成犬において, われわれの考案した経時的測定装置を用いて1回吸気・呼気の二酸化炭素分圧 (PICO2, PECO2) と生理学的死腔率 (VD/VT) (VD: 死腔量, VT: 1回換気量) を測定し, dobutamine hydrochloride投与の効果について検討した.
    雑種成犬 (n=30) を用い, 閉塞性黄疸は総胆管を結紮切離し1週間経過することにより作製し, 腹膜炎はS状結腸の半周切開法により作製した.黄疸群と非黄疸群との間で, 腹膜炎発症前および発症後6時間のPaO2, PaCO2の変動には有意差を認めなかったが, 生理学的死腔率上昇率は, 腹膜炎作製2時間後には, 黄疸群で有意に上昇した (p<0.01).dobutamine hydrochloride投与 (8μg/kg/min) により, 生理学的死腔率の上昇は, 黄疸群では非投与黄疸群に比べて有意に抑制された (p<0.01).
  • 島田 悦司, 裏川 公章, 植松 清
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2315-2320
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    切除大腸癌75例 (結腸癌48例, 直腸癌27例) の新鮮凍結標本を対象として, c-erbB-2蛋白発現を免疫組織学的に検索し, 臨床病理学的諸因子との関連性を検討した.
    75例中48例で癌細胞の細胞膜に一致してc-erbB-2蛋白陽性所見がえられた.陽性程度を強陽性22例, 弱陽性26例, 陰性27例に分類し検討したところ, 腫瘍占居部位, 肉眼型, 腫瘍径, 組織型などとの関連はなく, また壁深達度との関連もみられなかった.しかしリンパ節転移, 肝・肺転移ならびにDukesのstage分類とは有意な関連がみられた.また陰性群と強陽性群の比較では, 強陽性群でly2, v2以上の脈管侵襲高度例が多かった.これらの結果よりc-erbB-2蛋白が大腸癌の遠隔転移機序に関与している可能性とともに, 大腸癌におけるc-erbB-2蛋白の陽性程度が生物学的悪性度の指標としての意義を有することが示唆された.
  • 藤田 哲二, 尾高 真, 松本 美和子, 桜井 健司
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2321-2325
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    周術期における血漿エンドトキシン濃度の推移, および栄養状態がそれにおよぼす影響を検討した.対象は37人の消化器外科手術患者で, 術中門脈血を採取しそのエンドトキシン濃度と術前血清アルブミン濃度との関連を検討した.本研究後半の連続した17人の患者に対しては, 術前アルブミン以外にrapid transport proteinsの血清濃度を測定し, 門脈血エンドトキシン濃度との関連の有無を求めた.さらに術前後の末梢静脈血漿エンドトキシン濃度の消長を追った.
    術前血清アルブミン濃度と門脈血エンドトキシン濃度との間には有意な関係は認められなかったが, 補体第3因子およびハプトグロビンの術前血清濃度と門脈血エンドトキシン濃度との間には負の相関があった.末梢静脈血漿エンドトキシン濃度は術中に術前の約3倍になったが, 術後1日目には術前値に戻った.低栄養状態の患者では術中にエンドトキシンが門脈内に漏出しやすいと思われる.
  • 伊佐 勉, 野村 謙, 富田 秀司, 玉井 修, 照屋 剛, 出口 宝, 草野 敏臣, 武藤 良弘
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2326-2332
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Flow cytometry (FCM) によるDNAヒストグラムの新しい分類を行い, 1検体での定量による腫瘍内heterogeneityの検出を試みた. そして, 顕微蛍光測光法 (static cytonuor6 metory, SCM) による成績と比較してその精度を検討し, さらに臨床病理学的所見や予後との関連を検討した. 大腸癌30例を対象とした. コンピューターによるDNAヒストグラムのシミュレーション結果を参考にして, aneuploid patternをcoettcient of variation (CV) 値を示用しAl patternとA2 patternに分類した. Diploid pattem 10例中9例 (90%) がSCMでhomogeneity, A2 pattem 12例中10例 (83.3%) がSCMでheterogeneityを示し, SCMの成績とよく一致した. 肝転移, リンパ節転移はA2 pattem症例に陽性率が高く, 進行度はA2 pattem症例に進行した症例が多い傾向がみられた. 本分類はheterogeneityの検出に有用であり, 臨床病理学的所見との関連を追及するのに有用な分類法であると考える.
  • 川村 弘之, 片岡 誠, 桑原 義之, 呉山 泰進, 岩田 宏, 篠田 憲幸, 加島 健利, 佐藤 篤司, 服部 浩次, 中野 浩一郎, 隅 ...
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2333-2337
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    息者は56歳の男性.検診時に胃体上部のI型早期胃癌を指摘され当科初診.精査にて胸部下部食道の表在陥凹型早期食道癌も発見され, 同時性食道胃早期重複癌の診断にて入院.食道亜全摘, 噴門側胃切除, 胃管再建術を施行した。同時性食道胃早期重複癌はまれで, 本邦報告例は自験例を含め37例にすぎない。今回, 本邦報告例を集計し臨床的に検討した。男性32例, 女性4例, 平均年齢62歳.食道癌は胸部中下部食道, 深達度smの表在隆起型または陥凹型が多く, 胃癌はA領域のHc型が多く認められた, 多発食道癌3例 (8%), 多発胃癌8f/11 (22%) と多発癌の合併は高率に認められた。手術術式は, 食道亜全摘十胃全摘が21711 (57%) と多用されている。予後の明らかな21例中44/1 (19%) が術後1年以内に死亡しており, 同時性食道胃早期重複癌の手術においては, 最小限の手術侵襲で, さらに根治性が得られる手術術式の選択が重要と考えられる。
  • 福重 寛, 永渕 幸寿, 武田 成彰, 大里 敬一
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2338-2342
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝右葉の巨大嚢胞に対し1/3 derooingによる開窓術を実施した。術前血中carbOhydrate antigen 19-9 (CA19-9) は, 37.8U/mlとわずかながら高値を示し, 嚢胞液中のCA19-9は135,400U/mlと高値であった。術後血中CA19・9濃度が438.OU/mlまで上昇したが5か月後に正常化し, 術式の関与が示唆された。抗CA19-9モノクロナール抗体を用いた免疫組織学的検索で, CA19-9産生部位は襲胞上皮であった。肝襲胞性疾患における襲胞穿刺液中のCA19-9測定の臨床的意義はいまだ明らかではなく, 本症例においても良性肝嚢胞であったが, 著しい高値を呈した。
  • 飽浦 良和, 阪上 賢一, 松本 剛昌, 伊波 茂道, 斎藤 信也, 藤原 拓造
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2343-2346
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝の奇形の中でも極めてまれな副肝を5例経験したので報告する.症例は34~65歳, 男性2例, 女性3例であった.いずれも術前には副肝と診断できず, 胆石症, 早期胃癌の術中に偶然発見された.存在部位は胆嚢周囲4例, 肝十二指腸間膜1例で, 大きさは最大径7~17mmで, いずれも1個のみであった, 組織学的にはいずれもグリソン鞘, 中心静脈を有し, 小葉構造を呈する正常肝組織であった.
    副肝は術中, 剖検, 腹腔鏡検査に際し偶然発見されることが多く, 臨床症状を呈することはまれである.存在部位は肝周囲が大半を占め, とくに胆嚢周囲に多く, 大きさは5cm以下が大半を占める.組織学的には小葉構造を有する正常肝組織像を呈することが多い.
    術中の詳細な検索, 画像診断の進歩などにより, 症例の増加が予想される.
  • 原田 明生, 中尾 昭公, 野浪 敏明, 小林 裕幸, 丸山 浩高, 末永 昌宏, 高木 弘
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2347-2351
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    維持血液透析中の肝細胞癌患者6例に対して施行した肝切除について検討した, 全例男性で平均年齢52歳, 3例が慢性肝炎, 3例が肝硬変を併存していたが肝機能は全例良好であった.術中の出血量は平均1,465gであったが血圧の変動が大きく, とくにPringle法による全肝血行遮断を行った2例では最高血圧が70mmHg台まで下降した.術中術後の循環動態の管理にスワンガンツカテーテルの留置とcatecholamineの微量投与が有用であった.3例が術後第1病日に, 他の3例が第2病日に凝固酵素阻害剤を用いて血液透析を行った.全例1週間前後で透析施設へ転院したが, 腹部難治感染性痩孔を形成した1例と再発に対して肝動注化学療法を行った1例が重篤な出血性胃炎を発症した.全例1年以上生存したが, 4例が合併症を併発して死亡した.血液透析患者に対しても肝切除は安全に行いうるが, 侵襲を最小限にする配慮と消化管出血に対する注意が必要である.
  • 松下 耕太郎, 合田 文則, 若林 久男, 前場 隆志, 田中 聰
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2352-2356
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直接浸潤により前腹壁に広範な硬結と潰瘍を形成した64歳の男性の肝内胆管癌を経験した.
    肝十二指腸間膜を中心とする広範なリンパ節転移と右前区域肝管への浸潤のために試験開腹に終わり, 感染のために, 術後3週間目で内瘻化チューブの抜去を余儀なくされたが, その後, 肝門部方向への癌の進展は緩徐で黄疸の発現はなく, 一方で, 肝鎌状靱帯から前腹壁への直接浸潤による硬結, 腫瘤と癌性潰瘍を形成しながら術後1年8か月に癌死した.
    組織学的には高分化型小管状腺癌であり, 腹壁腫瘍に対して放射線療法, 温熱療法および内胸動脈内注入化学療法を行っているが, 認むべき効果は得られていない.
    腹壁皮膚に達する肝内胆管癌の腹壁浸潤例の報告は, 文献上きわめてまれで, 本邦では1例の報告があるのみである.
  • 神谷 剛司, 杉浦 芳章, 井上 公俊, 吉住 豊, 島 伸吾, 田中 勧, 玉井 誠一
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2357-2361
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    23歳の女子の膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除を行い, 術後4年で肺と肝に転移を来たしながらも, 化学療法により術後8年3か月生存した症例を経験したので報告する.昭和55年10月, 膵頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理はacinar cell carcinomaであった.昭和59年10月, 肺・肝転移を認めたため, 5-FU, cisplatin (CDDP), OK-432による化学療法を開始した.開始後5か月目でX線写真上肺転移巣は消失し, 肝転移巣はMRが得られた.昭和62年2月, 再び肺転移巣を認めたためFAM療法 (5-FU, adriamycin, mitomycin-c) を行ったが, 画像上転移巣の縮小は認められなかった.なお, 開胸肺生検によってacinar cell carcinomaの転移巣であることを確認した.その後, 全身状態徐々に悪化し, 平成元年1月 (術後8年3か月目, 再発後4年3か月目) に死亡した.
  • 小高 明雄, 金丸 洋, 高田 伸, 村田 戒, 高木 俊二
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2362-2366
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術前診断し根治手術を行った虫垂粘液嚢胞腺癌の1例を報告する.症例は76歳の女性.贋周囲痛を主訴として来院.注腸X線検査で回盲部に壁外性圧排像を認めた.超音波検査では, 右下腹部に不整な乳頭状隆起を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.CT検査では, 回盲部に壁の石灰化を伴う7×5cmの嚢胞性腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では虫垂根部周囲に半球状の隆起があり, 虫垂開口部から盲腸内へ白色粘液の流出を認めた.以上の所見から虫垂粘液嚢胞腺癌と診断し, 回盲部切除・リンパ節郭清術を施行した.摘出標本の病理組織検査では虫垂壁内に浸潤を認める粘液嚢胞腺癌 (stage II) と診断された.
    虫垂粘液嚢胞腺癌の術前診断は極めて困難で, 本邦では術前に診断されたものは, 疑診例も含めて7例 (本症例を含む) にすぎない.本症例の画像検査では, 超音波検査による腫瘤内腔の観察がとくに有用であった.
  • 菊地 充, 遠藤 重厚, 桑田 雪雄, 佐藤 武彦, 稲田 捷也, 吉田 昌男
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2367-2371
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    アスペルギルスによる消化管真菌症の1例を経験した.症例は62歳の女性で, 腹痛出現後2日目にショック状態で当センターに紹介となった.絞扼性イレウスにて回盲部切除術を行った.第7病日に下血がみられ, 内視鏡にてS状結腸に偽膜形成が認められた.消化管出血が続いたため第14病日に再手術を行った.下行結腸, S状結腸に虚血性変化がみられたためこれらを切除し, 人工肛門を造設した.この頃からβ-グルカンは陽性となり, 第22病日にはβ-グルカンは310pg/mlと高値を示し深在性真菌症と診断した.なお同時期の腹水の細菌学的検討ではアスペルギルスが検出された.病理組織学的検討では, 大腸の潰瘍形成と潰瘍底にアスペルギルスの虫体が認められた.今回の症例からβ-グルカンの測定はアスペルギルスなどのカンジダ以外の真菌症の診断でも有効であると考えられ, 真菌症の診断法として有効であることが確認された.
  • 小林 道也, 緒方 卓郎, 荒木 京二郎, 遠近 直成, 安藤 徹, 大海 研二郎
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2372-2376
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    骨盤腔を占居する巨大腫瘤を形成した盲腸原発悪性リンパ腫の1例を報告する.症例は17歳の男性で, 立ちくらみを主訴に近医受診, 貧血と下腹部腫瘤を指摘されて当科紹介となった.入院時検査成績では鉄欠乏性貧血を認めたが, 腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.腹部超音波検査, CTで骨盤腔内に内部に消化管を巻き込んだ巨大腫瘤を認めた.注腸造影で上行結腸に狭窄を認め大腸内視鏡でこの部に表面顆粒状の腫瘤を認め, 生検でmalignant lymphoma, diffuse medium cell typeと診断された.上腸間膜動脈造影では腫瘤は回結腸動脈に栄養されていた.開腹時所見では骨盤腔を占居した腫瘤に背側より回腸末端が流入していた.右半結腸切除術と3群までのリンパ節郭清を施行した, 切除標本では腫瘤は盲腸より発生しており, 病理組織診でB細胞由来の悪性リンパ腫と診断された.術後化学療法を追加し軽快退院した.
  • 豊木 嘉一, 吉原 秀一, 佐々木 睦男, 十束 英志, 赤石 節夫, 清野 景好, 鳴海 俊治, 今 充
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2377
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 十束 英志, 佐々木 睦男, 豊木 嘉一, 清野 景好, 千葉 茂夫, 鳴海 俊治, 袴田 健一, 今 充
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2378
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 平野 鉄也, 吉岡 秀憲, 真辺 忠夫
    1993 年 26 巻 9 号 p. 2379
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
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