日本消化器外科学会雑誌
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28 巻, 1 号
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  • 青柳 慶史朗, 孝冨士 喜久生, 児玉 一成, 辻 義明, 末松 哲, 武田 仁良, 掛川 暉夫
    1995 年 28 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    残胃癌19例の腫瘍部および非腫瘍部3か所の計4か所についてargylophilic nucleolar organizer regions (以下, AgNORと略記) 染色を行い, 細胞増殖活1生について検討を行った.
    吻合部 (胃腸吻合部) および縫合部 (吻合部以外の切除断端の埋め込み部) のAgNOR数は口側断端部に比べ有意に高値を示し, 十二指腸液の胃内への逆流による増殖活性の亢進が示唆された.
    腺窩上皮の過形成, 粘膜下侵入腺および嚢胞腺などの組織学的変化は術後年数の長いBillroth II法再建群の吻合部, 縫合部に顕著に認められた.AgNOR数はこれらの組織において高値を示し, 十二指腸液逆流による組織破壊に対する細胞増殖活性の上昇が示唆された.
    以上より残胃吻合部, 縫合部粘膜の細胞増殖活性の上昇が認められ, 特に腺窩上皮の過形成, 粘膜下侵入腺および嚢胞腺などの組織学的変化の細胞増殖活性は高く, 残胃断端部癌の発生との関連性が示唆された.
  • 中川 隆公, 宇根 良衛, 嶋村 剛, 神山 俊哉, 秦 庸壮, 松下 通明, 佐藤 直樹, 中島 保明, 内野 純一
    1995 年 28 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌 (HCC) 患者において凝固線溶系とthrombin-antithrombin III complex (以下, TATと略記), plasmin-α2-plasmin inhibitor complex (以下, PICと略記), D-dimerとの関連を, 臨床所見および病理組織学的因子から検討した.最近3年間に教室で肝切除術を施行した75症例を対象とした.TAT, PIC, D-dimerの平均値 (mean±S.E.) はそれぞれ4.49±0.58μg/l, 1.36±0.07μg/ml, 1.325±0.270μg/mlであり, いずれも高値であった.非癌部肝組織像, 腫瘍細胞の分化度, 被膜形成の有無, 門脈侵撃の有無と相関はなかった.StageとTATは正の相関がみられ (p=0.064), 肝内転移とDdimerは有意な正の相関をみとめた (p=0.005), HCCの肝内転移の進展と凝固線溶亢進との関連が示唆された.
  • 山口 佳之, 野間 浩介, 宮原 栄治, 船越 真人, 高島 郁博, 峠 哲哉
    1995 年 28 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    CDDP処理によるヒト膵癌細胞株の抗腫瘍エフェクター細胞に対する感受性の増強に関し, invitroにて検討した.PH101はIFN-γ およびCDDP処理によりLAK細胞に対する感受性が増強された.フローサイトメトリーでは, IFN-γ 処理によりHLA class 1およびICAM-1の発現が増強されたが, CDDP処理ではこれらの細胞表面抗原の変化は認められなかった.CDDP処理PH101細胞の障害活性は, CDDP処理PH101細胞をcold targetとしてeffector phaseに添加することで有意に抑制されたが, CDDP非処理PH101細胞ではほとんど抑制されなかった.以上より, CDDPはPH101細胞の抗腫瘍性エフェクター細胞に対する感受性を増強し, この背景として, CDDPによるなんらかのtargetdeterminantのモジュレーションが示唆された.このような機序の解明により, 化学療法と免疫療法の理論的かつ具体的な併用の方向性が示され, より効果的な治療法が開発されよう.
  • 中尾 健太郎
    1995 年 28 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化器癌における脾臓摘出 (脾摘) の影響を検討する目的で1, 2-Dimethylhydrazine誘発実験大腸癌モデルをもちい, 病理学的検査, tumor doubling time (Td), DNA ploidy pattern, Proliferatingcell nuclear antigen標識率, Natural killer (以下, NKと略記) 活性から検討した.control群のTd, 21.9±10.2日に対し脾摘群では13.6±4.1日と有意に短縮し (p<0, 05), PCNA標識率もcontrol群41.4±7.3%, 脾摘群52.1±11.7%と脾摘群で高率であった (p<0.01).またaneuploidy patternは脾摘群のみにみられた (35%).病理学的検査では脾摘群で腫瘍径が小さく, 壁深達度の浅い癌が多く認められたが, 有意の差はなかった.NK活性においては脾摘群で脾摘後1週で16.6±5.4%とcontrol群の37.8±23.9%と比較して有意な低下がみられたが (p<0.05), 5週後にはcontrol群との差は認められなくなった.以上より, 脾摘によりみられたNK活性の一過性の低下が腫瘍増殖促進に関連する可能性が示唆された.
  • 山田 一隆, 丹羽 清志, 鮫島 隆志, 長谷 茂也, 鮫島 淳一郎, 有村 耕一, 中馬 豊, 松下 兼裕, 木之下 藤郎, 竹林 勇二, ...
    1995 年 28 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌96例を対象に術後quality of life (QOL) に関するアンケート調査を行い, 機能障害との関連について検討した.QOLに関する調査は, 機能障害に対する不満感とともに, QOLの現状として健康状態, 食欲, 睡眠, 日常活動, 病気への不安について回答を求めた.各機能障害に対する不満例は, 勃起障害 (85%), ストーマ造設 (72%), 排尿障害 (71%), 排便障害 (65%), 射精障害 (42%) の順で高率であり, とくに勃起障害例では強い不満が高率であった.QOLの現状の各項目において, 女性では「病気への不安」でのQOL低下に, ストーマ造設例では「睡眠」でのQOL低下に有意の要因であった.また, 勃起障害例では「健康状態」「食欲」「睡眠」「日常活動」でQOL低下の傾向がみられ, 同じく排尿障害例では「病気への不安」でQOL低下の傾向が認められた.直腸癌手術では根治性とともにQOLを考慮すべきであるが, とくにストーマ造設, 勃起障害および排尿障害を重視した対策が重要である.
  • 中山 隆盛, 渡邊 昌彦, 勝又 貴夫, 寺本 龍生, 北島 政樹
    1995 年 28 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌における癌関連抗原の発現性と予後の関連性を明らかにすることを目的とした.1981年1月より1988年12月までの直腸癌治癒切除mp, ss (a1) 例の原発巣105例および転移リンパ節40例 (124個) を対象とし, 癌関連抗原Lewisa (LA), sialyl Lewisa (SLA), Lewisx (LX), sialyl Lewisx (SLX) に対するモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行った.
    原発巣におけるSLAの発現はリンパ節転移 (p<0.025) および再発 (p<0.005) と高い相関性を示し, 転移リンパ節におけるSLAの発現も再発 (p<0.05) と相関性を示した.さらに, 原発巣および転移リンパ節におけるSLAの発現は, 生存率とも高い相関性を示した.一方, LA, LX, SLXの発現と臨床病理学的諸因子および予後は, 有意な関連性を認めなかった.
    以上より, 直腸癌においてSLAの発現は新しい予後因子と考えられた.
  • 松本 光之, 草野 敏臣, 武藤 良弘, 瀬川 徹, 浦 一秀, 井沢 邦英, 兼松 隆之
    1995 年 28 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化器外科領域での好中球エラスターゼ (PMNE) の臨床的意義を明らかにする目的で, 膵頭十二指腸切除術, 胸部食道全摘術, 胃全摘術症例を対象に術前後の血漿中PMNE-α1プロテアーゼインヒビター複合体濃度 (PMNE-API), PMNEindexと術中術後の諸因子および術後合併症併発例との関係を統計学的に検討し次の結論を得た.(1) PMNEの過剰放出に起因したMOFに際し, PMNE-APIとPMNEindexはその臨床症状の出現に先行し異常高値を示した.(2) 縫合不全, 腹腔内膿瘍などの合併症併発時にPMNE-APIとPMNEindexは有意に上昇遷延したが, 適切な治療により正常値に復した.(3) 手術侵襲が大きい術式ほどPMNE-API, PMNEindexの上昇に個体差が認められた.これらの結果から, PMNE-APIとPMNEindexの術後の動態を把握することで, 個々における手術侵襲の程度や術後合併症の発症, 程度, 治療効果についての客観的情報を得ることが可能と考えられた.
  • 瀧島 常雅, 三重野 寛喜, 中山 義介, 塚本 秀人, 浅利 靖, 平田 光博, 坂本 いづみ, 小川 憲章, 佐藤 光史, 比企 能樹, ...
    1995 年 28 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    保存的治療が奏効した特発性食道破裂の1例を報告した.症例は59歳の男性で, 嘔吐した直後の心窩部痛で発症した.発症から約7時間で来院し, 全身状態も安定していたが保存的治療を行った.来院時胸部単純X線写真やCTでは縦隔気腫と少量の胸水を認めたのみで気胸はなく, 同日の上部消化管X線検査 (以下, UGI) で造影剤の管外漏出を認めなかった.第3病日のUGIで下部食道から造影剤の管外漏出を認めたが, これは縦隔内に留まり胸腔内に流入しなかったため, 保存的治療を続行した.UGIと内視鏡で破裂部の治癒傾向を確認したうえで第64病日に食事を開始し, 第78病日に退院した.従来の特発性食道破裂に対する保存的治療報告例は, ほとんどが診断遅延例や, 全身状態不良例であったが, 発症後早期でも食道からの内容物の漏出が縦隔内の小範囲に留まり, 縦隔膿瘍や膿胸の合併がなければ, 本症に対する保存的治療が可能な症例もあると考えた.
  • 成清 道博, 金泉 年郁, 高 済峯, 福岡 敏幸, 中島 祥介, 中野 博重
    1995 年 28 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝腫瘍のうちでも極めてまれな肝原発性悪性リンパ腫を術前に診断し, 治癒切除しえたので報告する.
    症例は67歳の女性で全身倦怠感を主訴とし画像所見および臨床的諸検査からC型肝炎を合併した肝細胞癌が疑われたが, 経皮的肝生検による病理組織検査で肝悪性リンパ腫 (non-Hodgkinlymphoma) と診断し肝亜区域切除 (S5) を行った.術後経過は良好であり, 退院後1年の経過観察中, 再発を認めていない.
  • 若林 久男, 松下 耕太郎, 濱本 勲, 岡田 節雄, 前場 隆志, 前田 肇, 田中 聰
    1995 年 28 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    左第11肋骨, および胃小轡リンパ節に転移を有する進行肝細胞癌に対し, 術前に経皮経肝門脈枝塞栓術 (PTPE) を行い残肝予備能力の増大をはかったうえで, これら転移巣を含めて1期的に切除し良好な予後を得た1症例を報告する.症例は59歳の男性.門脈の前区域枝と中肝静脈に腫瘍栓を有する前区域中心の肝細胞癌で, 肋骨に孤立性の転移巣を認めたが, ほかに遠隔転移巣が認められなかったので1期的に切除することとした.しかし肝予備能力上, 中肝静脈を含む拡大右葉切除以上の肝切除を行うには限界と考えられたため, 術前にPTPEを行い残肝体積の増加をはかったのち拡大肝右葉切除術を行った.手術時に胃小轡リンパ節に転移を認め, リンパ節郭清を併施した.術後は良好に経過し, 術後1年を経過した現在も再発の兆候なく, 良好なQOLが保たれている.こうした進行例でも術前に良好な肝機能を有する症例の中に, 積極的な切除療法の適応となる例が存在するものと考えられた.
  • 金 祐鎬, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 堀 明洋
    1995 年 28 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Indocyanine green (ICG) 試験において停滞率が70%と異常高値を示す肝細胞癌症例を経験した. 他の血液生化学検査に異常はなく, いわゆるICG排泄異常症と診断した. 術前肝機能評価のために, 腹腔鏡による観察および非腫瘍部の肝生検を行い, 慢性活動性肝炎の所見を得た. 次にカラードッフラー超音波検査を行い, 肝内血流に異常がないことを確認した. 最終的には術中, 片葉阻血下に動卿血中ケトン体比を測定することにより, 安全に肝左葉切除術を施行しえた.
    ICG排泄異常症における肝切除術式の決定は困難であるので, 今後症例の集積とともに, 新たな序予備能検査法の確立が必要であろう.
  • 勝又 健次, 谷 千秋, 中山 正, 加藤 孝一郎, 星野 伸二, 久保内 健生, 林 幹也, 山本 啓一郎, 木村 幸三郎, 芹沢 博美
    1995 年 28 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大量下血で発症した小腸神経鞘腫の2例を経験した. 症例1は48歳の女性で, 突然の大量下血で来院し, 出血シンチグラフィーで上腸間膜動脈末梢領域の出血と診断され開腹時所見でTreitz靱帯より約30cmに管外性に発育する腫瘍を認めた. 病理では核異型を認めるがAntoni-A typeの良性の神経鞘腫と診断された. 症例2も48歳の女性で腹痛, 大量下血で来院し, 上腸間膜動脈血管造影にて実質相で腫瘍濃染像を認め, 小腸腫瘍の疑いで開腹し, Treitz靱帯より約70cmに腫瘍を認め, 病理学的に核分裂像を認め悪性神経鞘腫と診断された. 理学上腫瘍血管に富むため出血シンチグラフィー血管造影が有効であり, 病理組織学的にもまれな症例であった.
  • 河野 修三, 下田 忠和, 飯野 年男, 二階堂 孝, 梅田 耕明, 桜井 健司
    1995 年 28 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性. 平成5年7月に左鼠径部の有痛性腫瘤を主訴に来院し, 大網のヘルニア嵌頓の診断にて手術を施行した. ヘルニア嚢には3×2cmの腫瘤を認め, 同部を切除した. 病理検査の結果が転移性腺癌であったため, 生殖器および消化器の精査を行い諸検査で異常所見を認めなかったため, 腹腔鏡検査に引き続き, 開腹手術を施行した. 大網には多発性散在性に瘢痕様病巣が存在したので大網網嚢切除を施行した. 大網およびヘルニア嚢腫瘤の病理組織学的検査から腹膜原発漿液性乳頭腺癌と診断した. ヘルニア嚢に悪性腫瘍を発見することはまれなことである. 腹膜原発の漿液性乳頭腺癌は比較的まれな疾患であるが, 腹水貯留による腹部膨満感や腹部腫瘤触知により診断されることが通常である. ヘルニア嚢の腫瘤より同疾患が診断された報告はほかになく, 非常に興味深い症例と考えた.
  • 三好 和也, 松井 武志, 雁木 淳一, 和久 利彦, 折田 薫三
    1995 年 28 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症は, さまざまな疾患に伴ってみられる比較的まれな病態であり, 一般に予後不良の徴候とされている. 特に, 本症を伴う急性上腸間膜動脈閉塞症の予後はきわめて不良であることが知られ, 過去にわずか4例の救命例が報告されているにすぎない.
    症例はBuerger病の既往を有する64歳の男性で, 突然発症した腹部の疝痛を主訴に来院した. 腹部X線検査では, 右上腹部に拡張した小腸ガス像を認めたが, 門脈内のガス像は描出されなかった. 腹部computed tomographyでは, 肝内門脈内に樹枝状に広がるガス像を認めた. 発症後13時間にて開腹したところ, 回腸の一部が壊死に陥っていたため, 壊死腸管を40cmにわたり切除し, 端々吻合にて再建した. 術後経過は良好であった.
  • 愛甲 孝
    1995 年 28 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    近年, 癌の治療においては根治性に加えて障害克服的治療といった概念が普遍化しつつあり, 胃癌においても合理的治療の一環として縮小手術がクローズアップされるようになった. 縮小手術の具体的な内容としては, 胃切除範囲の縮小, リンパ節郭清範囲の縮小, 大・小網の部分切除, 網嚢膜切除の省略, 系統的迷走神経温存, などが挙げられており, 現実にこのような手術方針によって標準術式と変わらない術後の遠隔成績が得られるようになった. リンパ節郭清の縮小化にあたっては, その理論的根拠となるリンパ管構築とリンパ流を十分に把握することが必要であり, 癌の局在, 大きさと深達度を考慮して縮小化することが重要となる. 胃切除の縮小化に際しては, 術前診断と組織学的な浸潤との差異を考慮した診断精度に留意しなければならない. 系統的迷走神経温存手術も縮小手術として推奨されるが, その臨床的意義や根治性についてはさらに綿密な検討が必要である.
  • 森谷 宜皓
    1995 年 28 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    側方郭清などのリンパ節郭清を伴う自律神経温存術を進行直腸癌に対する標準術式と考えれば, 局所切除, 自律神経完全温存術, endoscopic mucosal resection (EMR), laparoscopy assisted colectomy (LAC) などは縮小手術とみなされる.局所切除と完全温存術に焦点を絞り適応, 手技の要点, 機能的予後を解説した.局所切除術はm癌やsm1程度の浸潤癌に用いるべき術式で, sm massiveが疑われる症例には腸管切除を行うべきである.肛門管に掛かれば経括約筋的アプローチも必要であるがかなりの症例は経仙骨的切除で十分で, 術後合併症も少ない.欧米に比較し我が国の適応基準は狭く厳格なものである.完全温存術は早期癌やリンパ節転移のないmp癌に採用されるべき縮小手術で, 本術式後の排尿・性機能は極めて良好である.男性性機能の客観的評価にはrigiscanによるNPTの測定が重要である.補助療法の進歩により縮小手術の適応がさらに広がることを期待する.
  • 田代 征記
    1995 年 28 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    上部・肝門部胆管癌の縮小手術には肝門部胆管切除, 肝門部肝切除, 肝S4a5区域切除があり, 通常尾状葉合併切除とR2リンパ節郭清を併施する. 縮小手術の適応は占居部位としてBismuth分類のtype I, IIまで, 肉眼的には乳頭型, 結節型の限局癌で, S0, Hint0, N0症例, 組織学的にはm(粘膜), fm(線維筋層)癌で高分化型腺癌が絶対的適応で, ss癌でも相対的適応がある.
    胆嚢癌の縮小手術には胆嚢摘出術, 全層胆嚢摘出術, 肝床切除, 肝区域切除があり, 進展度に応じ, 胆管切除, リンパ節郭清が追加される. 縮小手術の適応はm癌であれば胆嚢摘出術, pm癌なら全層胆嚢摘出術あるいは肝床切除とR2リンパ節郭清, ss癌なら肝床切除(癌が腹腔側の時)あるいは肝区域切除(癌が肝床側)+胆管切除+No.16を含むR2リンパ節郭清術を行う, No.16郭清を行っても他臓器を切除しなければ侵襲も軽微で, 術後のQOLも良好であり縮小手術(標準手術)と考えている.
  • 二村 雄次
    1995 年 28 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵頭部領域癌すなわち膵頭部癌, 下部胆管癌, 乳頭部癌, 十二指腸癌に対する縮小手術として幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が広く行われ, 従来の膵頭十二指腸切除に比べて術後のQOLが良好であることは明確となったが, まだ未解決の手術手技上の問題点が残されている.
    一方, 術前の画像診断の進歩により腫瘍の進展度診断が正確となってきたため, 必要最小限の切除・郭清術式が採用されるようになり, リンパ節・神経叢郭清の範囲も術後QOLを下げない程度に抑さえつつ根治性を下げない術式が行われるようになってきた.また小型癌, 粘膜内癌, 良悪境界領域病変など早期診断により, 機能温存を目的とした膵頭部の区域切除, 部分切除が可能となった.
    現在は, 縮小手術に特有の術後合併症対策を講ずることが急務となっている.
  • 辻 恭嗣, 佐治 重豊, 国枝 克行, 上西 宏, 波頭 経明, 橋本 俊幸, 日比 俊也
    1995 年 28 巻 1 号 p. 104
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 長田 裕典, 徳岡 裕文, 合地 明, 折田 薫三
    1995 年 28 巻 1 号 p. 105
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 折田 雅彦, 守田 信義, 野島 真治, 高橋 剛, 江里 健輔
    1995 年 28 巻 1 号 p. 106
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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