日本消化器外科学会雑誌
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52 巻, 5 号
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症例報告
  • 福富 俊明, 市川 宏文, 初貝 和明, 大原 勝人, 乙供 茂, 佐藤 明史, 神山 篤史, 梶原 大輝, 板倉 裕子, 高橋 徹
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 5 号 p. 239-246
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/05/31
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    Upside down stomach(以下,UDSと略記)を呈する巨大裂孔ヘルニアを合併したバレット食道腺癌に対して,胸腔鏡・腹腔鏡補助下に食道裂孔ヘルニア修復と食道切除再建術を施行した1例を経験したので報告する.患者は68歳の男性で,UDSを呈する巨大裂孔ヘルニアの術前精査中に,バレット食道腺癌の診断に至り手術を行った.腹腔鏡で手術を開始した.ヘルニア囊内の癒着のため,胃を腹腔内に還納することができず,大網の切除,ヘルニア囊内で食道裂孔周囲の剥離を行って,脱出した胃を還納することができた.開大した食道裂孔を縫縮し,メッシュで補強した.食道胃接合部の遠位で胃を切離し,小開腹創から体外で胃管を作製した.腹臥位胸腔鏡にて胸部食道を遊離し,奇静脈の高さで切離して標本を摘出した.残食道と胃管を胸腔内で吻合した.呼吸機能や視野確保の観点から,胸腔鏡,腹腔鏡下手術は非常に有用であった.

  • 高須 香吏, 中山 中, 増尾 仁志, 杉山 聡, 唐澤 文寿, 窪田 晃治, 藤原 正之
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 5 号 p. 247-256
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/05/31
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    症例は71歳の男性で,30年前に事故で胸部中部食道を損傷し,狭窄を生じていた.嚥下困難増悪の精査で,狭窄部に乳頭状腫瘍が指摘された.生検では炎症や癌が鑑別であったが,数回検査しても確定診断に至らなかった.CTでは不整な壁肥厚と,穿通による肺炎が認められた.癌が否定できず,通過障害や肺炎の原因であるため,手術を行った.腫瘍は浮腫状で柔らかく,胸腔洗浄細胞診,106recリンパ節の迅速診断は陰性であり,定型的な郭清は省略し胸部食道亜全摘を施行した.巨大な疣贅状の腫瘍で,HE染色では扁平上皮の層構造は比較的保たれていたが,粘膜下層に芽出様浸潤が見られた.免疫染色検査で基底層がp53,p63,Ki67強陽性で,核異型・核分裂があり,verrucous carcinoma(以下,VCと略記)と診断された.VCは,扁平上皮癌の亜型で,食道発生はまれである.長期経過をとった食道VCの1例を経験したので報告する.

  • 遠矢 圭介, 竹野 淳, 益澤 徹, 永野 輝明, 村上 剛平, 桂 宜輝, 大村 仁昭, 賀川 義規, 武田 裕, 村田 幸平
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 5 号 p. 257-262
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/05/31
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    症例は75歳の男性で,食思不振を主訴に近医受診され,上部消化管内視鏡検検査にて胃体中部大彎後壁に進行胃癌を認め当院に紹介となった.造影CTにて肝S2に単発の転移(20 mm)を認め,cT4aN0M1HEP cStage IVの診断となった.生検結果にてHER2陽性であったため,カペシタビン+シスプラチン+トラスツズマブ療法を計2コース施行した.2コース施行後転移巣の縮小を認め,PRの効果判定となった.審査腹腔鏡検査にて腹膜播種がないことを確認した後,腹腔鏡下幽門側胃切除および腹腔鏡下肝S2部分切除を施行した.術後経過良好で,術後9日目に退院となった.病理結果はypT4aN0M1HEP ypStage IV,治療効果はGrade 1aであった.術後補助化学療法としてS-1を退院後約1か月より開始し,術後6か月無再発生存中である.

  • 鈴木 優美, 平松 聖史, 雨宮 剛, 関 崇, 新井 利幸
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 5 号 p. 263-271
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/05/31
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    今回,我々は捻転による腹痛を契機に診断されたまれな大網原発の孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor;以下,SFTと略記)の症例を経験したので報告する.症例は45歳の女性で,下腹部痛を主訴に当院を紹介受診した.CTで子宮体部腹側に6.6×5.1 cm大の内部に不均一な造影効果を示す楕円形腫瘤を認め,栄養血管は左胃大網動脈の大網枝と考えられた.大網腫瘍捻転の術前診断で開腹手術を施行した.骨盤腔内の腫瘍の栄養血管は20 cm以上に及び,5回転ほど捻転していた.捻転部分より中枢側で栄養血管を処理し,腫瘍を一塊に摘出した.病理組織学的所見上CD34,STAT6,CD99,bcl-2陽性,c-kit,S-100,desmin陰性で,大網原発のSFTと診断した.

  • 丸山 博行, 高木 徹, 小島 正幸
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 5 号 p. 272-279
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/05/31
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    症例は80歳の男性で,腰痛と発熱を主訴に外来を受診し,CTで化膿性脊椎炎が疑われ入院した.MRIで第12胸椎と第1腰椎椎体前骨化を中心に上下の椎体にも炎症性変化を認め,血液培養でStreptococcus bovis(以下,S. bovisと略記)が検出され化膿性脊椎炎と診断した.Ceftriaxoneを28日間投与後,minocycline hydrochloride内服に変更した.大腸腫瘍性病変の検索として下部消化管内視鏡検査を施行したところ下行結腸とS状結腸に早期癌を認め,腹腔鏡補助下左側結腸切除術を施行した.ともにpT1a(SM)N0M0 Stage Iであった.術後,膵炎,イレウス,尿閉などの合併症を起こしたが第33病日,退院した.S. bovis菌血症に関連した大腸腫瘍の本邦報告例17例に自験例を含め報告する.

編集後記
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