日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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56 巻, 8 号
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症例報告
  • 佐藤 和秀, 坪井 一人, 入村 雄也, 鈴木 俊雅, 梶本 徹也, 柏木 秀幸
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 8 号 p. 419-426
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/29
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    症例は61歳の男性で,30年前に膵腫瘍に対する胃全摘術および膵体尾部切除術の既往がある.2年前より食事摂取量が急激に減少し,約10 kgの体重減少を認めた.近医で上部消化管内視鏡検査を施行されたが異常なく,精査加療目的で当院紹介となった.上部消化管X線造影検査で食道空腸吻合の盲端への造影剤停滞を認め,blind pouch syndrome(以下,BPSと略記)と判断した.本症例は胆石症も認めていたため,ρ吻合と同時に胆囊摘出術も併施した.術後5日目より食事を再開,経過良好で術後14日目に退院となった.ρ吻合は胃全摘後のRoux-Y吻合の亜型として用いられていた再建形式である.同術式では貯留能の増大および食事摂取量の増加が期待され,本症例ではρ吻合への変換が非常に有効であった.今回,BPSに対してρ吻合を行い,食事摂取量が増加することで栄養状態が改善した1例を経験したので報告する.

  • 宮川 公治, 池下 千彬, 山条 純基, 望月 聡, 藤 信明, 高松 哲郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 8 号 p. 427-435
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/29
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    症例は64歳の男性で,人間ドッグの上部内視鏡検査で2 cm大の胃粘膜下腫瘍を指摘された.Endo-scopic ultrasonographyでは第4層由来の腫瘍でgastrointestinal stromal tumorが疑われたがfine-needle aspirationでは診断がつかず,診断的治療目的で腹腔鏡下に切除を行った.腫瘍は亜有茎性の胃壁外性であり,自動縫合器を用いて切離した.病理組織検査では,腫瘍は固有筋層と連続して漿膜下に増殖しており,硝子化した膠原繊維を伴う紡錘形細胞の増殖と一部に石灰化および炎症細胞の浸潤がみられた.紡錘形細胞は免疫組織染色検査でvimentinが陽性であったが,CD34,c-kit,α-smooth muscle actin,desmin,S-100は全て陰性で,石灰化線維性腫瘍(calcifying fibrous tumor;以下,CFTと略記)と診断した.現在術後1年再発なく経過している.胃壁原発のCFTの報告は極めてまれである.

  • 守安 諒, 高 賢樹, 砂川 大輝, 関 宣哉, 西田 保則, 吉福 清二郎, 笹原 孝太郎, 小田切 範晃, 下条 久志, 田内 克典
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 8 号 p. 436-443
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/29
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    症例は68歳の男性で,既往歴なく大酒家であった.腹痛を主訴に前医を受診し慢性膵炎と膵頭部仮性囊胞出血の診断となり,保存加療を行った.その後2回の入退院を繰り返し精査加療目的に当院紹介となった.当院受診時,造影CTで囊胞内に造影剤の貯留を認め,出血を示唆する所見であったが動脈瘤は認めず,血管造影でも明らかな出血源は同定できなかった.保存加療を行うも腹痛の継続と貧血の進行を認め,根治目的に膵頭十二指腸切除術を施行した.術中および標本肉眼所見では囊胞内出血を認めず明らかな出血源は同定できなかったが,病理所見からは囊胞壁からの慢性的な出血が示唆された.現在,出血を認めるが血管造影で出血源が不明な膵仮性囊胞に対する治療に明確なコンセンサスは存在しない.自験例および文献的な検討から,保存治療は現状では効果が明らかでなく,他臓器合併切除を含めた手術を症例に応じ選択する必要があると考えられた.

  • 杭瀬 崇, 山野 寿久, 濱﨑 友洋, 三原 大樹, 山中 良太, 池田 知佳, 石井 裕朗, 原田 亮, 劒持 雅一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 8 号 p. 444-451
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/29
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    症例は62歳の女性で,閉塞性黄疸の精査加療目的で当院紹介となった.精査の結果,膵頭部癌(切除可能性分類:resectable)と診断し術前補助化学療法を開始したが,初診時CTで上腸間膜動脈の高度狭窄とpancreatic arcadeの著明な拡張を認め根治切除時の腸管血流低下が懸念された.このため術前補助化学療法期間中に血管造影検査を追加しpancreatic arcadeの塞栓を行った.塞栓後2週間で下腸間膜動脈からの側副血行路が代償性に発達し主たる腸管血流の供給路となったことが確認できたので,遅滞なく安全に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行することができた.切除可能膵癌に対する治療は術前補助化学療法が標準治療となりつつあり,腹部主要血管や血管分岐の異常を早期に認識し,集学的な治療戦略を立てることが極めて肝要であると考えられた.

特別報告
  • 大越 香江, 野村 幸世, 河原 正樹, 小林 美奈子, 阪田 麻裕, 高須 千絵, 田中 千恵, 林 憲吾, 松永 理絵, 調 憲, 北川 ...
    原稿種別: 特別報告
    2023 年 56 巻 8 号 p. 452-467
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/29
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    目的:日本消化器外科学会男女共同参画ワーキンググループ(現:委員会)の活動の効果を評価するために,設立時の日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設における男女共同参画の実態を明らかにする.方法:日本消化器外科学会認定施設899施設の指導責任者および事務担当者を対象とし,依頼文を郵送してウェブアンケートに回答を依頼した.期間は2021年6月30日から9月14日である.男女共同参画や労働環境に関して,事務担当者には病院の整備状況を,指導責任者には消化器外科医の現状を質問した.結果:医師の1日の労働時間が8時間を超えないように配慮しているのは,指導責任者:32.0%,事務担当者:68.6%,当直の翌日は休みであるのは指導責任者:26.5%,事務担当者:27.9%であった.指導責任者によると,複数主治医制は64.9%,消化器外科医の有給取得は1年に5日以上10日未満が最多であり,中央値は6日であった.女性および男性の育休取得者がいた施設はそれぞれ22.6%,11.9%であった.女性の育休期間は1か月以上6か月未満が45.9%,6か月以上12か月未満が33.8%であったが,男性の71.8%が1か月未満であった.結語:多くの施設において,男女共同参画や労働環境改善のために努力している途上であるが,その現状は未だ不十分であった.委員会として,男女共同参画を進めるための活動を継続していく.

  • 松本 順久, 山本 有祐, 森村 玲, 生駒 久視, 大辻󠄁 英吾
    原稿種別: 特別報告
    2023 年 56 巻 8 号 p. 468-469
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/29
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