日本消化器外科学会雑誌
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26 巻, 7 号
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  • とくにlower esophageal high pressure zoneに及ぼす影響
    中村 豊英, 生田目 公夫
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1913-1920
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃全摘後の食道炎の発生要因を知る目的で, 胃全摘症例59例に対して同術後における食道炎合併の実態を調査した.さらに食道内圧検査と24時間pH検査法を用いて, 胃全摘術がlower esophageal high pressure zone (LEHPZ) に及ぼす影響について検討した.その結果, 1) 発生頻度は, 18.6%で, びらん潰瘍型が多く, 吻合部近傍に好発した.2) 再建術式では, ρ-Roux en-Y法後の発生が低率であった.3) pH検査では, pH7.5をアルカリ逆流と判定して各逆流要素をみると, 食道炎 (+) 群でいずれも高値を示した.4) 内圧検査では, 食道切除長5mm以下ではhigh pressure zone (Tone) は保たれていた.5) 内圧検査とpH検査から, HPZ (T) が逆流防止に関与していることが示唆された.これらの成績から, HPZ (T) 温存の成否は切除長に関わると考えられた.さらに, HPZ (T) の低下・消失例や, pH7-5を超える逆流がアルカリ型食道炎発生の頻度が高いため, このような症例には定期的な内視鏡検査が食道炎の早期診断と治療を可能にするといえる.
  • 林 悟, 松森 正之, 岡田 昌義
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1921-1928
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌手術患者では, 生体防御能は術前よりの担癌, 低栄養に加え, 外科的侵襲によって障害され術後の易感染性の原因となり, また癌再発に対して不利に働くと考えられる.食道癌症例33例に対して術前後の免疫能の推移について検討した.うち18例にはレンチナンを術前より投与し, その術後免疫能に対する効果についても検討した.術後, レンチナン非投与群ではリンパ球数, IgG, IgA, CH50, Leu.3a/Leu.2a, ADCC, NK細胞活性などが低下した.細胞性免疫能の指標である, Leu.3a/Leu.2a, ADCC, NK細胞活性は, 手術侵襲による障害が顕著で遷延する傾向を示した.レンチナソ投与群では, リンパ球数, Leu. 3a/Leu.2a, ADCC, NK細胞活性の低下および白血球増多症発生頻度が抑制され, 術後の免疫能低下を予防する効果が認められた.
  • microdensitometry法とdual energy X-ray absorptiometry法の比較
    寺田 信國, 佐野 晴夫, 石橋 治昭, 谷 徹, 柴田 純祐, 小玉 正智, 游 逸明, 山本 逸雄, 森田 陸司
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1929-1935
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌患者の胃切除術後の骨障害について, microdensitometry (MD) 法81例およびdual energy absorptiometry (DEXA) 法52例で比較した.これらの2つの測定法をもちいて, 加齢, 性別, 手術後年数, 手術術式などについての解析を行ったところ, 2つの測定法は, 同様の傾向がみられた.ところが, 個々の症例を2つの測定法で比較すると, 一致しない値を示すものがあった.そこで, 特別な機械を必要としない手軽なMD法と, 腰椎など骨折多発部位を直接的に測定できるDEXA法について, さらに詳細に解析した.そこでわかったことは, MD法とDEXA法の総合評価はあまり相関せず, またMD法の骨密度値 (ΣGS値) は, 腰椎DEXAのbone mineral density (BMD) 値とはあまり相関せず, むしろ踵骨single energy absorptiometry (SXA) のBMD値とよく相関した.胃切後でMD法で初期以上の骨障害を認めた症例に対して, 1α-OH-D3を投与し19例中12例にMD法での総合評点の改善がみられた.
  • 水谷 崇, 恩田 昌彦, 徳永 昭
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1936-1943
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    ヒト胃癌について食道癌, 大腸癌と対比, epidermal growth factor (EGF) 結合能を測定, epidermal growth factor receptor (EGFR) 量として定量的に表し, 臨床病理学的に検索した.またヌードマウス可移植性胃癌についてc-erbB-2の遺伝子増幅をスロットプロット法で, 遺伝子産物の発現を免疫組織化学的に調べた.食道では非癌部, 癌部ともEGFR量は胃・大腸に比べ高値を示し, 癌では1例を除きすべてEGFR陽性であった.胃では非癌部より癌部がEGFR量, 陽性頻度ともに高値を示し, 癌では分化型に比べて未分化型でEGFR量, 陽性頻度ともに高値であった.大腸では非癌部, 癌部とでEGFR量, 陽性頻度とも差はなかった.ヌードマウス可移植性胃癌においては分化型由来の2系統でc-erbB-2の増幅および発現が認められた.EGFR, c-erbB-2の発現に明らかな関連は認められなかったが, ヒト胃癌およびヌードマウス可移植性胃癌の増殖にはEGFRまたはc-erbB-2の関与が示唆された.
  • 細川 治, 山崎 信, 渡辺 国重, 谷川 裕, 海崎 泰治, 福島 栄
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1944-1950
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去20年間に開腹切除術を行った早期胃癌中に胃癌取扱い規約 (改訂第11版) で定義された組織学的断端陽性例は17例 (1.1%) 存在した.断端陽性に陥った要因は表層拡大型早期癌のため切除断端を見誤ったものが8例, 多発癌のため4例, 随伴IIbのため2例, その他3例であった.切除断端での癌陽性幅は10mm未満8例, 10mm以上9例であり, 断端から癌細胞までの距離はow=0mmが12例, 0mm<ow≦5mmが5例であった.断端への癌浸潤は粘膜表層浸潤8例, 粘膜深層浸潤1例, 粘膜全層浸潤8例であり, 粘膜下層浸潤例はなかった.追跡の結果, 6か月から4年の間に6例の残胃に遺残癌を見出し, 再切除を行った.うち4例は表層拡大型, 5例は切除断端の癌陽性幅が10mm以上しかもow=0mm例, 4例は粘膜全層浸潤であった.早期胃癌の組織学的断端陽性例で癌が遺残し, 再切除が必要となるものは表層拡大型, 癌陽性幅10mm以上, ow=0mm, 粘膜全層浸潤例に多かった.
  • 山村 義孝, 紀藤 毅, 坂本 純一, 平井 孝, 安井 健三, 森本 剛史, 加藤 知行, 安江 満悟, 宮石 成一, 中里 博昭
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1951-1956
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1965~1984年の非治癒切除 (以下, 非治切) 683例を対象とし, 切除断端癌遺残 (以下, 断端陽性) が胃癌症例の予後に与える影響を検討した.断端陽性単因子は112例あり, 3年生存率 (以下同じ) はaw (+) 32例40.6%, ow (+) 75例36-0%であった. N>R相対非治切単因子119例の32.8%に対して断端陽性30例は10.0%と有意に (p=0-0001) 予後不良であった. N>R絶対非治切は単因子50例12.8%, 断端陽性21例4.8%と生存率に差はなく, S3は単因子7例28.6%, 断端陽性5例0%, P1は単因子54例27-8%, 断端陽性14例21.4%, P2-3は単因子32例6.3%, 断端陽性11例0%といずれも生存率に差を認めなかった.肝転移単因子には断端陽性の合併がなかった.断端以外の非治癒因子が2因子以上の症例141例は5.7%, 断端陽性59例は3.4%であった.以上より, N>R相対非治切以外の非治切例では, 予後からみて, 切除断端癌遺残の影響は大きくないものと思われた.
  • 山本 裕司, 天野 富薫, 今田 敏夫, 青山 法夫, Hiroharu Suzuki, 竹鼻 敏孝, 利野 靖, 高橋 誠, 松本 昭彦
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1957-1962
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    ヒト胃癌細胞株STKM-1を用いてCis-diamminedichloroplatinum (以下CDDP) とカフェイソとの併用抗腫瘍効果と染色体におよぼす影響について検討した.
    CDDP (2μg/ml) 3時間接触で57%の増殖率であったが, CDDP接触後カフェイソ1mM持続接触にて23%に, 2mMにて9.3%に低下し, 抗腫瘍効果の増強が認められた.
    CDDP (2μg/ml) 処理後の染色体におけるgap/breakの出現頻度は1.816±1.509/Cell, exchangeの出現頻度は0.184±0-565/Ce11であった.CDDP処理直後からカフェイン1mMを24時間接触させるとgap/breakの出現頻度は4-206±3.162/Cell, exchangeは0.760±0.938/Cellと増加した.CDDP処理後24, 48時間後にカフェインを接触させても同様の結果が得られた.
    以上より, カフェインはDNA修復阻害作用を有し, 胃癌に対する化学療法において, CDDPとの併用で抗腫瘍効果の増強が期待された.
  • 市倉 隆, 冨松 聡一, 上藤 和彦, 大草 康, 藤野 啓一, 猪川 弘嗣, 玉熊 正悦
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1963-1968
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌のリンパ節転移を予後因子として評価する場合, 転移陽性リンパ節の個数と現行取扱い規約の分類 (規約n分類) のいずれがより重要であるかを検討する目的で, 治癒切除または相対非治癒切除術が行われた進行胃癌426例を対象として, 両因子をそれぞれ層別して生存率を分析した.その結果,(1) 転移リンパ節の個数による生存率の差を検討すると, 0~4個 (A群), 5~12個 (B群), 13個以上 (C群) の3群に分類するのが妥当と思われた.(2) n1 (+) ではA-B, A-C群間に, n2 (+) ではA, B, C各群間に有意な生存率の差がみられ, n3,4 (+) でも同様の傾向にあり, 転移個数による生存率の差は明瞭であった.(3) A群ではn (-), n1 (+), n2 (+) の間にまったく生存率の差はなく, またB, C群でも規約n分類による明らかな生存率の差はみられなかった.以上の成績より, 予後因子としては, リンパ節転移個数の方が規約n分類より優れていると考えられた.
  • 浦 英樹, 伝野 隆一, 平田 公一
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1969-1976
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去17年間に教室で治癒切除を施行した原発胃癌733例を対象に転移リンパ節個数, リンパ節転移度 (転移リンパ節個数/摘出リンパ節個数) の術後遠隔成績に及ぼす影響について臨床病理学的に検討した.その結果, これらのリンパ節因子が予後規定因子としての機能を発揮するのはn2例においてであり, n1, n3例では転移リンパ節の量的多寡による予後の差は明らかでなかった.転移個数については単純な総和値よりもn-numberを組み合わせた考え方が有用で, n2例における第2群リンパ節転移個数別の5生率は, 1~2個: 37.5%, 3~5個: 22.8%, 6個以上: 9.1%であった.リンパ節転移度 (F) 別のn2例の5生率は, F<10%: 62.9%, 10%≦F<20%: 46.1%, 20%≦F<50%: 29.7%, 50%≦F: 7.1%であり, 転移量の多いものほど予後不良であった.また予後因子別の単変量解析を行った結果, これらのリンパ節因子はn2例において深達度と同等以上の予後規定度を有することが判明した.
  • 馬 暁春, 寺田 信國, 小玉 正智, 九嶋 亮治, 服部 隆則
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1977-1982
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌患者137例において血中シアリルTn抗原 (STN) の測定を行い, 20例 (15%) が陽性を示した.血中STNはCEA, CA19-9との間に相関が認められなかった.STN高値を呈する胃癌の病期別の検討ではstage III, IV癌が16例で, 進行した癌で高い陽性率がみられた.組織所見においては, 多くは低分化型癌で, 漿膜下層以上浸潤した癌が14例で, 17例にリンパ節転移を認めた.STN高値を示した症例では, 胃癌の組織でも全例でSTN陽性を示し, 癌組織のproliferating cell nuclear antigen陽性率は14例において50%を越えていた.術前血中STN高値の症例は術後ほとんど低下し, 術後高値が続いた症例は残存病変を認め, まもなく死亡した.術後再発した症例はSTNの再上昇がみられた.以上より, 血中STNは癌細胞の浸潤や増殖の程度と関連し, 癌の進行度や再発の判定に有用なマーカーであることが示唆された.
  • 河村 史朗, 加藤 道男, 森下 透, 大野 伯和, 船坂 真里, 中村 毅, 斉藤 洋一
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1983-1989
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃の低分化型腺癌511例を間質結合織の多寡により髄様型 (91例), 中間型 (148例), および硬性型 (272例) に分類し, このうち髄様型と硬性型について臨床病理学的特徴および予後を比較検討した.さらに髄様型ではリンパ球浸潤による術後遠隔成績に関しても検討を加えた.その結果, 髄様型は高齢者, 男性, 胃癌取扱い規約によるA領域, 肉眼型の1, 2型, ps (-), n4, stage Iが多くみられた.一方, 硬性型では若年者, 女性, 全領域に広がるもの, 肉眼型の3, 4型, ps (+), stage IIIが多くみられた.肉眼型腹膜播種および肝転移の頻度は両型間に差はなかった.両型の術後遠隔成績はstage別, ps別に有意差を認めず, 間質量の多寡は予後に影響を及ぼさなかった.しかしながら, 髄様型においてリンパ球浸潤を伴う症例はPS (-) 症例に限ると伴わない症例より予後が良好の傾向を示した.
  • 吉村 了勇, 濱島 高志, 李 哲柱, 大坂 芳夫, 平川 一典, 閑 啓太郎, 安井 仁, 天池 寿, 園山 輝久, 山岸 久一, 岡 隆 ...
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1990-1995
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Veno-venous (V-V) バイパスの凝固能にあたえる影響をみるため, ブタ (n=6) を用いて凝固線溶系分子マーカーについて検討した.凝固系分子マーカーであるthrombin-antithrombin (TAT) 複合体は無肝期直前に10.2±4.6μg/l (n=6) と低値であったのが無肝期の早期 (30分) に58.6±5.1μg/l (p<0.01) へと著明な増加を示し, その後も時間経過とともに軽度増加した.一方, フィブリンモノマー (FM) テストは無肝期60分から120分を境に (-) から (+) へと変化を示した.一方, 線溶系ではDダイマ-は無肝期直前に65±5ng/mlであったのが, 無肝期30分, 60分, でそれぞれ70.0±10.1ng/ml, 76.0±8.7ng/ml, と軽度上昇を示したにとどまった.しかし, 120分, 150分では100±11.3ng/mlおよび121±10.8ng/ml (p<0.05) と明らかな増加傾向を示した.プラスミン-α2プラスミンインヒビター (PIC) は有意な変化を示さなかった.無肝期における凝固系分子マーカーの指標としてTAT複合体が, また線溶系分子マーカーではDダイマーがよい指標と考えられ, 従来の凝血学的諸指標より鋭敏であった.
  • 宮崎 正二郎, 高崎 健, 林 俊之, 山本 雅一, 次田 正, 桂 浩二, 鈴木 隆文, 大坪 毅人, 中上 哲雄, 小林 誠一郎, 羽生 ...
    1993 年 26 巻 7 号 p. 1996-2002
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌肝切除106例を対象として, 肝切離面の癌浸潤の有無 (tumor wedge; TW) と断端再発の関連を検討した.TW (+) 例は対象症例中71例 (67.0%) に及んだ.残肝再発は, TW (+) 例中37例 (52.1%), TW (-) 例中16例 (45.7%) に認めたが, 両群間に有意差はみられなかった.断端再発例は残肝再発例53例中4例 (7.5%) で, すべてTW (+) 例であった.断端再発例を除くTW (+) 例の残肝再発33例 (46.5%) は, TW (-) 例の残肝再発率とほぼ等しく, また, 断端再発例の検討から, TW確保は予後向上につながるものと考えられた.しかし, 無再発生存率に関しては, TW (+) 例とTW (-) 例の両群間に有意差がみられなかった.これは, 残肝再発例における断端再発例の割合が低いため, TWの再発への関与が, 門脈・静脈腫瘍栓, 被膜外浸潤, 肝内転移, 腫瘍径などの諸因子に比べると少ないことによるものと考えられた.また, 断端再発例はすべてTW5mm未満であることから, TW5mm以上がTW確保の1つの目安と示唆された.
  • 宮崎 知, 坂本 嗣郎, 桑田 圭司, 山崎 芳郎, 山崎 元, 森本 芳和, 貴島 弘樹, 種村 匡弘, 宮田 正彦
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2003-2008
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去5年間に上部消化器造影を施行した12,321例を対象とし, 十二指腸憩室の発見頻度, 部位ならびに個数を検討した.また同5年間の良性胆道疾患手術症例467例につき傍乳頭憩室の合併頻度, 憩室径, 胆管径ならびに結石の種類を検討した.十二指腸憩室の発生頻度は男性4.9%, 女性9.1%であり, 加齢とともに増加した.憩室の92.2%は十二指腸第II部に存在し, 単発例が95.6%であった.胆道疾患別の憩室合併頻度は胆嚢ポリープ15.7%, 胆嚢結石15.8%, 胆管結石45.2%, 再発結石87.5%であり, 胆管結石症例は胆嚢結石症例に比べ有意に高かった.憩室径では胆管結石ならびにレンメル症候群は胆嚢ポリープ症例に比べ有意に大であった.憩室径20mm以上の症例は, 10mm未満に比べ総胆管径が有意に大であった.胆管結石症例では憩室合併群は非合併群に比べ色素系結石の頻度が有意に大であった.以上の成績より傍乳頭憩室 (とくに憩室径が20mm以上) は胆汁流出障害, 胆管結石の生成に関与することが推察された.
  • 上辻 章二, 山田 修, 權 雅憲, 栗本 修次, 里井 壮平, 上山 泰男
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2009-2012
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    無症状胆石に対する胆嚢摘出術施行の是非については種々の議論があり, 胆石症の有症状群と無症状群間で臨床的検討がなされてきた.しかしながら, 無症状胆石における摘出胆嚢の病理組織学的検討に関しての報告は少なく, 今回われわれは, 過去5年間に胆石症にて胆嚢摘出術を施行した375例中無症状胆石39例 (10.4%) を経験し, 病理組織学的検討を加えた.胆嚢粘膜固有層の炎症細胞浸潤の程度を高度, 中等度, 軽度の3段階に分け検討した結果, 有症状群ではおのおの51.7%, 33.0%, 15.3%で, 無症状群では48.7%, 23.1%, 28.2%と両群間に有意差はなく, 病理組織学的に無症状胆石といえども胆嚢炎所見が高度にみられた.胆嚢の病態を考えると, 有症化, 癌化の問題点や胆石保有による生活制限などを考慮すると, 患者への手術侵襲が少なくなった腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行される現在, 胆嚢摘出術が望ましく思われた.
  • 佐々木 亮孝, 菅野 千治, 村上 雅彦, 早川 善郎, 島田 裕, 川村 英伸, 須藤 隆之, 玉沢 佳之, 豊島 秀浩, 大森 英俊, ...
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2013-2019
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    下部胆管癌および乳頭部癌に対する全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術の適応の可否とリンパ節郭清のあり方を知る目的で, リンパ節転移様式について臨床病理学的に検討した. 1) リンパ節転移率は下部胆管癌28.6%, 乳頭部癌38.9%であった. 2) 胃周囲リンパ節への転移は下部胆管癌, 乳頭部癌各1例でともにNo.(7) への転移をみたのみであった. 3) リンパ節転移部位は, 下部胆管癌ではNo.(13) b (23.8%),(17) b (9.5%), 乳頭部癌ではNo.(3) a (22.2%),(13) b (16.7%),(8) (16.7%) に多くみられ, 下部胆管癌では, No.(15) 5.9%, 乳頭部癌ではNo.(14) 9.1%,(16) 7.7%へも転移が認められた. 4) 本術式施行7例中, 癌死例は1例のみであった. 以上より, 下部胆管癌および乳頭部癌に対して根治性を損なうことなく本術式を適応でき, リンパ節郭清は従来の膵頭十二指腸切除術と同様に, とくに腹腔動脈, 上腸間膜動脈, 大動脈周囲の重点的な郭清が肝要と考えられた.
  • 藤田 哲二, 尾高 真, 松本 美和子, 桜井 健司
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2020-2025
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    侵襲に対する腸管の反応が近年注目を集めている. 手術侵襲時に腸管を巡るアミノ酸およびサイトカインの動態を究明するために, 消化器外科手術患者24例を対象として手術開始約2時間後に門脈血および末梢静脈血を同時に採取し, それぞれのアミノ酸, サイトカイン, インスリンおよびグルカゴン濃度を測定した.
    グルタミン (Gln) を除く19種類のアミノ酸については門脈-末梢血間に有意な濃度差はみられなかった. 門脈血Gln濃度は371.06±97.01nmol/ml (mean±SD) であり, 末梢血Gln濃度452.38±80.29nmol/mlに比べて有意に (p<0.02) 低かった. 末梢血Gln濃度と門脈血interleukin 6濃度との間には有意な負の相関 (r=-0.46, p<0.05) が認められた. また門脈血Gln濃度と末梢血グルカゴン/インスリン比の間には有意な負の相関 (r=-0.46, p<0.05) があった.
    侵襲時の血管内から腸管粘膜上皮へのGlnの移行にはサイトカインの関与が考えられる.
  • 上松 俊夫, 土江 健嗣, 岩田 祐輔, 青山 貴彦, 久納 孝夫, 堀 明洋, 早川 直和
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2026-2030
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Zenker憩室は比較的まれな疾患でありその手術例の報告も少ない. われわれは甲状腺腺腫を伴ったZenker憩室の1例を経験したので報告する. 症例は73歳の男性. 5年前から嚥下障害があり, 1年前から前頸部の腫瘤に気づいていた. 頸部CT検査にて, 右葉の甲状腺腫とは別に, 左の頸部に特徴的な楕円形の含気を認めZenker憩室の合併を疑った. 食道造影と食道内視鏡検査にて嚢状のZenker憩室の存在を確認した. 手術は甲状腺右葉切除術とZenker憩室切除術を施行した. 甲状腺腫は大きさ90×70×35mmの濾胞状腺腫で, Zenker憩室の大きさは25×15mmで, 扁平上皮と薄い筋層から成る真性憩室であった. Zenker憩室は内圧性の憩室であり, 自験例では, 甲状腺腫瘍が偶然合併し気管や食道を圧排することにより, Zenker憩室の増大や嚥下障害の発生に間接的に関与したと考えられた.
  • 村田 修一, 丸岡 秀範, 清崎 克美, 若狭 林一郎, 池谷 朋彦, 広瀬 淳雄, 牛島 聡
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2031-2034
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    出血性胃潰瘍の治療中, 大量の血液貯留による胃の過膨張が原因と考えられる特発性胃破裂の1例を経験したので報告する.
    症例は72歳の女性. 1988年7月10日, 吐血にて入院. 胃内視鏡検査で胃内に大量の血液貯留を認めたが, 出血源は不明であった. 入院約48時間後に再び大量の吐血を来し, ショック状態となったので手術を施行した. 胃体部小彎側で縦軸方向に約15cm胃が裂け, 体上部後壁に認めた潰瘍は脾, 膵尾部と強固に癒着していたため, 胃全摘, 脾, 膵尾部切除を行った. 病理組織学的に胃体部後壁に4.5×2cmのUl-IVの潰瘍があり, 潰瘍底に動脈の破綻を認めた.胃内と上腹部に約3,200mlの血液が貯留していた. 血液貯留により拡張した胃に, 吐血による急激な胃内圧の上昇が起こり, 胃小轡が破裂したものと考えられた.
    われわれが調べえた本邦における成人の特発性胃破裂は本例が第3例目であった.
  • 川村 弘之, 片岡 誠, 桑原 義之, 呉山 泰進, 岩田 宏, 篠田 憲幸, 加島 健利, 佐藤 篤司, 服部 浩次, 中野 浩一郎, 正 ...
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2035-2039
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    特異な発育形態を呈した胃平滑筋芽細胞腫の1例を報告する. 症例は69歳の女性.右季肋部の手拳大の腹部腫瘤を主訴に入院.超音波検査で, 腫瘤は上極と下極が嚢胞性で中央部が充実性であった. MRIで, 腫瘤は壁外発育型の胃粘膜下腫瘍と判明. 内視鏡的生検術後に, 生検部からの出血をきたし緊急手術を施行.開腹時, 胃幽門部大轡側より胃壁外有茎性発育した腫瘤を認めた. 腫瘤を含め胃換状切除を施行. 組織学的に悪性度の低い胃平滑筋芽細胞腫と診断された. 本症は約10%が悪性例であるため, 手術術式に関しては, 腫瘍多発例や胃壁への浸潤傾向が強い場合には, 広範囲胃切除が必要と考えられるが, 自験例のごとく胃外に有茎性に発育し, 胃壁への浸潤傾向がなく, リンパ節腫大も認めない場合には, 楔状切除で十分な治癒切除が得られると考えられた.
  • 田中 松平, 金子 芳夫, 家接 健一, 吉田 千尋
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2040-2044
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    末端肥大症に併発したα-fetoprotein (AFP) 産生胃癌の1例を経験したので報告する. 症例は27歳の男性で, 吐血をきたして当科を受診した. 24歳時に末端肥大症と診断されており, 脳下垂体摘出術の既往があった. 内視鏡検査にて噴門直下のBorrmann 2型胃癌からの出血を認めた. 生検で低分化腺癌であった. 腹部CT検査, 超音波検査および血液生化学検査では肝硬変や肝炎を示唆する所見はなかったが, 血清AFP値が53.1ng/ml (正常値≦20ng/ml) と高値であった. 遠隔転移を認めず, 噴門側胃切除術を施行した. 噴門部前壁に3×2.5cm大のBorrmann 2型胃癌を認めた. 深達度はpmで, INFα, ly0, v0であった. 光顕免疫組織化学的に腫瘍組織内にAFPは証明されなかったが, 血清AFPは術後21日目に3.8ng/mlと正常化した.
    以上より, 本例は末端肥大症に併発したAFP産生胃癌と診断された.
  • 小坂 篤, 中川 俊一, 田中 穣, 鈴木 秀郎, 梅田 一清
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2045-2049
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌の発育形態として比較的まれな胃外発育型胃癌の1例を報告し, さらに本邦報告例65例に自験例を加え検討した.症例は64歳の男性. 左上腹部痛と腫瘤を主訴に来院した. 左上腹部に6×3cm大の圧痛を有する腫瘤がみられ, 超音波やCT検査にて胃小彎側に接する腫瘤を認めた. 上部消化管造影X線検査, 胃内視鏡下生検にて腺癌と診断された.術前胃外発育型胃癌と診断し手術を施行した. 術中所見では胃小彎側に小児手拳大の腫瘤がみられたが, 周囲臓器への浸潤は認めなかった. 手術はR2リンパ節郭清を伴う胃亜全摘を施行した. 組織学的には中分化型腺癌, 深達度ssβ, n (-) であった.術後1年5か月の現在再発の徴候なく健在である. 胃外発育型胃癌を本邦報告例から検討すると腹部腫瘤を主訴とするものが最も多く, 好発部位は大彎側であった. 周囲臓器へ浸潤発育するものが多く, 本例のごとく浸潤のみられない症例は9例に過ぎなかった.
  • 西尾 秀樹, 長谷川 洋, 松本 隆利, 金井 道夫, 小木曽 清二, 深田 伸二, 吉田 英人, 清水 泰博, 平松 和洋, 亀井 智貴, ...
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2050-2054
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    十二指腸リンパ管腫はまれな疾患で本邦では1965年から16例の報告があるのみである.今回われわれは特徴的な肉眼所見を呈した十二指腸リンパ管腫の1例を経験したので報告する.症例は45歳の女性で, 胃集団検診で異常を指摘され精査目的で当院を受診した.低緊張性十二指腸造影検査, 胃内視鏡検査にて十二指腸第2部に中心陥凹を伴う隆起性病変を認め, 肉眼的には表面が透明, 平滑で光沢があり, その下に黄色, 小結節集族様の腫瘍本体を透見できた.同部の生検ではリンパ管腫が疑われた.十二指腸部分切除術にて腫瘍を摘出し, 病理組織学的に海綿状リンパ管腫と診断された.自験例を含めた本邦報告17例を検討し, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 角村 純一, 竹中 博昭, 三木 康彰, 別所 俊哉, 大畑 俊裕, 井上 匡美, 横地 啓也, 野瀬 恵介, 大嶋 仙哉, 永井 勲, 田 ...
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2055-2059
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性の開業医である.腹部超音波検査, CT検査にて肝両葉に径3~6cmの腫瘤を計7個認めた.造影CTでは腫瘤辺縁が増強され, 肝内の分布状態から, 転移性肝癌が最も疑われた.Magnetic resonance imaging (以下MRI) ではT1強調にて低信号, T2強調にて均一な高信号領域で示された.血管造影では動脈相早期から静脈相終了後までの造影剤のpoolingがあり, 肝血管腫の可能性も示唆された.血中CEA値は正常範囲で, 上部消化管造影X線検査, 注腸造影X線検査も正常であった.手術所見では肝左葉に暗赤色の斑状模様の弾力ある腫瘤の露出を認めた.診断確定のため肝左葉外側区域切除を行い, 術中迅速組織診にて海綿状血管腫の診断を得た.肝海綿状血管腫は一般に単発性が多く, 自験例のように転移性肝癌との鑑別に苦慮した症例は比較的まれと思われるので文献的考察を加えて報告した.
  • 初瀬 一夫, 庄野 聡, 井戸田 望, 村山 道典, 酒井 良博, 小峰 規靖, 出井 雄幸, 青木 秀樹, 柿原 稔, 玉熊 正悦
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2060-2064
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝切除後肝不全の徴候として黄疸があげられている.今回閉塞性黄疸を伴う胆道癌6例に対し肝切除を施行し, 黄疸遷延の病態, 治療に関し検討を加えた.術前総ビリルビン値 (T.Bil) は術後黄疸遷延に影響を与えたが, 切除率, 術中出血量は影響がみられなかった.術後肝機能障害を示す指標としてプロトロンビン活性値, 血中アンモニア, 血中エンドトキシン, 動脈血中ケトン体比, 意識レベルの5因子を検討したところ, 黄疸が遷延するにつれ血中エンドトキシンの上昇, 意識レベルの低下がみられたが, 残り3因子には一定傾向はみられなかった.また黄疸が遷延するにつれ肝機能障害因子の陽性数が増加したが, 1例では黄疸が上昇しているにもかかわらず陽性数が1と少なく胆汁欝滞と考えられた.肝機能障害による黄疸では血漿交換が適応となるが, 5因子の陽性数の増加およびT.Bilとして8mg/dlが治療開始時期と考えられた.一方, 胆汁欝滞では副腎皮質ホルモン投与が有効であった.
  • 増子 佳弘, 宇根 良衛, 中島 保明, 佐藤 直樹, 三澤 一仁, 嶋村 剛, 安原 満夫, 内野 純一
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2065-2068
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1985年1月から1992年3月までの原発性肝細胞癌初回切除193例のうち, 尾状葉原発肝細胞癌4例 (2.0%) について検討した.平均年齢59.4歳, 全例男性であった.HB陽性率, 肉眼的硬変の程度, AFP陽性率, 組織型, 肉眼的進行度, 肝内転移に関しては他の区域の肝細胞癌と同様であったが, 門脈腫瘍塞栓は4例全例が陽性であり, 他の区域の陽性率26.8~39.1%に比べ高かった.5年累積生存率は33%と他の区域とほぼ同様であった.尾状葉原発肝細胞癌は高率に脈管侵襲を伴うが肝切除により他部位の肝細胞癌と同等の成績を上げうると考えられた.
  • 飯田 辰美, 伊藤 英夫, 片桐 義文, 荒川 博徳, 宮田 知幸, 酒井 聡, 千賀 省始, 林 勝知, 広瀬 一
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2069-2073
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で, 手術適応のある冠動脈狭窄を伴った肝細胞癌症例に対し, 1期的に冠動脈再建術と肝切除術を施行した.
    冠動脈病変は右冠動脈の完全閉塞, 左主幹動脈, 左回旋枝のいずれもで75%狭窄が存在し, 肝臓の病変は後下区域に径30mm大の肝細胞癌が認められた.術前の心機能は駆出率0.65と良好で, かつ臨床病期1と肝予備能も十分であった.まず体外循環下に3枝に大動脈-冠動脈バイパス術を行い, 術中の心係数も3.21/kg/m2と良好で, activatedcoagulationtime (ACT) も144秒と血液凝固能も安定していた.よって体外循環離脱後, 引き続き肝後下亜区域切除術を施行した.術中術後経過は良好で, 管理困難な出血, 創感染などはなく, 術後10か月の現在, 肝細胞癌の再発なく健在である.
    このことは今後増加するであろう虚血性心疾患を合併した肝細胞癌に対する積極的な治療法の1選択肢を示唆するものである.
  • 石根 典幸, 大野 靖彦, 佐々木 章公, 廣瀬 清, 松尾 嘉禮, 溝渕 正行
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2074-2078
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    重複癌に関する報告は多いが, 肝, 肺重複癌の組み合わせは数少ない.私達は1期的に根治手術を施行した同時性肝, 肺重複癌の1症例を経験しえたので報告する, 症例は62歳の男性で, 主訴は全身倦怠感であった.腹部CTで肝右葉 (S5亜区域) に径2.0cmの占居性病変を認め, 腹部超音波, magnet resonanceimaging (MRI), 血管造影を施行し原発性肝癌と診断した.また, 術前胸部X線で, 右上肺野に径1.4cmのcoinlesionを認めたため, 胸部断層撮影, 胸部CTを施行し, 形態学上S2区域に発生した扁平上皮癌と診断し, 同時性肝, 肺重複癌の診断で1期的に根治手術を施行した.組織学的検索では, Edmondson II型の肝細胞癌と中分化型扁平上皮癌であった.重複癌の発生頻度は増加傾向にあり, 治療法選択が問題となるが, 全身状態の評価, 癌の進行度, 術式, 手術順序を検討し, 可能なかぎり1期的に定型的根治手術を施行することが望ましいと考えた.
  • 山森 積雄, 山田 育子, 加藤 禎洋, 北村 文近, 近石 登喜雄, 古市 信明, 三沢 恵一, 大橋 広文, 須原 邦和
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2079-2083
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は3歳の男児で, 腹痛, 嘔吐で発症した.黄疸, 腹部膨満を認めたため開腹した.胆汁性腹膜炎を認め, 肝外に露出していた右肝管後区域枝に径2mmの穿孔を認めた.胆嚢摘出後穿孔部肝管にT-tubeを設置した.術後のT-tube造影では前区域枝, 後区城枝, 左肝管が嚢状拡張を呈していた.9年後のendoscopic retrograde cholangio-pancreatography (ERCP) 検査では左肝管が円柱状の拡張を呈し, 左内, 外側枝は嚢状拡張を呈していた.しかし, 3歳時にみられた前区域枝, 後区域枝の拡張程度は減少していた.成長後の拡張形態は原発性肝内結石症にみられる肝内胆管拡張にも類似していたが, ERCP検査時には胆石は認めなかった.この胆管拡張の形態は非常にまれな先天性肝外肝管拡張であったので報告した.
  • 村山 道典, 初瀬 一夫, 寺畑 信太郎, 青木 秀樹, 玉熊 正悦
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2084-2088
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の男性で, 主訴は黄疸, 上腹部痛であった.腹部超音波検査で肝門部腫瘤性病変とともに閉塞性黄疸が確認されたので経皮経肝胆道ドレナージを施行した.腹部血管造影, percutaneous transhepatic cholangiography, computed tomography, magnetic resonance imagingの結果, 肝門部胆管癌と診断され, 肝左3区域門脈合併切除術を施行した.また吻合部を中心に45Gyの放射線照射を行った.腫瘍は肝内から肝門部に浸潤した3.0×2.3×4.5cmの灰白色の塊状型で, 中心に小嚢胞を伴っていた.組織学的に小嚢胞部分を中心とした粘表皮癌で周囲の浸潤部に腺癌の像を伴っていた.肝内胆管由来の粘表皮癌の報告はきわめてまれであり, 切除後長期生存の報告はない.術後20か月間経過した現在, 再発徴候なく生存している肝門部浸潤肝内粘表皮癌の症例を経験したので報告した.
  • CEA免疫組織染色と核DNAのploidy patternの所見を含めて
    有留 邦明, 高尾 尊身, 矢野 謙二, 原口 優清, 愛甲 孝, 島津 久明
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2089-2093
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌と下部胆管癌の同時性重複癌の1切除例を経験した.症例は63歳の男性.主訴は黄疸で, 腹部エコーによって膵頭部の腫瘤と胆嚢壁の肥厚をみとめた.経皮経肝胆管ドレナージによる減黄後, 全胃・幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し, 膵胃吻合およびBillroth I法形式による消化管再建を行った.切除標本において総胆管に結節型で径2.2×1.2cm大の腫瘍, 胆嚢底部に結節型で径1.8×0.7cm大の腫瘍が認められた.病理組織学的診断は両者とも高分化型腺癌で, 脈管侵襲像や両腫瘍の連続性は指摘されなかった.Carcinoembryonic antigenの免疫組織学的染色では胆管癌が弱陽性であったのに対し, 胆嚢癌が強陽性を示した.また, 核DNAploidypattemでは胆管癌はdiploid, 胆嚢癌はaneuploidを示し, 両腫瘍の生物学的性状に差が認められた.以上より同時性胆嚢・下部胆管重複癌と診断した.本症例は本邦34例目の同時性胆道系重複癌と思われる.
  • 加藤 英雄, 清水 武昭, 佐藤 攻, 内田 克之, 塚田 一博, 武藤 輝一
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2094-2098
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    進行胃癌と胆管細胞癌の同時性重複癌を1期的に根治切除しえた.症例は73歳の男性.主訴は動悸と息切れ.入院時検査成績では, 腫瘍マーカーが, carcinoembryonic antigen (CEA) 6.7ng/dl, carbohydrate antigen 19-9 (CA19-9) 240U/ml以上と高値を示した.胃内視鏡にて胃体上部にBorrmann2型進行胃癌を認め, CTで肝左葉外側区域に不規則なlow density areaを示す腫瘍を認めた.膵脾合併胃全摘術および肝左葉切除術にて両病変の根治切除を施行した.胃病変は4.0×2.7cm大, 深達度ssの中分化型腺癌で, 肝病変は6.5×3.5×8.0cm大の高分化型乳頭状管状腺癌であった.肝病変は胃病変に比べmucin産生が少なくHE染色, CA19-9染色などより胃癌とは独立したもので胆管細胞癌と考えられた.患者は1年5か月の現在無再発生存中である.胆管細胞癌との重複癌といえども, 根治術が施行されれば予後も期待できるので初回手術時には積極的な外科治療を試みるべきである.
  • 山本 英博, 山本 元
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2099-2103
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性で, 筋緊張性ジストロフィー (myotonic dystrophy: 以下, MDと略) のため外来通院中であった.イレウスの診断で約3か月間神経内科にて保存的治療をうけたが, 緩解と増悪を繰り返したため外科へ紹介された.開腹すると回腸内に鶏卵大の腸石1個がイレウスの原因となっており, 小腸切開によりこの結石を摘出した.術後経過は良好であった.MDは骨格筋症状を始めとして内臓平滑筋運動障害や全身の臓器・組織の失調など多彩な症候を呈する全身性疾患である.また, 腸石はこれまで, 腸石の形成機序として機械的因子と化学的因子が指摘されており, 憩室, 盲嚢, 狭窄などにより腸内容の停滞は機械的因子として報告されてきた.本症例では, MDによる小腸平滑筋の運動障害が直接腸内容の停滞の原因と考えられた.
    以上, MDに併存した腸石イレウスの1手術例を報告し, 若干の文献的考察を加えた.
  • 山中 秀高, 子日 光雄, 加藤 弘幸, 小倉 嘉文, 水本 龍二
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2104-2108
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    空腸の腸間膜付着側で穿孔した原発性非特異性小腸潰瘍の1例を経験した.症例は67歳の男性で, 下腹部痛を主訴として来院した.胸腹部単純X線写真にて消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.Treitz靭帯より肛門側約1mの空腸の腸間膜付着側に直径約1mmの穿孔を認め, 腸管部分切除術を施行した.切除標本にて原発性非特異性小腸潰瘍と診断した.本邦では空腸のみに発生した原発性非特異性小腸潰瘍の報告は本症例を含め15例と比較的まれであり, 回腸発生例45例に比べ高齢者に多かった.従来, 本症は腸間膜反対側に発生するものが多いといわれてきたが, 空腸発生例では腸間膜付着側に多く, 穿孔をきたすものが多かった.手術死亡は穿孔例で高率となるため, 本症を念頭においた早期診断に努めるとともに, 穿孔例に対しては可及的速やかに外科的治療を行うことの必要性が指摘された.
  • 田内 克典, 鈴木 修一郎, 長田 拓哉
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2109-2113
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    S状結腸に原発した良性線維性組織球腫 (benign fibrous histiocytoma: BFH) の1手術例を経験したので報告する.症例は63歳の男性, 主訴は発熱および腹痛.注腸造影, 内視鏡, CT, magnetic resonance imaging (MRI), 血管造影にてS状結腸壁内悪性腫瘍もしくは強度の炎症性変化と診断しS状結腸切除・回腸部分切除術を施行した.病理組織学的所見では錘体形の腫瘍細胞がstoriform patternをとり漿膜下層から筋層を押し上げるように発育し, 免疫組織学的にhistiocyteの性格をもち, 核分裂像は認められず異型性に乏しいことよりBFHと診断した.術後経過は順調で再発の兆候はない.
    消化管原発の線維性組織球腫は, 内外で15例の悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma;MFH) の報告を認めるがBFHの報告はなく, 自験例が最初の報告例である.
  • 前田 清, 西野 裕二, 山田 靖哉, 西村 重彦, 新田 敦範, 有本 裕一, 石川 哲郎, 池原 照幸, 奥野 匡宥, 曽和 融生, 若 ...
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2114-2118
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の女性.主訴は右季肋部痛.注腸造影, 直腸鏡にて直腸に9mm大の中央が陥凹する表面平滑な腫瘍を, 腹部computed tomography (CT), ultrasonography (US) にて肝右葉全体を占める直径15cmの腫瘍を認めた.顔面紅潮, 著明な発汗などのいわゆるカルチノイド症候群を呈し, 生化学的検索にて血中serotonin, 尿中5-hydroxyindole acetic acid (5HIAA) の異常高値がみられた.直腸および肝生検の組織所見より直腸カルチノイドの肝転移と診断し, 開腹術を施行した.直腸周囲リソパ節, 肝以外に転移を認めず, 直腸切除術および肝右3区域切除術を施行した.術後7か月を経過した現在再発の徴候なく健在である.腫瘍径1cm未満で巨大な肝転移をきたすことはまれであるが, 根治術可能であれば, 積極的な外科的療法が有効であると思われた.
  • 瀧藤 克也, 谷村 弘, 永井 祐吾, 中谷 佳弘, 柏木 秀夫, 椿原 秀明, 矢本 秀樹
    1993 年 26 巻 7 号 p. 2126
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
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