日本消化器外科学会雑誌
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25 巻, 4 号
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  • 大村 健二, 浦山 博, 宗本 義則, 石田 文生, 平野 勝康, 川上 和之, 道伝 研司, 渡辺 洋宇
    1992 年 25 巻 4 号 p. 967-971
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    われわれは, これまでに下咽頭・頸部食道癌19例に対し咽頭喉頭頸部食道切除術および遊離空腸移植による頸部食道再建を施行した.その結果, 術後合併症として縫合不全を1例 (5.3%) に, 創感染を3例 (15.8%) に, 腸重積を3例 (15.8%) に認めた.術後の経口摂取は全例で十分量可能となり, 患者自身の満足度も高かった.19例のうち術後8例が癌 (原病) 死し, 5年生存率は27.2%であった.その再発形式をみると, 局所4例, 肺転移2例, 脳転移2例であり, 胸部および腹部のリンパ節郭清を行わなかったために再発をきたした症例はなかった.咽頭喉頭頸部食道切除術は, 下咽頭, 頸部食道に癌腫が限局しており, かつ画像診断上, 胸部および腹部リンパ節に転移を疑わせない症例に対する切除術式として妥当であると思われた.また, かかる切除術後の頸部食道再建法として, 遊離空腸移植は安全で優れた方法と思われた.
  • 肉眼診断と組織診断との対比
    森崎 善久, 島 伸吾, 米川 甫, 後藤 正幸, 杉浦 芳章, 吉住 豊, 田中 勧, 相田 真介, 玉井 誠一
    1992 年 25 巻 4 号 p. 972-977
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌46例のリンパ節転移に関して, 肉眼診断と組織診断とを対比し, その一致度および一致しない原因を検討し, 以下の結果を得た.(1) リンパ節転移の肉眼的正診率は, 高分化, 中分化および低分化症例でそれぞれ95.3%, 91.5%および83.2%であり, 低分化症例で有意に低かった.(2) 肉眼的リン櫛転移の判定は, micrometastasisの転移徽をとる場合と5mm以下の小さいリンパ節転移の場合が特に困難であり, 低分化症例ではこれらの転移型体をとる場合が多い傾向がみられた.(3) 偽陽性リンパ節17個の検討では, 組織学的には全例反応性のリンパ節腫大と考えられ, 大きさは10mm以上のものが12個と多かった.
  • 原田 雅光, 和田 大助, 河崎 秀樹, 古味 信彦
    1992 年 25 巻 4 号 p. 978-984
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    小腸近位側2/3切除術後の胃酸分泌動態を分泌促進系因子面から検討するため, 実験犬を用い酸分泌能, 右胃大網静脈 (RGEV) 血漿ガストリン値とヒスタミン値, 幽門洞G細胞数, 壁細胞数を経時的に測定した.1) 術後3~4週: BAO, MAO (mEq/h), 壁細胞数 (個/0.2mm幅垂直切片柱) はそれぞれ48.5%, 28.2%, 16.4%増加し, RGEV血漿ガストリン値 (pg/ml), ヒスタミン値 (nM), G細胞数 (個/mm幅垂直切片柱) はそれぞれ57.8%, 32.2%, 10.9%減少した.2) 術後11~12週: BAOは術前値にほぼ回復したが, MAOは減少傾向を示すものの高値を持続した.RGEV血漿ガストリン値とヒスタミン値は増加し術前値に回復する傾向を示した.壁細胞数はやや減少したのに対しG細胞数は増加した.以上から, 術後の胃酸分泌能の亢進は壁細胞数の増加と機能亢進が直接関与しており, RGEV血漿ガストリンおよびヒスタミンの変動は,酸分泌量の増減に伴うfeedback作用の結果であると考えられた.
  • 坂本 英至, 中島 聰總, 太田 恵一朗, 石原 省, 水野 伸一, 山口 洋介, 佐藤 幹則, 西 満正, 加藤 洋, 柳沢 昭夫
    1992 年 25 巻 4 号 p. 985-991
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃悪性リンパ腫95例につき臨床病理学的検討を行った.胃に認められる悪性リンパ腫のうち, 胃とその所属リンパ節にのみ, 病変が限局しているものを胃原発性とし, 他は全身性悪性リンパ腫とした.95例のうち胃原発性は77例, 全身性が18例であった.術前の正診率は最近10年間では, 93.9%であった.肉眼型では, 原発性, 全身性ともに決潰型が最も多かった.また全身性では表層型は認められなかった.リンパ節転移率はsmで27.3%と胃癌 (21.1%) に比べて高い反面, pm以深では胃癌に比べて低かった.治療成績をみると5年生存率は, Ann Arbor Stage IEで87.0%, IIE 50.0%, III 21.4%, IV 0%であった.治療にあたっては, 原発巣の除去および所属リンパ節郭清と化学療法を加えた, 集学的治療が必要と考えられた.
  • 関原 正
    1992 年 25 巻 4 号 p. 992-999
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    健常者50例と胃癌患者50例に対し, in vitroで標識したBrdUを酵素抗体間接法にて検出した.健常者例における組織別LIは, 萎縮性胃炎11.5±5.3%, 表層性胃炎7.2±3.1%, 正常胃粘膜5.3±1.0%であり, 領域別でみると, A領域での萎縮性胃炎が最も高値を示した.胃癌症例の癌部平均標識率は17.8±5, 8%, 非癌粘膜部7.2±3.4%, 癌の進行度, リンパ節転移度, リンパ管侵襲, 深達度と相関が認められた.
    BrdU陽性細胞の染色様式別出現率は, 健常者では有意差を認めなかったが, 胃癌症例は顆粒型35.4%, びまん型41.2%, 辺縁型23.4%であり, 進行度別でみると, stage Iでは3型ともほぼ均等に分布しているのに対し, stage IIでは顆粒型, stage III, IVではびまん型の出現率が増加していた.以上のことより, 術前のBrdUを用いた免疫組織化学的方法によるS期の識別は, より詳細な胃癌の進行度の予測ならびに手術方針の決定に対して有用な診断法の1つとなりうることを示唆している.
  • 加藤 誠, 高橋 滋, 井川 理, 藤井 宏二, 泉 浩, 竹中 温, 徳田 一, 沢井 清司, 岡野 晋治, 谷口 弘毅, 高橋 俊雄
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1000-1006
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術前に血管造影を行った残胃の癌20例を対象として残胃の癌のリンパ節転移経路を検討した.1) 初回手術時左胃動脈を温存した症例では, 残胃の血行動態は初回手術前の胃上部の血行動態とほとんど同じで, 左胃動脈が血液供給の主役であり, 残胃の癌も左胃動脈が栄養動脈の主役であった.これに対し初回手術時左胃動脈が切離された症例では, 残胃の血流は後胃動脈, 左胃大網動脈および左下横隔動脈などにより保たれており, 残胃の癌もこれらの動脈が栄養動脈になっていた.2) 初回手術時左胃動脈を温存した症例では, 左胃動脈に沿って逆行し, 左胃動脈幹リンパ節に至る経路が主流であると考えられた.3) 初回手術時左胃動脈を切離した症例では脾動脈経路のリンバ流が重要である.4) 左下横隔動脈が栄養動脈の場合に縦隔内へのリンパ流, 空腸動脈が栄養動脈の場合に腸間膜動脈根部へのリンパ流も重要である.
  • 中郡 聡夫, 浅野 武秀, 剣持 敬, 後藤 剛貞, 榎本 和夫, 坂本 薫, 磯野 可一
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1007-1011
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    教室で施行した4例の残肝の肝動脈切離を伴う肝切除術の予後は, 肝不全死2例, 入院死亡1例と不良であった.そこで残肝肝動脈切離を伴う肝切除術に対するartificial arterio-portal (A-P) shuntの効果を実験的に検討した.control群 (肝切除+肝動脈切離) とA・P群 (肝切除+肝動脈切離+A-P shunt) を比較すると, 組織酸素班はまcontrol群 (n=4) 54.0±14.2mmHgに対しA-P群 (n-4) 65.3±14.8mmHgと有意に (p<0.006) 上昇し, 門脈圧はcontrol群 (n=5) 12.3±1.6cmH20に対しA・P群 (n=6) 16.2±2.4cmH2Oと軽度上昇した.control群 (n=7) 及びA-P群 (n=10) の術後肝機能は, 第1病日のGOTがcontrol群1,467±687U/L, A-P群877±446U/L, 第1病日, 第3病日のhepaplastin testはcontrol群39.9±19.8%, 29.0±4.3%に対しA-P群では55.6±20.1%, 82.0±47.3%とA-P群の肝障害は軽度であった.術後生存率もA-P群で改善を認めた.肝切除術において肝動脈再建が不可能な場合, A-P shuntは試みてよい術式と考えられた.
  • 伊賀 芳朗
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1012-1019
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸のnatural killer (NK) 活性に及ぼす影響とその要因について検討した.7例の閉塞性黄疸症例において4種の胆汁酸すなわちglycocholicacid (GCA), taurocholic acid (TCA), glycochenodeoxycholic acid (GCDCA), taurocheno-deoxycholic acid (TCDCA) は, 著明な高値を示した.閉塞性黄疸症例のNK活性 (12.2±2.8%) はコントロール (43.9±6.7%) に比べ低値を示したが, 減黄後には改善傾向を認めた.6例の黄痘血清で7日間, in vitroにおいて前培養処理した健常人のリンパ球NK活性は顕著に抑制された (4.9±5.6%).抱合型ピリルビン, TCA, TCDCAおよびGCAによる前培養処理では7日目まで影響を認めなかった.GCDCAでは5日目以降 (5日目; 5.6±2.6%, 7日目;4.3±3.5%) に有意の低下を認めた (p<0.01).以上より閉塞性黄疸血清がヒトNK活性を抑制することが明らかとなり, GCDCAが重要な抑制因子の1つであることが示された.
  • 特に1年以上生存13例の検討
    岡本 篤武, 鶴田 耕二, 田中 良明, 小野寺 時夫
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1020-1026
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    遠隔転移のない切除不能の進行膵癌46例に対し術中照射療法を行い, 30例に主に原体照射法による術後外部照射を追加した.外部照射併用30例中13例が1年以上生存 (最長生存20か月, 2例), 1年生存率は46.4% (median survival 11か月) であった.これに対し術中照射単独16例には1年生存はなくmedian survivalは6.2か月であった.両群間で生存率に有意差を認めた (p<0.01).1年以上生存した7例の剖検所見の特徴は, 肉眼的には腫瘍の著明な縮小であり, 組織学的には腫瘍の硝子化と線維化およびその内部に存在する変性や壊死に陥った癌細胞であったが, 腫瘍は周辺から後腹膜組織, 周囲臓器へとscirrhousに浸潤する傾向にあった.また術中照射は治療前に癖痛を訴えていた28例の内16例 (57%) に落痛の消失をもたらし, 1年以上の延命とquality of lifeの向上に寄与した.
  • 塩見 正哉, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 久世 真悟, 真弓 俊彦, 近藤 真治, 新美 教弘, 青野 景也, 新井 利幸 ...
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1027-1035
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    小腸平滑筋肉腫はまれな疾患であり, リンパ節郭清を含めた手術術式の選択, 組織学的悪性度などに関して現在も問題を残しており, これらの問題に対して検討を加えた.対象は大垣市民病院外科で経験した小腸平滑筋肉腫16例 (男性11例, 女性5例) で平均年齢は56.1歳であった.腹痛, 腹部腫瘤触知, 食欲不振などの非特異的症状が多く認められ, 術前に確定診断できたのは43.8%であった.われわれは小腸のリンパ節を大腸癌取扱い規約に準じて規定しており, R06例, R13例, R26例, R31例を施行したが, R2以上郭清7例中2例に組織学的に1群リンパ節への転移を認めたことなどから, 小腸平滑筋肉腫の手術においてはR2以上の郭清が望ましいと考えられた.腫瘍悪性度判定因子としてはmitotic figure, 腫瘍最大径が有用と考えられた.
  • 牛谷 義秀, 望月 英隆, 玉熊 正悦
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1036-1040
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する適切な術式選択のためにはリンパ節転移の正確な診断が重要である.今回, オリーブオイルエマルジョン注腸 (emulsified olive oil enema: OE) 併用経肛門的超音波検査法を直腸癌66例に施行し, 労直腸リンパ節転移診断能改善への有効性につき検討した.その結果, OE併用法では労直腸リンパ節の描出率は73%, 描出個数は1.3個/症例であり, リンパ節転移診断能においてもaccuracy 88%, sensitivity 92%となり, OEを用いない従来法の描出率39%, 描出個数0.4個/症例, accuracy 70%, sensitivity 60%と比較していずれも著しく改善された.また従来法では描出されずOE併用法によりはじめてリンパ節が描出された21例中, 10例48%で組織学的にリンパ節転移が確認された.逆に, OE併用法でも描出されなかった18症例では, 組織学的にも全例転移陰性であった.以上から, OE併用法により労直腸リンパ節転移診断能に著明な向上が認められた.
  • 安田 聖栄, 野登 隆, 池田 正見, 向井 正哉, 堀江 修, 石田 秀樹, 久保 博嗣, 田島 知郎, 三富 利夫
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1041-1046
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    結腸人工肛門の閉鎖術を施行した50例中17例 (34%) に術後合併症が認められた.発生件数は23件で, 種類は吻合部狭窄 (10%), 創感染 (8%), 腸閉塞 (6%), 腹壁瘢痕ヘルニア (4%), 縫合不全 (2%), 縫合糸膿瘍 (16%) であった.このうち5例 (10%) では手術的治療を要した.各因子の検討では, loop colostomyで合併症頻度が低率であった (p<0.05).原因疾患, 人工肛門の部位, 閉鎖術までの期間, 術前腸管処置, 腸切除の有無は合併症発生と関連が認められなかった.人工肛門閉鎖術に適切な時期に関しては議論が一定していないが, 症例によっては造設後3か月以内の早期でも, 安全に施行可能と考えられた.合併症防止には, 発生しうる合併症を念頭においた注意深い手術操作が重要と考えられた.
  • 林 達彦, 村山 裕一, 清水 春夫, 吉田 奎介
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1047-1051
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節転移巣切除9年後, S状結腸病変切除2年1か月後に口蓋底原発巣が発見され, 共に切除可能であった悪性黒色腫の1例を経験した.症例は83歳, 男性.74歳時に, 左頸部リンパ節摘出術の既往がある.1989年1月 (81歳), S状結腸悪性黒色腫に対し, S状結腸切除術施行.この際, 前述の左頸部リンパ節も悪性黒色腫の転移であることが確認された.1989年10月, 悪性黒色腫頸部リンパ節転移再発, 甲状腺癌髄様型にて左半甲状腺切除術, リンパ節郭清術施行.1990年6月, 口蓋底左側に悪性黒色腫原発巣を認め, 口蓋底部分切除術施行, 以後外来にて経過観察中であるが, 現在まで再発の兆候は認められておらず, 悪性黒色腫の消化管転移例としては良好な経過をとっており, 本例に対しては外科的治療が有効であったと考えられる.本邦での悪性黒色腫消化管転移切除例の7例ではいずれも症状の改善を見ており, 単発転移例では手術適応があると思われる.
  • 阿部 元, 沖野 功次, 迫 裕孝, 石橋 治昭, 寺田 信國, 柴田 純祐, 小玉 正智, 中根 佳宏
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1052-1055
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道粘膜下組織にまで浸潤していたために, 食道全摘を行い胃管にて再建した再発性甲状腺癌の1例を経験したので報告する.症例は33歳男性であった.1985年に甲状腺癌にて左葉部分切除を受けており, 今回頸部腫瘤を主訴として来院した.頸部超音波検査およびcomputed tomography, magneticresonance imazingにて食道浸潤が疑われる再発性甲状腺癌と診断された.手術所見では, 頸部食道に5cmにわたって直接浸潤している甲状腺左葉発生の乳頭癌を認め, 頸部食道を合併切除した.遊離空腸で再建しようとしたが, 吻合すべき血管が得られず, やむなく食道全摘を施行し, 有茎胃管による再建を行った.
    分化型甲状腺癌は比較的予後良好であるが, 周囲組織に浸潤している場合には, 積極的に合併切除すべきと考えられた.
  • 中村 真之, 村上 卓夫, 丹黒 章, 林 弘人, 内迫 博幸, 草薙 洋, 鈴木 敞
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1056-1060
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    われわれは胸部食道癌切除後6年3か月経過して発見された遺残食道再発と思われる1例を経験したので報告する.症例は52歳男性で, 6年3か月前に当科にて胸部食道癌に対して右開胸.開腹胸部食道全摘, 胸壁前食道胃吻合を施行されている.術後経過は良好であり, 近医にて経過観察されていたが, 再び嚥下困難が生じるようになった.上部消化管造影および内視鏡検査にて吻合部付近の狭窄が指摘され, 精査目的で当科再入院となった.前回の摘出標本の病理組織学的検討より遺残食道再発と思われた.頸部食道切除および胃管上部部分切除, 両側頸部郭清を行い, 手術用顕微鏡を用いた血管吻合法を併用して遊離空腸を用いて再建した.術後経過は良好で, 再手術後4年経過したが再発の兆候を認めていない.
  • 清水 秀昭, 尾形 佳郎, 遠山 邦宏, 尾沢 厳, 稲田 高男, 松井 淳一, 菱沼 正一, 固武 健二郎, 小山 靖夫
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1061-1065
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.1990年6月集団検診にて食道の異常を指摘され当院を受診.食道造影で胸部上部食道に20×16×10mm大の隆起性病変を認め, 内視鏡で表面にびらんを伴う表在隆起型食道癌と診断した.腫瘤表面よりの生検では扁平上皮癌が得られた.治療は放射線照射50Gyと5-Fu 1,000mg/m2/dayおよびシスプラチン25mg/m2/dayをともに5日間持続静注による化学療法2コース施行した.治癌効果判定で腫瘍の縮小が認められなかったため1991年3月7日手術を施行した.病理組織学的には隆起性病変は正常食道粘膜に覆われており, 腫瘍は粘膜筋板より発生した平滑筋腫であった.腫瘍の表面上皮には生検材料で見られた癌細胞は認められなかった.平滑筋腫を覆う上皮に一致して癌が併存していたが, 放射線化学療法により癌は消失し, 平滑筋腫のみ残存したものと考える.
  • 加藤 一哉, 小野寺 一彦, 草野 満夫, 松田 年, 西田 靖仙, 水戸 廸郎
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1066-1070
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋肉腫の発生頻度は, 胃悪性腫瘍の1~3%とされまれな疾患である.今回われわれは胃壁外に巨大嚢胞性増殖を呈しかつ血清ferritin値が高値を示し, 他の腹腔内嚢胞性病変と鑑別が困難であった症例を経験したので報告する.症例は, 38歳男性で主訴は上腹部腫瘤, 理学的所見では, 25cm×15cmの表面平滑な波動を有する腫瘤を触知した.胃X線造影, 胃内視鏡検査にて胃体上部に中心性陥凹を有する粘膜下腫瘤を認め, 腹部CT, 超音波検査で隔壁を有する巨大嚢胞として描出された.選択的左胃動脈造影では, 胃体上部の胃粘膜下腫瘍に一致して腫瘍血管の増生を認めた.また血液検査では, 血清ferritin値が307ng/mlと高値を示した.以上より, 胃壁外に嚢胞状増殖をした胃粘膜下腫瘍と診断し手術を施行した.病理学的検査では悪性度の高い平滑筋肉腫と診断され, 胃外発育部分 (嚢胞) に連続性を有し, 中心性壊死により巨大嚢胞を形成したと考えられた.
  • 金子 徹也, 栗栖 泰郎, 田路 了, 和又 利也, 平岡 裕, 宮野 陽介, 岩井 宣健, 谷 尚, 倉吉 和夫
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1071-1075
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    切除胃の顕微鏡的嚢胞には遭遇する機会が多いが, 外科的に問題となる胃嚢胞症例は少ない.われわれは, 血清および穿刺液のelastase-1が高値を示し, 膵腫瘍との鑑別に難渋した噴門部巨大胃嚢胞を経験した.82歳の男性.右外鼠径ヘルニアにて入院中, 腹部超音波検査で胃嚢胞の診断をえたが, 次第に増大したため精査となった.胃X線検査, 超音波断層検査, Computed tomography検査で胃嚢胞の診断, 膵腫瘍も疑って開腹し, 胃噴門部の巨大嚢胞と診断し胃全摘術を施行した, 切除標本では嚢胞は90×80×64mmで, 割面は単胞性の嚢胞で内容は血性であった.病理学的には仮性嚢胞であったが, 粘膜下層に異所腺嚢胞やリンパ管嚢胞の所見が認められ, 巨大胃嚢胞との組織発生学的関連性が示唆された.2次性嚢胞を示す悪性腫瘍の報告もあり, その診断, 治療には注意を要する.
  • 鈴木 偉一, 斉藤 真悟, 岩川 和秀, 河田 直海, 篠原 洋伸, 船津 隆, 小林 展章
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1076-1080
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肉眼的には3型で, S2, N3, P0, H3であった進行胃癌の60歳の男性に対し, 原発巣切除のみを行い閉腹時mitomycin C (MMC), OK-432を腹腔内投与し術後MMC静注, OK-432皮内注, レンチナン点滴静注を施行した.術前に造影computed tomography (CT) で肝転移と思われた肝両葉のlow density areaは, 術後4か月後のCTで画像上認められなくなった.患者はその後2年5か月経過した現在もクレスチンの内服のみで元気に外来通院しており, 再発の兆候は全く認めていない.本邦におけるH3胃癌症例で2年以上の長期生存例は, われわれが検索した範囲内では自験例を含めてわずかに6例の報告をみるのみであった.術後経過より免疫化学療法が著効したと思われる.
  • 松下 耕太郎, 山本 眞也, 岡田 節雄, 篠原 篤, 田中 聰
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1081-1084
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    35歳男性のDyskeratosis congenita患者に発生した胃癌を経験した.
    Dyskeratosis congenitaは, 網状皮膚色素沈着, 爪甲異形成, 粘膜白板症を3主徴とするまれな先天性の外胚葉発育異常症であり, Zinsser-Cole-Engman syndromeともいわれる.予後不良疾患で, 50歳以上の延命は少なく, 粘膜白板症の癌化と再生不良性貧血による感染症が, 予後決定因子であるといわれている.
    症例の主訴は食思不振と体重減少で, 上部済化管X線検査と内視鏡検査で胃癌と診断し, 胃切除術を施行した.肝浸潤と腹膜播種を伴う胃前庭部中心のBorrmann 3型の管状腺癌であり, 粘膜白板は存在しなかった.
    Dyskeratosis congenitaでは, 粘膜白板症という前癌状態からの発癌とは別に, 消化管腺癌の若年期発生が高率であることが推測されるので, 本症患者の経過観察に際しては, この点に特に留意する必要があろう.
  • 井上 慎吾, 国友 和善, 鈴木 哲也, 三浦 和夫, 板倉 淳, 松本 由朗
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1085-1089
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性で, 右季肋部痛を主訴とし, 腹部超音波検査にて胆嚢, 肝内結石症を指摘された. ERCPでは肝外側区域胆管に狭窄を伴わない限局性の紡錐状拡張を認めた.胆摘, 肝外側区域切除術を施行した.摘出標本で, 胆嚢内には黒色で割面が無構造な小結石を認めた.肝臓には萎縮はなく, 拡張胆管内に黒色泥状の結石が充満し, 組織学的には軽度の胆管壁の肥厚を認めるのみで, 慢性増殖性胆管炎の像を認めなかった.結石分析の結果では胆嚢結石は炭酸カルシウム, ビリルビンカルシウム, リン酸カルシウムを含有し黒色石と診断した.肝内結石はコレステロールのみを含有しており純コレステロール結石と診断した.両結石形成の機序およびその関連性については不明であるが, われわれの文献検索の範囲内ではこのような症例は見られず, きわめてまれな1例と考えられる.
  • 前場 隆志, 田中 聰, 脇 正志, 近石 恵三, 大森 吾朗, 若林 久男, 岡田 節雄, 赤井 護, 吉田 勇人
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1090-1094
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    下大静脈および門脈本幹, 左右門脈枝に腫瘍塞栓を合併した肝細胞癌の1例に対し, Bio-Pumpを用いた体外循環下に, 肝右葉切除と下大静脈部分切除, 門脈部分切除による腫瘍塞栓除去術を施行した. 下大静脈内腫瘍塞栓は短肝静脈より進展したもので, 肝静脈流入部以下で血流遮断が可能であったため, 単純遮断法でも切除可能と考えられたが, 腫瘍塞栓の血管壁浸潤の十分なる観察と下大静脈再建の時間的余裕を考慮して, 安全な手術補助手段を併用した.
    術後経過は良好であったが, 4か月目に再発をきたして死亡した.剖検では残肝内に多発性の再発病巣が確認されたが, 遠隔転移は認められなかった.このような高度の腫瘍塞栓合併例には術後早期の積極的な肝動脈塞栓術や化学療法の併用が必須であると考えられた.
  • 久保 正二, 木下 博明, 広橋 一裕, 岩佐 隆太郎, 藤尾 長久, 田中 宏, 塚本 忠司, 堀井 勝彦, 半羽 宏之
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1095-1099
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌と肝細胞癌 (肝癌) の同時性および異時性重複癌 (本症) おのおの1例を経験した.症例1は体重減少を主訴とする67歳, 女性.Carcinoembryonic antigenとα-fetoprotein値の上昇, 超音波検査, computed tomography, 血管造影により肝癌が, 注腸と大腸内視鏡により上行結腸癌が認められ, 同時性重複癌と診断された.肝硬変症併存のため右半結腸切除と肝外側区域切除が1期的に行われたが, 術1年8か月後に肝癌再発のため死亡した.症例2はS状結腸癌切除後の54歳, 男性.超音波検査により肝腫瘍が発見され, 血管造影, 吸引細胞診により肝癌と診断, 右2区域切除が行われた. 本症の発見には腫瘍マーカーの測定や超音波検査が, その診断には生検や細胞診と血管造影が有用である.本症の予後は肝癌の進行度や併存する肝疾患の重症度に規定されることから, それらを中心に手術適応と術式を決めれば1期的切除でも安全に施行できると考えられた.
  • 大滝 修司, 山川 達郎, 三芳 端, 飯泉 成司, 岸 いずみ, 稲葉 午朗
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1100-1104
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆汁性仮性嚢胞 (biloma) は, 肝あるいは胆道系の外傷や手術後合併症として, また経皮経肝胆道造影やドレナージなどによって, 胆汁が肝被膜下などに被覆された状態で流出し形成された2次的嚢胞であり, 1979年にGouldらにより初めて記載された.しかしながら, このような既往なしに発症することもまれながら報告されている.われわれは胆嚢炎の穿通が原因となったbilomaを3例経験した.1例は手術までの比較的短期間にbilomaが消失した興味ある症例であり, また他の1例は手術前にbilomaをドレナージしたが, 症状は軽快せず手術にて完治した症例であった.残る1例は原因となった胆嚢を穿刺ドレナージすることでbilomaが消失した症例である.これら3例の経験から, 胆嚢炎の消退により流出した胆汁 (biloma) は, 胆嚢に還流することで自然消失することが示唆され, 胆嚢炎が原因となったbilomaは, まず胆嚢炎に対する何らかのアブローチが大切であると考えられた.
  • 広岡 保明, 浜副 隆一, 狩野 卓夫, 日野原 徹, 山代 昇
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1105-1108
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術前の穿刺吸引細胞診で腺癌と診断され, 根治手術が施行された早期胆嚢癌の1例を報告した.症例は49歳, 姓.糖尿病の治療目的で入院中, 超音波検査にて胆嚢内酌18mm大の隆起性病変が認められたため, 超音波誘導下穿刺吸引細胞診を施行したところ, 腺癌の診断が得られた.Endoscopicretrograde cholangio-pancreatography (ERCP) では総胆管拡張のみられない膵管胆管合流異常症が認められた.手術は胆嚢摘出術に肝床切除および所属リンパ節郭清が施行された.腫瘍は組織学的に粘膜内に限局した乳頭腺癌で, リンパ節転移は認められなかった.
  • 田中 信孝, 登 政和, 柚本 俊一, 森 潔, 出口 順夫, 岡本 宏之, 松本 順, 中島 透
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1109-1113
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    いわゆる早期胆管癌を合併した先天性胆道拡張症 (CBD) の1例を経験した.症例は57歳, 女性で上腹部痛を主訴として来院.10年来, 当院内科にて膵管胆管合流異常を伴う総胆管嚢腫の診断のもと経過観察していたが, 腹部超音波検査, 逆行性膵管胆管造影などで嚢腫内に腫瘤陰影を認めたため, 総胆管癌を合併せるCBDの診断のもと手術施行した, 術中診断では腫瘤を認めず, 迅速病理検査でも良性と判断されたため, 嚢腫切除にとどめた.切除標本の病理組織検査ではfmまでの浸潤を示す高分化型管状腺癌の微小病変を2か所に認めた.患者は術後1年2か月の現在再発の徴候なく健在である.
    本邦での早期胆管癌合併CBD手術例の報告は本例を含めいまだ24例であるが, 症例をさらに積み重ね長期予後を検討することで, 適切な術式の選択が可能となるものと考えられた.
  • 杉浦 勇人, 末永 昌宏, 岡田 喜克, 国場 良和, 上原 伸一, 大輪 芳裕
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1114-1117
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    浸潤型下部胆管癌で, 膵頭十二指腸切除術 (pancreatoduodenectomy, 以下PD) 後3年目に残存膵全摘, 脾合併切除術にて再切除可能であった症例を経験した.
    症例は60歳男性で, 下部胆管癌の診断にてPD施行後3年目に全身倦怠感, 体重減少にて入院した.精査の結果胆管癌の再発で, 画像診断では再切除可能と判断し, 残存膵, 脾合併切除にて再切除した.
    術後の検索にて今回の再発は, 初回手術時切除範囲が不十分であり, 残存膵に残った癌細胞が3年の間に発育したものと判断された.術後経過は良好で, 術前高値であったcarcino-embryonic-antigen (CEA) も術後正常となった.しかし, 6か月目に局所再発し, 再手術後7か月で癌性腹膜炎にて死亡した.
  • 村田 裕彦, 柴田 俊輔, 菅沢 章, 村田 陽子, 前田 迪郎, 清水 法男
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1118-1122
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は78歳, 男性.約2週間来の間欠的腹痛と胆汁性嘔吐を主訴に来院.注腸造影で盲腸・上行結腸の内上方偏位と横行結腸の壁外性狭窄を, 上部消化管造影で十二指腸空腸移行部の右側偏位と壁外性閉塞を認め, 腸管逆回転症を疑い手術を行った.Amir-Jahed III型の逆回転症で, 十二指腸空腸移行部周囲の異常癒着の瘢痕性変化により閉塞を来していた.軸捻転はなく, 癒着を剥離し腸管を無回転の位置とするLadd手術を行った.
    腸管逆回転症本邦報告35例中成人例は13例, 手術施行31例中術前診断が得られていたのは7例のみであった.最近の報告例ではほとんどLadd手術が行われていた.本症はまれな疾患であるが, 注腸および上部消化管造影所見は特徴的であり, 反復する腸閉塞症状を有し開腹歴のない患者では本症を念頭におき検索を進めることが早期診断および術中の正しい解剖学的理解と適切な処置につながるものと考えられた.
  • 田中 雄二, 村上 勝, 大石 俊明, 岸本 肇
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1123-1126
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    78歳の男性に発症した, 穿孔性腹膜炎を来したCrohn病の1例を報告する.
    症例は腹痛を主訴に当院内科入院中, 発熱と腹腔内遊離ガスが認められ緊急手術を施行された.開腹時, 混濁した腹水を多量に認め, 明らかな穿孔部位はなかったが回盲部から約80cmの回腸に, およそ20cmにわたり周囲と癒着し腸管壁が肥厚した個所が存在した.黄色のフィブリン膜が付着し明らかに炎症所見をともなっており, 腹腔内洗浄ドレナージに加え小腸部分切除術が施行された.切除標本では縦走潰瘍が散在し, 病理学的に小腸Crohn病と診断された.
    60歳以上の高齢者Crohn病の頻度は少なく, 穿孔で発症する例もまれである.小腸のみの高齢者Crohn病の予後は比較的良好であるといわれ, 本症例も術後2年を過ぎる現在, 再発の徴候なく外来通院中である.
  • 齋藤 盛夫, 御供 陽二
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1127-1130
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアは, 比較的まれな疾患で, 術前診断率も低い.
    今回われわれはcomputed tomography (以下CT) により術前に診断しえた閉鎖孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.
    症例は80歳, 女性で, 腹痛, 嘔吐, 右大腿部痛を訴えて来院.閉鎖孔ヘルニアを疑い, 骨盤部CTを行ったところ, 右閉鎖孔部に一致して腫瘤像を認めたので閉鎖孔ヘルニアと確定し, 根治手術を施行した.
    原因不明の高齢なイレウス患者に対して本症を疑った場合には, 早期診断にきわめて有用なCT検査を積極的に行うべきである.
  • 宮本 勝也, 横山 隆, 児玉 節, 竹末 芳生, 沖田 光昭, 中光 篤志, 村上 義昭, 今村 祐司, 山東 敬弘, 津村 裕昭, 平田 ...
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1131-1135
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    虚血性大腸炎に合併したサイトメガロウイルス感染 (以下CMID) を経験したので報告する.症例は65歳の女性.主訴は下血.注腸造影にて虚血性大腸炎と診断し, 保存的治療を施行したが, 狭窄が改善せず大腸切除術を施行した.摘出標本にて粘膜固有層の血管内皮周囲に封入体を認め, CMIDと診断した.CMID消化管感染症の原因として, 封入体による血行障害説が提唱されているが, 本例では粘膜の虚血性変化の広がりに対して, 封入体の数がきわめて少ないため, 虚血性大腸炎に2次的にサイトメガロウイルスが感染したと考えた.CMID消化管感染の本邦報告例51例を集計したところ, 本症のほとんどは免疫不全状態にともなって全身性に発症し, 剖検により診断される症例が多く認められた.本例は誘因となるような基礎疾患を持たない局所性CMIDで, 虚血性腸炎に合併したCMIDとしては, 本邦初報告例である.
  • 朝蔭 直樹, 冨木 裕一, 林田 康隆, 榊原 宣, 平井 周
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1136-1140
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は90歳, 女性.第1癌は上行結腸癌で2型の粘液癌, 1978年に右半結腸切除術施行.第2, 3癌は直腸癌で, 第2癌はRbの2型の高分化腺癌, 第3癌はRsのIsp型のcarcinoma in adenoma, 1984年に低位前方切除術施行.第4癌はIIc型早期胃癌で高分化型管状腺癌.1986年より現在 (1991年4月) まで経過観察中.第5癌は横行結腸癌で2型の高分化腺癌, 1989年に横行結腸部分切除術施行.
    原発性多重複癌の症例は診断技術の進歩, 治療成績の向上, 平均寿命の延長などにともない増加傾向を示している.今回16年間にわたり上行結腸癌・直腸癌・横行結腸癌の手術が施行され, 現在早期胃癌にて経過観察中の異時性消化管多重複癌の症例を経験した.大腸4多発癌と異時性胃重複癌の報告はきわめてまれであるので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 神津 照雄, 小出 義雄, 有馬 美和子, 菱川 悦男, 大島 郁也, 唐司 則之, 菊池 俊之, 磯野 可一
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1141-1144
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    早期食道癌が内視鏡治療の対象となり, また高齢者の食道癌切除例の増加している今日, 術式決定の観点から癌深達度および転移リンパ節診断は100%に近い成績が期待されている.粘膜下層までの癌浸潤を示す表在癌の新しい内視鏡型分類からの深達度診断の予測成績は82.7%であった.リンパ節転移診断に関しては, 現在のところ超音波内視鏡が最も高成績の成績を与えてくれる検査法である.以上の術前診断の結果から, ep~mm1の小病変では内視鏡的粘膜切除, 広範囲病巣ではレーザー光化学療法か非開胸食道抜去を選択する.mm2~sm1の症例では開胸食道切除を行い, 食道抜去を行う場合には, 術前に指摘された腫大リンパ節には放射線療法を加える.sm2~a2の症例では開胸食道切除と重点的な拡大リンパ節郭清を行う.a3の範囲が小範囲の場合には可及的に開胸手術を選択するが, 他臓器浸潤が広範囲の場合にはバイパス術か食道内へのindwelling tube挿入を選択する.
  • 松原 敏樹, 奥村 栄, 植田 守, 太田 淳, 西 満正
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1145-1150
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌切除198例についてリンパ節転移の術前評価と病理所見, 手術成績との関係を調べた, 術前評価は (-),(±),(+),(++) の4段階で評価した.
    1.画像診断上異常所見を呈しない微小転移がまれではなく, 転移診断のsensitivityには限界があった.それでも, 気管周囲, 胃上部のsensitivityは中下縦隔にくらべて良好であった.これらのリンパ節はpoor risk例で縮小手術の適応を検討する上で重要である.2.転移診断のspecificityは良好で,(+) 以上を陽性とすると95%以上であった.3.右反回神経沿線や胃上部が (+) の例や左傍気管 (±) 以上の例は他と比べて手術成績が有意に不良であった.また, 胃上部 (++) では腹部傍大動脈再発が高率であった.これらの例ではそれぞれ胸骨切開による頸胸境界部郭清や腹部左傍大動脈郭清が望ましい.4.転移陽性例の手術成績は術前評価 (++) 例を除いて術前評価との関連はみられなかった.
  • 沢井 清司, 高橋 俊雄, 谷口 弘毅, 岡野 晋治, 徳田 一, 高橋 滋
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1151-1155
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌735例に対する血管造影診断の意義について検討し下記の結果を得た.(1) 腹膜転移診断能はsensitivity 75.4% (86/114), accuracy 93.2% (685/735) で他の画像診断より優れていた.(2) 肝転移診断能はsensitivity 80.6% (50/62), accuracy 97.6% (717/735) で, 他の画像診断と同程度であった.(3) 壁深達度診断はm・sm, pm, ss・se, si・seiの4段階診断を行い80.2% (486/606) の正診率であった.(4) 深達度診断結果からリンパ節郭清の範囲をm・smにはR2, pmにはR3, ss~seiにはNo.16を含む広範囲郭清と決定しえた.(5) 栄養動脈を判定してリンパ節転移との関係を検討した結果, 判定不能例にはR1郭清, 左下横隔動脈, 左胃動脈, 左胃大網動脈, 短胃動脈および後胃動脈のみによって栄養される症例にはR2郭清, 右胃動脈, 右胃大網動脈および幽門枝動脈のみによって栄養される症例にはR3郭清, 左右両方の動脈から栄養される症例にはNo.16を含む広範囲郭清が適応となった.
  • 山田 眞一, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 中田 英二, 北出 俊一, 小溝 芳美
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1156-1160
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌手術の合理化のための指標の1つとして, 術前画像診断によるリンパ節転移の診断能につき検討した.リンパ節転移形態は大結節型, 小結節型, びまん型, 微小型の4つに分類し, 過去6年間のR2以上の郭清を施行した515例を対象として臨床病理学的解析を行うとともに, 206例のECHO, CT, MRIによる画像診断のリンパ節転移の診断特性を求めた.結果リンパ節転移形態別出現頻度は, 大結節型27.0%, 小結節型16.9%, びまん型54.0%, 微小型2.1%でびまん型が多い.またリンパ節の長径は大結節型では転移陰性リンパ節より有意に大きかったが, 他の転移形態では有意差を認めなかった.画像診断によるリンパ節転移の正診率は, ECHO55.6%, CT72.5%, MRI68.6%で, リンパ節の転移形態別に大結節型で良好であった.また腹部大動脈周囲リンパ節の診断はMRIの冠状断像が有効であった.以上から大結節型転移形態のみが術前画像診断により転移経路を想定した術式選択が可能と考えられた.
  • 磯本 浩晴, 白水 和雄, 諸富 立寿, 山下 裕一, 掛川 暉夫
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1161-1165
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直腸癌の治療方針は, 根治性を追求するとともに排便, 排尿および生殖機能の温存に留意する必要がある.そのために術前診断への比重は手術術式の決定の上からも極めて大きいものがある.術式の決定における術前診断の要点は, 1) 腫瘍の局在と大きさ, 2) 壁深達度, 3) リンパ節転移の有無, 4) 腫瘍の肛門側進展距離と遠隔転移巣である.診断手段としては, 注腸造影検査, 超音波検査, CT, MRIなどが現在では利用されている.今回の検討結果から壁深達度判定に対する注腸造影検査の重要性を再認識するとともに早期癌やpm癌ではこれに加えて超音波検査で補完することで診断能が高くなり, 壁深達度aiの判定にはMRIで補うことが賢明と考えられた.また肛門側進展距離やリンパ節転移の予測にはわれわれがすでに行ってきた術前の生検所見からのlyやbuddingなどの判定が有用性に富むことを強調した.機能温存を選択するにはこれらの所見を総合的に判定することが重要である.
  • 肝細胞癌
    山崎 晋, 高山 忠利, 小菅 智男, 島田 和明, 山本 順司, 長谷川 博
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1166-1170
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の術式決定に関わる因子は多彩である.主たるものは肝機能の程度と癌の解剖学的進展の程度であるが前者が優先される.生化学検査による肝機能の評価は非癌部の病理学的変化と必ずしも平行しないので, 開腹後の肉眼的または組織学的観察を加味して最終決定する.癌の進行程度も術前の画像診断のみでは不十分で, 開腹後の術中超音波検査および生検所見を待って最終決定がなされる.われわれは生化学検査の5項目からなるrisk scoreを肝機能評価の一指針としているが, これですべての方針が決められる訳ではない.肝細胞癌に旺盛な経門脈性肝内血行性転移を考慮すると, 耐術する範囲で広範に切除すれば, より良い遠隔成績 (無再発生存率) が得られると期待される.しかし現在までに得られた成績は, この考え力を支持していない.肝機能を温存し集学的治療を駆使するという選択肢も有効である.
  • 切除標本との対比
    兼松 隆之, 松股 孝, 山懸 基維, 足立 英輔, 池田 泰治, 林 洋, 浦田 啓子, 杉町 圭蔵
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1171-1174
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    最近5年間の原発性肝細胞癌 (以下肝癌) 切除112例を対象とし, 切除標本からみた癌進展範囲に関する画像診断の限界について検討した.また, 肝癌の診断あるいは疑いが捨てきれず, 腫瘤を切除した症例で, 組織学的には癌ではなかった例についても併せ分析した.その結果,(1) 切除標本の肉眼所見からみた術前画像総合判定の正診率は78/112 (70%) であった.(2) 術前画像診断での総合判定以上の癌進展をみた症例は18/112 (16%), また, 逆に, 術前の “読みすぎ” (falsepositive) は16/112 (14%) であった.(3) 術前画像診断での判定以上の癌進展は肝内転移 (IM) 因子に多く, これが確診されたのは, 術中所見と標本の精査によるものが半々であった.(4) “読みすぎ” の手段としては血管造影が最多であった.(5) 肝癌の診断の下に切除を行い, 組織学的に肝癌ではなかった例は, 4.6%に相当した.
  • 田代 征記, 辻 龍也, 金光 敬一郎, 神本 行雄, 平岡 武久, 宮内 好正
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1175-1180
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆管癌切除85例を対象に術前診断からみた術式の選択を検討した.下部胆管癌の進展様式として胆管壁内浸潤が上方まで示すものがあった.n0例でもSMA周囲神経叢あるいは結合織内に癌浸潤を認めた.PD+10Rの予後はPDのみより良好であった.以上から左右肝管直下まで切除するPD+IORが選択されるべきである.中部胆管癌の進展様式として上方, 下方への胆管壁浸潤の他に, 解剖学的に門脈が浸潤されやすかった.胆管切除の8例が非治癒切除となり予後も悪かった.PD例で治癒切除は増加したが, 予後はそれほど上がっていない。以上から術式として左右肝管別々に切除するPDが必要で, ew (+) をなくすため積極的に血管合併切除し, 10Rを追加すべきである.肝門部胆管癌では尾状葉合併肝切除群の予後がよく, 解剖学的に右肝動脈が浸潤されやすく, 肝右側切除が2/3を占めた.以上から積極的に尾状葉合併肝切除を行い, 場合により血管合併切除して治癒切除に努めるべきである.
  • 真辺 忠夫, 大塩 学而, 戸部 隆吉
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1181-1185
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    遠隔転移のみられない膵癌において, 治癒切除を行うためには術前の画像診断, とくにCT, 血管造影所見から膵後面浸潤, 血管浸潤の程度を適格に把握する必要がある.上腸間膜動脈などの主要動脈浸潤がなけれぼ切除可能と判断されるが, その際は門脈系浸潤の有無を問わず, 膵に接する門脈系は周囲神経, リンバ組織を含む結合織とともに一塊として切除する拡大切除を行う.とくに血管周囲郭清は大動脈周囲, 上腸間膜動脈周囲を含め徹底して行い, 併せて局所再発遠隔転移に対する予防策が必要である.
  • 今泉 俊秀, 鈴木 衛, 中迫 利明, 松山 秀樹, 原田 信比古, 小松 永二, 木村 健, 羽鳥 隆, 広瀬 哲也, 新井 俊男, 羽生 ...
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1186-1189
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵頭部癌の術前進展度診断能, 治癒切除可能性から拡大手術の合理的な適応選択について検討した.対象はcomputed tomography, 血管造影が共に施行された通常型膵管癌75例である.膵癌取扱い規約による各進展因子の術前進展度正診率は, Aが92.0%と高く, PV, Rp, Plx, Sでは49.4%, 62.7%, 58.7%, 61.3%で, 浸潤のない例や高度進展例に比べ軽度進展例の診断は必ずしも容易ではなかった.治癒切除可能性は, A0で65.1%, PV0~2で46.4~86.4%, Rp0~2で50.0~100.0%, PlX0~2で45.8~91.7%であったが, A1~3, PV3, Rp3, PlX3では0~16.7%にすぎなかった. 局所高度進展例の術前診断は困難ではないが治癒切除の可能性は極めて低く, 拡大手術の適応外とすべきである. 軽度進展例の診断は必ずしも容易ではないが, 拡大手術で可及的に治癒切除を追求すべきである. 膵頭部癌のさらなる治療成績の向上のためには術前進展度診断に応じた合理的な適応選択が必要と考える.
  • 久保 正二, 木下 博明, 湯浅 勲, 大谷 周造, 森沢 成司, 溝口 靖紘, 大倉 靖史, 竹田 茂文, 油田 正樹
    1992 年 25 巻 4 号 p. 1190
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
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