目的:上部消化管術後のQOLを測定する尺度としてGastrointestinal Symptom Rating Scale(以下,GSRSと略記)がしばしば用いられている.今回,術後患者の評価尺度としてのGSRSの妥当性を検証した.
対象と方法:2012年6月から12月の期間,胃・食道術後患者を対象に横断的調査を行い,GSRSの各下位尺度得点(酸逆流,腹痛,消化不良,下痢,便秘)を評価した.併存的妥当性としてSF-12,known-groups妥当性として,術式,栄養学的指標,および上部消化管内視鏡検査との関連を評価した.
結果:対象は325例,年齢中央値66歳,施行術式は食道切除109,胃全摘89,胃切除124,胃部分切除5例であった(重複あり).GSRSの得点は全項目で分布が偏っており,強い床効果を認めた.SF-12のサマリースコアとGSRSの相関係数は,腹痛と精神的側面のQOLスコアにおいて0.314であったが,その他の組み合わせは0.3以下であり,相関関係が強いとはいえなかった.BMI 18未満の群では腹痛のスコアが有意に高値であったが,その他の指標(術式,血清アルブミン値,内視鏡所見)のいずれにおいても有意な関連は認めなかった.
まとめ:GSRSは上部消化管術後患者に対するQOL尺度としては計量心理学的妥当性が低く,臨床研究のアウトカムとしては不適切である.
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