日本消化器外科学会雑誌
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29 巻, 1 号
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  • 藤田 益嗣, 内藤 弘之, 寺田 信國, 小玉 正智, 伊東 恭悟
    1996 年 29 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Melanoma antigen (MAGE) gene familyは細胞障害性T細胞によって特異的に認識される腫瘍退縮抗原をコードする遺伝子ファミリーである. このMAGEを応用した癌特異免疫療法が将来有望視されている. 同ファミリーは, 正常組織では精巣・胎盤および創傷治癒過程の皮膚以外に発現がみられず, 組織型の異なる各種癌において高頻度に発現している. 臨床検体でのMAGE発現の検討は, 乳癌・肺癌・胃癌についてのみ報告されている. そこで食道癌について, われわれはMAGE genefamilyの発現を手術症例を用いて検討を行った. 食道癌15例中10例 (67%) に発現を認めた.MAGEを用いた癌免疫療法の対象として食道癌は有望であると考えられた.
  • No.1, No.3, No.4sb, No.5ならびにNo.7リンパ節郭清省略の適応
    鈴木 英登士, 赤石 節夫, 伊藤 卓, 馬場 俊明, 三上 光博, 佐々木 豊明, 三上 泰徳, 杉山 譲, 清野 景好, 遠藤 正章, ...
    1996 年 29 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃下部胃癌切除412例 (早期188, 進行224) および早期癌合計443例 (m231, sm212) を対象として, 下部早期癌に対するNo.1, 3, 4sb, 5およびNo.7リンパ節郭清省略の可能性について検討した. 下部胃癌のNo.1, 4sb転移25例はいずれもss以深, 5cm以上の症例であった. No.3, 5, 7転移はm癌および3cm未満の大彎病変では認められなかった. m癌全体の検討から, 転移5例はいずれもU1 (+) ・陥凹型で, 分化型唯一の転移例はIIc+III, tub2であった. sm癌では1.8cm未満の隆起型および1cm未満の癌腫では転移は認められなかった. 以上のことから, No.1, 4sb郭清省略の適応として, 5cm未満の隆起型, U1 (-) およびU1 (+) ・tub1のIIc型m癌, 1.8cm未満の隆起型, 1cm未満のsm癌が考慮された. さらに大彎病変では3cm未満のsm癌も対象となり, このうち同径の隆起型, U1 (-) およびU1 (+) ・tub1のIIc型m癌, 1cm未満のsm癌ではNo.3, No.5に加えNo.7郭清省略も可能である. いずれもA局在である.
  • 特に姑息的切除の臨床的意義と効果
    森脇 義弘, 山中 研, 小金井 一隆, 呉 宏幸, 工藤 琢也, 森田 修平
    1996 年 29 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去10年間に手術を行った浸潤性腹腔内再発胃癌23例, 大腸癌18例について臨床的に検討した.再発胃癌で腹膜播種がP2までの症例では, 退院可能例は治癒切除 (CUR) 群100%, 姑息的切除 (PAL) 群100%, 非切除 (UNR) 群40%, 平均生存期間は各731日, 468日, 174日, 再発大腸癌で腹膜播種がP1までの症例では退院可能例はCUR群100%, PAL群80%, UNR群67%, 平均生存期間は各1,087日, 443日, 306日とCUR群, PAL群で良好な傾向にあった. 腹膜播種がP3の再発胃癌, 腹膜播種がP2以上の再発大腸癌では, CUR群はなく, 退院可能例は再発胃癌PAL群, UNR群で各67%, 29%, 再発大腸癌で各75%, 33%とPAL群で良好ではあったが, 平均生存期間は再発胃癌, 大腸癌ともPAL群とUNR群で差はなかった. P2までの浸潤性腹腔内再発胃癌, P1までの再発大腸癌では, 姑息的切除となっても手術により生存期間が明らかに低下することはなく, 症状の改善が期待できれば, 積極的に切除を試みる意義があると思われた.
  • 大塚 雅昭, 石川 詔雄, 湯沢 賢治, 飯田 浩行, 近藤 匡, 足立 信也, 轟 健, 深尾 立, 田中 栄之介
    1996 年 29 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝移植に伴う肝阻血障害が移植肝ミクロソーム機能におよぼす影響について, タクロリムスとトリメタジオン (TMO) の薬物動態により検討した. 雑種成犬を用いた同所性全肝移植後第1日と第7日に, タクロリムスとTMOの薬物動態を調べ, 無処置犬を対照群として比較した. タクロリムスは0.3mg/kgを30分かけて静注し, 全血中濃度の変化を測定した. TMOは4mg/kgを急速静注し, 血清中のTMOとその代謝物であるジメタジオン (DMO) の変化を測定した. 両群とも薬物動態を調べる日以外はタクロリムス0.3mg/kg/日を経口的に投与した. TMOのクリアランスと投与2時間後の血清中DMO/TMO比は, 肝移植群で移植後第1日に低下していたが第7日には両群間に差を認めなかった. タクロリムスのクリアランス, 投与24時間後の血中濃度は移植後第1日, 第7日とも両群間に差を認めなかった. TMOの代謝はタクロリムスの代謝に比べて肝阻血による障害を強くうけることが示された.
  • 胆汁中ビリルビン亜分画分析とその意義
    石山 秀一, 布施 明, 田中 丈二, 浦山 雅弘, 五十嵐 幸夫, 須藤 幸一, 平井 一郎, 塚本 長
    1996 年 29 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝切除術後の黄疸の病態を解明するために胆汁中のビリルビン亜分画を高速液体クロマトグラフィー法にて分析した. 胆道癌切除21例のうち非肝切除8例を対照群, 肝切除例で術後2週後にも血清総ビリルビン値が2mg/dl以下にならなかった5例を黄疸群, その他8例を非黄疸群とした.胆汁は胆汁外瘻より経日的に採取した. 術後3群とも第1日目にbilirubin diglucuronide (BDG) が減少し, それに対応してbilirubin monoglucuronide monoglucosideおよびmonoxyloside (BGG+BGX) が増加した. この変化の大きさは対照群<非黄疸群<黄疸群で, 対照群, 非黄疸群では5~7日目にはほぼ術前値に復したが黄疸群では2週後にも有意の差を示した. 抱合酵素の異常あるいは基質の変化によって, BDGからより親水性の弱いBGG+BGXの割合が増加するために肝細胞膜からの分泌輸送が阻害され, 黄疸が遷延するものと考えられた. ビリルビン亜分画は肝切除術後黄疸の病態把握によい指標となりうると思われた.
  • 富田 凉一, 越永 従道, 阿部 義蔵, 丹正 勝久, 黒須 康彦
    1996 年 29 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆・膵疾患を有するjuxtapapillary duodenal diverticulum (JPD) 12例 (胆嚢結石症3例, 急性膵炎併発2例を含む胆嚢総胆管結石症7例, レンメル症候群2例) について, low compliance infused open tip法によるOddi括約筋内圧測定検査を, 内視鏡操作により行った. なお, 胆道・膵管系に形態学的異常を認めない胆嚢疾患22例 (胆嚢結石症14例, 胆嚢ポリープ8例) を対照とした. その結果, 基礎圧と収縮圧は, 対照例に比べJPD例が有意に低値を示した. また, 収縮運動は, 対照例に比較してJPD例で順行性 (総胆管からVater乳頭出口へ向かう収縮波) は有意に少なく, 逆行性 (Vater乳頭出口から総胆管へ向かう収縮波) は有意に多く認められた. すなわち, 胆・膵疾患を有するJPD例のOddi括約筋には機能不全が存在することが判った.
  • 柳川 憲一, 西野 裕二, 竹内 一浩, 澤田 隆吾, 康 純明, 金田 高次, 西村 重彦, 山田 靖哉, 繁澤 晃, 有本 裕一, 久保 ...
    1996 年 29 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵胆道癌に対し細径超音波プローベを用いて門脈内超音波検査 (intraportal ultrasonography: 以下, IPUS) を行い, 癌の門脈浸潤を中心とした進展度診断への応用を試みた. 対象は膵胆道癌22例で, 経皮経肝門脈造影時に細径超音波プローベを門脈内に誘導し観察した. IPUSでは門脈壁は一層の高エコー帯として描出されるが, 門脈浸潤度診断はその高エコー帯の状態を観察することにより行い, IPUSV0~V3に分類した. 手術時の肉眼所見PV0~PV3と対比したところ18例中17例に一致をみた. 組織学的には, 門脈合併切除症例8例中7例において正診を得た. 門脈内の実質像を2例経験し, 1例は腫瘍栓であったが1例は血栓であった. 以上より, IPUSは膵胆道癌の門脈浸潤度診断に有用であり, 浸潤の有無とともにその程度も正確に診断しえた. しかし門脈内の実質像に対しては診断困難な症例を経験し今後の検討が必要であると考えられた.
  • 岡野 圭一, 壷内 泰二郎, 前場 隆志, 前田 肇
    1996 年 29 巻 1 号 p. 44-52
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝膵同時切除が腸管吻合部の創傷治癒に及ぼす影響を検討する目的でラットを用い, 単開腹群 (control), 肝切除群 (Hx), 膵切除群 (Px), 肝膵同時切除群 (HPx) の4群を作成し, 各群に空腸吻合を加え, 吻合部の治癒過程およびその影響因子について検討を行った.その結果, HPx群において術後3, 7日目の吻合部抗張力低下と7日目のHydroxyproline量低下を認めた (p<0.05, vs control). 組織学的検討においても線維芽細胞の集積低下, 結合織増生の低下を認め, 創傷治癒の遅延傾向が示された. また, 血清総蛋白の著明な低下 (p<0.001) と早期の腸管吻合部への急性炎症細胞浸潤の抑制を認めた. 以上の結果から肝膵同時切除後には吻合部における早期の炎症反応が抑制され, さらに血清蛋白の低下という治癒阻害因子が加わることにより, 一連の創傷治癒過程が障害されていることが示唆された.
  • 小棚木 均, 吉岡 年明, 相沢 修, 斉藤 由理, 武藤 理, 小山 研二
    1996 年 29 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    進行大腸癌330例を対象に, 原発巣にどのような組織型が混在した場合にリンパ節転移頻度が高いのかを求め, また, 組織型個々のリンパ節転移頻度を原発巣でのその組織型の多寡に応じて求めることから, 組織型の混在がリンパ節転移頻度に及ぼす影響を解析した. 組織型の組み合わせ別リンパ節転移頻度は, 従組織型として低分化腺癌が混在した場合にのみ, 組織多様性のない癌より有意に高率だった (73%vs. 48%; p<0.05). しかし, 低分化腺癌や粘液癌が従組織型の場合, それら組織型をリンパ節内に認める頻度は23%, 16%と低く, 他の従組織型や主組織型を多く認めた. 従組織型として低分化腺癌が混在するような原発巣の環境がリンパ節転移促進に重要であり, 今後, 原発巣の酸素濃度, pH, 周囲組織の影響など低分化腺癌が混在する環境の具体的解析が重要と思われた.
  • 河原 秀次郎, 平井 勝也, 青木 照明, 足利 建, 木村 知行, 佐藤 慶一, 柏崎 修
    1996 年 29 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1980年~1991年に当教室で施行されたstage II~IIIb下部直腸癌症例においてD3郭清と不完全なD2 (inD2) 郭清が施行され, 術後遠隔転移再発が認められない65例を対象として側方リンパ節郭清の意義について検討した. inD2郭清とは内腸骨動脈の前面に沿った郭清で, 内腸骨動脈を全周性には郭清していないものである. stage IIにおいてinD2郭清施行群とD3郭清施行群で累積生存率に有意差は認められなかった. よって壁深達度が固有筋層を越えている症例でリンパ節転移が認められなければ, inD2郭清で十分な根治性が得られるものと考えられた. stage IIIa, bではD3郭清施行群のほうがinD2郭清施行群より5生率で有意 (p<0.01) に良好であった. 第2群までのリンパ節転移度で比較するとD3郭清施行群のほうが高度であった. よってD3郭清の有用性は, その郭清操作によって第2群までのリンパ節, 特に内腸骨動脈領域のリンパ節が確実に郭清されることにあるものと考えられた.
  • 血中サイトカイン・臓器障害との関連
    村上 義昭, 横山 隆, 今村 祐司, 児玉 節, 竹末 芳生, 山東 敬弘, 新原 主計, 津村 裕昭, 立本 直邦, 松浦 雄一郎
    1996 年 29 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌, 胃癌, 消化管穿孔性腹膜炎症例各10例を対象として, 術後早期の末梢血好中球数 (PMN) と血中サイトカイン値 (granulocyte colony-stimulating factor (G-CSF), interleukin 8 (IL-8)) ・臓器障害の関連について検討を行った.術後4時間後のPMNが7,000/mm3未満の群 (L群) は, 7,000/mm3以上の群 (H群) に比べ, 有意に (p<0.01) 高率に臓器障害が認められ, 有意に (p<0.01) 術後早期の血中サイトカイン値の高値が認められた.術後4時間後のPMNと臓器障害度および血中サイトカイン最高値との間には有意な (p<0.05) 相関が認められた.以上より, 術後早期にPMNが低値を推移する症例は, 高サイトカイン血症により過剰な刺激を受けたPMNが組織に遊出することにより臓器隔害が発生することが推測され, 術後早期の末梢血好中球数は術後の臓器障害を予測する指標となることが示唆された.
  • 細胞増殖および細胞死における組織化学的検討を加えて
    小出 直彦, 二村 好憲, 小池 祥一郎, 安達 亙, 飯田 太
    1996 年 29 巻 1 号 p. 70-74
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道腺様嚢胞癌 (ACC) の1例を経験し, 本腫瘍における細胞増殖とアポトーシスを検討した.症例は68歳の女性, 中部食道に不整な陥凹を伴う隆起性病変を認め, 生検にてSCCの診断を得た.手術は胸部食道亜全摘, 胸骨後経路, 頸部食道胃管吻合術を施行した.病理診断はACC, 一部SCCであった.切除材料を用いて, PCNA免疫染色, TUNEL法, bcl-2蛋白免疫染色を行った.ACCのPCNA陽性率は43.6%, TUNEL陽性率は0.58%で, ACCの増殖性は高く, アポトーシスの発現は低いものと考えられた.またACCではbcl-2蛋白の強い発現を認め, これによりアポトーシスが抑制されている可能性が示唆された.正常食道組織におけるbcl-2蛋白の発現は, 基底細胞および食道腺の導管, 腺房細胞に認められ, ACCのbcl-2蛋白の強い発現に関与していると考えられるが, bc1.2蛋白免疫染色の所見よりACCの発生起源に言及することは困難であった.
  • 斉藤 礼次郎, 阿保 七三郎, 北村 道彦, 橋本 正治, 泉 啓一, 四釜 俊夫, 天満 和男, 鎌田 収一, 南谷 佳弘
    1996 年 29 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌切除384例を対象に食道癌胃壁内転移の臨床的意義を検討した. 胃壁内転移は6例 (1.6%) で認められた. 全例でリンパ管侵襲と2群以上のリンパ節転移が認められ, 組織学的進行度はIII度1例, IV度5例とすべて高度進行癌であった. 胃壁内転移巣は噴門部5例, 胃体上部大彎1例であったが, 2例では径6cm以上の巨大な隆起性転移巣を形成していた. 5例に再発が認められリンパ節再発と臓器再発が3例ずつ, 局所縦隔内再発と胸腹膜再発が1例ずつ重複で認められた. 他癌死した1例を除き, 全例が2~14か月で癌死しており, 平均生存期間は8.3か月であった.特に巨大転移巣形成2例では生存期間がそれぞれ2, 5か月と極めて予後不良であった. 以上より食道癌胃壁内転移例の予後向上には十分な切除郭清とともに術後の強力な化学療法が必要と思われた. 特に巨大転移巣形成例では既に全身病への移行が考えられ, 術前よりの強力な化学療法が必要と考えられた.
  • 下松谷 匠, 谷川 充彦, 吉田 誠, 天谷 博一, 松村 光誉司, 藤井 秀則, 堀内 哲也, 増田 靖彦, 村岡 隆介
    1996 年 29 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    悪性黒色腫の十二指腸転移に対して切除術を行った症例を経験したので報告する.
    症例は69歳の女性で, 平成5年2月左鼻腔の悪性黒色腫にて局所切除術を受け, 術後化学療法が行われた. 平成6年4月, 臍周囲の腹痛を自覚し本院内科を受診し, 上部および下部消化管検索の結果盲腸癌の診断で当科にて回盲部切除を受けた. 退院後本院通院中腹部不快感, 立ちくらみ, 黒色便を認め, 血液検査の結果貧血を認めた. 9月内視鏡検査にて十二指腸球部に黒色の隆起性病変を認め, 生検の結果悪性黒色腫の転移と診断され入院となる. 検索の結果ほかに転移巣は認めず, 膵頭十二指腸切除, 2群リンパ節郭清を行い, 今永法で再建した. 術後2か月目より補助化学療法を行い現在再発の徴候はない.
  • 高橋 英雄, 横井 健二, 和田 真也, 大和 太郎, 宮本 直樹, 東出 慎治, 魚津 幸蔵, 長谷川 洋, 関川 博
    1996 年 29 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性. 黄疸を主訴に来院となった. 7か月前に胆石症に対し, 当科で腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けている. 入院時血液検査では, 肝機能障害ならびに胆道系酵素の上昇を認めた. 腹部超音波検査では肝内胆管, 総胆管の拡張像を, また腹部CTでは下部総胆管にmetallic densityを認めた. PTCD造影にて総胆管内に2個の結石様陰影欠損を認め, 内部に明らかにクリップとわかる像が計3個見られた. 治療として, 2回にわたる内視鏡的乳頭切開術ならびに砕石バスケット鉗子を用いた結石除去術を行い, 結石を摘出した. 結石は比較的軟らかいビリルビン系結石で, 3個のクリップのうち1個を回収しえた. 文献上, きわめてまれな合併症であるが, 腹腔鏡下胆嚢摘出術の普及にともない, 今後ふえてくるものと予想され, 念頭におくべきと考えられる.
  • 神賀 正博, 佐藤 淳, 緑川 靖彦, 花田 稔, 窪田 幸男
    1996 年 29 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    経過中に全く腹痛を欠如した重症急性膵炎の1例を経験したので報告する. 患者は45歳の男性で悪心嘔吐黄疸を主訴に入院した. 入院時の血液生化学検査, computed tomography (CT) にて重症急性膵炎と診断したが, 腹痛は全く認めなかった. 直ちに蛋白分解酵素阻害剤投与, 持続血液濾過透析などを行いつつ厳重な全身管理を行った. しかし急激に血小板が減少し, disseminated intravascular coagulation (DIC) 傾向を示すようになり, 感染の合併も疑われたため, 第10病日に手術を施行した. 膵臓はほぼ全体が壊死に陥り, 後腹膜腔にも広範に壊死が広がっており, 可能な限り壊死組織を除去した. 術後はmethicillin resistant staphylococcus aureus (MRSA) 肺炎, 腹腔内膿瘍の治療に難渋したが徐々に改善し, 術後第105病日に退院となった. 本症では腹痛を欠如するため膵炎の早期診断治療が遅れ, 予後不良となる場合が多いので注意を要すると思われた.
  • 大野 伯和, 宮崎 直之, 片山 直弥, 荒樋 栄宣, 嶋田 安秀, 藤盛 孝博
    1996 年 29 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    脾膿瘍は比較的まれな疾患であるが, 今回我々は結腸癌が直接脾臓に穿通したため脾膿瘍を形成した特異な症例を経験したので報告する. 症例は67歳の女性. 臍周囲部痛, 嘔吐を主訴に来院した. 腹部X線検査にてniveauを認め, 血液検査で白血球増加著明であったため腸閉塞の診断で入院. 腹部超音波・CT検査で多発性脾膿瘍を認め, 大腸内視鏡・注腸X線検査で横行結腸脾彎曲部に2'型腫瘍を認めた.横行結腸癌穿通による脾膿瘍および腸閉塞と診断し人工肛門造設による減圧の後, 2期的に結腸部分切除・脾摘出・腹腔ドレナージ術を施行した. 摘出標本において肉眼的, 病理学的に横行結腸癌の脾臓への穿通および脾膿瘍が確認された. また脾膿瘍の膿汁培養にて大腸菌が検出された. 本症例のように結腸癌の穿通により脾膿瘍を形成した場合は手術による切除が治療の第1選択と考えられる.
  • 松田 充宏, 足立 信也, 森島 勇, 河島 孝彦, 尾崎 梓, 角田 博子, 小池 直人, 深尾 立
    1996 年 29 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性. 右鼠径部有痛性腫脹を主訴として来院した. 右鼠径ヘルニア嵌頓の診断での徒手整復ののち, 待期的に鼠径ヘルニア根治術を施行した. 切除したヘルニア嚢に, ゼリー状の成分を持つ嚢胞状の腫瘤の集簇を認めた. 病理組織所見から腹膜偽粘液腫と診断した. 上皮細胞はなく, 原発巣は不明であった. 術後の画像診断から虫垂原発の腹膜偽粘液腫と診断し, 回盲部切除術および腹腔内洗浄を施行した. 破裂した虫垂水瘤を認めたが, ヘルニアの修復部を含め, 腹腔内に異常はなかった. 組織学的に虫垂粘液嚢胞腺腫と診断した. 術後3年を経過したが, 再発を認めていない.
    鼠径ヘルニアを初発症状とした虫垂原発腹膜偽粘液腫は, 日英の文献で過去に4例の報告があるのみで, 極めてまれであった. 鼠径ヘルニアで発症したその他の腫瘍の報告例とあわせて考察した.
  • 前田 耕太郎, 森 泰二郎, 橋本 光正, 田島 厳吾, 石川 秀樹, 白石 天三, 中島 顕一郎, 洪 淳一, 山本 修美, 細田 洋一郎 ...
    1996 年 29 巻 1 号 p. 104-108
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    イレウス症状にて発症し, 超音波ガイド下穿刺でイレウス症状を改善し, 穿刺液より腸間膜乳び嚢腫を疑い, 待機手術を施行した腸間膜乳び嚢腫の1例を報告する.症例は9歳の男性で, 嘔吐にて発症した.腹部単純X線検査では拡張した小腸ガスと鏡面像がみられ, 超音波検査では膀胱に接して頭側に約10cm大の多房性の嚢胞状の腫瘤を認めた.腫瘤に関連したイレウスと考え超音波ガイド下穿刺を行い, 乳び液200miを吸引した.翌日イレウス症状は改善したが, 排液は持続したため腸間膜乳び嚢腫の診断で待機手術を施行した.開腹すると, 空腸腸間膜に空腸に接して約8cm大の暗赤色の嚢胞状の腫瘤を認めた.腸間膜を含め空腸を11cm切除し吻合した.腫瘍は7.5×6cm大で病理組織所見はリンパ管腫であった.小児の原発性イレウスでの, 超音波検査の重要性と超音波ガイド下穿刺の有用性を呈示する症例と考え報告した.
  • 鶴丸 昌彦
    1996 年 29 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌3領域郭清の術後合併症と対策について述べた.術後合併症としては, 呼吸器合併症, 循環器合併症, 縫合不全, 反回神経麻痺が主なものである.呼吸器合併症では肺炎, 無気肺, 肺水腫などによる低酸素血症が22.5%に見られた.肺水腫は準肺水腫状態まで含めると高頻度に発生する.胸管を合併切除することで低タンパク血症, 血管内脱水となる傾向にあり, 術中から多めの輸液を要するため, refilling期にはhypoxemiaとなる.dopamine, albuminや利尿剤投与で十分対処できる.肺水腫を恐れてdry sideに管理すると頻脈, 血圧低下など循環不全となるので術中輸液は7~8ml/kg/hrは行う.頻度は3.3%と少ないが肺動脈塞栓症は常に念頭におく.術中からpneunatic cuffの使用やheparin投与を行う.喫煙者や反回神経麻痺の症例では呼吸器合併症が有意に高くなるので注意を要する.術後合併症は手術のテクニックによることが多いので丁寧な手術を心がける.
  • 沢井 清司
    1996 年 29 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃全摘術を安全に行うためのこつは, 適切な到達法と吊上げ鈎による良好な術野の確保, 基本に忠実な再建手技, 効果的なドレナージである. 食道空腸吻合の第1選択は器械吻合でよいが, 器械不調のときのため手縫い吻合もマスターすべきである. 術直後の出血には再開腹, 2次的な出血には動脈塞栓術が有効である. 縫合不全は, 透視にて部位, 程度, ドレナージ効果を診断することが重要である. ドレナージ不良の場合には, エコー下, CT下または開腹により確実なドレナージを行えば治癒する. 膵瘻も確実なドレナージを行うことが重要で, 大出血には動脈塞栓術が有効である. イレウスは麻痺性, 絞扼性などを診断し, 単純性の場合はイレウス管留置など保存療法を試みる. 術後胆嚢炎で保存療法が無効な場合は, 経皮経肝胆嚢ドレナージを行う. 腹腔内膿瘍は超音波検査, CT検査にて診断し, エコー下, CT下の穿刺ドレナージまたは開腹ドレナージを行う.
  • 松本 由朗
    1996 年 29 巻 1 号 p. 120-126
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝切除術の対象疾患は肝細胞癌などの原発性肝癌, 転移性肝癌, 胆道癌, 肝内結石症および良性肝腫瘍と多岐にわたり, 切除症例数も増加の一途をたどる. 肝切除の術式, 手技も多彩であるが, その術後合併症は慢性肝疾患 (LC) 併存例と, 胆嚢癌に対する肝の2区域以上切除を伴う肝膵同時切除例に集中している. LC併存例の肝切除後合併症は肝切離端からの胆汁, 血液, 浸出液などの液貯留と, それに伴う感染症の発生および肝不全の発生である. これらは相互に因果関係を持って発生しており, 肝切離端の浸出, 漏出液の速やかな体外排出, 感染防止が術後管理の原点である. 肝膵同時切除は膵頭十二指腸切除に加え肝の1区域切除以下では比較的安全であるが, 1区域を越える肝切除が併施されると, 肝不全, 縫合不全, 腹腔内感染が増加し, 肝の2区域以上切除では33~47%の手術死亡率が報告されており, 本術式による新たな病態の発生が示唆され, その解明が待たれる.
  • 今泉 俊秀
    1996 年 29 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    教室で経験したPD 964例をもとに, 術後合併症と対策について検討した. 1) 早期合併症発生率は27%, 入院死亡率は9%で, 膵腸吻合縫合不全に起因するものがその1/3を占め, 線維化のない正常膵に11%と高率であった. 膵腸縫合不全は, 手術的膵損傷や膵管狭窄などに起因する1次合併症と, その結果として引き起こされる腹腔内膿瘍や出血などの二次合併症とに分けられた. 前者では手術時の膵損傷に留意し, 吻合部周囲のドレナージを徹底することが重要で, 後者ではUS, CT下ドレナージやTAEが有効で, 最近10年間の膵腸吻合縫合不全に起因する入院死亡率は75%から21%へと著減した. 2) 晩期合併症は吻合部狭窄のみならず, PDに特有な十二指腸乳頭機能廃絶の結果, 惹起される再建腸管内の鬱滞に起因する胆道感染症や膵炎が見られた. この対策は吻合部狭窄のブジーや再吻合, 再建腸管の癒着剥離や消化管再建配列法の変更が, また胆管炎性肝膿瘍にはUS, CT下ドレナージが有効であった.
  • 山本 裕, 吉田 博之, 一色 聡一郎, 島田 敦, 植田 正昭
    1996 年 29 巻 1 号 p. 132
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 青木 一真, 岡村 維摩, 石田 清, 山崎 順彦, 山口 登喜夫, 中島 煕
    1996 年 29 巻 1 号 p. 133
    発行日: 1996年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
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