日本消化器外科学会雑誌
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37 巻, 5 号
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  • 中里 知行, 瀬下 明良, 亀岡 信悟
    2004 年 37 巻 5 号 p. 463-471
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌では, リンパ流が複雑であるため, リンパ節の転移様式もさまざまであり, sentinel node navigation surgery (以下, SNNSと略記) の適用には慎重を要する. 今回我々は, sentinel lymph node (以下, SNと略記) 同定の手段としての術中色素同定法, および微小転移の観点からSNNSの妥当性の検討を行った. 方法:(1) 78例の胃癌症例においてpatent blueを用いた術中漿膜下色素注入法によりblue node (以下, BN) の同定を行った結果, 同定率100.0%, 正診率98.7%, 転移陽性診断率93.3%であった.(2) 次に, 組織学転移陰性 (以下, pN0) の組織学的深達度M-SMの胃癌53例について, 全摘出リンパ節 (総数1,329 個) のサイトケラチン染色を行い, 微小転移 (以下, MM) を検索した. その結果10例 (18.9%) にMMを認めた. これらの転移はいずれも染色流域内のリンパ節であった. また, 対照として組織学的リンパ節転移陽性 (以下, pN (+)) の深達度SM 胃癌5例の微小転移検索も同様に行い, 5例中2例で染色流域外にMMを認めた. 考察: 以上の結果から, 高い同定率, 正診率および転移陽性診断率より, HE染色の結果ではBNの中にSNは含まれていると思われた. しかしながら, MM検索の結果からBN以外にもMMの存在を認め, 早期胃癌においてもHE染色で転移陰性であっても染色流域内のリンパ節郭清は行うべきである.
  • 特に高齢者胃・大腸癌に対する手術患者での検討
    若林 久男, 大谷 剛, 近藤 昭宏, 森 誠治
    2004 年 37 巻 5 号 p. 472-478
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 小野寺らのprognostic nutritional index (PNI) の加齢性変化に注目し, 胃・大腸癌の高齢患者と若年患者での手術危険度判定基準の相違を検討した. 方法: 過去2 年間の胃, 結腸, 直腸癌手術患者で術前摂食障害のないStage I, II期の65例 (胃癌38, 結腸癌18, 直腸癌9) を対象とし, 年齢とPNI の相関を検討した. 次に, 術後経過良好群と合併症群に分け群間でPNIを比較し, さらに75歳以上高齢患者群とそれ未満の非高齢患者群でPNI を比較した.結果: PNIと年齢は負に相関し (r=-0.432, P <0.001), PNI は年齢とともに低下した. 経過良好群と術後合併症群の比較では, PNIは経過良好群: 42.9±5.7, 術後合併症群: 37.8±4.3で, 有意差 (P =0.003) を認めた. 高齢患者群と非高齢患者群のPNI は高齢患者群: 39.8±5.0, 非高齢患者群: 44.5±5.7で, 有意差 (P =0.001) を認めた. さらに, 同じ術後合併症群でも高齢患者術後合併症群: 35.5±4.8, 非高齢患者術後合併症群: 40.0±3.0で, 非高齢患者と高齢患者には差 (P =0.045) を認めた. 年齢とPNIでplotされた経過良好群と術後合併症群の分布では, 2群間に有意な判別線 (PNI=46.2-0.071×Age) が得られ, 判別線は年齢とともに低下した. 考察: 胃・大腸癌の高齢患者では若年患者よりPNIは低値で, 従来の画一的基準では高齢患者の多くが危険域に属す. PNIの基準点も統計学的に年齢とともに低下したことから小野寺らのPNIも年齢を考慮した基準点の設定が必要と考えられた.
  • 板橋 幸弘, 馬場 俊明, 加藤 智, 佐々木 睦男
    2004 年 37 巻 5 号 p. 479-482
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性で, 繰り返す嘔吐にて食事がとれず衰弱した状態で当院に救急搬送された. 極度な低栄養状態で, まず中心静脈栄養が行われた. 胸部単純X 線およびCT検査にて後縦隔に腸管ガスを認め, 大腸内視鏡検査で横行結腸が縦隔内に嵌入していることが判明した. 食事をとると腸閉塞症状が出現するため横行結腸嵌入による横隔膜ヘルニアとして手術を行った. 食道裂孔に横行結腸が約30cm 嵌入していたが容易に腹腔内に還納された. 径5cm大に右側に開大した食道裂孔は弾力がなく縫縮できず, トリミングした大網を充填し, 裂孔周囲を数か所結節縫合固定することで閉鎖した. 胃の位置異常はなく食道裂孔の閉鎖のみとした. 術後肺炎を合併したが食事に関しては経過良好で, 胃や横行結腸が正常な位置にあることを確認し術後34病日に退院した. 現在までに大網充填による食道裂孔ヘルニア手術の報告例はなく, 裂孔の縫縮などが困難な場合には一手段となりうると思われた.
  • 足立 淳, 筒井 慶二郎, 高野 尚史, 内山 哲史
    2004 年 37 巻 5 号 p. 483-487
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道憩室内食道癌は, 非常にまれである. 中部食道憩室内食道癌の1切除例を経験したので, 本邦報告例34例とともに報告する. 症例は75歳の男性で, 前胸部痛を主訴に中部食道憩室内癌の診断で紹介された. 上部消化管造影X線検査では, 中部食道に右方に突出する2.5×2.0cmの半球状の憩室があり, その中に隆起性病変の集簇を認めた. 食道胃内視鏡検査では, 上切歯列より33cmの食道中部に憩室があり, その憩室内にルゴール不染性の隆起性病変の集簇を認めた. 胸部CT, MRIでは中部食道の拡張を認めたが, リンパ節の腫脹は認めなかった. 高齢であること, 低肺機能であること, 過去3回脳梗塞の既往があり, 再発の危険が高く, 現在意志の疎通に難があることを考慮し, 縦隔鏡補助下食道抜去術を施行した. 病理組織診断は, 中分化型扁平上皮癌で, 深達度はsmであった. 食道憩室内癌の治療にあたっては, 壁粘膜筋板の菲薄化のため浸潤が容易で, 深達度診断が難しいことを考慮しなければならない.
  • 柏原 元, 田尻 孝, 宮下 正夫, 野村 務, 牧野 浩司, 丸山 弘, 松谷 毅, 勝田 美和子, 笹島 耕二, 山下 精彦
    2004 年 37 巻 5 号 p. 488-493
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    血中carcinoembryonic antigen (以下, CEA と略記) 値が異常高値を呈し, 再発と治療効果に対して有用な指標となった進行食道扁平上皮癌の1例を経験したので報告する. 症例は70歳の男性で, 嚥下困難を主訴に, 近医にて上部消化管内視鏡検査を施行. 胸部上部食道に腫瘍を認め, 生検にて扁平上皮癌と診断, 精査加療目的に当科紹介となった. 入院時血中CEA値は19ng/mlと高値を示した. 諸検査にて他臓器病変は認めず, 進行食道扁平上皮癌と診断し, 術前化学放射線療法を施行後, 右開胸開腹食道切除術施行. 血中CEA値は2.0ng/mlと正常化し退院となった. その後, 血中CEA値の上昇とともに右側反回神経リンパ節再発, 吻合部浸潤の診断にて4回入院し, 化学放射線療法および化学療法を施行. おのおのの入院治療後は腫瘍の縮小と血中CEA値の低下を認めたものの, 最終的には再発腫瘍の増大のため術後24か月目に死亡した.
  • 霜田 雅之, 山神 和彦, 肥田 侯矢, 吉田 良, 山本 秀和, 山本 栄司, 小西 靖彦, 武田 惇
    2004 年 37 巻 5 号 p. 494-499
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    右側大動脈弓に合併した胸部食道癌の1手術例を経験した. 患者は64歳の男性で食道透視, 上部消化管内視鏡にて胸部中部食道癌と診断された. 胸部単純X線写真, 3D-CTで右大動脈弓を認め, 左鎖骨下動脈が下行大動脈に存在する憩室から分岐する血管異常を認めた. 術前化学療法後, 左開胸下に食道亜全摘術・胸骨後経路胃管再建術を施行した. 胸腔内操作で, 食道前面に存在し大動脈憩室と左肺動脈との間にある左動脈管の切離を試みた. しかし, 憩室壁は薄く, 動脈管内に血流もあり, 憩室から左動脈管を安全に同定することが困難であった. そこで左反回神経を追求することで左動脈管を確認, 切離し, 食道に到達できた. 右大動脈弓を伴った食道切除術は, 開胸法, 血管系の変異に伴う手術手技に特別な注意が必要であり, 術前の詳細な解剖学的検討を行うべきである.
  • 三吉 範克, 藤原 義之, 瀧口 修司, 宮田 博志, 安田 卓司, 矢野 雅彦, 門田 守人
    2004 年 37 巻 5 号 p. 500-505
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌にて開腹手術を施行した2症例に, 術直後より, それぞれ一過性の腕神経叢麻痺, 腓骨神経麻痺を認めた症例を経験した. 症例1: 50歳の男性で, 開腹手術後より両側足背部のしびれ感および両下腿の運動障害を認めた. Vit B12を投与し理学療法を行い, 1か月後, 足関節の背屈困難もほとんど消失し退院となった. 症例2: 46歳の男性で, 開腹手術直後より両上肢の知覚および運動麻痺を認めた. ステロイド, Vit B12を投与し理学療法, 星状神経節ブロックを行った結果, 術後6か月で全治した. 術中の体位による合併症として, まれに腓骨神経麻痺, 腕神経叢麻痺が挙げられる. その発生要因としては, 術中肢位による神経の過伸展, 圧迫が主なものと考えられている. 今回われわれは, 胃癌手術後に総腓骨神経麻痺および両側腕神経叢麻痺をきたした症例を経験したので, 文献的考察を加え報告する.
  • 中山 善文, 門脇 康二, 平田 敬治, 日暮 愛一郎, 永田 直幹, 伊藤 英明
    2004 年 37 巻 5 号 p. 506-511
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸進展をきたす胃癌はその多くが進行胃癌であり, 早期胃癌ではまれである. 今回我々は十二指腸に3.8cm進展した早期胃癌の手術症例を経験したので報告する. 症例は59歳の女性で, 平成12年2月心窩部不快感を主訴に近医を受診し, 上部消化管内視鏡検査を施行した. 胃前庭部から十二指腸球部にかけて広い顆粒状隆起性病変を認めた. 精査加療のため, 当科へ紹介され入院となった. 上部消化管内視鏡検査の生検の結果はgroup 5の腺癌であった. 十二指腸浸潤を伴った早期胃癌の術前診断のもと, 十二指腸球部を含む幽門側胃切除術 (D1) を施行した. 切除線の決定には術中内視鏡を使用した. 病理組織検査の結果, 高分化型腺癌, sm, n0, pw (-), dw (-) であった. 現時点での十二指腸進展早期胃癌の手術法については, 過不足のない切除線とリンパ節郭清範囲の決定が重要と思われた.
  • 池田 宏国, 辻 和宏, 三谷 英信, 斉藤 誠, 安藤 隆史, 平川 栄一郎
    2004 年 37 巻 5 号 p. 512-516
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    幽門狭窄で発症した胃迷入膵原発腺癌の1例を報告する. 症例は58歳の女性で, 約1か月前からの食後頻回の嘔吐を主訴に当院来院した. 胃内視鏡検査では幽門輪の全周性の狭窄を認めたが粘膜生検では悪性所見は認めなかった. また, 超音波内視鏡検査でも胃壁層構造は保たれており腫瘍像は認めなかった. 症状の改善を目的に2度のバルーン拡張術を行ったが, 狭窄症状が軽快しなかったため開腹術を行った. 幽門部粘膜の術中迅速病理検査では悪性所見を認めなかったため, 幽門輪切除術のみを行った. 病理組織学的検査では, 粘膜筋板から漿膜にかけて浸潤性に増殖する腺癌を認め, その近傍に異所性膵組織および上皮に異型を伴う膵導管が存在していたことより, 胃迷入膵原発の腺癌と診断した. 後日胃幽門側追加切除術, リンパ節郭清 (D2) を行ったところ, No.5にリンパ節転移を認めた. 総合所見はpT2, pN1, sH0, sP0, cM0, fStage IIであった.
  • 渡辺 和宏, 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 高橋 賢一, 上野 達也, 長尾 宗紀, 羽根田 祥, 松野 正紀, 佐々木 巌
    2004 年 37 巻 5 号 p. 517-521
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    術前診断が可能であった右傍十二指腸ヘルニアを経験したので報告する. 症例は71 歳の男性で, 突然の右側腹部痛で発症した. 小腸造影にて, 口側, 肛門側での狭窄を伴う, 空腸係蹄の集塊像を右側腹部に認めた. 上腹部CTにて, 右側腹部で被膜に包まれ嚢状塊となった拡張した小腸を認め, 上腸間膜動静脈の腹側を扇状構造の腸間膜が走行していた. 右傍十二指腸ヘルニアの診断にて, 発症から14日後, 開腹手術となった. 開腹所見にて下結腸間膜窩に発生した右傍十二指腸ヘルニアと診断され, 嵌入した腸管を還納した後ヘルニア門を閉鎖した. 腸間膜側壁窩に発生する一般的な傍十二指腸ヘルニアでは, ヘルニア嚢は上腸間膜動静脈の背側を走行するが, 自験例では上腸間膜動静脈とは独立した位置関係であった. 下結腸間膜窩をヘルニア門とするヘルニアは我々が検索した限りでは報告がなく, 極めてまれな症例であると考えられた.
  • 金住 直人, 本山 彩, 小林 大介, 完山 泰章, 横井 一樹, 鈴木 祐一, 木村 次郎, 石井 正大
    2004 年 37 巻 5 号 p. 522-526
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は59 歳の男性で, 発熱, 食欲不振にて近医受診し, 血液検査にて肝機能異常を指摘され当院紹介となる. 腹部US, CTでは肝内胆管, 総胆管の拡張と主膵管の軽度拡張を認めた. 上部内視鏡検査にて十二指腸乳頭部は発赤, 腫大し小潰瘍を認めた. 同部位の生検結果は印環細胞癌であった. 十二指腸乳頭部印環細胞癌の術前診断にて, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 腫瘍は2×3cmの潰瘍腫瘤型であった. 病理組織検査では乳頭は腫大し印環細胞癌細胞によって埋め尽くされており, 1群リンパ節に転移を認めた. 術後経過は良好であり, 術後1年8か月経過した現在, 再発の兆候なく健在である. ごくまれな十二指腸乳頭部より発生した印環細胞癌を経験したので15例の報告例を含め, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 越川 克己, 杉本 博行, 金子 哲也, 竹田 伸, 井上 総一郎, 中尾 昭公
    2004 年 37 巻 5 号 p. 527-532
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性で, 老人性痴呆にて他院に長期入院中であったが, 嘔吐, 腹痛を主訴に紹介され緊急入院となった. 腹部所見では中下腹部に軽度の圧痛を認め, 血液生化学的検査では, 白血球数, CRP値の上昇を認めた. 腹部CTでは, 肝左葉外側区域と尾状葉に肝表面に達する樹枝状の門脈ガス像を認め, また上行結腸には腸管気腫症を認めた. 経鼻胃管, IVHを挿入し, 保存的治療を開始した. 腸管壊死も考慮し緊急手術に備えていたが, 痴呆もあり社会的適応を考慮している間に症状の改善と門脈ガス, 腸管気腫の消失がみられ保存的治療のみで治癒せしめることができた. 従来より門脈ガス血症は腸管壊死に伴って認められる, 重篤な合併症あるいは徴候として考えられる一方, 近年, 腸管壊死を伴わなず, 保存的治療が可能な症例の報告も散見される. 保存的治療可能であった門脈ガス血症の本邦での報告例は自験例を含め23例であった. それらの検討も含め報告する.
  • 最近の切除報告19例の検討
    長佐古 良英, 三澤 一仁, 渡辺 正明, 大黒 聖二, 長谷川 公治, 小橋 重親, 大川 由美, 佐野 秀一
    2004 年 37 巻 5 号 p. 533-538
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性で, 黄疸を主訴に来院した. 腹部CT検査で肝内側区域に辺縁部が造影される直径4cmの腫瘤陰影と, これに連続して左肝管から総肝管内に均一に造影される腫瘍栓が描出された. ENBD tubeより行った胆道造影において肝管内に辺縁平滑で柔らかい透亮像を認めた. 胆管細胞癌の術前診断で肝左葉切除, 肝外胆管切除および胆管内腫瘍栓摘出術を施行したところ, 病理組織学的に胆管内へ連続性に進展する中分化型肝細胞癌と診断された. 最近4年間の本邦切除報告19例の検討では, 術前診断に際してPIVKA-IIが有用な指標となること, 閉塞性黄疸の鑑別診断の1つとして本症を念頭に置き早期発見を行うこと, また系統的な肝切除を行い肝外胆管切除も併施することによって予後の向上が期待されることが重要な知見と考えられた.
  • 森 隆太郎, 三浦 勝, 高橋 徹也, 小尾 芳郎, 山中 研, 阿部 哲夫, 中下 彩子, 藤本 秀明, 中村 恭一
    2004 年 37 巻 5 号 p. 539-544
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性で, 検診で胸部異常陰影を指摘され, 胸部CTを施行したところ炎症性変化のみであったが, 肝にlow density area (以下, LDA) を指摘され当院紹介受診となった. 腹部CTで, 肝S7に4×2.5cmのLDAを認め, 動脈相から平衡相にかけて辺縁部の造影効果を認めた. MRIではT1強調画像で低信号, T2強調画像では一部高信号な像を呈し, 血管造影検査では辺縁に血管増生を伴う淡い腫瘍濃染像を認めた. 非典型的ではあるが胆管細胞癌を疑い, 肝右葉切除術を施行した. 腫瘍は, 白色, 弾性軟で境界は明瞭だが辺縁のspiculationを認めた. 病理組織所見で, グリソン鞘への浸潤性発育を示し, 著明な硝子様繊維性間質を伴った肝類上皮血管内皮腫 (以下, EHE) と診断した. 文献上, 肝原発EHEの本邦での報告は63例, 切除は13例と少数であり, 本疾患の診断, 治療, 予後について考察を加えた.
  • 藤田 雄司, 重田 匡利, 岡村 啓二, 友近 忍, 宮原 誠, 久保 秀文, 河内 康博, 長谷川 博康, 宮下 洋, 山下 吉美
    2004 年 37 巻 5 号 p. 545-550
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝に原発するカルチノイドは, 比較的まれな疾患である. 今回, 術前診断が困難で比較的長期間術前経過を観察しえた原発性肝カルチノイド腫瘍の1切除例を経験したので報告する. 症例は53歳の女性で, 主訴は貧血・便潜血陽性. 上部・下部消化管検査で異常なく, 平成12年6月腹部骨盤CT検査施行し, 肝右葉 (S5) に径25mmの嚢胞性病変を指摘された. その後, 増大傾向を認め, 平成15年1月手術目的で当院紹介入院となった. 腹部エコー・CT, 血管造影検査にて肝嚢胞腺癌などを疑い肝門部リンパ節郭清を含めた肝右葉亜区域 (S5) 切除および胆嚢摘出術を施行した. 切除標本では腫瘍は正常肝との境界が比較的明瞭で, 内部に出血巣を伴い乳白色の線維性隔壁で分葉された嚢胞性腫瘍であった. 病理組織学的にはSynaptophysin染色陽性とHE染色の所見よりカルチノイド腫瘍と診断された. 術後12病日に軽快退院し, 術後10か月目の現在注意深く経過観察中である.
  • 蜂須賀 康己, 岩川 和秀, 梶原 伸介, 田中 仁, 小野 芳人, 加洲 保明, 清地 秀典, 岡田 憲三, 坂尾 寿彦, 栗原 憲二
    2004 年 37 巻 5 号 p. 551-556
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆管乳頭腫症は胆道の良性腫瘍として分類される非常にまれな疾患である. 今回われわれは, 病変の一部に癌化を伴った胆管乳頭腫症の1例を経験したので報告する. 症例は71歳の女性で, 無症候であったが検診にて肝機能異常を指摘され来院した. 腹部CT, ERCPにて肝門部胆管癌と診断され手術を施行した. 術中胆道ファイバー所見で左肝管は乳頭状腫瘤にて閉塞し, 右肝管の前後区域枝分岐部と下部総胆管にも同様の多発小病変が存在した. 肝左葉切除・胆管切除術を行った. 病理組織所見では肝内から肝外胆管に多発するいずれの病変も, 胆管被覆上皮の乳頭状の増殖像を示し, 胆管乳頭腫症と診断した. 左肝管の病巣には一部癌化が認められた. 術後2年の現在も生存中である. 本症は肝内および肝外胆管に多発し, 約3割に癌化例の報告がみられ, 診断や術式の選択には注意を要する.
  • 岡田 恭穂, 村上 泰介, 伊藤 浩司, 片寄 友, 佐藤 隆次
    2004 年 37 巻 5 号 p. 557-561
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は91歳の男性で, 右側腹部痛・嘔吐が出現し, 当院入院となった. 右季肋部の圧痛を認めたが筋性防御は認めず, 白血球・CRPの著しい上昇と軽度黄疸が見られた. CT検査では, 胆嚢腫大と造影効果のない胆嚢壁の肥厚, 頸部に低吸収の腫瘤像が確認され, 胆嚢捻転症に続発した急性壊死性胆嚢炎と診断し直ちに腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. Gross I型遊走胆嚢で, 胆嚢管部を軸として時計方向に360度捻転していた. 術中胆道造影では総胆管の拡張と結石像を認めたが, 全身状態の悪化が見られたのでc-チューブのみを留置し, 総胆管結石は術後内視鏡的乳頭切開術にて摘出, 第51病日に退院した. 病理組織検査では胆嚢管部の捻転に続発した胆嚢の急性出血性梗塞と考えられた. 胆嚢捻転症の多くは開腹時に確定診断されるが, 我々は術前に画像診断し, 早期に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行しえた. 本症は胆嚢頸部の炎症所見がほとんど見られず, 腹腔鏡下胆嚢摘出術のよい適応と考えられた.
  • 上杉 尚正, 丹山 桂, 山口 栄一郎, 中村 隆志, 竹重 元寛, 松井 則親, 西 健太郎, 守田 知明
    2004 年 37 巻 5 号 p. 562-567
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸側胆管への著明な表層拡大進展を認めた肝門部胆管癌の2例を経験したので報告する. 症例1: 46歳の男性. 肝門部胆管癌 (Blrcs) の診断で拡大肝左葉切除術, 尾状葉切除術を施行した. 十二指腸側胆管は膵内胆管で切離した. 術中病理検査で癌細胞の表層拡大進展を認めたため, 膵頭十二指腸切除術を追加した. 症例2: 66歳の男性. 肝門部胆管癌 (Brcsm) の診断で拡大肝右葉切除術, 尾状葉切除術を施行した. 十二指腸側胆管は膵内胆管で切離した.術後病理検査で十二指腸側胆管断端まで癌細胞の表層拡大進展を認めたため, 二期的に膵頭十二指腸切術を施行した. ともに肉眼的形態は平坦浸潤型で, 組織型は高分化型管状腺癌であった. 肝臓側胆管への表層拡大進展を認めた報告例は散見されるが, 十二指腸側胆管への表層拡大進展はまれである.
  • 黒住 和史, 仲原 正明, 鳥 正幸, 上島 成幸, 辻本 正彦, 中尾 量保
    2004 年 37 巻 5 号 p. 568-572
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    原発巣で副甲状腺ホルモン関連蛋白 (PTHrP) 産生が確認され, 血清PTHrPの上昇を認めた膵内分泌腫瘍症例を経験した. 患者は48歳の男性で, 検診で肝腫瘍指摘され, 当院紹介となった. 膵頭部に径4cm大の血流豊富な腫瘍と多発する肝腫瘍を認めた. 膵内分泌腫瘍と多発肝転移と診断し, 膵頭十二指腸切除および肝部分切除術を施行した. 病理組織学的には高度の静脈侵襲とリンパ節転移をともなう膵内分泌腫瘍とその肝転移であった. 原発巣でPTHrPの免疫組織化学染色が陽性であった. 術後に肝動注リザーバーから5FU 動注療法を週1回で合計29回 (5FU総量36g) 施行した. 肝転移巣に対する効果を認めたが一時的であった. その後骨転移, 高カルシウム血症, 急性腎不全, 血清PTHrPの上昇を認めた. 治療にて急性腎不全は改善したが, 高カルシウム血症を反復し, 患者は初回手術から15か月で死亡した. 文献上, 原発巣でPTHrP産生の確認された膵内分泌腫瘍は7例しか見られない.
  • 上田 順彦, 川崎 磨美, 上藤 聖子, 古屋 大, 中川原 寿俊, 岡田 章一, 吉光 裕, 澤 敏治, 小西 二三男
    2004 年 37 巻 5 号 p. 573-577
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵上皮内癌 (CIS) と膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMTs) が合併した1例を経験したので報告する. 症例は68歳の男性で, 入院時の腹部CT検査では膵体尾部の主膵管の拡張と周囲の炎症を伴う急性膵炎と診断されたが, 炎症消退後も膵頭体部に腫瘤は認めなかった. ERP検査では主膵管は膵体部で狭窄し尾側の主膵管は軽度拡張していたが, 分枝膵管の描出は不良であった. なお膵液細胞診はclass IVであった. 膵体部の微小膵癌を考え, D1リンパ節郭清を伴う膵体尾部切除と脾切除を施行した. 病理所見では主膵管狭窄部では主膵管壁は線維性に肥厚し, 周囲の膵実質は腺房の萎縮を認めた. 狭窄部の主膵管上皮はCISであったが, 尾側は中等度異型腺腫にとどまるIPMTsであった. 一方, 狭窄部より末梢の分枝膵管上皮は多彩な異型を示すIPMTsが一面に認められた. またこれらと混在するようにCISも認められた. 術後7か月たった現在, 再発の兆候なく生存中である.
  • 牧内 知子, 小林 聡, 三輪 史郎, 野池 輝匡, 高木 哲, 飯島 智, 宮川 雄輔, 宮川 眞一
    2004 年 37 巻 5 号 p. 578-583
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    非血友病第VIII因子インヒビター血症を伴った膵頭部癌患者の1手術例を経験した. 症例は80歳の女性で, 膵頭部腫瘤と閉塞性黄疸をみとめ入院. 画像検査で膵頭部癌と診断. 入院時の血液検査でAPTTの延長, 第VIII因子活性の低下, さらに第VIII因子インヒビターが高値を示していたことから非血友病第VIII因子インヒビター血症と診断. 第VIII因子製剤投与下 (術中20,000単位) に膵頭十二指腸切除を施行, 術中出血傾向はみとめなかった. 術後経過良好で, 第20病日に投与中止 (総投与量231,000単位). 第44病日 (投与中止後24日目) に, 反応性のインヒビター産生増加に伴う筋肉内出血をみとめたが, 組換え型第VII因子製剤投与と, プレドニゾロン内服による免疫学的治療により軽快した. 第86病日の退院時, 第VIII因子インヒビター値は正常範囲となっていた.
  • 江口 英利, 大東 弘明, 石川 治, 春日井 務, 横山 茂和, 佐々木 洋, 宮代 勲, 土岐 祐一郎, 村田 幸平, 今岡 真義
    2004 年 37 巻 5 号 p. 584-589
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    気管支嚢胞は胎生期に発生する奇形で, 通常は縦隔内にみられ腹部領域に発生することは少なく, その悪性化の報告はこれまで2例にすぎない. 我々は術前に悪性と診断し切除しえた後腹膜気管支嚢胞腺癌の1例を経験したので報告する. 症例は57歳の男性. 主訴は背部痛. 腹部CT検査にて左横隔膜脚に接し膵体部を前方へ圧排する8cmの多房性腫瘤を認めた. 経皮的穿刺細胞診にて腺癌細胞を認め, 後腹膜に発生した嚢胞性悪性腫瘍と診断し手術を施行した. 広範囲に膵と接していたため, 膵体尾部および脾臓と共に腫瘍を摘出した. 病理所見では嚢胞壁は線毛を有し平滑筋で裏打ちされた円柱上皮で覆われており, またその一部において乳頭状に増殖する腺癌を認めたため, 後腹膜気管支嚢胞腺癌と診断した.
  • 日比野 茂, 藤岡 進, 加藤 健司, 待木 雄一, 朽名 靖, 竹之内 靖, 松葉 秀基, 森前 博文, 平田 明裕, 吉田 カツ江
    2004 年 37 巻 5 号 p. 590-594
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で, 便秘を主訴に他院受診し, 骨盤内腫瘍および右水腎症を指摘され当院紹介となった. 注腸検査にて直腸は左方に圧排されており, 全周性の狭小化がみられたが粘膜面は正常で直腸壁は軟らかい印象であった. 骨盤部造影CT検査では骨盤右側から直腸周囲に境界不明瞭な腫瘤性病変が認められ, 直腸が左方に圧排されていた. 膀胱壁は右側を中心に不整に肥厚していた. また右尿管の拡張および右水腎症を認めた. これらの所見より骨盤腔内腫瘍による直腸狭窄, 右水腎症と診断し, 開腹術を施行した. 病理組織学的に腹腔内デスモイドと診断した. 術後Tamoxifen, Indometacinによる内服治療により触診および画像上の改善がみられた. 切除不能な腹腔内デスモイド腫瘍において薬物療法が著効した1例を経験したので今後の治療の問題点を含めて考察した.
  • 吉田 誠, 多保 孝典, 林 秀樹, 小野寺 久
    2004 年 37 巻 5 号 p. 595-599
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    全身性硬化症に合併した回腸偽性腸閉塞に対し, 外科的治療が奏功した1例を報告する. 患者は腸閉塞を繰り返す73歳の女性で, 腹痛と腹部膨満を主訴に来院した. 画像検査所見は腸閉塞を呈し, 回腸終末部での閉塞が疑われた. 消化管造影検査で同部の蠕動が消失し, 内視鏡検査で器質的閉塞病変を否定できたため, 全身性硬化症に合併した偽性腸閉塞と診断した. 保存的治療で軽快したが, 1か月後に腸閉塞が再燃したため病変部回腸を切除した. 病理組織では平滑筋層の著明な萎縮を認め, これによる腸管運動不全が原因と考えられた. 術後1年経過したが腸閉塞の再発はない. 一般に偽性腸閉塞は内科的治療が中心だが, 平滑筋萎縮の高度な症例では薬物治療に抵抗し, 長期の絶飲食, 中心静脈栄養を要する. イレウス症状を短期間に反復し, 病変部が限局する偽性腸閉塞では, 外科的治療を考慮すべきと考えられた.
  • 丸山 起誉幸, 山崎 泰男, 内田 健二
    2004 年 37 巻 5 号 p. 600-603
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性. 既往歴: 1994年3月, 十二指腸癌に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除を受けている (T4, tub1, med, INFα, ly0, v0, n0, H0, P0, M0, stage IIIA). 現病歴: 健康診断で便潜血陽性. 大腸内視鏡検査を施行し, 横行結腸に1.5cm大の頂部に潰瘍を有する粘膜下腫瘍を認めた. 生検結果から高分化型腺癌と診断した. 2001年11月29日, 横行結腸部分切除を施行した. 病理組織学的所見として, 大小不整形の異型腺管が漿膜から粘膜下層にかけて多数みられ, wel, ss, v0, ly1, n3 (+)(No.223), stage IIIbであった. 十二指腸癌の組織像と比較検討した結果, 十二指腸癌の大腸癌転移として矛盾しない組織像であった. 転移性大腸癌の頻度は0.1%から1%とされている. 転移性大腸癌は術後7年以上で発症する場合もあり, 定期的な消化管検査が必要である. その予後は不良であるが, 治癒切除可能であれば原発性大腸癌に準じた手術を行うべきである.
  • 籾山 信義, 石川 孝, 市川 靖史, 嶋田 紘
    2004 年 37 巻 5 号 p. 604-607
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性で, 平成6年に直腸カルチノイド (Rb, 径3.2cm)・同時性肝転移に対して, 直腸低位前方切除術・肝部分切除術を施行された. 病理診断は, 深達度mp, ly2, v2, n2 (+)(5/7個) であった. その後, 残肝再発に対する3回の肝切除術と, 骨盤内リンパ節再発に対するリンパ節郭清術を施行された. 平成13年8月, 乳房腫瘤を主訴に乳腺外来に受診. 左乳房AC 領域に径4cmの腫瘤を触知し, 穿刺吸引細胞診でClass Vと診断された. 同年9月, 乳房腫瘤摘出術が施行され, 病理組織学的に直腸カルチノイドの乳房転移と診断された. 乳房腫瘤のホルモンレセプターは陰性であった. 消化管カルチノイドの転移臓器としては, 肝, リンパ節が圧倒的に多く, 乳房は極めてまれである. 本症例の臨床経過に加え, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 坂口 博美, 加藤 真, 窪田 智行, 飯田 有二, 青山 吉位, 渡邊 智仁, 長坂 徹郎
    2004 年 37 巻 5 号 p. 608-613
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で, 排尿痛を主訴に当院を受診した. 直腸指診では肛門縁より4cmの直腸前壁に表面平滑な硬い腫瘤を触知した. 骨盤部CTおよびMRIでは小骨盤腔を占める直径10cm, 内部不均一な腫瘤を認めた. 経直腸的針生検では間葉系腫瘍が疑われ, 免疫組織化学による検索で, CD34には強く, c-kitには弱く染色された. またS-100, smooth muscle actinには染色されなかった. 以上の所見より直腸gastrointestinal stromal tumor (GIST; uncommitted type) と診断し腹会陰式直腸切断術を施行した. 切除標本肉眼所見では, 腫瘍は大きさ14×10×8cmで直腸前壁から壁外性に発育していた. 切除標本の免疫組織化学的検討では針生検と同じ所見であった. c-kit陽性のGIST再発例に対し, 慢性骨髄性白血病の治療薬STI571の有効性が報告されるようになった. STI571による術前治療を考慮した経直腸的針生検標本の免疫組織化学的検索は有用である.
  • 七島 篤志, 久松 貴, 澤井 照光, 遠山 啓亮, 中越 享, 永安 武
    2004 年 37 巻 5 号 p. 614-618
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は69歳の男性. 平成14年12月に逆流性食道炎による上腹部痛が出現し, 腹部CT上肝S78に4cm大の嚢胞状の肝腫瘍が発見された. 精査中, 大腸内視鏡検査で直腸Rsを中心に不整な陥凹と粘膜ひだの集中を認める8mm大のIIa+IIc型大腸癌を原発巣として確認した. 原発巣の粘膜下層以深への浸潤と肝転移が疑われたため, 平成15年1月23日にD2郭清を伴う前方切除術および肝S78部分切除を施行した. 病理組織学的診断で原発巣は中分化腺癌で, 深達度sm1, ly0, v1で, 肝も原発巣と同様の組織所見で内部は壊死性に融解していた. Rs, 0-IIa+IIc, T1, n (-), P0, H1, M (-) で, JS CCR分類の組織学的病期IV, 組織学的根治度Bの結果であった. 微小で軽度の癌浸潤でありながら, 同時性肝転移をきたしたまれな表面型の直腸早期癌であった.
  • 小熊 潤也, 小澤 壯治, 北川 雄光, 才川 義朗, 安藤 暢敏, 北島 政樹
    2004 年 37 巻 5 号 p. 619-624
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    咽頭食道憩室 (Zenker 憩室) は咽頭食道後壁で, 下咽頭括約筋斜走部と輪状咽頭筋横走部との間の解剖学的脆弱部, いわゆるKillian三角部に圧出性に生じる憩室で, 食道憩室の中でもその割合は低く, 本邦ではまれな疾患である. 1988年から2003年までの16年間に教室では7例のZenker 憩室に対し手術を施行した. これら7例を対象に, 臨床的特徴および治療法について検討した. 初発症状は全例で嚥下困難を認めた. 術式は全例に憩室切除術を施行し, さらに4例に輪状咽頭筋切開を追加した. 術後症状は6例で著明に改善し, 術後合併症は肺炎および嗄声をそれぞれ1例認め, 再発は1例も認めなかった. 今回の検討で, 本疾患に対する憩室切除術に輪状咽頭筋切開を付加した術式の有効性が示唆されたが, とくに憩室の大きい症例は, 手術操作の難易度が高く, 術後合併症を起こしやすいので, 慎重な手術操作が求められる.
  • 荒木 京二郎, 肱岡 範
    2004 年 37 巻 5 号 p. 625-626
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
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