日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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40 巻, 12 号
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  • 白坂 健太郎, 船橋 公彦, 小池 淳一, 斉藤 直康, 塩川 洋之, 越野 秀行, 牛込 充則, 栗原 聰元, 後藤 友彦, 寺本 龍生
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1881-1886
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 穿孔を合併した大腸癌患者の術後のサーベイランスについては, いまだ統一した見解は得られていないのが現状であることら, 穿孔を伴った大腸癌患者の長期予後を含めた臨床的特徴について検討を行った. 対象と方法: 1984~2004年の20年間に腹膜炎で発見された大腸癌28例を対象とし, 臨床病理組織学的背景と術後の再発形式および予後を検討した. 成績: 男女比は20: 8で, 平均年齢61.5歳 (45~82歳). 部位としてはS状結腸 (56%) に多く, 穿孔部位は病変の口側13例, 腫瘍部15例で, 遊離穿孔は18例 (64.3%) に認められた. 組織学的進行度は, stage II17例, stage III7例, stage IV3例, 不明1例で, 対象の半数以上の60%がstage IIであった. 手術は22例 (78%) に根治術が行われたが, 4例がDICによる術後合併症死であった. 再発例は32%(7/22) で, stage IIおよびIIIの29%に認められた. 再発形式は肝臓2例, 肺+局所1例, 腹膜2例, 吻合部1例, 局所再発1例で, 再発時期は平均33.6か月 (2年10か月) であった. 生存率は63.5%で, これは深達度ss以上の非穿孔153例 (コントロール群) のstage IIIに相当するものであった. 結論: 穿孔と大腸癌の予後との関連性が示唆された. 穿孔症例の再発は穿孔に関連するものが多く, 慎重な経過観察が必要と考えられた.
  • 西川 和宏, 田中 康博, 藤井 眞, 森本 芳和, 松田 宙, 広田 将司, 岩瀬 和裕
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1887-1892
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    皮膚筋炎合併胃癌において骨格筋転移を来した極めてまれな1例を経験したので報告する. 症例は65歳の男性で, 主訴は筋力低下, 食欲不振. 顔面・前胸部に不定形紅班あり. 両側手指背側にゴットロン兆候あり. CPK高値と胃体上部に3型腫瘍を認めた. 皮膚筋炎合併胃癌と診断し, ステロイド投与開始3週後胃全摘術を施行した. 病理組織学的検査はpor1, pT2 (SS), pN1, pH1, pP0, CY0, pM0, Stage IVであった. 術後1か月目から約7か月間TS-1による化学療法を施行した. CEA値は正常化し筋力低下は改善した. 術後9か月目に右肩背側, 右大腿外側, 右膝上内側に有痛性の腫瘤が出現した. MRIにて右外側広筋, 棘下筋内にリング状に濃染される腫瘤像を認めた. 大腿外側の経皮吸引針生検にて転移性腺癌と診断した. Paclitaxelによる化学療法を開始したが, 肝転移巣の増大, 傍大動脈リンパ節の腫大と腹水を認め, 術後11か月で死亡した.
  • 高橋 直人, 柏木 秀幸, 小村 伸朗, 坪井 一人, 矢永 勝彦
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1893-1897
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は十二指腸潰瘍穿孔を契機にZollinger-Ellison症候群 (以下, ZES) と診断し, 選択的胃迷走神経切離, 幽門洞切除術を施行した症例の術後に, 腫瘍再発に伴う高酸分泌を認め, それに対してProton pump inhibitorの長期投与が有用であった症例を経験した. しかし, 本症例でその11年後, MEN I型合併による残胃のEnterochromaffin-like cell細胞由来カルチノイド腫瘍を生じた. それに対して残胃全摘, 膵前面リンパ節摘除, 回結腸間置術および右副甲状腺摘出術を施行した. 病理組織学的検査免疫染色でガストリン陽性の十二指腸ポリープと膵頭リンパ節転移がみられ, gastrinomaの再発および転移と診断した. 多発残胃ポリープはガストリン陰性, GrimeliusおよびChromogranin A染色陽性のカルチノイドであった. 残胃ポリープは高ガストリン血症によるECL細胞のカルチノイド化が推測された. 最終手術より約9年 (初発から約20年) 経過した現在ガストリン値は高いながら, 遠隔転移なく生存中である.
  • 泉 貞言, 塩田 邦彦
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1898-1903
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性で, 平成18年1月に多発性嚢胞形成性肝腫瘍に対し肝部分切除術を施行した. 病理組織学的診断がカルチノイドであったため, 術後に検血・CT・胃および大腸内視鏡検査などにて原発巣検索を施行したが原発巣は認められなかった. 同年6月にPET/CTを施行したところ左腎臓下極レベル大動脈左側に明らかな集積を認め, 小腸腫瘍あるいはリンパ節転移を疑い開腹手術を施行した. トライツ靭帯近傍の後腹膜内に直径2cmのリンパ節腫大と十二指腸第III部に直径1cmの腫瘤を認めたため十二指腸第III~IV部にかけて切除した. 病理組織学的検査結果は十二指腸カルチノイドおよびリンパ節転移であった. 先に切除した肝病変も同様の組織像を呈しており, 転移病変として矛盾しない所見であった. 発見が困難な微小カルチノイドの原発巣の位置を転移性肝腫瘍切除後5か月目のPET/CTで孤立性リンパ節転移を発見したことにより見出すことができた興味深い症例であったため報告した.
  • 井上 昌也, 佐野 力, 島田 和明, 阪本 良弘, 奈良 聡, 小菅 智男
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1904-1909
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大動脈周囲リンパ節への著明な跳躍転移を認めたガストリノーマの1例を経験したので報告する. 症例は56歳の女性で, 多発性十二指腸潰瘍の診断で経過観察されていたが, 水様性下痢が出現し, 改善傾向なく近医を受診した. 腹部CTで膵頭部に25mm大の腫瘤を指摘され当院に紹介となった. ホルモン検査で血中ガストリンが異常高値で, 膵頭部のガストリノーマと診断した. 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術中に大動脈周囲リンパ節への転移を確認したため, 後腹膜リンパ節郭清を併施した. 病理組織学的検査では, ガストリン染色陽性の膵内分泌腫瘍であり, ガストリノーマと診断した. 腫瘍周囲の所属リンパ節への転移を認めなかったが, 大動脈周囲リンパ節への著明な跳躍転移を認めたまれな症例と考え, 若干の考察を加え報告する.
  • 多田 正晴, 土井 隆一郎, 小川 晃平, 川口 義弥, 江川 裕人, 平井 文彦, 上本 伸二
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1910-1914
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の女性で, 他施設で膵頭十二指腸切除を施行された. 術後35日後に突然40度の発熱があり, 肝膿瘍が判明したため, 抗菌薬投与を開始した. 経皮的ドレナージを予定していたが, 12時間後には症状が急激に増悪したため当院へ搬送された. 膿瘍の急激な進展と多量の門脈ガス, 腹腔内free airを認めたため, 緊急開腹を行った. 開腹時に腹腔内からガスが噴出したが, 消化管穿孔や縫合不全などは認めなかった. 肝膿瘍の破裂によるfree airと考えられた.術中肝組織と腹水からClostridium perfringensが同定された. 術後, 進行する高度の溶血を伴う肝不全, 循環不全によって, 転院22時間後に死亡した. 急激な黄疸の進行を認めた場合, 術後後期合併症の一つとしてClostridium感染症の可能性を念頭においた早期治療の開始が救命のために必須であると考えられた.
  • 松川 啓義, 八木 孝仁, 貞森 裕, 松田 浩明, 篠浦 先, 楳田 祐三, 成島 道樹, 岩本 高行, 佐藤 太祐, 田中 紀章
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1915-1920
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内臓逆位症は合併奇形が多く, かつ内臓逆位による診断治療の困難性が診療上問題である.完全内臓逆位症, Kartagener症候群に合併した肝腫瘍に肝拡大後区域切除を安全に施行した1例を経験した. 症例はKartagener症候群 (気管支拡張症, 副鼻腔炎, 右胸心) の55歳の女性で, 腹部臓器も逆位の完全内臓逆位症で, 肝後区域中心に13cm径の血管性腫瘍を認めた. 内臓奇形・変異としては肝部下大静脈欠損・奇静脈連結・上大静脈還流, 肝静脈右房還流, 右腎静脈半奇静脈還流, 多脾, 膵体尾部欠損, 腸回転異常がみられた. 術中所見では肝部下大静脈欠損により解剖学的肝右葉は後腹膜に固定されず, 解剖学的右三角間膜から後腹膜無漿膜野はほとんどみられなかった. 完全内臓逆位症に対する肝切除も, 左右鏡像関係, 腹部臓器・脈管の変異を念頭におき, 解剖学的構造を同定認識し手術操作を行うことで通常の肝切除例と同等な切除手術が可能であった.
  • 松永 和哉, 上坂 克彦, 前田 敦行, 金本 秀行, 古川 敬芳
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1921-1926
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性で, C型肝硬変の経過観察中, 肝外側区域から肝外へ発育する11cm大の肝細胞癌 (hepatocellular carcinoma; 以下, HCC) および腹膜播種結節を認めた. 前医で肝動脈塞栓術が施行されたのち紹介された. 急速に発育し腹腔内破裂を来したHCCと診断し, 肝外側区域部分切除, 脾・胃壁・左横隔膜合併切除, 右横隔膜下播種結節切除を施行した. 切除標本の病理組織学的検索で肉腫様HCCと診断した. 切除後2か月のCTで腹膜播種再発を認めた. 全身状態を考慮し経過観察としていたところ, 術後4か月目のCTで, 腫瘍はかなりの部分自然退縮した. 自然退縮は約4か月間持続したが, その後は再度急速に増大し, 最後は胃への直接浸潤による消化管出血で失った. この間, 一部の再発巣は完全消退のままであった. 一般に, 肉腫様変化を来したHCCは急速に発育し不良であり, 本症例のように自然退縮を来すことは極めてまれと考えられた.
  • 野見 武男, 庄 雅之, 西沼 亮, 中島 祥介
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1927-1932
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    遅発性膵液漏を契機として発症したと考えられる血栓性血小板減少性紫斑病 (thrombotic thrombocytopenic purpura; 以下, TTP) の1例を経験したので報告する. 症例は60歳代の男性で, 膵管内乳頭粘液性腺癌に対し膵頭十二指腸切除術施行50日後に, 発熱と腹痛を主訴に当科再診. 腹部CTにて膵空腸吻合部近傍に液体成分の貯留を認め, 膵液漏の診断にて緊急入院となり, ドレナージ術を施行. 保存的に軽快しつつあったが, 入院1か月後に38℃台の発熱と動揺性意識障害が出現. 血液検査にて血小板減少, 貧血, 腎機能障害を認めた. また, ADAMTS13活性は46%と軽度の低下を認め, 臨床症状, 検査結果よりTTPと診断し, 血漿交換等の集中管理を行い, 発症より90日後に軽快退院した. 術後発症のTTPについてはいまだ不明な点も多いが, 治療が遅れると重篤な経過をたどることも多いため, 迅速な診断と適切な治療が重要である.
  • 柴田 耕治, 塩見 正哉, 東島 由一郎, 渡邊 克隆, 尾辻 英彦, 山口 直哉, 神谷 順一
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1933-1937
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性で, 56歳の時に左腎癌で根治的腎摘除術を受けている. 腫瘍の大きさは72mmでありリンパ節転移は陰性であった. 術後はインターフェロン治療を施行した. 術前や術直後の画像診断では脾臓に腫瘍は認めなかったが, 術後6か月のCTで脾臓に14×10mmの大きさの腫瘤が出現した. 術後16か月には腫瘤は20×16mmに増大したため, 腎癌脾転移を疑い, 脾臓を摘出した. 腫瘍は淡赤色スポンジ様であり, 病理組織学的に脾リンパ管腫と診断した. 最近24年間の日本語文献検索では増大傾向を認めた脾リンパ管腫の報告は4例であり, 脾リンパ管腫が新たに出現したとの報告はない. 本例が急速に増大したものか, 新たに出現したものか不明であるが, まれなリンパ管腫と考え報告する.
  • 庄中 達也, 三澤 一仁, 菊地 一公, 武田 圭佐, 大川 由美, 小川 弥生, 佐野 秀一
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1938-1943
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    まれな結腸原発のgastrointestinal mesenchymal tumor (以下, GIMT) の穿孔例を経験したので報告する. 症例は46歳の男性で, 急激な心窩部痛を訴え当院を紹介受診. CT上, 横行結腸に腫瘍とfree airを認め, 穿孔性腹膜炎の診断にて開腹. 横行結腸肝彎局部に6cm大の腫瘍と腹腔内に多量の濃汁を認めた. 結腸右半切除・洗浄ドレナージ術を施行. 腫瘍と正常粘膜との境界部に穿孔を認めた. 病理組織学的診断にて腫瘍粘膜下に紡錘形細胞の増殖を認め, 免疫染色にてvimentinのみ陽性で, c-kit, CD34, S-100, SMAともに陰性であり, GIMTと診断した. 結腸原発の間葉系腫瘍としてGIMTは頻度が低く, さらに穿孔の報告例は少ない. まれなGIMTの穿孔例について報告する.
  • 斎藤 健一郎, 芝原 一繁, 黒川 勝, 森山 秀樹, 長谷川 洋
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1944-1949
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の女性で, 上腹部痛, 悪心・嘔吐にて来院し腹部造影CTで上腸間膜静脈・門脈血栓症と診断された. 腸管壊死を示唆する所見は認めず, ヘパリンの持続点滴静注 (10,000単位/24hr) を行い症状は軽快した. 発症から4か月後に再び悪心・嘔吐が出現し腸閉塞を発症した.イレウス管造影検査にて上部空腸での高度狭窄と十二指腸横行結腸瘻を認め手術を施行した.トライツ靭帯より約40cm肛門側の空腸に4cm長の著明な狭窄部位を認め小腸部分切除術を施行し軽快退院した. 上腸間膜静脈・門脈血栓症では比較的早期に腸管壊死や腸閉塞を併発し手術治療を要することも多いが本症例のように晩期にも腸閉塞を発症することがあり, 軽快後も経過観察が必要である.
  • 大橋 勝久, 古川 聡美, 小村 憲一, 山名 哲郎, 岡本 欣也, 高橋 知子, 小原 邦彦, 岡田 大介, 佐原 力三郎
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1950-1954
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性で, 近医より管理困難な巨大肛門周囲膿瘍の診断で紹介入院となった. 当初クローン病を強く疑ったが, 入院後の検査では消化管病変認めず, 後日行ったデブリッドメントの会陰組織よりクローン病の診断にいたった. 会陰部は難治創化し, 大きな組織欠損の状態となった. 疼痛もひどく, 麻薬製剤投与でも除痛不十分であったが, Infliximabの投与により速やかな除痛と創傷治癒を認めた. 自験例のような巨大な組織欠損と疼痛に対しInfliximabが著効した報告は本邦では認めなかった.
  • 小熊 潤也, 田村 光, 青木 真彦, 細田 桂, 城戸 啓, 夏 錦言, 雨宮 哲
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1955-1959
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の女性で, 排便後に肛門から脱出した腫瘤触れ, 左下腹部痛を自覚し当院受診した. 来院時約5cmの腫瘤が肛門より脱出しており, これを徒手整復した後, 腹部CTを施行したところ, S状結腸の腸重積の所見を認めた. 注腸造影X線検査にて整復後緊急入院となった.精査の結果, S状結腸脂肪腫が先進部の腸重積と診断した. 今後も腸重積を繰り返す危険性は高く, 手術適応と判断し, 腹腔鏡補助下手術を選択した. 腹腔鏡補助下にS状結腸を部分切除し端々吻合した. 病理組織学的検査所見は粘膜下層より発生したatipical lipomatous tumorであった. 術後経過は良好で, 第9病日に軽快退院した. 大腸atipical lipomatous tumorによる成人腸重積に対し腹腔鏡補助下手術を施行した症例は本邦では報告例はない. 本症例のように, 腸重積を繰り返す症例は外科的手術, とくに腹腔鏡補助下手術の良い適応と考える.
  • 山本 純也, 渕野 泰秀, 大石 純, 張村 貴紀, 岩永 真一, 城崎 洋, 豊島 宏
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1960-1965
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Multidetector row CTは, 低侵襲かつ短時間に腹腔内の多くの情報を得ることが可能で, さまざまな疾患の術前検査として用いられている. 症例は63歳の女性で, 成人腸回転異常症を伴った上行結腸癌に対して, multidetector row CTを用いて術前精査を行い, D3郭清を伴う腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行した. 注腸造影X 線検査にmultidetector row CT (multiplanar reconstruction, volume rendering, 3D-CT Angiography) を加えることで, 解剖学的異常, 腫瘍の部位と腫瘍栄養血管の走行を十分に把握し, より安全に手術を行うことができた. Multidetector row CTは, 自験例のような解剖学的異常を伴う疾患や, 腹腔鏡下手術の術前検査として非常に有用であると考えられた.
  • 坂部 龍太郎, 佐藤 幸雄, 平林 直樹, 多幾山 渉, 小林 美恵, 亀岡 稔, 中島 亨, 佐伯 修二, 向田 秀則, 山下 芳典
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1966-1971
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内臓悪性腫瘍からの臍転移はSister Mary Joseph.s Nodule (以下, SMJN) と呼ばれ, 予後不良の兆候として知られている. 大腸癌原発のSMJNは比較的まれで, 本邦では37例が報告されている. 我々はSMJNを伴うS状結腸癌の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.症例は54歳の男性で, 腹痛と便秘を主訴に当院を受診した. 大腸内視鏡検査にてS状結腸に全周性狭窄を伴う腫瘍を認め, 生検にて高分化腺癌と診断された. 身体検査所見では臍部に2cm大の発赤を伴う腫瘤を認め, 穿刺吸引細胞診にて腺癌の転移と診断された. 腹部CTでは臍部に造影効果のある腫瘤を認め, 骨盤底に腹水と腹膜播種を伴っていた. 開腹すると多発腹膜播種, 多発肝転移を認めた. 横行結腸双口式人工肛門造設を施行し, 術後全身化学療法を施行したが, 癌の急速な進行により術後4か月で死亡した. 大腸癌原発のSMJNでは他臓器転移の状況を検討したうえでの治療選択が重要と考えられた.
  • 荻野 崇之, 大植 雅之, 能浦 真吾, 山田 晃正, 宮代 勲, 矢野 雅彦, 大東 弘明, 佐々木 洋, 石川 治, 今岡 真義
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1972-1976
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は44歳の男性で, 肛門縁より7cmにわたる4型腫瘍で生検の結果がsignet-ring cell carcinomaであり, 術前CRT後に腹会陰式直腸切断術, 側方郭清を施行. 術後20日目に右下肢の浮腫, 疼痛が出現しCTにて骨盤内リンパ嚢腫および右外腸骨静脈~大腿静脈に血栓を認めた. 抗凝固療法およびリンパ嚢腫のドレナージを施行後, 症状は改善した. 症例2は54歳の女性で, 術前CTで側方リンパ節転移を認め, CRT後に腹会陰式直腸切断術, 側方郭清, 膣後壁合併切除を施行. 術後42日目より労作時呼吸困難が出現し, CT, USにて肺塞栓, 両側外腸骨静脈の血栓および骨盤内リンパ嚢腫を認めた. 永久型下大静脈フィルターを留置し, 抗凝固療法, 血栓溶解療法およびリンパ嚢腫のドレナージを施行後, 症状は改善した. 2症例とも骨盤内リンパ嚢腫による外腸骨静脈圧排像を認めており, リンパ嚢腫と静脈血栓塞栓症との関連が示唆された.
  • 大野 玲, 上田 吉宏, 吉田 謙, 谷口 和樹, 永原 誠, 石丸 神矢, 石田 孝雄, 波多野 吉治
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1977-1981
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は79歳の女性で, 回腸原発悪性リンパ腫のため回盲部切除後, 補助化学療法としてcyclophosphamide, adriamycin, vincristine, prednisolone(CHOP)を施行した. 2クール施行後より息切れと発熱が発現した. 胸部X線単純検査および胸部CTにて肺門を中心としたスリガラス陰影を認めた. β-Dグルカン高値のためニューモシスチス肺炎(pneumocystis pneumonia; 以下, PCP)と診断し, バクトラミンおよびステロイドを使用したところ著効し自覚症状および画像所見も改善した. PCPは日和見感染症であり, 強力な免疫抑制療法時やHIV感染者, 臓器移植患者のみならず抗癌剤による化学療法時に発症するリスクが高い. 化学療法による副作用として発症するPCPは早期診断, 早期治療が重要と考えられた.
  • 成田 和広, 角田 明良, 中尾 健太郎, 神山 剛一, 山崎 勝雄, 渡辺 誠, 鈴木 直人, 大中 徹, 竹中 弘二, 草野 満夫
    2007 年 40 巻 12 号 p. 1982-1986
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    回腸瘻閉鎖術のクリニカルパス(以下, CP)はほとんど報告がなく, 術後在院日数4日間の回腸瘻閉鎖術に対するCPを作成し評価した. 平成16年4月から回腸瘻閉鎖術を施行した26例を対象とした. CP導入前14例(非CP群)とCP導入後12例(CP群)で検討を行った. CP群は手術前日入院, 術後第4病日に退院の予定とした. CP導入後の実施率は100%であった.摂食開始日の中央値は非CP群2日, CP群1日でCP群は有意に早期であった. 中央値で在院日数は非CP群15日, CP群6.5日, 術後在院日数は非CP群10日, CP群4日であり, それぞれCP群で有意に短期間であった. X線非透過性マーカーによる胃排出能の検査ではgastric ileusは第1病日でほぼ改善されていた. CP群は75.0%が第4病日で退院した. 回腸瘻閉鎖術は術後第4病日に退院可能であり, CP導入は有効であった.
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