日本消化器外科学会雑誌
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45 巻, 9 号
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症例報告
  • 加藤 綾, 大島 貴, 長谷川 慎一, 五代 天偉, 湯川 寛夫, 藤井 正一, 利野 靖, 國崎 主税, 今田 敏夫, 益田 宗孝
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 905-913
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     症例は73歳の女性で,主訴はなし.胸部X線写真にて異常陰影を指摘され,当院受診した.CTで左胸腔内に巨大な腫瘍と,さらに,胃壁に連続した腫瘍を認めた.EUSでは胸腔内の腫瘍は食道第4層と連続しており,穿刺吸引組織診にて食道gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断した.胃腫瘍についてはEUSにて第4層との連続を認めたことから胃原発の間葉系腫瘍と診断した.画像診断より完全切除可能と判断し手術を施行した.摘出した食道腫瘍は最大径130 mm,胃腫瘍は42 mmで,いずれもKIT陽性であることから食道GISTと胃GISTが重複した極めてまれな症例と診断した.食道GISTは高リスクであり,c-kit遺伝子変異解析でexon11の変異を認めたことからimatinibの術後補助化学療法を開始したが,副作用のため中止した.2年3か月経過した現在までに再発を認めていない.
  • 岡本 宏史, 藤島 史喜, 笠島 敦子, 宮田 剛, 小野寺 浩, 亀井 尚, 武山 大輔, 洞口 正志, 里見 進, 笹野 公伸
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 914-922
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     一般的に予後不良な食道神経内分泌癌に関して,なかでも頻度の少ない大細胞型神経内分泌癌に対し外科的治療を行い長期予後を得た1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は56歳の男性で,嚥下時つかえ感を主訴に前医を受診し食道神経内分泌癌と診断され当科紹介となった.胸部中部食道に0-Ip型腫瘍を認め,cT1bN0M0,cStage Iと診断し胸腔鏡下食道切除術を施行した.病理組織学的検査および免疫組織化学検査にてchromogranin A+,synaptophysin+,CD56+,p63–,Ki-67陽性率81.8%,多数の核分裂像を認め,neuroendocrine carcinoma(以下,NECと略記),large cell type,pT1b(SM1),pN0,pStage Iと診断した.術後補助療法は施行せず,現在3年5か月無再発生存中である.本症例はリンパ節転移を伴わない表在癌であったことから手術単独での長期予後が得られた可能性が考えられた.
  • 的野 吾, 田中 寿明, 森 直樹, 永野 剛志, 白水 和雄, 藤田 博正
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 923-929
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     症例は63歳の男性で,検診の上部消化管内視鏡検査で食道粘膜下腫瘍と診断され半年後の経過観察とされた.半年後の検査で粘膜下腫瘍は多発し,超音波内視鏡下生検で扁平上皮癌と診断された.CTで食道の主病巣はT3,リンパ節はNo. 105に腫大を認め気管を圧排していた.また気管から右主気管支にかけて右側気管壁の肥厚を認めた.PETで主病巣とNo. 105リンパ節の部位に集積を認めた.気管支鏡検査で気管から右主気管支にかけて膜様部と軟骨部の境界に不整な多発する隆起性病変を認めた.初回生検で確定診断に至らなかったが,2回目の生検で気管気管支骨軟骨形成症と診断された.その結果,Stage III食道癌と診断し術前化学療法後に手術を行った.腫瘍の急激な進行のため気管転移・浸潤を疑い治療方針決定に苦慮した.非常にまれではあるが,我々消化器外科医も気管気管支骨軟骨形成症について留意しておくべきであると思われる.
  • 武藤 頼彦, 木村 正幸, 福長 徹, 菅本 祐司, 成島 一夫, 花岡 俊晴, 松原 久裕
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 930-935
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     進行食道癌に対してステント留置後,胃内に逸脱した症例を経験した.まず胃内に脱落したステントを留置スネアにて縫縮・細径化を図った.その後,再留置した食道ステント内を通して逸脱ステントを透視併用内視鏡下に安全に抜去しえたので報告する.
  • 横尾 貴史, 箕畑 順也, 大浦 康宏, 眞鍋 信也, 吉田 彰, 石川 靖二, 湧谷 純
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 936-943
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     早期胃癌術後5年目にリンパ節再発を来した症例を経験した.症例は55歳の女性で,50歳時に腫瘍径1 cmの分化型粘膜内癌に対し幽門側胃切除術を施行した.術後5年目の検査として撮影したCTでリンパ節腫大が指摘された.胃癌のリンパ節再発と考えられたが,他のリンパ節転移・遠隔転移はみられなかったため摘出術を施行した.開腹所見では,総肝動脈上から肝門部にかけて径3 cm大の表面平滑なリンパ節腫大を認めた.周囲への浸潤傾向はなく容易に摘出可能であった.他のリンパ節腫大は認めなかった.病理組織学的検査所見では低分化型腺癌であり,胃癌のリンパ節転移と診断した.一般に再発のリスクはほとんどないと考えられる分化型粘膜内癌に再発を来したまれな症例と考えられる.
  • 井上 彬, 輿石 直樹, 絹田 俊爾, 丸山 傑, 辻山 麻子
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 944-951
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     症例は40歳の女性で,心窩部痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTで胃噴門部に肝臓への直接浸潤を疑う径13.0×8.0 cmの巨大な腫瘤を認め,生検結果より高リスクのgastrointestinal stromal tumorと診断した.手術リスクや機能温存を考慮し,イマチニブ(400 mg/日)を用いた術前化学療法を開始した.投与28週後,CTで腫瘍は径8.0×3.5 cmへと縮小し手術を施行した.手術所見では腫瘍の大部分が液状化変性し,周囲組織との癒着は軽度で,噴門側胃切除術にて根治切除が可能であった.術後病理組織学的診断では腫瘍組織の大部分に硝子様変性を認め,腫瘍細胞数は激減しており,化学療法が著効したものと考えられた.術後28週のCTで孤発性の播種再発を認めたため,イマチニブ(400 mg/day)の投与を開始した.投与開始後24週の現在,partial responseが得られている.
  • 相川 佳子, 谷澤 豊, 近藤 潤也, 徳永 正則, 坂東 悦郎, 川村 泰一, 絹笠 祐介, 金本 秀行, 上坂 克彦, 寺島 雅典
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 952-960
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     我々は,胃びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma;以下,DLBCLと略記)に非外科的治療を施行し,寛解導入後に胃癌が発見された2例を経験したので報告する.症例は61歳の男性と67歳の女性で,いずれもStage Iの胃DLBCLの診断で,前者は化学療法,後者には化学放射線療法を施行し,寛解が得られた.リンパ腫寛解後,1例目は1年後,2例目は7年後に早期胃癌が発見され,両者ともに胃全摘を行った.前者は術後10か月,後者は術後9か月,無再発生存中である.胃悪性リンパ腫に対しては,化学療法,放射線治療などの非外科的治療が標準治療とされているが,近年完全寛解後の胃癌発生が報告されるようになった.化学放射線療法による二次発癌の可能性も否定できないため,胃悪性リンパ腫治療後は,定期的な内視鏡検査による厳重なフォローアップが重要である.
  • 山梨 高広, 鳥海 史樹, 矢作 雅史, 白鳥 史明, 五十嵐 一晴, 西 知彦, 半田 寛, 関根 和彦, 向井 清, 下山 豊
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 961-969
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     症例は50歳の男性で,健診腹部USにより膵尾部腫瘤を指摘され,精査加療目的にて当院受診となった.腹部CT上,膵尾部に9 cmおよび3 cm大,膵頭後部に3 cm大の腫瘤を認めた.膵頭後部リンパ節転移をともなう膵尾部悪性内分泌腫瘍を疑い,膵体尾部切除を施行したが,切除標本の免疫組織化学染色検査にて孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor;以下,SFTと略記)と診断された.また凝固壊死巣および多数の核分裂像が認められ,malignant SFTが疑われた.術後21か月後の腹部CTにて膵局所再発を認めたが,手術は希望されず,化学放射線療法を施行後,経過観察中である.SFTは比較的まれな腫瘍であり,多くは胸膜に関連した胸腔内病変として発生する.膵臓原発のSFT報告例は極めてまれであり,再発を含め悪性の転帰をたどった症例は自験例のみである.貴重な症例と考え,文献的考察を加え報告する.
  • 本山 博章, 小林 聡, 横井 謙太, 北原 弘恵, 古澤 徳彦, 窪田 晃治, 清水 明, 中田 岳成, 横山 隆秀, 宮川 眞一
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 970-976
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     症例は63歳男性で,心窩部痛と黄疸を主訴に発症した.膵鈎頭部に2.5 cm大の乏血性腫瘤を認め, 膵鈎頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行.病理組織学的検査の結果,紡錘細胞型退形成性膵管癌(anaplastic ductal carcinoma of the pancreas;以下,ADCと略記)と診断された.補助化学療法は施行せず,術後7年無再発生存中である.ADCは浸潤性膵管癌の一亜型であり,まれで予後不良な腫瘍である.その細胞形態から紡錘細胞型を含め4型に分類されるが,これまでに紡錘細胞型における長期生存例の報告はない.ADC本邦報告例に自験例を加えた検討を行い,報告する.
  • 岩内 武彦, 竹内 一浩, 井関 康仁, 木下 春人, 西居 孝文, 日月 亜紀子, 小坂 錦司, 内間 恭武, 田中 肇
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 977-985
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     直腸癌の甲状腺,膵転移はそれぞれ比較的まれであり,同一症例に異時性に認め,切除された報告はない.今回,直腸癌術後,肺,甲状腺,膵臓,肝臓に異時性に転移を来し,切除し長期生存が得られた症例を経験したので報告する.症例は71歳の男性で,1998年,直腸癌(Rb)に対して低位前方切除術,D3郭清を施行した.その後,肺転移が出現し2回にわたり肺部分切除術施行した.初回手術6年11か月後,甲状腺転移に対し右葉切除術施行,同8年2か月後,膵転移に対し膵体尾部切除術施行,同9年3か月後,肝転移に対し肝部分切除術施行した.いずれも病理組織学的検査で原発巣と類似した中分化型腺癌で直腸癌からの転移と診断された.現在,原発巣切除から12年経過したが再発は認めず健在である.直腸癌の多臓器転移において,それが異時性に生じてくる症例は,根治が得られるのであれば積極的な外科切除を試みる価値があると考える.
  • 杉本 卓哉, 三毛 牧夫, 山田 成寿, 草薙 洋, 加納 宣康
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 9 号 p. 986-993
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/09/21
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     腹腔内の内ヘルニアのうち横行結腸間膜ヘルニアはまれな疾患である.術前診断は困難であり手術時に診断がつくことが多い.今回,我々は術前に横行結腸間膜ヘルニアと診断し,腹腔鏡下手術を施行した本症の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は腹部手術歴のない25歳の女性で,持続する腹痛と嘔吐を主訴に受診した.身体所見上,腹部は平坦,軟であったが,心窩部に圧痛を認めた.腹部CTで横行結腸の背側で尾側から頭側に向かって陥入する拡張した小腸を認めた.血管や十二指腸との関係から横行結腸間膜ヘルニアが疑われ,同日緊急腹腔鏡下手術を施行した.手術所見では,横行結腸間膜後葉に約2 cmの間膜欠損を認め,小腸が陥入しており,横行結腸間膜内ヘルニアと診断した.脱出腸管を整復後,ヘルニア門を縫合閉鎖した.陥入小腸に虚血性変化は認めず,術後4日目に退院した.
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