土木学会論文集
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2005 巻, 804 号
VII-37
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
[特集]
環境生態
Editorial
研究展望
  • 島谷 幸宏
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_3-804_9
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    生物多様性国家戦略の策定, 環境影響評価法の制定, 目的に環境の整備と保全が加えられた河川法・海岸法の改定, 自然再生推進法の制定など, 自然環境を保全・再生する法律, 制度が近年急速に整備された.
    このような社会状況の変化に即応する形で, 土木学会の中でも環境生態に関する研究は徐々に増加してきている. 1980年代には, 魚道の論文が数編見られる程度であるが1990年代になると, 水系の分野を中心に研究が盛んになり, 現在ではフルペーパの査読着き論文が1年間に60篇をこえるまでになっている. 研究分野も理念, 基礎的情報の収集, 目標や指標, 予測手法など広範囲にわたり, 対象とする生物も魚類, 甲殻類, 植物など30種類をこえている. 今後ますます環境生態分野の研究が進展するものと思われるが, 研究分野が専門家しつつあり, それぞれの分野で独自に発展する可能性がある. 研究手法や理念などは共通項も多くまた, 参考となる部分も多いため, 土木工学分野の中で環境生態分野の研究者間の情報交換, 意見交換ができる場の早急な創出が必要である.
和文論文
  • 後藤 益滋, 関根 雅彦, 金尾 充浩, 宮本 和雄, 樋口 隆哉, 今井 剛, 浮田 正夫
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_11-804_22
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    高水敷と天端の植栽を持つ一の坂川, 高水敷はあるが植栽のない吉敷川, 高水敷も植栽もない沢波川のホタル護岸について, 幼虫上陸調査, 羽化トラップ調査, 産卵調査等により, ホタルの護岸利用度を検証した. その結果, 一の坂川では高水敷と護岸, 吉敷川では高水敷, 沢波川では護岸下部が主要な蛹化場所であった. 一の坂川の高水敷は水没するため, 羽化は少なかった. 産卵は日中・夜間とも照度の低い水際部と水面上で観察された. これらの結果に基づき, 蛹化場所には適度な湿気のある土壌を水没しない高さに確保することが重要であること. また, 植栽は護岸の温度を下げ, 蛹化場所としての護岸の価値を高めるほか, 産卵場の創出にも有効であることを示した.
  • 余 輝, 焦 春萌, 岸本 直之, 日高 平, 津野 洋
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_23-804_32
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 水温分布を利用した成層期における湖湾と主湖盆の水交換フラックスの計算に適用できる方法として等温面法を提案した. さらに, 琵琶湖北湖と塩津湾の汚濁移流機構の解明の例として, 夏の4回の48時間連続総合調査を行い, 水温, 流れ, 栄養塩の空間分布・時間変化のデータを得た. 等温面法で当該湾と主湖盆との水交換フラックス, 栄養塩の拡散を計算した. その等温面法による水交換の計算結果をADCP実測結果と比較し, 本法の妥当性を検証した. また, 本法の適用範囲は湖沼表水層の成層安定度指標である無次元数Wedderburn Numberで判断し, 主湖盆と湖湾のような閉鎖水域との間における水交換フラックスの計算へのこの方法の汎用性を検討した.
  • 大羽 美香, Sangsan TEEPYOBON, 安納 幸子, 李 玉友, 野池 達也
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_33-804_42
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    廃棄物系バイオマスのメタン発酵反応槽における微生物の群集構造を把握することを目的として, 基質 (搾乳牛ふん尿, 余剰汚泥およびジャガイモ加工廃棄物), 発酵温度, 滞留時間が異なる反応槽についてPCR-DGGE法を用いた解析を行った. 中温発酵と高温発酵の微生物群集構造は基本的に異なっている. 同じ基質, 同じ温度条件では, HRTの変化による真正細菌と古細菌への影響が少なかった. また, 同じ高温種汚泥に対して異なるバイオマスで馴致した結果, 真正細菌が基質に左右されたが, メタン生成古細菌は類似しており, 高温性酢酸資化性メタン生成古細菌のMethanosarcina thermophilaと高温性水素資化性メタン生成古細菌Methanoculleus thermophilusがよく存在した.
[投稿論文]
和文論文
  • 津守 嘉彦, 越川 博元, 尾家 俊康, 津野 洋
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_43-804_50
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    現在の環境問題の1つとして地下水汚染が挙げられるが, その原因物質の1つはテトラクロロエチレン (PCE) である. PCEは難分解性物質であり, 発癌性の疑いもある. このような物質の処理方法として, 活性炭による物理的吸着と活性炭付着微生物による生物分解とを併せ持つ反応器である粒状活性炭膨張床型反応器でPCE分解連続実験を行いPCEの処理特性について検討した. その結果, 2.7~15.3mg―PCE/(kg-GAC・d) の負荷条件下で, 流入水のPCE濃度が2.7~17.2mg/Lに対して流出PCE濃度は0.5 μ g/L以下に処理できた. 回分式実験の結果PCEは生物分解され, TCEおよびVCになることが確認された. PCEの生物分解には, 共存基質としてシステインとエタノールが重要であることが示された. また, 反応器内にPCE分解菌であるDehalococcoidesの存在が確認された.
  • 田村 英寿, 平口 博丸
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_51-804_63
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 都市街区内の屋外熱環境を予測できる三次元数値モデルを開発し, 地上や屋上の部分的な緑化に伴う地上気温の低減効果に関する基本的な特性把握を試みた. 開発した数値モデルでは, 風や放射に及ぼす個々の建物の効果を考慮しつつ, 風速や気温・比湿・表面温度等の空間分布やその時間的な変化を10m程度の水平分解能で予測することができる. この数値モデルを単純化された都市街区に適用し, 夏季晴天日における緑化の効果を予測した結果, 地上緑化を施す街路の向きと風向との関係によって効果に大きな違いが見られることや, 斜めからの日射が建物間の鉛直循環流に影響を及ぼすため, 屋上緑化の地上への効果が風向によって異なることなどが明らかとなった.
  • 落 修一, 尾崎 正明
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_65-804_72
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    河川堤防や道路法面, 空港・公園等の緑地管理から大量の雑草刈草が発生している. この雑草は貴重なバイオマス資源であり, 積極的な利用が期待される. 本研究は, 干草と下水汚泥との混合嫌気性消化の効果を中温消化の実験により調べたものである. その結果, 干草の消化効率は下水汚泥と同等のレベルにあったが, 従来の消化槽では干草の均一な混合と円滑な引き抜きに支障がでる可能性が高く, 既設の嫌気性消化槽による混合嫌気性消化は不可能と判断された. そして, これに替わる, 消化液を干草に循環・散布する方式の有効性が示された. 干草と下水汚泥との中温・混合嫌気性消化法における干草からのガス発生率は390L-gas/kg-干草 (TS), 200L-CH4/kg-干草 (TS) であった. また, 干草の消化率は60%であった.
  • 石田 整, 花木 啓祐, 荒巻 俊也
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_73-804_81
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    東京湾流域の82の下水処理場を対象に, 排出権取引制度を導入した場合の汚濁負荷削減費用の節約効果を推定した. COD, 全窒素, 全リンの3取引対象物質を, 一元的に統合して取引する手法と個別に取引する手法の2通りの条件を設定し, 各下水処理場の実績値を考慮した排出権の取引モデルを構築することで, 取引を認めない場合と取引を認める場合の汚濁負荷削減費用を比較した. シミュレーションの結果, 流域全体で27%程度の汚濁負荷削減費用の節約が排出権取引によって可能であることがわかった. 大規模処理場では高度処理を導入して排出権を売却する利益が, 小規模処理場では排出権を購入して高度処理を回避することによる節約がそれぞれ大きい.
  • 山内 正仁, 増田 純雄, 木原 正人, 山田 真義, 米山 兼二郎, 原田 秀樹
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_83-804_92
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    近い将来, 海洋投棄が禁止されようとしている焼酎製造過程で発生する焼酎蒸留粕を陸上で有効利用するために, 焼酎蒸留粕と古紙を原料とした植物栽培用ポット (エコポット) を量産化する装置を開発した.
    本装置の最適稼働条件は, 原料の希釈倍率2倍, 成形時間3秒, 脱水時間50秒であった. また, エコポットを用いて小松菜の生育試験を実施し, ポットの農業用資材としての効果を検討した. その結果, エコポット中の窒素成分の70%程度は約1ヶ月間の栽培期間中にエコポットから溶出するが, 微生物による取り込みにより有機化が進行するため, エコポットは葉菜類 (小松菜等) のような短期作物よりも果菜類 (トマト等) のような長期作物に対して肥料効果が期待できる.
  • 宮里 直樹, 池本 良子, 高松 さおり
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_93-804_100
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    6ヶ所の下水処理場を対象として, 硫酸塩還元細菌と硫黄酸化細菌の現存量と活性の調査を行った. 処理場の種類, 採水時期にかかわらず, 硫酸塩還元活性が高い汚泥は硫黄酸化活性が高く, 処理槽流入水中の酢酸, プロピオン酸濃度が高いときに, 硫酸塩還元活性と硫黄酸化活性が高い傾向にあった. 糸状性硫黄酸化細菌 type 021N (Thiothrix spp.) の増殖が認められた2ヶ所の処理場に関して, FISH法による硫酸塩還元細菌と糸状性硫黄酸化細菌の変動を調査した結果, Thiothrix eikelboomiiの増殖とDesulfonema spp. の増殖の時期が一致していることが示された.
  • 手塚 公裕, 佐藤 洋一, 中村 玄正
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_101-804_111
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究では三春ダム流入河川を対象として, 河川流量が水質に与える影響及び水質とAGP (Algal Growth Potential) の関係を調査し実験を進めた. さらに, 平水時と増水時の流入栄養塩負荷が藻類増殖に与える影響について考察した. その結果, 以下のことが明らかになった.
    1) 藻類増殖に与える増水時の流入栄養塩負荷の影響は11~97% (平均値59%) を占め平水時より高い. 従って, 閉鎖性水域の藻類増殖を抑制するには増水時の流入栄養塩負荷対策が必要である.
    2) 藻類増殖に与える流入BAP (Bioavailable Phosphorus) 負荷の影響は23~74% (平均値46%) を占め比較的高い. 従って, 閉鎖性水域の藻類増殖を抑制するには流入BAP負荷対策が必要である.
  • 手塚 公裕, 佐藤 洋一, 中村 玄正
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_113-804_123
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究では微細土粒子の富栄養化ポテンシャル (栄養塩含有量, 溶出量), 移送特性, 藻類利用特性について調査及び実験を行い検討し, 以下の知見が得られた. 1) 採取全土壌よりも微細土粒子の方がリン含有量が1.4~2.1倍, リン溶出量が1.0~2.3倍と多い. 2) 採取全底質よりも微細土粒子の方がリン含有量が1.8~7.1倍と多く, 粒径の小さな河川底質ほどリン溶出量も多い. 3) 粒径の小さな土粒子ほど沈降速度が小さい. 従って, 微細土粒子ほど降雨に伴う土壌流出が起こりやすく, 河川でも移送されやすいと考えられる. 4) 粒径の小さな土粒子ほど藻類による底質含有 (懸濁態) リンの利用率が高い傾向があり, 微細土粒子では約30%と高い.
  • 細井 由彦, Dagnachew AKLOG, 増田 貴則, 中村 真理子
    2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_125-804_135
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    小規模な自治体の水道は給水区域が分散しており, 小さな無人の施設が多く点在している. 無人の施設に対しては, 定期的な巡回による維持管理が行われているが, 施設数が増加すると作業時間も長くなるため, その効率化が求められる. 本研究では, 多数点在する無人水道施設を効率的に維持管理する計画法について検討する. まず最も効率的な巡回経路の決定方法を検討する. さらに平常時の巡回作業の省力化とともに, 地震や豪雨災害等により道路が閉塞して孤立化した場合にもデータを提供し続けることができる自動監視装置の設置と最短巡回経路の組み合わせを最適に行う方法についても検討した. 遺伝的アルゴリズムを使用して最適な解を求める方法を提案し, 事例研究によりその有効性を示すことができた.
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