本研究は蚊取線香中のPyrethrin含量が從來行はれてゐる比色法
(4)のと余等が第8報で述べた容量法
(8)に依つて如何に表はれるかを比較すると共に,蚊取線香が貯藏中其のPyrethrinを幾何失ふかを定量し,更に線香中のPyrethrinが單位時間に空氣中へ燻焼放散される量を以つて有効度を定め從來Pyrethrin%のみに頼つて品質の優劣を決定して居つた缺陷を除去する目的を以つて行つたものである.共の結果次の事項が明かになつた.
1.蚊取線香中のPyrethrinの定量は從來比色法のみを以て行つてゐたが,含有される防黴劑がPyrethrin類似の還元力を示す爲めに實際より過大のPyrethrin量を示し,不適當であるので容量法に依り定量せられねばならぬ事を知つた.
2.蚊取線香貯藏中のPyrethrinの減損は除蟲菊乾花或は粉末の場合に較べて非常に少ぐ, 1年間に除蟲菊乾花では普通20~40%を減損するのに對して,平均15%以下に過ぎない.之は線香の素質が緻密で内部に存在するPyrethrinが室氣,熱及び光線に依つて影響される事が少い事に依るもので蚊取線香の特徴の1つと言ふ事が出來る.
3.蚊取線香の有効度とは「單位時間中に放出せられるPyrethrinの量」であるべきであるが,此の考の下に各種蚊取線香を比較してみると全Pyrethrin量の少いものでも燻焼時間の短いものならば,有効度は高くなり(例18號),逆に全有効成分量の高いものでも燻焼時間が著しく長いものでは有効度は劣る(例23號)様な結果たなる.それ故に蚊取線香の眞の優良品としては,有効成分と燻焼時間の兩者の高いもの(例17, 20, 21, 22, 23, 24號)でなければならない事になる.
本研究は農林省委託研究費及び文部省科學研究費で行つたものであつて茲に謝意を表す.
抄録全体を表示