Warnerの方法により分離したα-カぜインからWaugh等の言う真のα-カゼインとκ-カゼインとにそれぞれ相当するFraction I及びIIを分別し,各々に対するレンニン作用を比較した. Fraction I及びIIに対するレンニン作用は次の諸点で相異する.
(1) Fraction Iはレンニン作用を受けなくてもCaCl
2により凝固するが, Fraction IIはレンニン作用を受けなければCaCl
2を加えても透明な溶液状態を保つ.又Fraction IIはIのCaCl
2による凝固を阻止してその相互作用によってミセルを形成するが,このような安定化作用はレンニンによって失われる.
(2) Fraction IIはレンニンによって約8%の非蛋白態窒素を遊離するがFraction Iは殆んど分解を受けない.
(3) Fraction IIはレンニンによって次第に混濁するが, Fraction Iは透明なままで変化しない. Fraction IIのレンニンによる混濁は加熱により一層増加する.
(4) Fraction IIはレンニン作用を受けると尿素によって不可逆的な変性を示すようになるが, Fraction Iではこのようなことはない.
従ってレンニンのカゼイン凝固作用はFraction IIに対する特異的な作用と考えられ,且つカゼインは各成分間の相互作用の強い蛋白質であるにとからFraction IIのみの変化によってカゼインの凝固現象は充分説明がつくものと考えられる.
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