泡盛の異常ならびに正常発酵過程における一般成分(酸度, pH, 日本酒度,直糖分およびアルコール分)の動向には明らかな差が認められ,微生物の挙動にも差が認められた.前者における生酵母数は,醪2日目が最高で醪1ml当り8×10
6個に達し,乳酸菌は醪6日目までは増加して1×10
8個/mlに達しそれ以降は急減した.一方,後者において酵母数は醪4日目ころまで増加し,最高2.7×10
8個/mlに達し以後減少した.また,乳酸菌の存在は認められなかった.
さらに,低沸点成分のうち正常発酵では, acetaldehydeは異常発酵の約1/2で,それ以外の成分についてはむしろ,正常発酵における生成量が1.5~2倍程度多かった.一方,芳香性のisoamyl acetateは異常発酵過程では生成されず,正常発酵過程では生成された.
また,異常発酵における有機酸組成はlactic acidとacetic acidが全体の約90%を占め,発酵経過とともに増加傾向を示した。citric acidは約4%, malic acidは痕跡程度で, formic acidの生成も認められた,一方, succinic acidは顕著な経日的変化は認められなかった.
ところが,正常発酵の場合citric acidが59.2%, malic acid 17.8%, lactic acid 15.3%, succinic acid 6.2%, acetic acid 1.5%で, citric acidを除きその大部分が醪初期に酵母により生成された.
このように,泡盛1号酵母による正常発酵過程における成分の動向は,異常発酵過程における成分の動向とは明らかな違いが認められた.
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