日本農芸化学会誌
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46 巻, 12 号
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  • 駒井 功一郎, 佐藤 庄太郎
    1972 年46 巻12 号 p. 607-612
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    殺線虫剤DBCPの接触によって生じるジャガイモ塊茎の褐変強弱の差異について検討し,次のような結果を得た.
    (1)北海道産の塊茎はダンシャク,メークインとも奈良産に比して褐変が弱く,緩慢であった.しかし,京都,福井,奈良産のダンシャクでは,褐変に大差はなかった.また品種間では,メークインよりダンシャクでやや強かった.
    (2)褐変基質であるポリフェノールは,褐変化の緩慢な北海道産に多く,したがってその含量の差が本褐変の産地により相違をきたす主な要因とは考えられない.
    (3)ポリフェノールオキシダーゼの活性は,褐変の著しい奈良産に大で,ダンシャクで特に強いが,活性の劣る北海道産でも,組織をブレンダーで破砕した場合には褐変化は強く,むしろ他産地の塊茎より激しい.このことより,ポリフェノールオキシダーゼ活性の強弱は,品種間での褐変の相違に関係あるとしても,産地間での褐変相違に関係なく,細胞組織のDBCPに対する強さや,その他のDBCP耐性因子の強弱が,その主な要因であると考えた.
    (4)塊茎組織は, DBCP処理によって,褐変化とともにセルラーゼによる崩壊度も増加した.この現象は, DBCPにより細胞組織が破壊され,死に至り,軟弱化が進むためと考えられ,このことも産地間におけるDBCPによる褐変の相違についての上記の推論を支持する.
  • 藤本 滋生, 永浜 伴紀, 蟹江 松雄
    1972 年46 巻12 号 p. 613-618
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)市販の甘藷,馬鈴薯,タピオカ,小麦,トウモロコシ,および米の各澱粉について,その内部脂肪酸の含有量および組成を比較した.その結果,脂肪酸の含有量は,いわゆる澱粉尺の順序とほぼ一致しており,またその組成は,含有量の少ないものほどパルミチン酸に富み,含有量の多いものはリノール酸に富む一連の傾向を示した.
    (2)次に,これらの澱粉の内部脂肪酸の組成と,それぞれの澱粉を含む組織の脂質の脂肪酸組成とを比較すると,澱粉粒子中には,いずれもパルミチン酸の割合が高いように思われた.
    (3)これらの澱粉粒子に6種類の脂肪酸を導入し,澱粉および脂肪酸の種類による違いを比較した.その結果は,澱粉の種類によって脂肪酸のとりこみ量や,その組成割合はほとんど変わらなかった.一方,脂肪酸の種類によっては,とりこまれる量にかなりの差異がみられた.すなわち,飽和脂肪酸ではパルミチン酸が最も多くとりこまれ,また不飽和度の増加に伴って,急速にとりこまれる量は減少した.
  • 岡以 万男, 三宅 修, 滝川 道子
    1972 年46 巻12 号 p. 619-623
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)本邦産の豆17種よりPHAを抽出し,その5種にリンパ球に対する著明な幼若化,分裂促進活性を見出した.
    (2) Phaseolus coccineus種子抽出液をSephadex G-150でゲル濾過することにより,赤血球凝集活性およびリンパ球分裂促進活性の非常に強いPHAを得た.
    (3)ゲル濾過により得られたPHAは,糖蛋白らしいことが判明した.
  • 吉田 弘美, 梶本 五郎
    1972 年46 巻12 号 p. 625-630
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    トウモロコシおよびヒマ種子成熟過程における,脂質およびToc.の量的組成的変化について調べた.開花後成熟中の種子を, 7回に分けて採取した.トウモロコシは,種子の成熟に比べて脂質の生成はおそく,開花後40日目以後に急増した.一方,ヒマは種子の成熟とともに脂質も急増し,開花後40日目に最大に達した.遊離酸は,両種子とも同じような変動傾向を示した.すなわち,種子の成熟とともに急減した.しかし,総脂質の不飽和度は著しく異なった.トウモロコシは,成熟が進み脂質量が急増する40日目以後に増加するのに対して,ヒマは成熟が進み脂質量が急増するにもかかわらず減少し, 70日目には10日目の半量になった.これらの両種子の総脂質を構成する主要な脂肪酸は,トウモロコシではC16:0, C18:0, C18:1とC18:2であり,ヒマではC16:0, C18:1, C18:2とC18:1 mono-OHであった.これら構成脂肪酸は,トウモロコシでは40日目から50日目,ヒマでは10日目から30日目に,それぞれ顕著な変動を示した.
    Toc.の生成量も,これら脂質を構成する脂肪酸と密接な関連があり,トウモロコシと既報の大豆は,成熟初期からC18:1とC18:2の割合が多いため, Toc.も急増したが,ヒマは脂質量が増加する40日目まで急増し,この期間中C18:2の割合も比較的多いが,それ以後C18:1 mono-OHが全脂肪酸の約80%以上を占めたが, Toc.の増加はみられなかった.各Toc.は,両種子間で著しく異なる変動を示した.
  • 茂田 井宏, 井上 進, 西沢 嘉彦
    1972 年46 巻12 号 p. 631-637
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)醤油およびモデル系メラノイジンの色の分布は, log absorbanceと波長の間に直線関係のあることが認められ,100mμ当りのlog absorbanceの変化(ΔAと称す)を,色調を表わすパラメーターとして用いた.すなわち, ΔAが大きければ明るい色,小さければ暗い色を示すことになる.
    (2)醤油の色は酸化によりΔAが小さくなり,従って暗い色に,加熱,熟成によりΔAが大になり,従って明るい色になった.モデル系メラノイジンの色も,酸化,加熱した場合,ほぼ同様な変化が認められた.
    (3)醤油の色をSephadex G-15, DEAE-celluloseで分画を行ない, 8つの色素区分(P1~P8と称する)を得た.各色素区分は,溶出順にだんだん暗い色調を示した.
    (4)醤油の色は加熱した場合,明るい色素が増加し,従って明るい色に,酸化した場合,明るい色素が減少,暗い色素が増加し,暗い色になった.この際,各色素区分のΔAは変化せず,各区分固有のものと考えられ,色調は各色素区分の量的変化によるものと推察した.モデル系メラノイジンを酸化した場合,醤油の色を酸化した場合と同様の色素区分の量的変化が認められた.
  • 西村 行正, 飯塚 廣
    1972 年46 巻12 号 p. 639-644
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    土壌から分離した炭化水素資化性細菌strain No. S 5の生成する黄色色素の同定,ならびに生成条件を検討するとともに,本菌の同定を行ない,次の結果を得た.
    (1)ケロセンを唯一の炭素源とした培養液中に分泌する黄色色素は,ペーパークロマトグラムおよび吸収スペクトルから,フラビン・モノヌクレオチド(FMN)およびフラビン・アデニン・ジヌクレオチド(FAD)であることを認めた.
    (2)本菌株の生育およびフラビン生成用として選定した培地(Table VI)で, 30°C, 6日間の培養によって, 27.0μg/mlの全フラビン・ヌクレオチド量が得られた.そのうち47%がFMN, 53%がFADであった.
    (3)本菌strain No. S 5は,その分類学的諸性質から“Bacterium anitratum”と同定した.
  • 井上 末広, 浜村 保次
    1972 年46 巻12 号 p. 645-649
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    A. Butenandt and his coworkers (1961) isolated bombykol from lateral glands of female moths of Bombyx mori and identified its chemical structure as trans-10, cis-12-hexadecadiene-1-ol.
    However the pathway of the biosynthesis of bombykol has not been studied yet.
    The present investigation was undertaken to clarify this biosynthesis. The starting material used for the biosynthetic study in vivo was palmitic acid. It will be converted to cetyl alcohol and esterified with phosphoric acid. Cetyl phosphate was dehydrogenated specifically at the positions of carbon 10 and 12 by a kind of oxygenase, which appeared in the abdominal tip of Bombyx female pupa at the final pupal stage.
  • 小野 伴忠, 伊東 哲雄, 小田切 敏
    1972 年46 巻12 号 p. 651-656
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)ゲルろ過に用いる試料容量が少なくなるにつれ,試料は溶出中に希釈を受ける.
    (2)脱脂乳中塩類は,希釈されることによってコロイド相から溶解相へ移行する.
    (3)コロイド相中カルシウムおよびクエン酸は,無機りんに比べて,希釈により溶解相へ数倍移行しやすい形で存在する.
    (4)希釈によって,溶解相にイオン性のカルシウムが増加してくると考えられる.
    (5)溶解相りんおよび溶解相に移行したりんのほとんどは,分子量500~1000の複合体を形成していると推定される.
  • 茂木 恵太郎, 内田 金治, 茂木 孝也
    1972 年46 巻12 号 p. 657-663
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)強度の耐塩性を持つ醤油酵母の菌体脂肪酸は,主として炭素数16または18の直鎖の飽和または不飽和脂肪酸(パルミチン酸,パルミトオレイン酸,ステアリン酸,オンイン酸)などより構成され,通常の非耐塩性酵母の菌体脂肪酸と比較して,特別差異はなかった.
    (2)醤油諸味において発酵期に活動するS. rouxii菌群と,発酵期から熟成期にかけて存在し,熟成に関与するTorulopsis属菌群を比較すると,前者はリノール酸を多量に含有するが長鎖脂肪酸(24:0)を含まず,後者はリノール酸をほとんど含まないが長鎖脂肪酸(24:0)のを含むという,脂肪酸組成上の差異がみられた.従って両者の脂肪酸組成の差が,分類の一指標となり得ることが認められる.
    (3)仕込初期に存在する醤油雑酵母のうち, PichiafarinosaTrichosporon behrendiiの菌体脂肪酸は,パルミトオレイン酸含量が他の醤油酵母に比較して少なく,またTorulopsis famataは他のTorutopsis属菌群と異なり,リノール酸と長鎖脂肪酸(24:0)をともに著量に含有する点に特長があった.
    (4)分離起原を異にするが,醤油諸味に存在することも報告されているTorulopsis属菌の脂肪酸組成は,いずれも醤油諸味起原のTorulopsis属菌のそれと一致するパターンを示した.
    醤油諸味以外の蜂蜜,濃縮ブドウ果汁などから分離されたS. rouxiiの脂肪酸組成は, Z. gracilisを除き醤油酵母のS. rouxiiと類似していた.
    (5)菌体脂肪酸組成に対する培地食塩の影響をみると, S. rouxiiではその影響が比較的大きく, NaCl 18%含有培地で培養した場合,パルミトオレイン酸,リノール酸の顕著な減少がみられた.しかし熟成型Torulopsis属菌群では,食塩濃度による脂肪酸組成の大きな変動はみられず,両者の菌体脂肪酸組成は,食塩濃度に対する挙動の点でも明確な差があった.
  • 山田 豊一
    1972 年46 巻12 号 p. 665-668
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    空気,炭酸ガス,へリウムを用いて,玄米充填層について,流れをともなう場合の軸方向の有効熱伝導度keを測定した. keとRe数とのプロットより, Re-0に外挿して,流れをともなわない玄米充填層の有効熱伝導度keoを求めた.この値は気体が空気のとき0.102 kcal/m・hr・°C,炭酸ガスのとき0.092 kcal/m・hr・°C,ヘリウムのとき0.209 kcal/m・hr・°C (温度35°C)であった.
    これらの値より玄米の熱伝導度を計算したとき,その値は0.25 kcal/m・hr・°C (温度35°C,水分10.8%)であった.
  • 山口 功, 杉山 登
    1972 年46 巻12 号 p. 669-673
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The feces of young pine-worms (6_??_7 instar) were extracted with n-hexane, ethyl ether, chloroform, ethyl alcohol and water, and several kinds of compounds were isolated. They were mainly a poly ester, a fatty acid ester (palmitic acid ester), higher alcohols (octacosanol and ceryl alcohol), steroids (β-sitosterol and its ester) and a suger alcohol (D-mannitol). Various investigators have already isolated all of these compounds except D-mannitol and 1, 14-tetradecandiol from pine-needles. No studies have been made on pine-needles for the presence of D-mannitol and 1, 14-tetradecandiol. Therefore at present we cannot conclude whether or not D-mannitol and 1, 14-tetradecandiol are characteristic of the feces of pine-worms.
  • 吉野 梅夫, 張 堅二, 三輪 清志, 山内 邦男
    1972 年46 巻12 号 p. 675-678
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Milk coagulating activity of cell free culture liquid of Candida lipolytica was investigated. When milk was coagulated with the cell-free culture liquid, the curd was softer and the yield of the curd was less than when rennet was used. The coagulation of milk was accelerated by lowering pH and increasing Ca concentration of milk, but the degree of acceleration was not so great as in the case of rennet.
    The proteolytic activity against casein was stronger than rennet. It hydrolysed β-casein most rapidly.
    The separation of milk coagulating activity from protease activity by column chro-matography with CM-Sephadex C 50 at pH 6.2 was not achieved. The milk coagulating activity found in the cell-free culture liquid seemed to be caused by already known extracellular alkaline protease produced by Candida lipolytica.
  • 能勢 和夫
    1972 年46 巻12 号 p. 679-681
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    PCB changed into decachlorobiphenyl by treatment with AlCl3, SO2Cl2 and S2Cl2 at 65_??_70°C for an hour. This was proved by gaschromatography. Chlorination rate of trichloro-, tetrachloro-, and hexachloro-mixtures of PCB were 105, 118, and 112%, respectively, but that of biphenyl was only 8.3%. Soil was steam distillated and the distillate was chlori-nated to determine the PCB content. The 86% recovery of the hexachloro-mixture (9.5 μg) added to 20g of soil was observed by this procedure. Rice grain contains so much oil that the hexane extract was saponified by 1 N KOH ethanol, purified by silica gel column chromatography eluted by hexane and chlorinated to determine PCB content. Recovery of 86% was obtained from 10g of rice grain fortified by 7.2 μg of hexachloro-mixture.
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