発生過程にある葉緑体のチオール量の消長,および葉緑体のチオール基と光還元活性との相関性について研究した.
(1) 72時間光照射したダイコン子葉から等張液で単離し, 2度洗浄した葉緑体のチオール量はDTNBで測定した場合,等張条件下で100 molesクロロフィルあたり14.8 molesであり,低張条件下では30.5 molesであった.
(2)単位クロロフィルあたりの葉緑体のチオール量は光照射時間とともに減少し,成熟葉からの葉緑体チオールは,緑化初期のものの約1/20である.
葉緑体のタンパクあたりで表現したチオール量は,緑化初期において光照射によって増加し,葉緑体が完成した後は減少した.したがって,発生初期段階において葉緑体は還元状態にあり,以後酸化的状態へと移行するものと解釈された.
(3)葉緑体のチオール含量は,光化学系IIを失活させる操作によって減少する.また,葉緑体を
pCMBやDTNBでともに2時間反応させてチオール基を被覆した場合,光化学系IIの活性は激減したが,光化学系Iの活性はむしろ若干上昇した.以上のことより,葉緑体のチオール量と光化学系IIの活性が密接に関連していることが示唆された.
(4)単離した葉緑体に光照射した場合, 15分間で20%程度のチオール量の増加が観察され,光還元活性も上昇した.
以上の結果から,特に発生過程にある葉緑体のチオールが葉緑体の機能を調節している可能挫にりいて考察した.
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