アミノ・カルボニル反応における鉄イオンの作用機構を明らかにするために,今回はfructoseamineの1つであるDAFを出発材料として用い,検討した.結果を要約すれば次のとおりである.
(1) Glucoseとβ-alanineとからfructoseamineであるところのDAFを調製した.
(2) DAFの溶液は鉄イオンの存在では分解と褐変が著しく促進された.分解生成物のなかではglucosone, glyoxalの濃度増加が顕著であったが, 3-DG濃度は鉄イオンの影響を受けなかった.
(3) DAFを長期間貯蔵した後,その分解生成物を2, 4-DNPとして酸性アルミナカラムにより分画を行ない,これらの結果とglucoseの過酸化水素酸化生成物との比較を行ない類似性を認めた.
(4) DAFを沸騰水中で加熱分解させた場合には, glucose-β-alanine系におけると同様に,鉄イオンの褐変促進作用は認められなかった.
(5) 3-DG, glucosone, HMFを調製し,それぞれとβ-alanineとの褐変系につき鉄イオンの効果をしらべたが,いずれの場合にもDAFの場合のごとき著しい促進効果は認められなかった.
(6) 以上の結果より,鉄イオンの酸化触媒作用は溶存酸素の存在下で, DAF→glucosoneの反応に最も強く作用しているものと考えられた.
終りに臨み,本研究に関し種々御助言を賜った東京大学農学部加藤博通博士に厚く御礼申し上げます.
本研究の一部は昭和42年度日本醗酵工学会において発表した.
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