腸内細菌によるAFB
1の分解機構を明らかにするための基礎的実験として, AFB
1が生体内に経口摂取された場合,消化管内の部位により異なるpH条件下にさらされることを配慮し,水素イオン濃度がAFB
1に与える影響について, 3段階に分け,薄層クロマトグラフィーを用い検討した.
Sample I:クロロホルム抽出を行う前の段階
Sample II:クロロホルム抽出を行った段階
Sample III:クロロホルム処理残液
(1) AFB
1とpH3.0との接触において, Sample IとSample IIで経時的なAFB
1の減少を認めるとともに, AFB
2a様物質の増加を認めた.
(2) AFB
1とpH5.0およびpH7.0の接触では, pH5.0のSample IとSample IIでAFB
2a様物質が, pH7.0のSample IIIでAFB
1類似物質がおのおの痕跡程度認められたが,両pHでAFB
1はほぼ安定であることが確認された.
(3) AFB
1とアルカリ条件下(pH 9.0とpH 11.0)での接触において, pH 9.0とpH 11.0のSample Iでそれぞれ48~72時間接触後, AFB
1の減少を認めた.また, 24時間以上接触のSample IIで回収されたAFB
1量は, pH 9.0で約20%, pH 11.0ではまったく回収されなかった. Sample IIIで, AFB
1と同じ
Rf値と螢光を有する物質(AFB
1類似物質)を認めた.その量は, Sample IIにおける螢光物質の量の値ときわめて明確な逆相関関係であった.
(4) AFB
1とpH 11.0との短時間接触から, AFB
1は約1時間でAFB
1類似物質に変ることが明らかになった.
(5) AFB
1類似物質は,クロロホルムでは抽出されず,クロロホルム処理残液中ではUV照射を行っても螢光を発しないが, UV照射下の薄層プレート上では青色の螢光を呈し, 8種類の展開熔媒で, AFB
1類似物質はAFB
1と同一の
Rf値を示したが,
p-アニスアルデヒド,硫酸および0.5% Fast Blue Salt Bに対する反応では,硫酸でのみ標準AFB
1と同じ反応を示し,他の試薬には反応しなかった.
抄録全体を表示