日本農芸化学会誌
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47 巻, 10 号
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  • 大村 浩久, 井上 義人, 佐藤 雅子
    1973 年 47 巻 10 号 p. 591-597
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    HUのDNAに対する反応性を粘度,濾紙電気泳動およびショ糖密度勾配遠心分離により検討し, HUは作用条件に応じてDNAの1本鎖切断, 2本鎖切断さらには完全な低分子化をひき起こし,とくに反応にはCu2+の共存が有効であることを確かめた.
    すなわちCu2+の共存下にHUをDNAに作用させると,その粘度を低下した.その作用はHUの濃度に応じて増大し,またCu2+1×10-3Mないし1×10-4M, pH8において顕著であったが, HAの場合のような過酸化水素による強い促進効果は認められなかった.
    他方, DNAを95°C, 30分間加熱しても濾紙電気泳動により移動する低分子成分は生成せず原点に留るが, 1×10-2M HUを反応させると陽極に移動する成分を生じた.さらにHUとともに1×10-4M Cu2+を同時に作用させると,反応を著しく促進し,ほとんど低分子化した.
    またDNAに1×10-2M HUおよび1×10-4M Cu2+を37°C, 3~4時間作用させると, DNA分子の切断が起こることをショ糖密度勾配遠心分離により確かめた.しかし, HU濃農の低下やCu2+の除去など,反応条件を緩和するとその効果は減少するが,その場合にも1本鎖切断を起こすことが,アルカリ性ショ糖密度勾配遠心分離により認められた.なお,これらの作用はHUによるものであって,反応中に生成するHAの作用ではないことが, HA生成量の検討から示された.
  • 松井 義久, 江藤 守総, 前川 一之
    1973 年 47 巻 10 号 p. 599-604
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    PCB (KC-400), DDT, lindane, pentachlorobenzyl alcohol等のアルコール性か性カリ溶液中における光化学的脱塩素化反応について検討した.
    DDTを除いて,いずれの場合も反応溶媒としてisopropanolが効果的であった.特にKC-400においては,ほぼ100%脱塩素された. isopropanol中においては,還元的に脱塩素化反応が進行することがわかった.
  • 金子 肇, 藤森 嶺, 松下 肇, 野口 正雄
    1973 年 47 巻 10 号 p. 605-609
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    甘茶エキス中のアミノ酸,糖,アミノ酸-糖化合物,不揮発性有機酸,粗灰分の分析と,甘茶エキスおよび甘茶乾葉ベンゼン抽出物中よりのフィロズルチン,ヒドランゲノールおよびヒドランゲノールモノメチルエーテルの単離と同定を行なった.
    上記5項目の分析結果は果汁エキスと比較して, 1) 全糖のエキス中に占める割合は小さく,全糖中の構成成分の数は多い. 2) 不揮発性有機酸としてリンゴ酸,クエン酸以外に未同定の物質が少量ずつ存在している. 3) 分析された5項目の成分が,エキス乾物中に占める割合は小さい.
    ヒドランゲノールとそのメチルエーテルは,甘茶からはじめて単離されたもので,甘茶の甘味成分であるフィロズルチンと炭素骨格が全く同じイソクマリン誘導体である.
    甘茶成分のうち中骨特有のにおいを抑制する効果をもつと考えられるものは,試喫の結果によれば現在のところフィロズルチンのみである.
  • 田淵 武士
    1973 年 47 巻 10 号 p. 611-615
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    塩づけ大根から分離され, Debaryomyces hansenii (Zopf) Lodder et Kreger-van Rijと同定された1酵母菌株を,ブドウ糖を含ませた純合成培地で振盪培養すると,多量にα-ケトイソカプロン酸が生成される事実を見出した.
    この酸は梅酢様の香気を有し,本菌によって添加ブドウ糖当り約25%の収率で得られたが,さらに, Debaryomyces kloeckeri, Candida membranaefaciens, Torulopsis famataなど既知保存酵母株によっても微量ながら生産された.
  • 田淵 武士, 田原 康孝, 田中 優行, 柳内 志保子
    1973 年 47 巻 10 号 p. 617-622
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    クエン酸発酵過程におけるアコニターゼ,インクエン酸脱水素酵素活性の消長をしらべた結果, Asp. nigerの場合には,一般に認められているように,これらの活性がクエン酸生産期に著しく減少してくる事実が観察されたのに対して,酵母の場合には,クエン酸類が多量に生産される条件下で発育したどの培養時期の菌体についても,これらの活性は十分に見出され,クエン酸蓄積機構が両者の場合で異なることが推定された.
    さらにC. lipolyticaは,鉄イオンを制限するとd-イソクエン酸の生産が抑制され,逆にクエン酸生産量が増大するが,この場合にアロニターゼ活性が相関していること,およびチアミンを制限するとα-ケト酸発酵型に転換するが,この場合,イソクエン酸脱水素酵素活性が増大することも原因になっていることなどが知られた.
  • 坂上 ハツ子
    1973 年 47 巻 10 号 p. 623-626
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    グリシルリチン酸およびグリシルレチン酸を添加した紙巻たばこを人工喫煙して得られるタール中のグリシルレチン酸の定量法を確立した.この方法によって二つの酸の喫煙時における挙動を調べたところ,グリシルリチン酸は喫煙の際,加熱分解して一部グリシルレチン酸となり,グリシルレチン酸は,そのままの形で煙中に移行することが認められた.しかし,煙中へのグリシルレチン酸の移行率は,両者とも非常に少なかった.
    従って,たばこ香料として添加された甘草エキス中のグリシルリチン酸は,大部分熱分解されて煙中に移行するものと考えられる.
  • 小沢 哲夫, 羽賀 清典, 滝野 慶則
    1973 年 47 巻 10 号 p. 627-631
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    クリタマバチ虫えいの成分について研究し,多量のAsnの存在が確認されたので,さらに虫えいの肥大に伴うその含量の経時的変化を調べた.その結果,虫えいの肥大とともにAsnが急激に集積し,健全葉の最大値に比べ5.7倍,虫えい1個(約lg)あたり18.6mg,対乾物量11.9%に達することが認められた.また,この間におけるクリタマバチの生育状況の観察の結果,幼虫の生長とともに虫えいの肥大とAsnの集積がおこり,蛹化する時期には両者とも一定の最大値となり,羽化期に入るとAsnは急激に減少するのが認められた,したがって,虫えいにおけるAsn含量の消長とクリタマバチ幼虫の生活環との間には,密接な関係があるものと考えられる.
  • 川合 正允
    1973 年 47 巻 10 号 p. 633-637
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 担子菌82株の菌体外酵素生産姓を検討し,分類群と酵素生成パターンの対応を求めた.
    一般に,ヒダナシタケ目に酵素生産性の高い菌株が多い.生長と酵素生産性は必ずしも対応しない.
    (2) ヒダナシタケ目では酸生プロテアーゼ,アミラーゼ,セルラーゼ(C2活性),ペクチナーゼ等の生産性が高く,マツタケ目では塩基性プロテアーゼ生産性が高かった.
    (3) キシラナーゼ, β-1, 3-グルカナーゼは担子菌によって普遍的に生成され,トレハラーゼ,セルラーゼ(Cx活性)もその傾向が強い.
    (4) ヒダナシタケ目ではTrametinae, Coriolinaeに,マツタケ目ではCoprinaceaeに酵素生産性の高い菌株が多かった.
    (5) L. japonicusはマツタケ目の例外であり,むしろヒダナシタケ目の菌株に近い.
    T. sanguineaI. lacteusは検討したいずれの酵素生産性も高いが,前者ではプロテアーゼ活性の方が,後者ではペクチナーゼ活性の方が高いという差が認められた.
    (6) 酵素生成パターンの比較を菌株レベルで行なうと,菌株ごとにバラバラであるが,分類群として行なうならば,明らかに群としての一定の傾向を認めることができる.
  • 藤田 安二, 藤田 真一, 赤間 康真, 守田 豊重
    1973 年 47 巻 10 号 p. 639-643
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    クスノキの新旧枝葉油,生育に伴う各種果実油,果柄油等の成分検索を行ない,その精油生成について研究した, 4月の枝葉油の収率は旧葉部1.32%,新芽部0.40%で旧葉部は新芽部の3倍以上であり,精油中のcamphorの含率は旧葉部91%,新芽部85%であり, 7月の二番期新芽部と成葉部とでは収油率前者は1.16%,後者は1.06%であまり差がないが,精油中のcamphorの含率は新芽部77%,成葉部85%と10%程度の差がある. camphorの生100g中の実在量では, 4月の旧葉部は新芽部の3.5倍にも当るが,二番期新芽部と成葉部とではその差はない.
    果実油については収率0.63~1.14%,主成分safroleは36~59%, camphorは29~43%含まれ,両者の実在量は果実の成熟に伴って増加し,後過熟により放失低下する.
    果柄抽は収率0.8%, camphor 81~85%を含み,その組成は枝葉油のそれに近い.
  • 藤田 安二, 藤田 真一, 吉川 久
    1973 年 47 巻 10 号 p. 645-650
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    サザンカ,ツバキ,チャノキ等のいろいろの精油が,化学分類系統学的見地から研究された.種々の興味ある所見が得られたが,その中でeugenolがglycosideとしてツバキ属植物には多少とも存在するが,チャノキ属には全くないことが,この両属の化学的特徴としてとりあげ得ることがわかった.反対にチャノキの未熟果がL-pipecolic acidを含むのに,ツバキの果実は全くこのものを含まないことなどを考慮に加えれば,チャノキ属とツバキ属とは明らかに別属であり,比較的近似ではあっても,チャノキ属をツバキ属に合一することは不自然である.
  • 深川 和彦, 山口 春樹, 米沢 大造, 村尾 沢夫
    1973 年 47 巻 10 号 p. 651-653
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Twelve strains of Rhodotorula glutinis were cultured under shaking in an acidic medium to investigate the sugar compositions of extracellular polysaccharides.
    Polysaccharides produced were separated from the medium by acetone precipitation and the sugar compositions were analyzed by gas-liquid chromatography.
    The results showed that extracellular polysaccharides of R. glutinis generally consisted of mannose, fucose, and galactose. A strain, IFO 1223, lacked fucose, but contained xylose instead. IFO 0667 contained glucose, which was not found in the other strains. Mannose was the most predominant component in all the strains with the exception of K-24, which produced polysaccharides consisting mostly of fucose and galactose. It was suggested that there were at least two kinds of polysaccharides, one was composed predominantly of mannose and the other of fucose and galactose. In a neutral medium, AJ 4859 produced polysaccharides containing 94% fucose.
  • 間宮 米二, 戸塚 耕二, 庄司 圭吾, 麻生 和衛
    1973 年 47 巻 10 号 p. 655-657
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Commercial Kunitz soybean trypsin inhibitor (STI) has been separated into two components, named STI-1 and STI-2, by gel filtration with Sephadex G-75.
    The molecular weights of STI-1 and STI-2 were estimated to be 41, 000_??_42, 000 and 20, 000_??_20, 500, respectively. The former was twice as large as the molecular weight of STI (20, 100) and the latter was identical with that of STI. The amino acid compositions of both STI-1 and STI-2 were in good agreement with that of STI. The trypsin and α-chymotrypsin inhibiting activities of STI-1 were low in comparison with those of STI-2. The trypsin inhibiting activity of STI-1 was 65% of STI-2.
    These results suggested that STI-1 was a dimer of STI-2.
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