比較的高い濃度(15%以上)における大豆蛋白質のゲル形成状態を比較,測定する方法につき検討し,次の結果をえた.
(1) Penetrometerにより大豆蛋白質ゲルの強度を測定する場合,測定値の標準偏差は平均値の8%以下で,この種の測定値としてはほぼ満足すべき精度を示した.
(2)大豆蛋白質ゲルの強さに関して, penetrometerによる測定値順位と官能試験による順位との関係を検討した結果,試料群の性質により両者の関係は変化することをみとめた.たとえば,質的に傾向のよく似た試料間においては,前者の測定値は官能試験による評価をよく代表するが,質の異る試料間の比較においては必ずしもこの関係は成立せず,試料の傾向によって種々な関係がみとめられた.
(3)加圧法により大豆蛋白質ゲルの保水力を測定する場合の条件につき検討した.その結果, 50kg/cm
2の圧力で60秒間加圧することが望ましく,その条件の測定精度は標準偏差が平均値の3.5%以下であった.
(4)大豆蛋白質ゲルの強さに関して,保水力の測定値順位と官能試験による順位との関係を検討した結果,保水力のきわめて高い試料を除いて,大体両者の間に正の相関関係があることをみとめた.
(5)大豆蛋白質ゲルの強さ,あるいは食品的な意味での物理的性質(触感)を比較するには, 1種類の物理的測定値にのみ頼ることは危険である.少なくとも試料群の性質に応じた2種類以上の物理的測定値を官能試験と組合せることが,広い範囲の試料を客観的に測定,評価する最良の方法である.
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