日本農芸化学会誌
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41 巻, 5 号
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  • Escherichia coliに対するプロピオン酸類縁物質の増殖抑制
    市川 吉夫, 北本 豊
    1967 年 41 巻 5 号 p. 171-177
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    プロピオン酸ならびにこれと類似の構造をもつ数種の比較的毒性の少ない物質を選んで, E. coliに対する増殖抑制作用を比較した.
    (1)プロピオン酸は酢酸および酪酸よりもつよい増殖抑制を示す.表面張力の低下による細胞膜機能の変化,代謝物質とのCoA争奪など,低級脂肪酸に共通な作用機構の他に,β-アラニン代謝,ピルビン酸代謝に対する拮抗作用がその増殖抑制作用の主体をなすものと考えられる.
    (2)タウリンの作用はプロピオン酸に比べて弱く,高濃度のタウリンによる阻害も少量のβ-アラニンの添加によって完全に回復される. しかし,プロピオン酸の効果がタウリンの併用によって顕著に増大することから,両者のβ-アラニン代謝に及ぼす作用機作は相異なる可能性がある.
    (3) β-ヒドロキシプロピオン酸はプロピオン酸に近い抑制効果を示す. β-アラニンおよびピルビン酸による阻害の回復が認められるが,酢酸の添加はプロピオン酸と異なり効果がない. β-アラニンによる回復の程度がプロピオン酸よりも小さく,また培地pHの増殖抑制に及ぼす影響がプロピオン酸の場合と著しく異なる.
    (4) β-クロルプロピオン酸は, β-アラニン,酢酸,ピルビン酸による阻害の回復がまったく認められない点で上の三者とは異なる. β-フルオルプロピオン酸はプロピオン酸と類似の増殖阻害作用を呈し, β-クロルプロビオン酸のごとき特異な性質は示さない.
    酵素反応に対するこれら諸物質の阻害様式の異同に関しては,目下検討を加えつつある.
  • 花粉の無機成分および各種リン化合物について
    斗ケ沢 宣久, 勝又 悌三, 太田 達郎
    1967 年 41 巻 5 号 p. 178-183
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    花粉の発芽生理究明の一環として,花粉(第1表)の無機成分および各種リン化合物の定量を行なった.
    (1)発光分光分析の結果,いずれの花粉にもNa, K, Mg, Ca, Sr, Zn, Mn, Fe, Al, Cu, B, Si, Pを検出, NiおよびCrはオニユリ,ラッパスイセン,キショウブ花粉に, Pbはクロマツ,アカマツ,トウモロコシ花粉に, Tiはカボチャ,ウバユリ,キショウブ以外の花粉にそれぞれ検出した.
    (2) Kは無機成分中最も多く, 902.7~1,543.6mg%で, Pはこれにつぎ344.3~1,102.8mg%, Mgは96.7~170.3mg%で, Caは36.2~99.4mg%であった. Siはオニユリ,パンクスマツ花粉に多く,それぞれ139.6, 171.1mg%である. Na, Fe, Al, Zn, Cu, Mn含量はいずれも少ない.
    (3) Schneider法に準じて酸溶性,リン脂質, RNA, DNA,リン蛋白,不溶性の各画分に分別し,それぞれのリンを測定した結果,いずれの花粉も酸溶性リンが最も多く,花粉総リン中40.6~57.3%の範囲内で約半量をしめ,マツ類花粉141.5~203.6mg%,他の花粉は332.3~632.1mg%であった.酸溶性TP中のIP, Δ7-P, OPなどもマツ類花粉に少ない.またトウモロコシ,オニユリ以外の花粉にHL-P 4.1~17.6mg%を認めた.脂質リン, RNAリン, DNAリン,蛋白リンはそれぞれ103.9~258.0, 38.2~133.6, 11.2~58.1, 17.3~61.9mg%で,最後に微量の不溶性リン(1.7~6.9mg%)を認めた.
  • 花粉のビタミンについて
    斗ケ沢 宣久, 勝又 悌三, 深田 稔, 本居 孝雄
    1967 年 41 巻 5 号 p. 184-188
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    風媒花粉としてバンクスマツ,クロマツ,アカマツ,トウモロコシ花粉,虫媒花粉としてカボチャ,オニユリ花粉を用い,ビタミンAおよびβカロチンを検討し, B1, B2, C,パントテン酸,ビオチン,コリンを定量,さらにB1, B2, Cの結合型の分別定量を行なった.
    (1) Aは供試花粉中いずれにも検出されなかったが, βカロチンはマツ類以外のトウモロコシ,カボチャ,オニユリ花粉中に存在を認めた.
    (2) B1はカボチャ花粉がもっとも多く2,153γ%であった.マツ類では748~915γ%で,この中エステル型がほぼ半数をしめているが,他の花粉では明らかに遊離型が多い. B2はカボチャ,オニユリ花粉に多くそれぞれ2,309, 1,829γ%,他は922~1,128γ%で,遊離型はいずれも総B2中のほぼ半数(42.8~62.8%の範囲内)をしめている. FMNは他の花粉に比しマツ類花粉に少なく,反対にFADが多い. Cはマツ類,トウモロコシ花粉に多く58.5~73.7mg%で, RCはとくにマツ類花粉に多い.
    (3)パントテン酸はオニユリ,クロマツ花粉がそれぞれ305, 396γで,他の花粉は848~974γ%である.ビオチンはオニユリ花粉に多く60γ%で,コリンはカボチャ,トウモロコシ花粉に多い(633.4~690.7mg%).
  • 縮合剤の検討
    水野 卓
    1967 年 41 巻 5 号 p. 189-194
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    G. Schrammらのポリリン酸エステル法, F. Micheelらのジメチルスルホキシド法などの溶媒法を適用して,直接に単糖類から多糖類を合成する場合,縮合剤として各型のリン酸化合物が,中でもPPE,五酸化リン,亜リン酸などが良結果を得た.さらに,コれらの方法によって合成されたグルカン,ガラクタン,マンナン,フルクタン,ソルバン,ラムナン,キシランおよびアラビナンの理化学性を比較した(Table I~VI, Fig.1).
    なお,多糖類合成反応液中には,相当する一連のオリゴ糖類が生成していることを認めた(Fig. 2, 3).
  • 合成キシラン,ガラクタンについて
    水野 卓
    1967 年 41 巻 5 号 p. 195-202
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    無水リン酸を縮合剤とするジメチルスルホキシド法(溶媒法)によって,キシランおよびガラクタンを合成し,これらの理化学性(Table 1, II, Fig. 1~3)をしらべるとともに,稀酸あるいは稀アルカリによる部分水解産物(Fig. 4, 5), Smith分解産物 (Table III, Fig. 6),還元-多糖類の水解産物(Tabl IV),完全メチル化多糖類の水解産物(Table V, VI)を明らかにし,それらの化学構造について考察した.
  • 有機リン粉剤の加温虐待試験と自然経時変化の対応
    竹原 啓, 小竹森 正人, 大石 剛毅
    1967 年 41 巻 5 号 p. 203-208
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)有機リン粉剤類の虐待試験と自然経時変化の対応について検討し,次の結論を得た.
    EPN粉剤は40°加温虐待試験60日,メチルパラチオン粉剤は40°加温虐待試験30日,マラソン粉剤は40°加温虐待試験30日が,それぞれ自然経時変化1年に対応する.
    (2) EPN粉剤,メチルパラチオン粉剤,マラソン粉剤について経時変化率の変動について検討し,その変動の実態は虐待試験も自然経時変化でも同様であり,有効成分定量値として変動係数(CV)にして4~5%であった.
    (3)経時変化率変動の要因についてメチルパラチオン粉剤について検討し,「初濃度の変化(1.6~2.0%)と分解率の関係は有意でない」,「増量剤の多少の付着水分はメチルパラチオンの分解を抑制する」, 「増量剤の平均粒子径の大きいものが安定性は良好である」,「有効成分原体,増量剤の試料間変動およびその交互作用は有意であり,経時変化率変動の要因となり得る」ことなどを明らかにした.
  • 増量剤の物理化学的性質と有機リン粉剤の経時変化の関係
    竹原 啓, 小竹森 正人, 大石 剛毅
    1967 年 41 巻 5 号 p. 209-219
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    農薬用増量剤(鉱物質微粉末)のうち,主としてクレー類の物理化学的諸特性値と有機リン粉剤の分解の関係について考察した結果,大略下記のような結論を得た.
    (1) X線回折法による鉱物の同定結果は,市販農薬用クレー類の鉱物組成はquartzなどの一次鉱物を主成分とするものが大部分であり, quartzのような不活性成分の多いものが経時安定性も良好である.
    (2)分別溶解法による非晶質減量と経時安定性の間には相関関係が認められた.本法は測定法の精度に問題があるのでなお検討の余地がある.
    (3)螢光X線法により増量剤中に混在する金属を一斉検索した結果,いずれの場合も鉄が多く認められた.本法による鉄の定量結果と熱塩酸可溶分金鉄の比色定量結果とはほぼ一致した.鉄の含有量とクレー類の精製の程度,あるいは原石の品位と関係があるものと推定され,鉄含有量の少ないものが経時安定性は良好であった.
    (4)塩基置換容量と経時安定性には高度の相関関係が認められた.
    (5)経時安定性良好な増量剤選別の方法として, X線回折法による鉱物の同定,螢光X線法による混在せる金属の同定,鉄含有量,塩基置換容量の測定などは,きわめて有効な手段であることを確認した.
  • 二酸化炭素による黒液の脱ケイについて
    五十野 善四郎, 大野 一月
    1967 年 41 巻 5 号 p. 220-225
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    As a method to desilicify from black liquor containing silica in rich amount, carbon dioxide process was investigated. Particularly, the relation between the final pH of the black liquor and the removal percentage of silica by the carbon dioxide treatment was clarified. Further, based on the obtained knowledge of the relation between heating temperature and filterability, and of the loss of organic matter, the following desilicification method is thought to be recommendable. The air-oxidized black liquor is treated with carbon dioxide so that pH is adjusted to 10.3_??_10.0, and, after heating for one hour at 90°C, the liquor is filtered and the precipitate is washed with hot water. The washings are combined with the above filtrate.
    By this method, it was possible to remove about 80% of silica from the black liquor containing 4-5g/l of silica, and the filtration and sedimentation of the precipitate were very easily done, with a slight loss of organic matter.
  • E. coli K-12無細胞抽出液によるリン脂質の生合成
    亀山 春
    1967 年 41 巻 5 号 p. 226-230
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    E. coliの無細胞抽出液を超遠心分離によって分画した酵素液を用い, 14C-グリセロール, 14C-L-α-グリセロリン酸および32-正リン酸の脂質への取り込みを試みた.
    14-グリセロールあるいは32P-正リン酸の脂質への取り込みは, 7,000g×20 min., supernatant, 140,000g×2hrs., pelletの分画において認められたが, 140,000g×2hrs., supernatantの分画においては取り込みは認められなかった.
    残存している14C-グリセロールは7,000g×20 min., supernatantあるいは140,000g×2hrs., pelletではともに差がなかった. 14C-グリセロールから14C-グリセロリン酸への変化は, 140,000g×2hrs., pelletは7,000g×20 min., supernatantの1/3であった.グリセロリン酸脱水素酵素の活性については140,000g×2hrs., pelletは7,000g×20 min., supernatantの約1/5であったが脂質への14C-グリセロールあるいは32P-正リン酸の取り込みは140,000g×2hrs., pelletを用いた時には7,000g×20 min., supernatantを用いた時の約2~2.5倍であった.
    グリセロリン酸は14C-グリセロールの脂質への取り込みに影響を示さなかった.また14C-L-α-グリセロリン酸の脂質への取り込みは14C-グリセロールからの取り込みに対して約50%であった.これらの結果から14C-グリセロールから脂質へ取り込まれる際,中間体としてグリセロリン酸をとおらないでグリセロールから直接アシル化される可能性もあるのではないかと考察される.
    またラベルされた脂質はホスファチジン酸とホスファチジルエタノールアミンで,中性脂質の放射活性は認められなかった.
  • 液化酵素に対する澱粉製造不純物の影響
    前沢 辰雄, 早川 幸男, 大久保 増太郎, 新堀 二千男
    1967 年 41 巻 5 号 p. 231-238
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    甘ショ澱粉製造に際して,澱粉に混入する可能性のある不純物について液化酵素に対する影響を調査した.
    (1)甘ショ摺り込み沈澱の排水,ならびに排水を酢酸でpH 4.0にして沈澱分離した渋,甘ショ蛋白,甘ショの主要糖分であるショ糖は,液化酵素の熱失活に対して保護作用を呈する.
    (2)甘ショのアルコール抽出物を溶媒で抽出分離した各区分について調査したところ,アセトン可溶部は添加量を増大するにしたがって澱粉の液化率を低下させる.ただしこのことは必ずしも液化酵素に対する阻害作用とは限らない.アセトン不溶部は阻害作用も保護作用もない.酢酸エチル可溶部は阻害作用を有する.同じく不溶部はむしろ保護作用がある.
    (3)塩素は反応液中0.3p.p.m.程度の微量ですでに阻害作用を示し, 10p.p.m.ではほとんど酵素作用を停止させる.銅(硫酸銅),水銀(塩化第2水銀),鉄(硫酸第2鉄)のような重金属類は,いずれも微量で阻害作用を呈するが,鉄はその中で害作用が少ない.
    (4)界面活性剤DBSも液化酵素に対して阻害作用を有する.
  • 川田 寛, 片谷 健一, 秋本 政明, 西本 健市
    1967 年 41 巻 5 号 p. 239-246
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    リボヌクレオタイド類のアニオン交換樹脂による定量法として,ギ酸とギ酸ソーダ2成分系溶離剤を用い,両成分Fexponentialな勾配をつけるgradient elution methodを検討した.
    すなわち,各種の酵母リボ核酸分解物と標品各ヌクレオタイドなどの試料をアニオン交換樹脂(Dowex-1, X-8, 200~400メッシュ)のカラム(内径9mm,樹脂層高200mm)に常法どおり吸着,水洗したのち,溶離剤を,
    (1)貯槽を0.5~0.6Mギ酸と0.1Mギ酸ソーダ混合液(モノヌクレオタイドを分析の場合),および0.6Mギ酸と0.6Mギ酸ソーダ混合液(ヌクレオサイドダイホスフェート以上を分析の場合),混合槽を水1.51.
    (2)貯槽を0.1Mギ酸と0.2Mギ酸ソーダ混合液,混合槽を0.1Mギ酸0.81 (モノヌクレオタイドを分析の場合)
    とする2つの方法によって連続的に溶出した.なお吸光度測定におけるブランクの吸収誤差について若干の検討を行なった.
    終りにのぞみ,本研究に際し有益な御助言と御校閲を賜わった北海道大学水産学部斉藤恒行教授に深甚なる謝意を表します.なお本研究の概要は昭和41年10月〓7日,帯広畜産大学で開催された日本農芸化学会北海道支部会において講演報告した.
  • 掘越 弘毅
    1967 年 41 巻 5 号 p. R21-R26
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
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