花粉の発芽生理究明の一環として,花粉(第1表)の無機成分および各種リン化合物の定量を行なった.
(1)発光分光分析の結果,いずれの花粉にもNa, K, Mg, Ca, Sr, Zn, Mn, Fe, Al, Cu, B, Si, Pを検出, NiおよびCrはオニユリ,ラッパスイセン,キショウブ花粉に, Pbはクロマツ,アカマツ,トウモロコシ花粉に, Tiはカボチャ,ウバユリ,キショウブ以外の花粉にそれぞれ検出した.
(2) Kは無機成分中最も多く, 902.7~1,543.6mg%で, Pはこれにつぎ344.3~1,102.8mg%, Mgは96.7~170.3mg%で, Caは36.2~99.4mg%であった. Siはオニユリ,パンクスマツ花粉に多く,それぞれ139.6, 171.1mg%である. Na, Fe, Al, Zn, Cu, Mn含量はいずれも少ない.
(3) Schneider法に準じて酸溶性,リン脂質, RNA, DNA,リン蛋白,不溶性の各画分に分別し,それぞれのリンを測定した結果,いずれの花粉も酸溶性リンが最も多く,花粉総リン中40.6~57.3%の範囲内で約半量をしめ,マツ類花粉141.5~203.6mg%,他の花粉は332.3~632.1mg%であった.酸溶性TP中のIP, Δ7-P, OPなどもマツ類花粉に少ない.またトウモロコシ,オニユリ以外の花粉にHL-P 4.1~17.6mg%を認めた.脂質リン, RNAリン, DNAリン,蛋白リンはそれぞれ103.9~258.0, 38.2~133.6, 11.2~58.1, 17.3~61.9mg%で,最後に微量の不溶性リン(1.7~6.9mg%)を認めた.
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