種々の柑橘類の無殺菌果汁を23°Cで1~6 kbar, 10分間の加圧処理を行い,果汁成分の変化,微生物の殺菌および酵素失活を調べた.
(1) 6 kbarまでの加圧処理による果汁成分の変化はほとんどみられず,加圧処理を行った伊予柑果汁は,無加圧の対照果汁と同じ新鮮な香味を有するものであった.
(2) 加圧処理後の細菌および酵母・カビの生菌数を調べたところ, 3~4 kbarの加圧でこれらの殺菌ができた.ただし,耐熱性の細菌胞子は生存した.また,加圧時の温度を45°Cとしたり,あるいは加圧時間を30分にすることにより,より低圧で殺菌効果が認められた.
(3) 果汁中のペクチンエステラーゼ活性は,処理圧力が高いほど失活したが, 6 kbarの加圧においても一部活性が残存した.ペルオキシダーゼは,これより耐圧性があった.酵素の場合も,45°Cの加温を組み合せると両酵素の失活を高めることができた.
以上の結果より,柑橘類の無殺菌果汁は高庄処理により天然の風味を保持したまま殺菌を行えると判断した.
抄録全体を表示