(1) 円形濾紙クロマトグラフィーと銅イオン添加のニンヒドリン呈色を利用した迅速簡便なアミノ酸定量法を設定し15種の細菌の休止細胞を用いてトランスアミナーゼ活性の分布を調べた.
(2) いずれの菌株においても, α-ケトグルタール酸とのトランスアミネーションについては,アスパラギン酸とフェニールアラニンをアミノ基供与体とする系が強い活性を示している.
(3)
Flavobacterium fuscum, Flavobacterium flavescens, Achromobacter liquidum, Xanthomonas citriにおいては,ロイシン,イソロイシン,パリン,ノルバリンおよびフェニールアラニンとα-ケトグルタール酸との反応が強くリジンとの系も強い.
(4)
Escherichia coli, Alcaligenes faecalisでは, (3)のグループと同様にロイシン,パリン等との反応も存在するが,アスパラギン酸との反応がより強く,リジンとの反応が存在しない点で異っている.
(5)
Achromobacter supevficialisと
Achromobacter polymorphによるα-ケトグルタール酸とのトランスアミネーションでは,アスパラギン酸のほかにα-アラニン, γ-アミノ酪酸,オルニチンの如きω-アミノ酸をアミノ基供与体とする系が特異的に強い活性をもっている.
(6)
Bacillus roseus, Bacillus natto SN,
Proteus vulgarisおよび
Corynebacterium sepedonicumにあっては,アスパラギン酸,フェニールアラニン,オルニチンおよびトリプトファンとα-ケトグルタール酸との反応の他に, α-アミノ酪酸もしくはα-アラニンとの反応が極めて強いが,ロイシンまたはバリン等との反応は極めて弱い.
(7)
Pseudomonas fluorescens, Bacillus thiaminolyticusでは, (6)のグループと類似の傾向が示されるが,ロイシンまたはバリンとのトランスアミネーションも強い点で異っている.
(8) ロイシン,イソロイシン,バリン,ノルバリンおよびα-アミノ酸, α-アラニンはそれぞれα-ケトグルタール酸に対するアミノ基供与体として類似の効果を示した.
(9) ピルビン酸,フェニールピルビン酸およびオキザロ醋酸をアミノ基受容体とする反応においては,グルタミン酸の関与しない系ではアミノ基供与体の数も少く活性も一般に低いが,二,三の菌株にあっては特異的に活性の高い反応が認められた.
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