代用食品として難穀類,芋類及び樹實類の主なるものを選び,これ等を主食品となし白鼠飼養試験を行ひたり.その成績を要約すれば次の如し.
1. 供試食品に單に無機鹽類を混合するのみにて,最初20日間白鼠を飼育せる場合の體重増加量は,主として供試食品中のビタミンBの含量に關係すべし,今その順位を示せば次の如し.括弧内の數字は増體重(g)を示す.
精白燕麥(30) 平麥(27) 小粗麥粉(25) 蕎麥粉(24) 甘藷粉+澱粉+カゼイン(21) 胚芽米(17) 勝栗(17) 玉蜀黍粗粉(12) メリケン粉(11) 精白高梁(11) 精白粟(11) 馬鈴薯粉+澱粉+カゼイン(11) 精白黍(10) 七分搗米(9) 蒸稗(7) 白稗(7) 菊芋粉+澱粉+カゼイン(7) 白米(±1) 栃粉+カゼイン(-1) 楢粉+カゼイン(-4)
(菊芋粉の劣れるはビタミンBの欠乏にあらす.)
2. 白鼠に最初20日間は供試食品に鹽類混合物3%を配合せるものを與へ,次の26日間はこれに酵母末2%を添加し,終の26日間はその上に肝油を添加して,全期間72日間の成長量を測定せし結果その順位を示せば次の如し.括弧内の數字は成長量(g)を示す.
精白燕麥(106) 小麥粗粉(102) 蕎麥粉(95) 平麥(92) 胚芽米(90) 甘藷粉+澱粉+カゼイン(90) メリケン粉(89) 勝栗(88) 七分搗米(75) 白米(63~79) 精白黍(67) 玉蜀黍粗粉(63) 蒸稗(62) 精白粟(60) 精白高梁(49) 白稗(47) 馬鈴薯粉+澱粉+カゼイン(43) 栃粉+カゼイン(43) 楢粉+カゼイン(31) 菊芋粉+澱粉+カゼイン(23)
而してこの差異は各供試食品中のビタミン含量の多少,蛋白質の良否及び多少,消化の難易,嗜好性の有無並に喰下量の多少,特異成分の有無等種々の原因に基くものにして,是を要するにこれ等の食品を比較的偏食に近からしめたる場合の榮養價を示すものと考へて大過なかるべし.
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