(1)ウイスキー原酒の蒸留に際して分割蒸留を実施し,その分留液について留出するフーゼル油の動向を検討した.
(2)バニリン硫酸反応による分析の結果は,初留の方の1~6区ではイソブチルアルコールが多く含有されるため青紫色を呈し,比色分析の結果でも515mμ, 570mμの2か所にピークを認めた. 7~9区では紫色を呈して570mμのピークが極めて減少してショルダーを示し,イソブチルアルコールが非常に少なくなったことを示した. 10~12区ではイソアミルアルコールが主体であって,従って呈色も紫微赤色を示し, 570mμのピークは全く消失して認められない.
(3)ガスクロマトグラフィーの分析の結果も, 2の結果をうらづけるもので,初留の方ではイソアミルアルコールに対してイソブチルアルコールの量が割合に多いが,中留,後留と進むにつれて,イソブチルアルコールはほぼ直線状に減少するのに対して,イソアミルアルコールの低下は極めて緩慢なことがわかった.イソブチルアルコールに対するイソアミルアルコールの比率は,最初1.38であるが最後には5.60に達する.
(4)スコッチウイスキーの製品及び原酒のイソブチルアルコールに対するイソアミルアルコールの比率は1~3の間にあり,少なくとも蒸留に関する限り初留はやや多く採取し,そして後留の除去はやや早目にすることがスコッチに近い組成の原酒を得られると考えられる.高級アルコールの組成とその成分の比率は,蒸留酒の場合において,蒸留に際しての中留採取区分の一判定基準として用いられよう.
抄録全体を表示