ボルドウ液を調製する際のCuSO
4・5H
2O:Ca(OH)
2の反応比について化学分析法およびX線回折法によって検討を重ねた結果,次のことを明らかにすることができた.
(イ) 筆者は本実験を行うに先だってボルドウ液,ボルドウ液有効成分,ボルドウ液有効固形分の定義を明らかにした.従来,多くの研究者によって本剤に関する検討はいろいろ行われているのであるが,その大部分は植物病理学的研究或いはそれを最終目的とする物理学的,化学的研究であり,さらにこれら諸研究の結論が必ずしも一致していないことの1因は上記せる3者の定義の判然としていないことによるものと考えられる.
(ロ) Ca(OH)
2飽和水溶液をつくり空気中のCO
2の影響を遮断した状態で攪拌しながら, CuSO
4・5H
2O薄水溶液を僅少量ずつ加え,反応液中に存在するCa(OH)
2及びCuSO
4・5H
2Oの変化を時々刻々迅速かつ正確に分析することにより,両者は常に一定のモル比において結合することを知った.この比率はモル比として20:17および20:21の2点である.そしてこの比率が20:21より以上Ca(OH)
2が存在するときには,反応液中には過剰のCa(OH)
2が認められ,また20:17よりもCa(OH)
2が少い場合には反応液中にはCuSO
4・5H
2Oが明らかに認められる.なお,両者のモル比が4:10よりもCa(OH)
2が多いときには大過剰に存在するCa(OH)
2の一部は有効成分と考えられる反応生成物とcementationして1種の固溶体の如き状態となっているものと推定される.以上のことを化学分析法によって確認することができた.
(ハ) CuSO
4・5H
2O:Ca(OH)
2の配合比をいろいろ変量して調製したボルドウ液有効固形分,および有効成分と考えられる反応生成物とを濾過・乾燥せる試料について粉末X線回折法によって検討した.その結果,両者の配合比がモル比として20:17のときと20:21のときに生成する化合物は相異なる銅塩であって,いずれもボルドウ液有効成分と考えられる化合物であることを知り,両者の比率が20:17ないし20:21の範囲内においては20:17のときに生成する有効成分と考えられる反応生成物とその比率に応じて過剰に存在するCa(OH)
2とがcementationし,両者の比率が20:21より以上にCa(OH)
2が過剰に存在する場合にはこれは同様に有効成分と考えられる反応生成物とcementationしていることを推定することができた.
抄録全体を表示