日本農芸化学会誌
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40 巻, 2 号
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  • 村瀬 克彦, 草川 勉, 山口 潮三, 高橋 孝雄, 船津 勝, 五斗 一郎, 古賀 脩, 岡本 正幹
    1966 年 40 巻 2 号 p. 61-66
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 加熱処理ヒマシ粕中に残存する有毒成分は,水またはエタノールにより抽出され,溶媒分別によって結晶状に分離された.
    (2) 有毒成分の結晶の元素分析値,融点,紫外および赤外吸収スぺクトルがricinineの値とよく一致することから,本体をricinineと同定した.
    (3) 加熱処理ヒマシ粕中のricinineの含量は0.13%以上であった.
    (4) Ricinineのマウスに対する最小致死量は腹腔内注射の場合0.016mg/gマウス体重,ヒナに対する給与試験では0.1mg/gヒナ体重であると推定された.
  • 金 三純
    1966 年 40 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    タカアミラーゼAは水溶液の状態で紫外線によって強く不活性化される.これは主としてシスチンの開裂酸化に伴う活性に必要な酵素蛋白の立体構造の破壊によるものであり,トリプトファン,チロシン,ヒスチジンなどの酸化も共役している.これらのことは光不活性化とこれに伴うアミノ酸の酸化量を定量することにより示される.光照射に伴う酸素吸収量はアミラーゼの場合と構成アミノ酸混合物とであまり差異がない.これは高分子形成およびconformation形成にあまり依存しないことを示すものである.アミノ酸の光酸化反応は励起1重項→3重項→溶媒捕捉準位の無輻動遷移によって作られる光電子による水の還元,これに溶存酸素がカップルして生じたHO2と母体ラジカルとの酸化反応と考えられる.
    このため常磁性イオンの共存により, 3重項←→1重項の遷移確率をコントロールすることにより光酸化反応をコントロ一ルできる.基質の存在は光不活性化反応を保護するが,これは光電子ないしHO2に対し基質や分解産物が受容体として働くためであろうと考えられる.
  • 金 三純
    1966 年 40 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    タカアミラーゼAはリボフラビンの光増感反応によって不活性化されるが,これはリボフラビンの3重項状態と溶存酸素との相互作用によって生起した活牲酸素によるアミノ酸残基の酸化反応に基因する. Warburg検圧計による吸収酸素量に対する不活性化および酸化アミノ酸残基の関係から,完全失活はトリプトファン,ヒスチジン,チロシン,メチオニン,シスチン残基が約70%, 45%, 20%, 4%, 17%において起る.タカアミラーゼと同じアミノ酸組成のアミノ酸水溶液では酸素吸収がアミラーゼよりはるか大であることから,高分子形成や特殊なconformation形成の効果力が光増感酸化反応の面に現われているようである.したがって酵素の変性効果やさらに酵素-基質複合体形成の効果も光増感酸化反応に変化をもたらす.リボフラビンの光増感酸化反応機構を調べるために,常磁性金属イオンの1重項←→3重項禁止遷移に対する摂動効果を酸素吸収,光不活性化,リボフラビンの螢燐光の消光の相互関連のもとで研究し,光増感反応に活性なリボフラビンの状態は3重項状態と推定した.
  • マウスおよびニワトリ肝のfluoroacetanilide amidohydrolaseの諸性質
    中村 利家, 上田 隆之, 田中 久一, 浜本 義夫
    1966 年 40 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    マウスおよびニワトリ肝から抽出されたmonofluoroacetanilides加水分解酵素について,その基礎的諸性質を比較検討した.基質としてはmonofluoroacetanilide (FAn)を用い酵素反応条件を定めた.なお本酵素を便宜上fluoroacetanilide amidohydrolase (fluoroacetanilidase)と仮称した.
    (1) マウスおよびニワトリ肝臓ともに,活性はほとんどcell sapに存在し,ミトコンドリヤ部分には活性が認められなかった.
    (2) マウスおよびニワトリ肝酵素ともに,最適pH約8.5,最適温度45~50°であった.いずれも室温ではかなり広いpH範囲で安定であり, 50°でもpH 7.5~8.5でかなり安定であった.
    (3) いずれもMn2+の添加により活性が増大するが,その程度はマウス肝酵素のほうがニワトリ肝酵素よりも大きかった.
    (4) Michaelis定数はMn2+無添加の場合,マウス肝酵素では1.2mM,ニワトリ肝酵素では2.9mMでありほぼ近似した.しかしMn2+ 1mM添加により,それぞれ2.4mMおよび2.2mMとなりいっそう酷似した.
    (5) 阻害剤の影響はマウスおよびニワトリ肝酵素ともに全く同様であり,いずれもSH基反応試薬および金属キレート剤により阻害された.
    (6) 以上からマウスおよびニワトリの駐臓のfluoroacetanilidaseの性質はほとんど一致すると考えられる.
  • ニワトリ肝のfluoroacetanilide amidohydrolaseの精製および二,三の酵素特性について
    中村 利家, 上田 隆之, 伊藤 達郎
    1966 年 40 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Fluoroacetanilide amidohydrolase (fluoroacetanilidase)をニワトリ肝臓のアセトンパウダー抽出液から硫安塩析法により部分精製し,アセトアニリド誘導体に対する基質特異性と金属イオンの役割について若干の検討を加えた.
    (1) 硫安塩析を2回くり返したのち流水透析することにより,アセトンパウダー抽出液の約50倍の比活性を有する部分精製酵素液がえられた.最初飽和度0.45から0.65の沈澱を集め,これを溶解後再び飽和度0.55から0.60の画分をとった.
    (2) 精製液および抽出液のアセトアニリド誘導体に対する基質特異性をみたが,本酵素はfluoroacetanilidesのほか, iodoacetanilideやchloroacetanilideなどのmonohaloacetanilidesにも作用すると考えられた.しかしacetanilidesに対する活性は全くみられなかった.
    (3) 精製液を8.3mM o-phenanthroline 15時間処理した場合,活性は50%まで減少したが完全なアポ酵素はえられなかった.これにMn2+ 25mMを添加し80%まで活性回復をみた.強固に結合した金属イオンを有する金属酵素の可能性が考えられる.
    (4) 本酵素はMn2+のほか, Mg2+, Co2+, Ba2+およびCa2+でも活性が増大し, Zn2+およびわずかにNi2+により阻害をうけた.なお精製液における金属イオン添加の最適濃度は0.1~0.2mMと思われた.
  • 二,三の酵素と培養条件について(その2)
    杉本 洋, 石井 茂孝, 岩浅 孝, 横塚 保
    1966 年 40 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    酵母菌体を分解して呈味液を得るのに必要な酵素類を生産することを目的として一放線菌Streptomyces No.41-003株の培養を行う場合の通気攪拌条件を検討した.
    実験は主として20l容ワルドホッフ型ジャー・ファーメンターを使用し, 10lのYP培地(パン酵母を含む培地), 30°の温度条件下で行い,通気攪拌条件は亜硫酸酸化法による酸素吸収速度恒数(Kd)に置換し,これを指標として相対的な検討を行った.
    (1) ヌクレアーゼ(RNase),プロテアーゼの生産は実験範囲内においてはいずれの通気攪拌条件においても3日目が最大であり, 5´-アデニル酸デアミナーゼ(DNase)の生産は2~3日目が最大である.
    (2) 5´-ヌクレオチダーゼ(DNase)の生産は通気攪拌条件の相違により最大活性出現時が1日目の場合と2日目の場合があり,後者の場合は一定の通気攪拌条件の範囲内に限定される.
    (3) プロテアーゼおよびDAase生産に対する最適通気攪拌条件は,亜硫酸酸化法によって示されるKd=2.72×10-5付近にあり, RNase生産に対するそれは, Kd≥5.25×10-5にある.
    (4) Kd=2.72×10-5で示される遇気攪拌条件で3日間の培養がほぼ目的に適合した.
    (5) YP培地を使用する場合,培養時の消泡剤としては醤油油+Antifoam Aの組合せが最適であった.
  • ペクチン質のDEAE-セルロースカラムクロマトグラフィー
    畑中 千歳, 小沢 潤二郎
    1966 年 40 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) DEAE-セルロースによるクロマトグラフィーで,中性多糖類,オリゴガラクチュロニド,ペクチン酸は互によく分離される.
    (2) 重合度6以下のオリゴガラクチュロニド間の分離も容易である.
    (3) 重合度7以上のオリゴガラクチュロニドは重なり合う.ペクチン酸はステップワイズ・エリューションでは2, 3の区分に,グラジェントでは1つの区分に分かれる.前者の場合各ピークは展開剤の変更後短時間の中に溶出し,展開剤を変更しないかぎりいくら長時間溶出を行っても次のピークは現れない.この際分子量の低いポリウロニドと高いものとの間に,あるいはウロン酸含量の低いポリウロニドと高いものとの間に不完全な分別が得られるにすぎない.
  • ペクチン酸の構成糖類
    畑中 千歳, 小沢 潤二郎
    1966 年 40 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ペクチン酸にYPGを作用させたときに残る酸可溶性酸性多糖類に,さらにCPGを作用させると,ガラクチュロン酸が生成する.ペクチン酸にYPGあるいはYPGとCPGの両者を作用させたときに生成するオリゴウロニドは中性糖類を含んでいる.これらの結果はペクチン酸が複合多糖類であることを示している.
  • 伊藤 智夫, 荒井 成彦
    1966 年 40 巻 2 号 p. 110-112
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    An amino-acid diet for the silkworm, Bombyx mori L., was formulated (Table I), on which the rearing from egg to pupa was succeeded. The diet was agar-based, which contained starch, amino acids (Table II), oil, sterol, salts, ascorbic acid, cellulose powder, and B vitamins. A small amount of morin and mulberry leaf fraction was added in order to stimulate larval feeding. Sorbic acid was added to retard growth of fungi. The rearing was started with 40 newly hatched larvae. The larvae showed a fairly good growth until the end of the fourth instar, and only one larva out of forty died in the fourth instar (Tables III and IV). There was also another larva showing a sign of the five-molter, which was omitted from the experiment, when it reached the fourth molting. Growth during the fifth instar was, however rather reduced. Although 38 larvae attained the maturity at the end of the fifth instar, only five larvae started spinning. Several larvae became pupae without spinning, but eventually died. This is the first report of rearing of Bombyx larvae entirely on an amino-acid diet.
  • 慶田 雅洋, 長尾 昭雄, 井野 慶子, 松原 照子, 津郷 友吉
    1966 年 40 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1966年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The fat content of butter can be estimated either by a direct or an indirect method. In Japan, the indirect method is generally adopted for inspection, i, e., determining the moisture and non-fat-solids content and considering the remaining part as the fat content; while the direct method can be applied by use of the apparatus designed by Smetham for liquid-liquid extraction. The conditions for the determination procedures were studied in detail, and the way how to boil the butter sample with hydrochloric acid before extraction, the extraction time with ether and the time of drying of the flask in an oven were finally determined, after which a comparison of the direct and the indirect methods was carried out by using commercial butters. It was not necessary to continue boiling for a long period, and it took two hours for complete extraction of fat, while only one hour was enough for drying the flask. The fat content of butter can be determined more rapidly and easily by the direct method than the indirect method. Moreover, the determination accuracy of the direct method proved to be considerably higher than that of the indirect method so far as the salted sweet cream butter and salted ripened cream butter were concerned. No difference in determination accuracy was observed with unsalted sweet cream butter.
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