日本消化器外科学会雑誌
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23 巻, 10 号
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  • 再建術式の選択を中心に
    林 賢, 渡辺 寛, 加藤 抱一, 日月 裕司
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2315-2321
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去27年間の胸部食道癌切除再建術後に再吻合を施行した53例を対象に治療成績とその問題点を検討した. 対象は縫合不全 (L群) 32例, 吻合部狭窄 (S群) 21例で, 一次閉鎖は47例, 他臓器再建は皮弁3例, 有茎空腸1例, 遊離空腸2例であった. 再縫合不全は53%に発生し21%はmajor leakageに至った. 再縫合不全はL群 (66%) がS群 (33%) より, 胸壁前経路 (59%) が胸骨後経路 (43%) より高率で, それぞれ前者で再吻合前の栄養指標が有意に低下していた. 縫合不全が1/3周未満では小範囲剥離吻合, 1/3周以上2/3周未満では広範囲剥離吻合が適当であるが, 2/3周以上では一次閉鎖, 他臓器再建ともに再縫合不全が高率で, risk factorを持つ症例では特に注意が必要である.
  • 今野 修, 井上 仁, 木暮 道彦, 芳賀 良春, 佐川 克明, 伊東 藤男, 手塚 徹, 尾形 真光, 寺島 信也, 元木 良一
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2322-2327
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胸部下部食道癌に対する外科的治療を右開胸下部食道切除・胸腔内食道胃吻合術の19例 (A群) と, 右開胸食道亜全摘・頸部食道胃吻合術の21例 (B群) との間で比較検討, その成績について述べるとともに, とくに上縦隔郭清と頸部郭清の意義について検討した. 記載は「食道癌取扱い規約」に準じた. 1) リンパ節 (以下LN) 転移率は腹部に高値であったったが, B群でNo.105, No.106LNにもそれぞれ21%, 5%の転移を認めた. 2) 耐術例の予後は累積5年生存率でA群21%, B群47%とB群で良好で, st III・IV症例でもA群14.3%に比べ, B群で33.3%と良好であった. また, B群のa3, pl1, m1症例を除いたn (-)-n2 (+) 症例と, n3~4 (+) 例の比較では前者59.9%, 後者49.9%と著差なく上縦隔郭清の有用性が示された. 3) 再発形成は肝転移が多く, 頚部LN転移も認めたが, 頚部LN郭清は現時点では術前検索, または術中上縦隔の最上LNに転移が疑われた症例に対して適応があるものと考える.
  • 齊藤 英夫
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2328-2338
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌380例の術前の腹腔動脈・上腸間膜動脈造影像を解析し, 手術時肉眼所見および病理組織学的所見と比較して腹膜播種性転移, 肝転移, リンパ節転移, 漿膜浸潤の各因子について一致率 (対肉眼診断), 正診率 (対組織診断), 偽陽性率, 偽陰性率を求めた. 腹膜播種性転移の有無に関する全体の一致率は93.4%で, 肝転移のそれは96.3%であったが, H116.7%, H266.7%と比較的小さな肝転移の診断能が不良であった. リンパ節転移の有無に関する全症例における正診率は51.4%で, 偽陰性率が47.8%と高かった. リンパ節転移は濃染像から診断する場合が多く, リンパ節濃染像は組織型が高分化の症例で高頻度にみられた. 漿膜浸潤の有無に関する全体の正診率は81.6%で, 血管像より膵浸潤をはじめとするS343例を診断できた. 血管造影法は胃癌の進行程度に診断するうえで有用な手段と考えられ, とくに腹膜播種性転移, 肝転移, 膵浸潤によるS3の判定に有効であった.
  • 平野 鉄也, 真辺 忠夫, 戸部 隆吉
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2339-2342
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝切除後の膵外分泌系機能の変化を解明するために, ラットにおいて約70%肝切除後, 経時的にcaerulein刺激時のアミラーゼ分泌能を検討した. 生体下膵液中のアミラーゼ分泌量は肝切除後4日目, 7日目とも単開腹群に比べ1.3倍 (p<0.05), 1.6倍 (p<0.01) に増加した. 単離腺房細胞を用いた培養 (in vitro) 系における肝切除7日後のcaeruleinに対するアミラーゼの最大分泌反応は単開腹群 (10-9M) に比べより低い濃度 (10-10M) のcaeruleinで得られた. さらに肝切除後4日目, 7日目の膵組織アミラーゼ含有量も単開腹群に比べ1.4倍 (p<0.05), 1.7倍 (p<0.01) に増加していた. これらの結果より肝切除後の膵腺房細胞ではアミラーゼ含有量の増加, caeruleinに対する感受性の亢進など, 膵外分泌系に著明な変化が生じることが明らかになった.
  • 鴻巣 寛, 弘中 武, 塚本 賢治, 堀井 淳史, 閑 啓太郎, 下出 賀運, 久保 速三, 大森 浩二, 牧野 弘之, 浜頭 憲一郎, 糸 ...
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2343-2349
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌切除後再発55例の予後を再発形式, 再発時期, 術後治療別に検討した. 再発形式別の再発後2年生存率は単発残肝再発 (n=11) が87.5%, 多発残肝再発 (n=30) が40.1%, 肝外転移または合併 (n=14) が13.4%と単発が最も予後良好であった. 再発時期別検討では, 多発残肝再発30例において, 術後12ヵ月以内の再発15例のうち8例 (53.3%) が再発確認後1年以内に癌死した. 一方, 術後12ヵ月以上のちの再発15例では1例 (6.7%) のみであった. 再発後治療別2年生存率は, 再手術群 (OP群) 10例が34.3%であり, 肝動脈塞栓術Transcatheter arterial embolization (TAE) 施行群 [TAE (+) 群] 27例が64.9%, 無治療または化学療法群 [TAE (-) 群] 18例が6.9%であった. TAE (-) 群はOP群, TAE (+) 群に比べ予後不良であったが, OP群とTAE (+) 群の両群間には明らかな差は認めなかった.
  • 臼井 律郎, 伊勢 秀雄, 高橋 良延, 北山 修, 森安 章人, 佐藤 正一, 井上 晴之, 鈴木 範美, 松野 正紀
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2350-2354
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃切除後胆石の成因を明らかにする目的で胃切除術胆石53例の結石種類, 胆汁中細菌, 胆汁組成の検討を行った. 結石種類は, 胃切再建術式に関わらず黒色石が多くみられた. 胃切除後黒色石例の胆汁組成では胆汁酸およびリン脂質濃度の低値とイオン化カルシウム (Ca++) 濃度の高値が特徴であった. 胆汁中Ca++高値は, 胆汁酸およびリン脂質の低下の結果と考えられ, この高濃度の胆汁中Ca++が胃切除術後での黒色石生成に重要な役割を果たしていることが示唆された. 十二指腸が空置される再建術式 (B-II群) においては黒色石とともにピリルビンカルシウム石が高頻度にみられ, 胆汁中細菌も高率に陽性であった. これらの再建術式後では空置された十二指腸内の細菌叢の変化から胆道感染が引き起こされ, ビ石形成の原因となっていることが考えられた.
  • 西原 謙二, 清水 良一, 品川 裕治, 白神 利明, 冨永 博, 川村 明, 濱中 裕一郎, 村上 卓夫, 鈴木 敵
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2355-2362
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵癌のmagnetic resonance (MR) 像の成り立ちに関わる因子を明らかにするため, 術前MR像と, 手術時所見, 切除標本割面像, 病理組織像, 切除標本MR像とを対比検討した. 術前MRimagingが施行された膵癌症例17例を対象とした. 術前MR像を, I型: 周囲膵組織と明瞭なコントラストをもつもの, II型: 周囲組織より突出する腫瘍としてのみ確認しうるもの, III型: 脈管の変形のみを認めるもの, IV型: 腫瘍を確認しえないもの, と分類した. I型は肉眼的には結節型, 組織学的には髄様型で, 末梢側の炎症や萎縮が軽度なものが多かった. III型やIV型では肉眼的には浸潤型, 組織学的には硬性型のものが多く, 末梢側の炎症や萎縮は高度であった. 術前と切険標本のMR像の間に, 大きな隔たりはなく, motionartifactの影響は小さいと判断された. 膵癌のMR像は腫瘍と周囲膵組織の性状々よく反映しており. 外科的に有用な情報を提供しうるものと思われた.
  • 川口 学永, 大口 善郎, 荻野 信夫, 真嶋 敏光, 越智 昭博, 大下 征夫, 小林 春秋男, 高尾 哲人
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2363-2369
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化管原発悪性リンパ腫手術症例17例の予後因子および治療について検討した.
    Naqviら2) の分類では5年生存率は1, II期 (11例) 74.1%, III, IV期 (6例) 33.3% (p<0.05) であった. 主にリンパ節転移, 深達度によるNaqviら2) の分類は予後を推測する上で有効であった. 深達度別ではse以上 (9例) に比べssまで (7例) の3年生存率は良好であったが (p<0.05), 5年生存率ではssまでが低値を示した (有意差なし). リンパ節転移別ではn2以上 (10例) に比べn0n1 (6例) の5年生存率が良好であった (p<0.05). すなわち, 深達度は短期の, リンパ節転移は長期の予後因子としての重要性が示唆された. 術式別5年生存率は治癒切除群 (8例) 80.0%, 非治癒切除群 (9例) 42.9% (p<0.05) で, リンパ節郭清を含む根治術が必要と考えられた. 術後補助化学療法施行群の5年生存率は74.0%で, 非施行群の33.3%に比べ良好 (p<0.05) で, 生存期間でも有意の差がみられ (D<0.05), 術後補助化学療法の併用が重要と考えられた.
  • 湯浅 典博, 二村 雄次, 早川 直和, 神谷 順一, 前田 正司, 岡本 勝司, 塩野谷 恵彦
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2370-2375
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    21年4か月間に教室で経験した大腸他臓器重複癌は21例で, 大腸癌手術例の5.5%であった.この21例 (重複癌群) を, 他臓器癌の合併のない大腸癌363例 (非重複癌群) と臨床的に比較検討した. 重複癌群は次のような特徴を有していた. 性比は3.2: 1と男に多く, 大腸癌手術時年齢の平均は61.7歳と非重複癌群よりも約4歳高かった. 大腸癌多発率が28.6%と高く (非重複癌群は5.2%), 大腸癌占居部位が右側結腸に占める率が非重複癌群に比べて高かった. 癌家族歴陽性率も55.6%と高かった. 他臓器癌は胃, 膀胱に多かった. 大腸他臓器重複癌の治療成績向上のためには, 他臓器癌診断後の大腸癌の早期発見の努力が必要であり, また大腸多発癌, 高齢, 癌家族歴陽性, 右側結腸癌患者は他臓器癌合併の危険群とみなして積極的に第2癌の発見に努めるべきである.
  • 安本 和生, 豊田 忠之, 遠山 和成, 伊関 丈治, 高木 正和, 中上 和彦, 袴田 光治, 野家 環, 高林 直記, 安藤 史隆, 荻 ...
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2376-2379
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    49歳, 女性. 胸部中部食道癌 (Im, Stage IV) に対して1986年8月右開胸開腹胸部食道全摘兼胸骨後経路胃管挙上再建術を行った. 術後後照射を行い, その後経過良好であったが, 術後1年8か月後に吐血・下血を主訴としショック状態で再受診した. 緊急内視鏡にて挙上胃管後壁に深い潰瘍性病変があり, 同部には多量の凝血塊が付着し拍動性に動いていた.保存的に治療を行い, 一時的に止血しえたが, 翌日再検査中に突然噴水様の大量吐血が出現し心停止・呼吸停止状態となった. 蘇生術を施行しながら直ちに緊急手術を行った. 術中所見ではこの潰瘍は大動脈弓部前面に穿破しており, 穿破部大動脈壁の直接縫合により止血し救命することができた. 挙上胃管に発生する潰瘍性病変の報告は, 本邦では5例ときわめて少なく, このように大動脈へ穿通・穿破し, かつ救命しえた例の報告はいまだ見られない. 挙上胃管潰瘍発生の成因について検討をくわえ報告する.
  • 藤富 豊キ, 穴井 博文, 久保 宣博, 松本 興三, 古沢 毅
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2380-2384
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    42歳女性で超音波検査により発見された胃重複症の1例を経験したので報告する.超音波検査, computed tom Ography (以下CT) 検査で肝左葉下方, 胃小弯側に接して境界明瞭な球状の嚢胞を認めた.上部消化管造影, 胃内視鏡検査では噴門部小弯に3×3cmの表面平滑でなだらかな隆起があり, 胃壁外性腫瘤で胃内腔との交通はなかった.手術所見では腫瘤は胃壁小弯と連続しており, 胃壁を一部含めて摘出した.摘出標本では径4cmの嚢胞で膿汁様液が充満していた.病理組織学的には粘膜, 筋層, 衆膜の層構造を呈していた.粘膜上皮は多列円柱上皮で杯細胞もみられた.筋層の一部は胃壁の筋層と連続していた.胃内腔との交通はなかった.今後超音波検査, CT検査で発見される腹腔内襲胞では本疾患も念頭におくべきである.
  • 中江 史朗, 前川 陽子, 河野 範男, 中谷 正史, 兼古 茂夫, 藤原 順, 斎藤 洋一
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2385-2389
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝転移・リンパ節転移が認められないalpha-fetoprotein (以下AFP) 産生pm胃癌の1911を報告する.
    症例は69歳男性で血清AFPは1,086ng/mlと異常高値を示し, 胃透視と内視鏡で胃体部にBorrn4nn2型の腫瘍が認められた.生検でGr Oup Vが証明され, 胃幽門側切除, R2郭清が施行された.病理組織学的には, 大部分はporであるが, 一部に腺腔形成も認められ, 深達度はpmで, n., stage Iであった.ABC法による免疫組織化学的検索では胃癌部にAFPの局在が証明され, 腺管構造を示す部分より低分化で髄様構造を示す部分の方が陽性度が強かった.術後AFPは正常化し, 術後1年5か月を経た現時点でも再発の徴候は認めていない.
    以上, AFP産生胃癌の1例を報告するとともに, 文献的考察を行った.
  • 石川 博文, 渡辺 明彦, 奥村 徹, 澤田 秀智, 中谷 勝紀, 中野 博重, 丸山 博司, 堤 雅弘, 小西 陽一
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2390-2394
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳, 男性で全身俗怠感, 嘔気およびタール便がみられた.胃X線検査では十二指腸球部に逸脱した結節状の有茎性腫瘤で, 内視鏡では胃幽門洞部前, 後壁に有茎性腫瘤を認め, 後壁のものは十二指腸に一部逸脱していた.生検の病理組織診断では両者ともtubular adenomaであったが一部に核の異型が認められ, Gr Oup IVであった.以上より胃腺腫内癌の診断のもとに幽門側胃切除術を施行した.腫瘤は2個存在し, 後壁には12.5×3.5×2.5cm大の表面結節状の帯状の有茎性腫瘤を, 前壁には2.5×15×2.5cm大の有茎性腫瘤を認めた.組織学的には腫瘍の大部分はpapi1lotubular adenomaであったが, その中にadenomaからの癌化と考えられるadenocarcinomaが多発し, その深達度は, 粘膜下層まで浸潤した像が認められた.以上, 十二指腸に逸脱した胃腺腫内癌について若子の文献的考察を加えて報告する.
  • 小原 則博, 塩竈 利昭, 寺田 正純, 松尾 繁年, 松元 定次, 元島 幸一, 角田 司, 土屋 涼一, 山本 賢輔
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2395-2399
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    手術後に発生した広範囲肝梗塞の2例を経験したので報告した.症例1は62歳男性で肝門部胆管癌に対する門脈合併切除を伴う肝左葉兼尾状葉切除後にS8領域に発生した肝梗塞であり, 症例2は46歳男性で胃癌再発例に対する門脈, 肝動脈合併切除兼再建を伴う膵頭十三指腸切除後に発生したものである.前者は術後1か月目に肝不全にて失ったが後者は救命しえた.また肝梗塞の発生機序として, 症例1は剖検により門脈再建部は良好に開存しているのが確認されたが, 右肝動脈前枝が腫瘍に巻き込まれていたため結紮切除しており, その支配領域 (S8) が広範囲に肝梗塞に陥っていた.症例2は胆管空腸吻合部の減圧目的として挿入したretrograde transhepatic biliary drainage tubeで肝内血管を損傷し, その肝内血管支配領域に肝梗塞が発生したと考えられた.これら肝梗塞の診断, および反省点について考察を加え報告した.
  • 川島 吉之, 大和田 進, 宮本 幸男, 泉 勝
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2400-2404
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    乳酸菌によるまれな肝膿瘍を経験したので若干の文献的考察を行い報告する.症例は68歳女性で胃癌にて胃亜全別術, 郭清および胆嚢摘出術, 術中胆道造影を受け4か月後, 発熱と右側胸部痛を主訴に入院となった.胸部X線で右胸水を認め, 腹部超音波検査では肝の後区域に円い低エコー病変を認めた-X線computed tomography (CT) でも超音波と同じ部位に辺縁が高濃度で中心が低濃度の不均一な円い病変を認め辺縁が造影剤により増強された.血液検査で白血球増多とC-reactive protein (CRP) 上昇をみとめ肝膿瘍と診断された.抗生剤による保存的療法を施行したが効果なく, 第6病日超音波誘導下による経皮的穿刺ドレナージ術を行った.穿刺液の内容は白色の膿であり, Lactobacilluscatenaformeが培養同定された.約1か月間のドレナージにて全治退院した.
  • 長見 晴彦, 田村 勝洋, 中瀬 明
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2405-2409
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Aeromonas hydrophilia (A hydrophilia) による気腫性胆嚢炎の1例を経験した.症例は79歳女性で, 右季肋部痛を主訴として来院した.入院時腹部computed tomography (CT) 像にて胆嚢底部に約3×3cmの胆石が嵌頓しており, その胆石内にガス像を認めた.さらに入院後21日目に施行したCT像でも胆石内ガス像を認め, 入院時CT像と比べ大きさ, 位置とも変化はなかった.以上の所見から胆石をともなった気腫性胆嚢炎の診断にて入院後24日目に胆嚢摘出術, 総胆管切開術を施行した.摘出胆嚢は病理組織学的に多発性潰瘍をともなう壊疽性胆嚢炎像を呈し, また胆汁, 胆石の細菌培養ではオキシダーゼ反応陽性, グラム陰性のA hydrophiliaが分離検出された.A hydrophiliaによる胆道感染症はこれまで3例報告があるのみで, 特にA hydrophiliaによる気腫性胆嚢炎は自験例が初めての報告である.
  • 中原 英樹, 黒田 義則, 小島 康知, 先本 秀人, 伊藤 敬, 小川 喜輝
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2410-2414
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆管癌の発生に関しては不明な点が多い.今回, 珍しい発育形態を示した2例の胆管癌を経験したので報告する.
    症例1は73歳男性, 黄胆で発症しpercutaneous transhepatic cholangiography (PTC) において肝門部肝管の閉塞所見を認め, 手術の結果, 肝管内に有茎性に増殖した2個の胆管癌を認めた.症例2は69歳男性, 発熱・下腹部痛で発症した.PTCでは拡張した左肝管と, その内部に不均一な陰影欠損を認めた.吸引にては水アメ様粘液様物質を認めた.手術の結果, 肝内胆管上皮に, ムチン産生を伴う腫瘍細胞を認めた.今回の症例1では, 腫瘍の茎に癌浸潤を認めず, いわゆるcarcinoma inadenomaの発育形態であった.症例2では, 腫瘍細胞外にムチンを分泌するmucinous typeの乳頭状腺癌であった.
    この2症例は, 異なった腫瘍の増殖形態を示しており, 発癌のメカニズムを考える上で, 非常に興味ある症例であった.
  • 早川 哲史, 品川 長夫, 岩井 昭彦, 岡田 祐二, 水野 裕支, 由良 二郎
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2415-2419
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Insulinomaは外科的切除が原則であるが, 多発性発生の症例もあり, 外科的切除を困難なものとしている.今回われわれは, 異なった画像所見を呈した多発性insulinomaの1例を経験したので報告する.症例は26歳女性で, Wippleの3徴にてinsulinomaと確診し, 局在部位を検索した.腹腔動脈造影では膵体部に局在が疑われた.しかし, 腹部超音波検査, 超音波内視鏡では膵頭部に局在が疑われた.このため, Ca負荷経皮経肝門脈採血法を施行し, 膵体部と膵頭部に多発性のinsulinomaが疑がわれた.膵頭部, 膵体部の多発性insulinomaの可能性を考慮し, 開腹術を施行した.腫瘍は膵頭部, 膵体部ともに認められ切除した.組織診では膵頭部, 膵体部両腫瘍ともinsulinomaであり, 膵体部のinsulinomaは血管に富んでおり, 膵頭部の腫瘍は強度の硝子様変性を認めていた.画像上の相異は, この組織像の相違によるものと考えられた.
  • 小倉 伸一, 藤村 昌樹, 坂本 力
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2420-2424
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 肝硬変症患者の血管造影により, 巨大な脾動脈瘤を発見し, 金属コイルにより脾動脈塞栓術を行いその破裂を予防しえた.
    症例は40歳の男性で, 腹腔動脈造影では, 脾動脈根部に直径3cmの脾動脈瘤がみられた.そこで, 脾動脈瘤の破裂を予防すべく血管造影下に脾動脈塞栓術を行うこととした.
    脾動脈塞栓術: 経カテーテル的に動脈瘤の遠位と近位に直径8mmのアンギオコイル®を留置し動脈瘤への血流の阻止に成功した.術後経過は順調であった.
    この症例を報告するとともに, 脾動脈瘤の成因, interventional radiologyによる治療などについて, 若干の文献的考察を加えた.
  • 北村 宏, 山田 武男, 大場 伸一郎, 楊 孝康
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2425-2428
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は51歳の男性で以前より糖尿病, 高血圧を指摘されていたが放置, 5年前に心筋梗塞の既往があるが経過観察されていなかった.朝食後, 突発性の臍周囲の激痛で発症.食物残渣を嘔吐, 下血が認められた.胃, 大腸内視鏡検査で異常を認めず, computed tomographyでも特異な所見は認められなかったが, 自覚症状, 腹部所見, および心臓超音波検査で心室瘤を認めたため, 腸間膜動脈閉塞症を疑い, 血管造影を行った.上腸間膜動脈に陰影欠損を認めたため, 上腸間膜動脈にカテーテルを留置し, ウロキナーゼ24万単位持続動注したが効果なく, 発症後72時間で手術を施行した.腸管は蒼白で辺縁動脈の拍動を欠いていたが, チアノーゼには陥っていなかった.上腸間膜動脈に切開を加え, バルーンカテーテルにより血栓摘除を行ったところ, 腸管の色調が回復したため, 腸切除は行わず, 閉腹した.術後の血管造影で血栓摘除部の通過性は良好であった.
  • 赤松 大樹, 中島 邦也, 松田 康雄, 藤川 正博, 位藤 俊一, 久米 庸一, 伊豆蔵 豊大
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2429-2432
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸間膜嚢腫はまれな疾患である.急性腹症を呈した成人女性の腸間膜嚢腫の1例を報告した.患者は21歳の女性.下腹部痛および腹部膨満を訴えて卵巣嚢腫の疑いにて入院したが, 入院後1週間目に突然下腹部痛, 腹部膨満が増強し緊急手術が行われた.嚢腫は横行結腸間膜原発で横行結腸に強く癒着していたため, 横行結腸を部分切除し端々吻合した.切除標本では嚢腫は肉眼的に2つの部分に分かれていたが, 組織学的にも幼弱な腸管上皮を有するenteric cystと上皮を持たないpseudocystでその発生は異なっていた.
    腸間膜嚢腫はその頻度の低さ, 特異的な臨床症状を欠くことより術前診断は困難であり, 特に卵巣, 腎・尿路系, 肝臓, 膵臓などの嚢腫との鑑別が問題となる.治療は外科的に嚢腫を摘出すればよいが, 隣接する腸管との剥離が困難で腸管切除が必要となる場合もある.
  • 仁科 雅良, 藤井 千穂, 植田 昭徳, 梶原 康正, 広川 満良
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2433-2437
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 大量出血をきたした小腸のDieulafoy型潰瘍の1例を経験し, 術前に出血部位を診断し, 観血的に治療しえた.症例は68歳, 男性.下血と出血性ショックのため受診した.出血シンチグラフィ (99mTc-RBC) で左上腹部に集積がみられ, 上腸間膜動脈造影では空腸動脈からextravasationを認めた.
    小腸切除術を施行し, 粘膜面に小さな露出血管を認めたが潰瘍などはなかった.病理組織学的にはpersistant calibar arteryの所見であった.本邦ではいまだこのような症例の報告はなく, きわめてまれと思われる.
    出血源の不明な消化管出血においては, シンチグラフィおよび血管造影が, 診断・治療上有用である.
  • 江里口 直文, 西田 博之, 久保田 治秀, 原 雅雄, 吉田 浩晃, 星野 弘也, 木通 隆行, 中山 和道, 大石 喜六
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2438-2441
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回11年間 (1977年-1987年) の小腸腫瘍自験例8例について検討し, また本邦における5年間 (1981年-1985年) の剖検例の検討を行なう機会をえたので報告する.8症例のうちわけは悪性リンパ腫3例, 平滑筋肉腫1例, 未分化癌1例, 脂肪腫2例, 平滑筋腫1例であった.症例の検討では穿孔例 (悪性リンパ腫3例, 平滑筋肉腫1例) を除く4例の主訴は, 脂肪腫の2例で腹部膨満感および下腹部痛のように比較的軽度な症状を示し, 平滑筋腫では下血を, また未分化癌では悪心, 嘔吐および高度の腹痛であった.いずれも経口的小腸透視で術前病巣診断が可能で, 病変部はTreitz靱帯近傍および回腸末端部であった.日本病理剖検輯報1) によると発生頻度は0.2%-0.4%と非常に低く年次的推移に特徴的なものはなく, 組織型では癌腫, 悪性リンパ腫, 筋原性腫瘍が多かった.
  • 高橋 誠, 藤本 茂, 高井 満, 遠藤 文夫, 大野 一英, 升田 吉雄, 小幡 五郎
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2442-2446
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌の局所再発を予防するために, 直腸切断術直後に骨盤腔温熱化学療法 (intra-operative pelvic hyperthemochemotherapy: IPHC) を直腸癌13例 (男7, 女6名) に行った.その内容は直腸切除術後に骨盤腔内をmitomycinC40μg/mlを含む生食水で満たし, 45.5±0.6℃, 90分間の加温である.対照は同一期間内にIPHC未施行の直腸癌10例である.
    IPHC群の食道温の平均は37.2±0.8℃ であったが, 術後骨盤腔排液チューブの留置期間が5日延長し, 排液総量も増加した.一方, 術後合併症に差は認められなかった.局所再発はIPHC群には認められていないが, 対照群に2例認められた.
    IPHCは骨盤腔内残存癌細胞に対する安全, 確実な制癌治療であり, 術後の局所再発の防止に対して有用な方法と思われた.
  • 神津 照雄, 村島 正泰, 村岡 実, 宮崎 信一, 坂口 文秋, 菱川 悦男, 有馬 美和子, 田中 元, 石島 秀紀, 佐久間 洋一, ...
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2447-2451
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれの開発した, 内視鏡ガイド下に食道筋電図, 内圧, pHを同時に測定する方法で, 63例を対象に食道胃接合部病変とくに逆流性食道炎の病態について検討した.その結果, 食道粘膜に酸性化を関知する受容体が存在すると仮定すると, 正常例, 食道炎 (-) 例, および食道炎 (+) でも, その程度の軽いI型ぐらいまでの症例においては, 逆流した酸に対する排出機能が残存していると筋電図の解析からはいえる.しかしそれ以上の進行した食道炎の形態を示す症例ではその機能は消失していると推定される.この一度消失した, 逆流した酸に対する食道の排出機能がどの程度, 可逆性なのかは今後の検討課題である.
    この点が解明されると逆流性食道炎に対する外科手術の適応が明確になると考えられる.
  • 石坂 克彦, 袖山 治嗣, 高橋 千治, 黒田 孝井, 飯田 太
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2452-2455
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    幽門側胃切除後104例の食道裂孔ヘルニア, 逆流性食道炎を内視鏡的に検討し, 非胃切除399例と比較した.また, 胃癌56例, 胆嚢結石19例の術前, 術後6か月のLESPを測定した.測定は, intraluminaltransducer法により, slow pull-through法 (SPT), rapid pull-through法 (RPT) で行った.
    胃切除後症例において食道裂孔ヘルニアを37.5%に認め, 対照の19.3%に比べ有意に高率であった.逆流性食道炎は20.2%と高率に認めたが, 再建術式, ヘルニアの有無による発生頻度の有意差はなかった.Lower esophageal sphincter pressure (LESP) は胆摘前後で変化せず, 幽門側胃亜全切除後ではSPTで術前10.8±4.3mmHg, 術後8.2±3.2mmHg, RPTで術前14.3±5.6mmHg, 術後12.2±5.4mmHgと術後有意に低下した.Billroth 2法は1法に比べて術後のLESP低下率縞率であった.胃亜全切除後に逆流症状のある症例は, 無症状例に比べて術後のLESPが有意に低かった.胃全摘後にはLESPが著明に低下したが, 逆流症状の有無と術後のLESPに相関を認めなかった.
  • 塩崎 均, 田村 茂行, 小林 研二, 矢野 浩司, 田原 秀晃, 宮田 幹世, 岡 博史, 土岐 祐一郎, 飯原 啓介, 小川 道雄, 城 ...
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2456-2459
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1975~1989年の間に食道静脈瘤に対し胃上部切除術 (PG) 50例, 食道離断術 (TR) 55例を施行した.術後5年以降に, PG症例に6例の難治性吻合部潰瘍からの出血死亡を経験した.この原因を検索するために, PG群6例とTR群13例について, 下部食道の内圧および粘膜血流を測定した.TR群を食道炎合併の有無で比較すると, 食道炎非合併例は食道のクリアランス, 逆流防止機構とも食道炎合併例に比較して良好に機能していた.術式別の粘膜血流測定の結果, 酸素飽和度指数でPG群とTR群の間に有意差はみられなかったが, 血液量指数では84.3対99.1と有意にTR症例が優れていた.以上のことから, 食道離断術における逆流性食道炎の発生には下部食道のクリアランスの低下, 逆流防止機構の破綻が, また胃上部切除術における難治性吻合部潰瘍の発生には下部食道の粘膜血流の低下が大きな要因と考えられた.
  • 白羽 誠, 野口 淳, 寺田 益士, 泉谷 良, 松本 博城, 三光寺 俊紀, 林 道三, 久山 健
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2460-2464
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道胃接合部病変の代表的運動機能不全症である,食道裂孔ヘルニアとアカラシアの食道運動機能を,術前後の内圧測定により,比較検討した.また食道筋層の病理組織学的検討と,手術成績についても併せて評価した.その結果,以下のような結論を得た.食道裂孔ヘルニアによる逆流性食道炎の原因として,胃内圧の上昇と,第1次蠕動波の異常による下部食道の排出障害が大きく関与していると考えられた.手術によってlower esophageal sphincter(LES)の圧と長さは回復したが,蠕動運動障害は残存した.狭窄症状を有する例では,下部食道筋層のAuerbach神経叢に変性があり,Nissen法では有効な結果のえられないことがあった.食道アカラシアの術後LESの機能改善はえられたが,蠕動運動の障害は残った.アカラシアの病態病理として,myenteric plexusの変性の他に,神経線維や軸索の変性による神経伝達輸送の障害の関与も推察された.
  • 井手 博子, 古藤 文英, 野上 厚, 窪田 徳幸, 葉梨 智子, 遠藤 健, 中村 努, 塚原 裕二, 室井 正彦, 江口 礼紀, 小林 ...
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2465-2470
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道アカラシアに対し1986年以降Jekler変法手術 (long myotomy+fundopexy+posterior fixation) を術中内圧測定して26例に施行, 著効96.2%をえた.開腹時の内圧検査でlower esophageal highpressure zone (HPZ) の値はほぼ術前値と同値で術中lower esophageal sphincter pressure (LESP) は筋層切開と粘膜下層剥離で術前値の約38%に低下, fundopexyとposterior fixationで術前値の約150%に延長した.術後の内圧検査と24時間pHモニターの所見から本術式の術後逆流性食道炎発生はLESPの低さより, HPZの短さが関与していた.またposterior fixation (Hillの固定) は術後のHPZの延長に有効であった.本術式は手技が容易かつ安全で, アカラシアのいずれのStageに施行しても従来の術式に比べ術後の評価は良好であった.また術中内圧併用は術後の成績向上に有効であった.
  • 村上 卓夫, 足立 淳, 小佐々 博明, 岡 正朗, 鈴木 敞
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2471-2476
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    実験的検討より噴門部逆流防止機構のうちlower esophageal sphincter, 次いでWillis胃斜走筋が食道胃接合部高圧帯の形成に重要であると思われた.
    逆流防止に重要な食道・胃接合部高圧帯の再建には, Nissen法についでBelsey Mark IV法が有効であることが判明した.
    食道裂孔ヘルニア症例に対する胃底部固定と胃後方固定を追加したNissen法は静止内圧の上昇および症状の軽減に有効であった.
    アカラシアモデル犬は正常犬に比べて, 静止内圧の上昇, およびガストリンおよびセクレチンに対する過敏反応を示した.
    アカラシアモデル犬, アカラシア患者群では, 正常犬, 対照患者に比べて, VIP, Substans P濃度は有意に低かった.
    アカラシア症例に対するJekler and Lhotka method with long myectomyは, 静止内圧の減少および症状の軽減さらに逆流症状も認めず有効な術式と思われた.
  • 幕内 博康, 町村 貴郎, 宋 吉男, 島田 英雄, 水谷 郷一, 菅野 公司, 杉原 隆, 佐々木 哲二, 田島 知郎, 三富 利夫
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2477-2481
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道アカラシア62例の内圧測定により, 食道胃接合部の病態を調べ, 治療法, とくに手術適応と術式ならびにその成績を示した.
    アカラシアではlower esophageal sphincter (LES) の嚥下性弛緩の消失が80.8%に, 不完全な弛緩が19.2%に認められた.第1次蠕動波の消失は93.1%に, ときに出現するものが6.9%に認められた.LES圧の上昇は66.7%に, 食道内静止圧の上昇は84.3%に, 異常収縮波は59.3%に認められたが, これらは副所見である.
    治療方針はballoon dilaterによる拡張術を第1選択とし, S型や拡張度の高いもの, 拡張術が無効なものに手術を施行する.ストレス下で症状が増強するときのみ薬物療法を追加する.
    手術術式としてHellerのlong myectomyと2/3周の胃底部縫着術にHillの後方固定術を付加した方法を10例に行い, 全例良好な通過状態がえられ, 術後逆流性食道炎の発生はみていない.
  • 河野 辰幸, 遠藤 光夫, 羽生 丕, 吉野 邦英, 竹下 公矢, 滝口 透, 山崎 繁, 佐藤 康
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2482-2486
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃切除後例を含むびらん潰瘍型逆流性食道炎29例とachalasia 14例を対象として, 主に内圧面から病態を検討し, その手術適応につき考察した.逆流性食道炎では食道の縦軸に沿って変化の広がるL型に比べ, 食道胃粘膜接合部近傍に限局するM型で保存的治療効果が悪く, 運動機能異常は食道炎の広がりに一致する傾向を示した.AchalasiaにおいてはX線や内圧検査成績が機能異常の程度を表し, 術中内圧測定は各手術操作の意義を明らかにしていた.それぞれ8例および14例において外科的治療を行った.前者においては主にNissen法に, 後者では主にJekler-Lhotka法に基づいて手術を施行したが, ともに内圧面からも機能の改善が認められ, 外科的治療の有用性が示された.手術の安全性と治療効果の確実性および持続性からみて, またquality of lifeの観点からも, 難治例においては積極的に手術を考慮すべきと考えられた.
  • 羽生 信義, 青木 照明, 阿部 貞信, 森田 茂生, 中田 浩二, 古川 良幸, 大平 洋一
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2487-2491
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道胃接合部の機能異常を呈する代表的疾患にachalasiaと逆流性食道炎があり, 食道胃接合部の機能の詳細とこれら疾患の機能再建について検討し, 次の結論を得た.
    1.食道胃接合部の生理的括約筋の概念は, 下部食道括約筋lower esophageal sphincterのみでなく, 横隔膜脚まで広げられるべきである.
    2.achalasia 11例, 逆流性食道炎10例に手術的機能再建術を施行し, 全例満足すべき結果が得られた.
    3.achalasiaや裂孔ヘルニアに合併した逆流性食道炎に対しては, 手術侵襲が少なく, 治療効果が良好であることから早期に積極的な手術適応とすべきである.
  • 谷川 久一
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2492-2496
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌 (HCC) の多くは肝硬変を合併しているゆえ, 外科的切除適応症例は限られている.私どもは3cm以下の結節性HCCに対して, 肝機能がよく保たれ (Child A), 表在性で単発のものを外科切除に, それ以外のものをエタノール局注療法 (PEIT) としている.私どもはこのような症例160例に対して, 124例 (単発40.3%) に対してPEITを, 36例 (単発91.7%) に外科的切除を行い, 全体として48%の5年生存率 (Kaplan-Meier) を保っている.PEITと外科切除間に有意差はみられていない.PEITのうち, Child Aで2cm以下の症例の5年生存は85%, 1.5cm以下のEdmondson分類でIあるいはI~IIの症例は95%と予後は極めて良好である.したがってPEITの予後を左右するものは, 腫瘍径のみならず, 組織異型度, 肝硬変重症度などであることが明らかとなった.
  • 岡本 英三, 山中 若樹, 藤元 治朗
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2497-2501
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1973年より1989年末までに教室で経験した肝細胞癌外科治療例589例 (内肝切除例408例) を対象に肝癌治療における切除を軸とした集学的治療の役割につき検討を加えた.治癒切除例の5生率は60%, 非治癒切除は6%, また肝動脈結紮例のそれは9%であったことから, 外科は第一に治癒切除を目的にしなければならない.とくにVp (-), IM (-), 5cm以下, TW (-) の5生率は91%であることからこれらの条件がそろえば切除の絶対適応となる.また, Vp, IM因子についで切除予後に影響を及ぼすのは腫瘍のDNA ploidy patternであり, これがdiploid型であれば進行肝癌で非治癒切除 (減量手術) に終わっても良好な予後を示すことが判明した.したがって進行肝癌では術前の腫瘍生検材料から測定したDNA ploidyを参考に切除適応の決定が可能である.つまり治癒期待度とDNAploidyが外科の役割を左右する重要な因子である.
  • 小澤 和恵, 嶌原 康行
    1990 年 23 巻 10 号 p. 2502-2506
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝癌に対する著者らの方針は拡大手術であり, 根治性が期待できる場合にはそれを可及的に向上させるために, 1区域付加切除を心がけている.また, 門脈腫瘍栓合併例など, 根治性はない場合にも, 腫瘍栓を除去し, 肝切除を行い, 術後のTAEを行って延命を求める.こうした拡大手術には, 的確な肝予備能を把握することが求められ, 著者らはそのためにミトコンドリア機能を血中ケトン体比によって測定している.肝切除は血中ケトン体比を低下させ, 術後それが遷延すれば重篤な合併症を引き起こす.後中の血中ケトン体比を低下させる大きな因子の一つに門脈うっ滞があり, それを回避する目的でバイオポソプ (R) が非常に有用である.
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