日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
28 巻, 8 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
  • 黒岡 正之, 山口 肇, 板橋 正幸, 田村 祐樹, 日月 裕司, 加藤 抱一, 渡辺 寛
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1761-1765
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道表在癌の内視鏡的深達度診断と内視鏡的根治療法の適応について検討した. 対象は術前未治療で切除されたO-IIc型を主体とした食道表在癌53例57病巣である. 深達度をep, mm1~3, sm1~3の亜分類に分け病理組織学的に検討すると脈管侵襲, リンパ節転移ともに認めなかったのはepまたはmm1癌であり, これらが内視鏡的根治療法の適応と考えられた. 内視鏡像の検討より, epまたはmm1癌の診断は, 1) 深い陥凹を認めない, 2) 表面に大顆粒や結節を認めない, 3) 周囲粘膜の肥厚なし, 4) 硬化像なし, の所見をすべて満たすこととすることができ, その正診率は92.3%であった. したがってこの診断基準を用いれば内視鏡像からepまたはmm1癌を診断することはほぼ可能であり治療前の内視鏡的根治療法の適応決定に有用であると考えられた.
  • 松本 尚, 三輪 晃一, 津川 浩一郎, 瀬川 正孝, 佐原 博之, 仲井 培雄, 木南 伸一, 藤村 隆, 杉山 和夫, 西村 元一, 米 ...
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1766-1770
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌手術後の残胃十二指腸間にpouchを形成した空腸を間置する再建 (JPI法) を評価した. 術後の胸やけや下痢の出現頻度は, JPI法による再建例で, 従来のBillroth法による再建と比較して低率であった. 残胃からの食物排泄を核医学的に観察すると, JPI法では食物は残胃およびpouchに貯留し, 緩徐に十二指腸へと流出するのが認められ, 残胃からの排泄時間T1/2は, Billroth I法の29±6分, Billroth II法の50±37分に対し, JPI法では104±45分と有意に延長していた. 残胃内への胆汁逆流はBillroth法では全例に認められたが, JPI法では15%にみられるのみであり, 胆汁と食物の混和異常も, Billroth法に比較してJPI法では低率であった. 以上より, JPI法は従来のBillroth法よりも術後愁訴の少ない, より生理的な状態が得られる再建法と考えられた.
  • 浅海 良昭
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1771-1779
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝血行遮断時の低温肝灌流が再灌流後の肝循環動態, 肝酸素需給動態に及ぼす影響について実験的研究を行った. 雑種成犬を用い, 60分間の全肝血行遮断を行い, 低温肝灌流の有無により非灌流群 (n=8), 灌流群 (n=10) の2群に分け, 再灌流後の変化を両群間で比較した. 肝動脈および門脈血流量は再灌流後30分以降非灌流群では減少したのに対し, 灌流群では増加し有意差を認めた (p<0.01). 肝酸素供給量は肝血流量の推移を反映して再灌流後30分以降非灌流群では減少したが, 灌流群では増加し有意差を認めた (p<0.01). 肝酸素消費量は非灌流群では再灌流後30分以降増加を認めなかったが, 灌流群では増加しており有意差を認めた (解除後30分, 60分p<0.01,120分p<0.05). 以上より, 低温肝灌流法には肝温阻血後の再灌流障害による肝血流量減少を改善し, 逆に増加させることによって肝酸素供給量の増加をもたらすという利点があると考えらた.
  • 余喜多 史郎, 福田 洋, 大西 隆仁, 石川 正志, 原田 雅光, 和田 大助, 田代 征記
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1780-1787
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌切除後1年半以上経過例52例につき, 再発形式からみた初回肝切除術式について検討した. 再発例は24例 (46.2%) であった.87.5%が術後1年半未満に再発し, 22例が残肝再発であった. 断端再発は3例. すべてTW (+) で, うち2例は腫瘍径5cm以上であった. 根治度別の5生率は治癒切除 (n=28) が23.0%, 非治癒切除 (n=24) が70.8%, 再発率はおのおの53.6%, 37.5%であった. 非治癒切除の理由としては腫瘍占居範囲 (H) が切除範囲 (Hr) より大きい (H>Hr) ことが79.2%で最も多かった. 切除範囲では区域切除以上より亜区域切除以下群のほうが再発率が低い傾向であった. さらに腫瘍径5cm以下でHrSとHr0を比較すると再発率, 累積生存率ともに有意差はなく, HrS群で良好とはいえなかった. したがって, 5cm以上の肝癌はHr≧Hの拡大切除が必要であり, 一方5cm以下ではHr≧Hにこだわらず, 縮小手術が可能と思われた.
  • 上田 順彦, 小西 一朗, 広野 禎介, 根塚 秀昭, 吉光 裕, 太田 長義, 角谷 直孝
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1788-1793
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去7年6か月間に当科で経験した胆嚢管低位合流型26例を対象として, 胆嚢管と胆管の隔壁様部位の臨床像および胆摘術に際しての問題点を明らかにすることを目的とした. 26例中右側壁合流の3例以外の23例では胆嚢管はいずれも胆管の後方を旋回し, 前壁合流や前方旋回例は認められなかった. 21例の胆摘後の造影ではいずれも胆嚢管の螺旋部分は切除されているが, 隔壁様部分は全例そのまま遺残していた. 3例の隔壁様部位の病理組織像では胆嚢管と胆管の両者の上皮直下に少量の萎縮性の筋線維成分の残存を認めるが, それぞれ正常の壁構造は完全に消失し, かわりに2次的に増殖した硬い膠原線維成分に置き換わっており両者は一体となっていた. 本症では胆摘術に際して胆道造影上螺旋構造を有する部位までを胆嚢管の最終剥離可能部位とし, これ以上の過度な剥離は胆道損傷を引き起こすことを十分に認識する必要があると考えられた.
  • 村田 宣夫, 小高 明雄, 多田 真和, 出月 康夫
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1794-1798
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LC) と従来の開腹による胆嚢摘出術 (OC) とを生体の侵襲反応の面から比較検討した. 血中interleukin6 (IL-6), interleukin 1受容体拮抗体 (IL-lra), CRP, 体温などを手術開始より72時間まで測定した. 血中IL-6の濃度は手術開始直後より上昇し, その値はOC群では, 術後4, 8, 12, 24時間においてそれぞれ53.3±28.0pg/ml (mean±SD, 以下同じ), 31.6±12.3pg/ml, 29.0±12.8pg/ml, 27.4±10.9pg/mlであり, LC群ではそれぞれ16.2±10.7pg/ml, 16.5±8.8pg/ml, 11.0±4.2pg/ml, 9.0±9.4pg/mlであり, すべての時間においてLC群で有意に低値を示した. IL-lra濃度の上昇もLC群で低値に留まり, CRPと体温についてもLC群の上昇はOC群よりも低かった. 以上の結果より, LCはOCに比べ生体の侵襲反応が小さいことが判明した.
  • 安達 亙, 小池 祥一郎, 二村 好憲, 中田 伸司, 藤森 芳郎, 梶川 昌二, 黒田 孝井, 飯田 太
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1799-1805
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌切除後の腹膜再発のハイリスク症例を判別する目的で, 大腸癌症例309例中, 腹膜播種を認めた19例と術後に腹膜再発をきたした11例の合計30例を腹膜播種群, それ以外の279例を非播種群として比較検討した. さらに術後3年以上経過観察された治癒切除170例について術後の腹膜再発率および肝再発率を検討した. 腹膜播種群および非播種群間に有意差が認められた項目は, 腫瘍占居部位, 縦径, 環周度, 血清CEA値, 腫瘍の肉眼型, 肉眼的壁深達度, N, 腫瘍の組織型, 組織学的深達度, nおよびlyであった. 腹膜再発率が肝再発率よりも高率で, かつ25%以上となる条件は, 肉眼型2, 3, 4型, 環周度75%以上, SE以上であった. 血清CEA値, 腫瘍の縦径, N因子, 組織型の条件を加味して再発率を検討したが, 著明な腹膜再発率の上昇と肝再発率の低下はみられなかった. 以上より, 肉眼型2, 3, 4型腫瘍で環周度75%以上, かつSE以上の症例が腹膜再発のハイリスク症例であると考えられた.
  • 山田 一隆, 丹羽 清志, 長谷 茂也, 鮫島 隆志, 有村 耕一, 中馬 豊, 木之下 藤郎, 竹林 勇二, 松下 兼裕, 石沢 隆, 愛 ...
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1806-1813
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    下部直腸癌の根治的切除例において, 拡大郭清 (RAPL) 144例と非拡大郭清 (CONV) 108例の臨床病理学的所見および予後についてretrospectiveに比較検討した. RAPLはCONV施行例に比べてより若年者で進行癌症例に採用され, 両群の手術死亡率に相違はなかった. RAPL群はCONV群に比べて予後良好であったが, とくにDukes C症例で生存期間の有意の延長が認められた. また, CONV群におけるリンパ管, 静脈侵襲陽性例は陰性例に比べて予後不良であったが, RAPL群では脈管侵襲の有無による予後の相違はなかった. RAPL例におけるリンパ節転移状況は, 上方転移率が14.5%, 側方転移率が15.3%であった. 上方転移あるいは側方転移のみの症例の5年生存率はそれぞれ68.2%, 43.0%であったが, 上方・側方とも転移のあった症例では0%であった. 以上より, RAPLはDukesCの下部直腸癌症例において意義が認められたが, 広範なリンパ節転移例では治療効果に限界があることが示された.
  • 荒井 勝彦, 杉田 昭, 山内 毅, 福島 恒男, 嶋田 紘
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1814-1818
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎のために行われた大腸全摘, J型回腸嚢肛門吻合 (肛門吻合) 12例と, J型回腸嚢肛門管吻合 (肛門管吻合) 6例の術後排便回数, soilingの有無, 便とガスの識別能などの臨床症状と半導体圧力センサーによる肛門内圧検査を両術式問で比較した. 肛門吻合ではsoilingが, 術後1年でも25%の患者に認められたが, 肛門管吻合では消失していた. 肛門内圧検査では両術式ともに肛門管長, 随意収縮圧の術前後の有意な変化はなかった. 肛門管静止圧は両者ともに術直後低下し, 肛門管吻合術では6か月で術前後に復したが, 肛門吻合術では, 1年経過しても術前に比べ低下していた. 肛門吻合術は肛門管吻合に比べ術後, 肛門機能低下が認められ, その原因のひとつとして内肛門括約筋機能低下などが考えられた.
  • 有茎大胸筋弁により治癒した1手術例
    斎藤 元, 阿保 七三郎, 北村 道彦, 橋本 正治, 泉 啓一, 天満 和男, 三毛 牧夫
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1819-1823
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌術後, 後縦隔経路再建胃管-右主気管支痩が発生した症例に対し, 有茎大胸筋弁による痩孔閉鎖術を施行し治癒しえた症例を報告する. 患者は63歳の男性, 胸部中部食道癌に対し1993年7月14日, 胸腹部食道全摘, 3領域リンパ節郭清, 後縦隔経路食道胃管吻合術を施行した-第13病日, 術後透視にて異常なく経口摂取開始となったが, 咳嗽が激しく経口摂取困難, また誤嚥性肺炎を合併. その後, 絶食, 中心静脈栄養, 経腸栄養を実施していたが, 第120病日, 食道造影にて胃管気管支痩を確認, 12月21日, 有茎第3肋間筋弁を用いた痩孔閉鎖術を施行したが, 術後膿胸を合併, 第40病日に胃管気管支痩の再発を確認. 当科に転院後, 1994年3月14日, 有茎大胸筋弁による痩孔再閉鎖術を施行. 術後経過良好, 気管支内視鏡, 食道内視鏡にて治癒を確認, 現在外来加療中である. 本症では, 術後経過, 内視鏡所見, 術中所見より胃管自動縫合器縫合線部循環障害が痩孔形成の原因と考えられた.
  • 中井 謙之, 岡本 英三, 豊坂 昭弘, 土生 秀作, 竹内 雅春, 桑原 幹雄, 中村 清昭, 植木 孝浩, 杉本 貴昭
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1824-1828
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    消化管 (食道・胃・大腸) に発生した同時性早期3重複癌に対し, ポリペクトミーおよび手術にて切除しえた症例を経験した. 症例は59歳の男性. 胃集団検診の精査のため来院. 食道に0-IIb+IIc, 胃にO-IIc, 大腸にポリープ癌が判明した. 大腸病変はポリペクトミーされ深達度mのfocal carcinomaで, 食道病変は内視鏡的に粘膜切除され深達度mm3の癌であり, 根治性を考慮し胸部食道全摘, 細胃管による再建および3領域郭清を施行した. 胃癌は切除側に含まれ深達度mであった. 文献上検索しえた限り, 消化管に発生した食道・胃・大腸の3重複癌症例は自験例を含めて14例で内, 早期3重複癌は2例で, 1例は異時性であり, 同時性は自験例のみと考えられた. 近年, 診断技術の進歩の向上と患者の高齢化により重複癌症例が増加しており, 重複癌の存在と発生を念頭においた検査が重要である. また, 早期発見により侵襲の少ない内視鏡的治療も可能となってきている.
  • 西田 豊, 櫛淵 統一, 西村 彰一, 柴田 純祐, 川口 晃, 小玉 正智
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1829-1833
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性. 嚥下困難を主訴に食道造影検査をしたところImからEaに8cmの陰影欠損を認めた. 食道内視鏡検査では上切歯列より37cm, 右側壁を中心に潰瘍限局型腫瘤を認め, 生検により中分化型扁平上皮癌の結果を得たため手術を行った. 切除標本では7×5.5cmの潰瘍限局型腫瘍で外膜に達していた. 病理組織所見では基底細胞に類似した小細胞が充実性, 索状に配列する所見が大部分を占め, 一部に角化をともなう扁平上皮癌の所見と両者の移行像が認められたため類基底細胞 (扁平上皮) 癌と診断した. 組織学的進行度はa2n2M0P10, stage III, ly2vlであった. CDDP, 5Fuの併用療法を術後3週間目より繰り返したが6か月目に肺転移が, さらに肝, 腹腔内リンパ節転移もみられ術後8か月で死亡した.
  • 蜂須賀 丈博, 加藤 泰, 宮内 正之, 篠原 正彦, 森 敏宏, 大島 健司, 金光 幸秀, 伊藤 誠二, 柴田 有宏, 日比 八束, 哲 ...
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1834-1837
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    下大静脈に接する肝腫瘍の2例に対し, 下大静脈血管内超音波検査を施行し, 浸潤の有無を術前診断した. 症例1は, 60歳の男性で肝硬変に発症したS8の肝細胞癌であった. 画像診断にて下大静脈への浸潤が疑われたため, 術前血管内超音波検査を施行した. 所見として血管のechogenic bandが保持されており, 浸潤なしと診断した. 手術にて下大静脈への浸潤を認めず肝右葉切除術を施行した. 症例2は, 72歳の男性. 肝S7の胆管細胞癌にて, 下大静脈浸潤が疑われたため, 術前血管内超音波検査を施行した. 一部壁の呼吸性移動が乏しかったが, echogenic bandが保持されていたため剥離可能と診断した. 手術にて, 炎症性癒着を認めるものの浸潤を認めず, 肝右葉切除術を施行した.
    下大静脈血管内超音波検査は, 下大静脈に接する肝腫瘍の下大静脈への浸潤の有無を正確に診断でき, 術式決定に有用であった.
  • 中川 隆公, 宇根 良衛, 小笠原 和宏, 三澤 一仁, 神山 俊哉, 嶋村 剛, 秦 庸壮, 羽田 力, 中島 保明, 松下 通明, 佐藤 ...
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1838-1842
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1990年4月より93年9月までの間に, 5症例に対して無水エタノールを用いた経皮経肝門脈塞栓術 (PTPE) を行った. いずれも肝右葉に腫瘍が存在し, 門脈右枝に対してPTPEを行い, その後, 右葉切除を行った. 非塞栓葉である左葉の体積は前値348.4±120.3cm3より, 2週後563.0±149.6cm3, 4週後675.0±173.1cm3に増加した. 右葉は912.0±329.6cm3から2週後841.0±261.9cm3, 4週後668.0±350.1cm3に減少した. 無水エタノールを20ml用いた症例では, 肝壊死範囲が広く, ALTの上昇が著明であり, 塞栓葉は57±23%に縮小し, 非塞栓葉は249±80%に増大した. 病理組織学的にはH-E染色で塞栓部の細胞が強い好酸性を示すのに対して, 非塞栓部の細胞は分泌顆粒が増加し明るくみえ, 細胞は腫大し, 再生肝の特徴を呈していた. PTPEは術前に残存予定肝体積を増加させ肝癌切除例にとって有効な方法と考えられた
  • 竹内 一浩, 西野 裕二, 大平 雅一, 池原 照幸, 山本 嘉治, 池田 光慶, 有本 裕一, 新田 敦範, 山田 靖哉, 繁澤 晃, 西 ...
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1843-1847
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    混合型肝癌は肝細胞癌と胆管細胞癌の両者の性格を有するため悪性度が高い. そのため発見時には高度進行例が多く, 切除例が少ない. 今回比較的まれな混合型肝癌の2切除例を経験したので報告する. 症例1は41歳の男性で, 肝右葉前下区域に5cm大の腫瘤を認め, 右三区域切除を施行した. 症例2は56歳の男性で, 肝右葉後下区域に3cm大の腫瘤を認め, 部分切除を施行した. 病理組織検査の結果, いずれも規約上はmixed typeの混合型肝癌と診断されたが症例1では肝細胞癌と胆管細胞癌が密に混在しており, 症例2では両腫瘍成分の境界が明瞭であることから両者の発生様式に違いがあると思われた. 自験例では肝切除に加え, 肝門部リンパ節郭清を施行し, それぞれ42か月, 16か月の無再発生存を得ており, 術前診断あるいは術中病理診断にて混合型肝癌が疑われた場合はリンパ節郭清を付加することが賢明であると思われた.
  • 船本 慎作, 木川 三四郎, 平井 修二, 越田 佳朋, 柿田 章
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1848-1852
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は38歳男性で, 心窩部痛を主訴に入院. 入院時検査にて炎症反応の上昇および血清CA19-9値が29,316U/mlと著増を示した. 腹部超音波, 腹部computed tomography (CT), 内視鏡的逆行性胆道造影 (ERC), 腹部血管造影で胆嚢頸部に嵌頓した結石による急性胆嚢炎と診断. 経皮経肝胆嚢造影でも同様の診断で, その際, 採取された胆汁細胞診ではclass IIIであった. 胆嚢癌の存在を疑ったが確定診断には至らず腹腔鏡下胆摘術を施行した. 胆嚢壁は肥厚していたが粘膜面に明らかな隆起性病変はなかった. 組織学的には黄色肉芽腫性胆嚢炎で悪性所見は認めず, 免疫組織学的に胆嚢上皮および漿膜下層にCA19-9が証明された. 術後, CAI9-9値は正常値に戻った. 高CA19-9血症を呈する良性胆道疾患の機序と悪性疾患との鑑別について文献的考察を加え報告する.
  • 三枝 伸二, 田辺 元, 川井田 浩一, 小林 泰之, 上野 信一, 愛甲 孝
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1853-1857
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    左肝管内に発生した管内発育型の早期肝内胆管癌の1例を報告した. 症例は66歳の男性, 全身倦怠感を主訴として近医を受診し, 超音波検査にて異常を指摘された. 入院時一般検査では末梢血液像, 血液生化学, 腫瘍マーカーなどに異常はみられなかった. 精査の結果, 左肝管一次分枝の胆管癌と診断され, 肝左葉+尾状葉+左肝管切除を施行した. 腫瘍は左肝管内に限局した乳頭状腫瘍で, 病理組織診断は高分化型乳頭状腺癌, 深達度はmであった. また免疫組織染色において乳腺型ムチンコア蛋白関連抗原陰性, 腸型ムチンコア蛋白関連抗原陽性であった. 術後4年2か月を経過した現在, 再発の徴候なく健在である. 管内発育型の早期肝内胆管癌の本邦報告例は自験例を含め7例で, 自験例以外はいずれも粘液産生胆管癌として報告されていた. 本症例のように深達度がmもしくはfmにとどまる管内発育型胆管癌は, 手術により良好な長期予後を期待できると思われた.
  • 塩竃 利昭, 福井 洋, 鶴長 泰隆, 水谷 明正, 朝川 孝幸, 田中 保寿
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1858-1861
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵液瘻に対しては種々の治療法が試みられているが, 治療に難渋することが多い. 今回, 膵頭十二指腸切除術後に発生した難治性膵液瘻に対して膵瘻管空腸吻合術を行い, 良好な結果を得たので報告する. 症例は50歳の男性. 中部~下部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行. 膵管チューブ抜去後に, 膵前面に置いたドレーンから膵液の流出が認められ膵液瘻と診断された. 従来の保存的療法に加えてsomatostatin療法を試みたが瘻孔の完全閉鎖は得られず, 150~200ml/日の純粋膵液の排出が持続した. 瘻孔造影では正常大の膵管像が描出されたが, 造影剤の空腸への排出は認められず, 膵液瘻発生より50日目 (膵頭十二指腸切除術後75日目) に再手術に踏み切った. 手術は左傍腹直筋切開で開腹して瘻管を剥離, 小腸をRoux-en Yとして膵瘻管空腸吻合術を施行した. 術後経過は良好で再手術より42日目に退院し, 1年4か月後の現在, 元気に社会復帰している.
  • 那須 二郎, 菱沼 正一, 安藤 二郎, 尾沢 巌, 松井 淳一, 稲田 高男, 清水 秀昭, 固武 健二郎, 尾形 佳郎, 井村 穣二
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1862-1866
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    巨大な膵腺房細胞癌の切除後に短期間で肝転移をきたした症例を経験したので報告する. 症例は54歳の女性. 主訴は腹部腫瘤で, 右上腹部には超手挙大, 弾性硬な腫瘤を認めた. 腫瘍マーカーはelastase Iなどが高値を示した. 膵頭部腫瘍と診断し膵頭十二指腸切除術を施行した. 被膜を有する11×8×6cmの腫瘍は組織学的に膵外分泌部に類似しており, 電顕像でzymogen顆粒を認め, 膵腺房細胞癌と確定診断しえた. 術後5か月のCTでは再発の兆候はなかったが, 術後8か月のCTで肝右葉に巨大な転移巣を認めた. 肝転移に対してTAEを施行したが, 術後9か月目に肝不全で死亡した. 剖検では, 直径15cm大の巨大な肝転移に加え, 残膵のほとんどが腫瘍で置換される残膵再発が認められた. 被膜化された膵腺房細胞癌の予後は良好であるとされているが, 自験例のごとく急速な肝転移を示す症例もあることを考慮して治療を行う必要がある.
  • 内田 信之, 柳田 康弘, 新井 和男, 正田 裕一, 長町 幸雄
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1867-1871
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性. 上腹部痛を主訴に来院. 腹部超音波検査, CT検査, magnetic resonance imagingで肝, 胃の間に, 境界明瞭な10×5.5cmの石灰化像を伴う単胞性の嚢胞性腫瘤を認めた. 小網もしくは肝原発の嚢腫と診断し開腹術を施行した. 腫瘍は小網より発生しており, 肝, 胃, 膵との連続性はなく, 開窓術を施行した. 組織学的にはリンパ管腫であった.
    小網嚢腫は非常にまれであり, 自験例を含め本邦では27例報告されているにすぎない. これらの報告例の検討結果も併せて, 若干の文献的考察を加え報告した.
  • 冨松 聡一, 市倉 隆, 玉熊 正悦
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1872
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 田中 正俊
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1873-1877
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1984年1月から1989年6月までに当科に入院して初回治療にエタノール注入療法を行った小肝細胞癌151例を, 同時期に入院治療した肝小切除術63例, 肝動脈塞栓術168例と予後を中心に比較検討した. エタノール注入療法は肝機能良好な腫瘍径20mm以下の症例の5年, 7年生存率はそれぞれ61%, 22%であり, 肝切除例 (5年生存率62%, 7年生存率28%) と同等であった. 腫瘍径21~30mmの症例では, 肝動脈塞栓術治療症例より明らかに良好な予後が得られたが, 肝切除症例には劣っていた. さらに5年以上の長期生存例45例の検討から, 治療後の再発癌の早期診断, 早期治療が長期生存に重要な因子であることが示唆された.
  • 岡崎 正敏
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1878-1882
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌 (HCC) に対する経カテ-テル的肝動脈化学塞栓療法 (THCE) は,(1) 腫瘍を栄養する動脈を塞栓することによる腫瘍の阻血効果,(2) 目的領域に作用する抗癌剤の化学療法効果の2つの意図をもって施行されるものである. 本邦ではTHCEはHCCの集学的治療の中心的役割を果たしているにもかかわらず, 門脈内に腫瘍塞栓を有する症例 [Vp (+)] などの進行したHCCに対するTHCEの適応は明確ではない. 著者はVp (+) 症例に対しても肝切除術前・術中・術後の管理に準じたTHCE前後の管理下に, 進行HCCに対しても積極的にTHCEを施行してきた. その安全性も確認できている. 本稿では, 進行HCCに対するTHCEの適応, 取り組み方を中心に著者のTHCE経験を述べる.
  • 特にmicrowave coagulation therapyについて
    山中 若樹
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1883-1888
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の治療は肝予備能, 腫瘍進展度, 腫瘍の大きさ, 占居部位, 深さ, 腫瘍血行動態, 年齢などにより, 切除, 肝動脈塞栓 (TAE), エタノール注入 (PEI) のいずれかを選択してきたが, 最近では, 結節型肝癌に対してこれらの他にマイクロ波凝固壊死療法 (MCT) を適用するようになった. MCTの適応は切除が危険である高度肝硬変合併例, あるいは, TAEまたはPEI施行後の不完全壊死例のうち肝被膜下に存在する結節型肝癌である. アプローチは経皮, 腹腔鏡下, 開腹下の3者があるが, 後2者については結節の存在部位と大きさで開腹 (開胸) 下か腹腔鏡下のいずれかを選択する. マイク口波針状電極を用いて100watts, 1分間の照射を腫瘍の辺縁から中心に向けて腫瘍の大きさに応じた長さの電極で反復照射していく. 術後の肝機能の変動は軽微であり, 早期の経口開始が可能, 在院期間も短い. 腫瘍壊死効果は顕著で, 部分切除に匹敵する治療効果が期待しうる. 術後のQOLおよび治療効果の面からみて, また, 医療経済的にみて, MCTは切除, TAE, PEIと並び肝細胞癌治療の有力な治療選択肢となる.
  • 高崎 健
    1995 年 28 巻 8 号 p. 1889-1893
    発行日: 1995年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対する局所治療効果は, 主腫瘍とともに周囲肝組織に存在する肝内転移巣までも切除しうる外科切除が最も有効である. 今後さらに根治性ばかりではなく, いかにして手術を安全に侵襲を小さくし, 早い社会復帰を目指して努力しなくてはならない. このような観点で外科治療の原則的考え方について述べる. まず手術の安全性を増すため, 残存肝機能推測表を用いて個々の症例について切除許容限界を知る. 切除術は根治性を重視し, いかなる切除でも系統的に行うべくグリソン鞘処理による肝切除術を行う. 周術期管理は, 早期の自立を目指し簡略化する. このような考え方で対処した結果, 全症例の術後平均在院日数は16.1日であり, 特に全体の70%の症例は術後まったく通常の経過でありこれらの症例では術後平均10.9日で退院となっている. 退院が延びた原因は術後胆汁混入のためドレーン抜去が遅れたためであった. これは肝内グリソン鞘の剥離操作時の小さな胆管の破綻に起因していると考えられ今後の対策の目標である.
feedback
Top