日本消化器外科学会雑誌
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38 巻, 2 号
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  • 坂元 一郎, 蒔田 富士雄, 柏原 賢治, 吉村 純彦, 東 正明, 竹吉 泉, 大和田 進, 森下 靖雄
    2005 年 38 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    急激な腫瘍の増大とCA19-9の上昇を示した胃癌に対して, 術前のTS-1投与で肉眼的にcomplete response (CR) となった症例を報告する. 症例は77歳の男性で, 検診でCA19-が73.7U/mlと上昇しており, 精査を行うも病変は不明であった. 6か月後の内視鏡検査で, 胃噴門部を中心に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め, 生検でCA19-9免疫染色陽性の低分化腺癌と診断された. CA19-9は38,650U/mlまで増加しており, CA19-9のダブリングタイムは36.7日と算出された.TS-1 80mg/day計21日間の投与で腫瘍マーカーは低下し, 腫瘍の縮小も認めた. 有害事象はなく, 1週間の休薬後に胃全摘郭清術を行った.摘出標本では腫瘍は肉眼的にCRで, 病理組織学的にも少量の異型細胞の遺残を認めるのみであり, 化学療法の効果はgrade 2と判定された.術後腫瘍マーカーは基準値内まで低下し, 術後1 年の現在まで再発を認めていない.
  • 吉川 貴己, 安藤 耕平, 正津 晶子, 石和 直樹, 森永 聡一郎, 野口 芳一, 山本 裕司, 吉田 幸子, 円谷 彰, 小林 理
    2005 年 38 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の女性で, 食思不振を主訴に来院した. 上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部前壁に2型胃癌を, 幽門輪口側大彎に粘膜下腫瘍を認めた. 2003年10月, 幽門側胃切除D3郭清術を施行した. 組織学的所見では, Chromogranin A, Synaptophysin陽性の胃内分泌細胞癌を認めた. MP, N3, ly2, v3であった. 幽門輪口側大彎の粘膜下腫瘍には, 筋層を主座とし漿膜下層にかけて増殖する内分泌細胞癌を認めた. 主病巣との連続性を認めず, 内分泌細胞癌の壁内転移と判断した. 胃内分泌細胞癌は悪性度の高いまれな疾患である. 今回我々は, 胃内分泌細胞癌が, 筋層を主座とする壁内転移を来したまれな1例を経験した.内分泌細胞癌のように悪性度の高い胃癌では, 特異な形態を有する胃壁内転移を来す可能性があることが示唆された.
  • 矢島 浩, 楠山 明, 藤田 哲二, 穴澤 貞夫, 矢永 勝彦, 加藤 弘之
    2005 年 38 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で, 腸閉塞の診断にて入院となった. イレウス管造影および腹部CT検査を施行したが, 明らかな病変は指摘できなかった. 上部消化管内視鏡検査では胃上部に3型胃癌を認めた. 腹部手術の既往はなく, 腸閉塞の原因は不明であった. 開腹所見では胃病変の他に回腸に腫瘤を認め, これが腸閉塞の原因と考えられ, 胃全摘術に加えて回腸部分切除術を施行した. 切除標本では回腸の狭窄部分に一致して全周性の隆起潰瘍型病変があり, 病理組織学的検査では組織型は胃癌と酷似していた. 癌細胞の主座は腸管壁内で, 胃癌からの遠隔転移と考えられた.
  • 高山 哲郎, 佐藤 孝臣, 天田 憲利, 織井 崇, 菊地 廣行, 芳賀 泉, 名倉 宏
    2005 年 38 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の女性で, 他院での腹部超音波検査にて肝腫瘍を指摘され精査加療目的に紹介されたが, 当院での上部消化器内視鏡検査にて胃前庭部後壁に粘膜下腫瘍を指摘された. その際の生検組織検査およびその他各種画像診断にて確定診断が得られず, またCEA 13.6ng/dlと高値であり胃粘膜下腫瘍とそれに伴う肝転移を否定できなかったため, 幽門側胃切除術および肝部分切除術を施行した. 胃切除標本では弾性軟腫瘤であり胃粘膜面は正常, 割面にて/胞内に乳頭状に隆起し充満した腺管構造物を認めた. 永久標本による病理組織検査では腫瘍性変化はなく胃重複症の診断であり, 術前に転移と思われた肝腫瘍は腺腫様過形成であった. 胃重複症は良性の先天性疾患であり幼少期に消化器症状を主訴に発見されることが多く, 成人において無症状下に発見される例は極めてまれであるが, 胃粘膜下腫瘍の鑑別診断の際には念頭に置いておくべき疾患である.
  • 伊藤 正朗, 加瀬 肇, 河野 明彦, 石井 紀行, 斉藤 直康, 下山 修, 大嶋 陽幸, 小林 一雄, 秋間 道夫
    2005 年 38 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性で, 皮膚筋炎にて入院していたが, 胃癌および大腸癌の重複癌と診断され当科転科となった. 入院時理学的所見は全身に不定型発赤, 眼瞼周囲にヘリオトロープ疹を認めた. 四肢筋力低下, 嚥下障害も認めた. 検査所見はWBC 5,400/μl, CRP 2.1mg/dl, CK 5,836 IU/l, 抗Jo-1抗体は陰性であった. 術前ステロイドパルス療法を施行するも嚥下障害および皮膚症状が軽快せず, 手術を行うことが困難であった. そのためγ-グロブリン製剤20g/day ×5 days大量投与を行い, 改善傾向を認めたため胃全摘術, Hartmann手術を施行した. 術後も, プレドニゾロンを10mg/weekずつ減量することができた. ステロイド投与にもかかわらず, 改善を認めなかった嚥下障害に対し, 術前大量γ-グロブリン製剤を使用し改善が得られ, 術後誤嚥性肺炎や縫合不全などの合併症を認めなかったことより, γ-グロブリン製剤は有効であると思われた.
  • 森本 光昭, 辻 義明, 原 靖, 古閑 敦彦, 牛島 正貴, 田口 順, 吉村 文博
    2005 年 38 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は68歳の女性で, 主訴は腹部腫瘤. 身体所見では左側腹部に弾性硬, 可動性良好な約15cm大の腫瘤を認めた. 腹部CT所見では胃小彎側前壁に接して11.5×9.0cmの腫瘍を認めた. 手術所見では腫瘍は約15cm大, 胃体中部小彎側に一部癒着し胃体部前壁に騎乗していた. 腫瘍および胃部分切除を行い, 腫瘍は完全切除された. 摘出標本では腫瘍は13.5×10.0×9.0cm凹凸不整, 弾性硬で, 大部分は出血壊死を伴う嚢胞性腫瘍であった. 病理所見では紡錘形腫瘍細胞が密に錯綜して増殖していた. 免疫組織染色にてKIT (CD117), CD34, Vimentinが陽性, Desmin, S-100 proteinが陰性のためGISTと診断した. 術後1年たった現在, 再発の兆候はない.
  • 高谷 義博, 八坂 貴宏, 佐野 信也, 藤原 紳祐, 大坪 竜太
    2005 年 38 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は34歳の男性で, 以前より心窩部痛を自覚していた. 2001年9月健康診断で胆嚢結石症と診断され, 手術目的で入院した. 理学所見, 血液検査は正常であった. 超音波・単純CTでは胆嚢結石および腺筋症を示唆する均一な胆嚢底部壁肥厚を認めた. 経静脈胆道造影下CT (以下, DIC-CT) で胆嚢管合流部が高位に存在し, 胆嚢管合流部の左側から尾側に総胆管と並走する重複総胆管と疑われる構造が判明した. ERCPでは, 胆嚢管合流部付近の総胆管から重複総胆管が造影され, 続いて主膵管が造影された. これらの所見から, 胆嚢結石・腺筋症および膵胆管合流異常を有する重複総胆管症と診断した. 腹腔鏡下胆嚢摘出時, 術中造影で, 細い肝外胆管が太い総胆管の左側直近を並走することを捉え, 腹痛の原因・発癌の可能性などを考慮し, 腹腔鏡補助下に細い肝外胆管の結紮術を並施した. 摘出胆嚢に悪性所見は認めず, 症状は寛解し, 再燃は認めていない.
  • 金廣 哲也, 信原 宏礼, 首藤 毅, 湯浅 吉夫, 上松瀬 新, 津村 裕昭, 村上 義昭, 末田 泰二郎
    2005 年 38 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    壁内型胆嚢周囲膿瘍を形成して, 2年間の経過の後に切除した症例を経験したので報告する. 症例は92歳の男性で, 2000年11月, 右上腹部痛にて来院し, 急性胆嚢炎として保存的治療を受けて退院した. 2002年11月, 前回と同様の右上腹部痛を主訴に再来院し, 胆嚢炎増悪で入院となった. WBC 9,050/mm3, CRP 9.1mg嚢dlと炎症所見を認めた. 腹部超音波検査で胆嚢周囲への限局性の液体貯留および隔壁様構造を認めた. 腹部CTでは腫大した胆嚢様の構造とその内部に隔壁を認めた. 経皮的膿瘍ドレナージ後の造影では胆嚢と交通した膿瘍腔を認め, 無石性胆嚢炎からの胆嚢周囲膿瘍を形成したと診断した. 病理所見では壊疸性胆嚢炎および壁内型胆嚢周囲膿瘍と診断された. 本症例のように壁内型胆嚢周囲膿瘍の長期経過をみた報告例はまれであり, 消炎後の早期の切除が必要であると考えられた.
  • 新地 洋之, 高尾 尊身, 前村 公成, 瀧川 譲治, 大井 恭代, 愛甲 孝
    2005 年 38 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性で, 上腹部痛出現し近医を受診した. CTにて総胆管の拡張と腫瘤像を認め, 当科へ紹介となる. ERCP, MRCPにて上・中部胆管に境界明瞭な乳頭状の腫瘍を認め, 乳頭型胆管癌と診断し胆管切除術・リンパ節郭清を行った. 病理組織学的には, 粘膜表層部では高分化腺癌を示し, 深部では小型の腫瘍細胞が充実性の胞巣を形成しchromogranin A染色陽性で, 腺内分泌細胞癌と診断した. 胆管原発の腺内分泌細胞癌の報告は自験例を含め17例と極めてまれである. 腺内分泌細胞癌は悪性度が高く, 癌の進行が急速で早期に転移をきたし, 予後は極めて不良とされている. 本症例も術後4か月で多発性肝転移のため死亡した. 外科療法のみでは治療成績は不良であり, 化学療法を含めた有用な集学的治療の確立が重要である.
  • 池田 隆久, 土田 明彦, 井上 敬一郎, 安田 祥浩, 中村 龍治, 小澤 隆, 三室 晶弘, 青木 達哉, 小柳 拳久
    2005 年 38 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性で, 膵頭部のintraductal papillary mucinous tumor の診断にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 (膵胃吻合) を施行した. 術中, 総肝動脈を損傷したため, 端々吻合にて損傷部を再建した. 術後, 膵液漏は認めなかったがドレーン周囲の感染が生じたため洗浄を行った. 第30病日に膵胃吻合上縁に留置したドレーンより少量の出血を認めたが, 自然に止血した. 第32病日に同部より1,200mlの再出血を認めたため造影CTを施行したところ, 総肝動脈吻合部の中枢側に径12mm大の仮性動脈瘤を認めた. 直ちに血管造影を施行し, 5×30mm のEasy Wall Stent を総肝動脈に留置した. 留置直後より仮性動脈瘤は描出されなかった. 術後1年を経過しているが, 再出血はなく, ステントの開存性も良好である.
  • 西脇 学, 中川 一彦, 柳生 隆一郎, 小石 健二, 中尾 宏司, 井上 貴至, 藤原 由規, 山村 武平, 西上 隆之
    2005 年 38 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で, 2002年3月に発熱を訴え, 脾膿瘍, 右横隔膜下膿瘍, 膵尾部前面の膿瘍の診断で横隔膜下膿瘍のみに対して2回のUS ガイド下ドレナージ (以下, US下ドレナージと略記) を施行した. 8月より再び発熱があり抗菌剤内服を続けるも軽快せず2003年1月当院紹介となった. CTで脾膿瘍, 膵尾部前面と臍部の腹腔内膿瘍を認めたが, 膵に異常を認めなかった. 脾膿瘍と臍部の腹腔内膿瘍のUS下ドレナージで症状は消失するも, 脾膿瘍の脾曲部結腸との瘻孔形成, 横行結腸狭窄が確認されたため, 脾臓摘出術, 結腸部分切除術, 膵尾部前面膿瘍の摘出術を施行した. 術中所見では脾臓周囲の高度な炎症と脾下極と結腸の癒着を認めた. 病理組織学的検索にて脾膿瘍, 脾膿瘍結腸瘻, 膵尾部前面膿瘍壁に粘液性嚢胞腺癌を認め, 膵尾部端原発と考えられた. 膵癌に起因した脾膿瘍はまれであり文献的考察を加え報告する.
  • 渡辺 伸和, 袴田 健一, 鳴海 俊治, 豊木 嘉一, 十束 英志, 佐々木 睦男
    2005 年 38 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の女性で, 腹痛と発熱を主訴に当科を受診した. CT, MRIで膵尾部に嚢胞性病変を認めた. ERPにて病変部と近位および遠位主膵管の直接交通が確認された. 主膵管型乳管内乳頭腫瘍 (主膵管型IPMT) の限局拡張型, 膵貯留性嚢胞や真性膵嚢胞を疑い手術 (膵体尾部切除と脾摘, D1郭清) を施行した. 術中超音波や切除標本の膵管造影でも, ERPと同様に主膵管と明らかに交通する嚢胞性病変を認めた. 病理所見からMCTと診断した. MCTと膵管の交通は時に認められることがある. しかし, 今回検索した範囲では嚢胞が主膵管と直接交通し, かつ嚢胞の尾側膵管も造影される例は極めてまれであった. 画像所見から鑑別診断に難渋する症例と思われるが, 本症例のような画像所見に遭遇した場合, MCTも鑑別疾患に加えるべきと考えられた.
  • 土居 幸司, 吉田 誠, 中村 誠昌, 松村 光誉司, 打波 大, 田中 國義, 今村 好章
    2005 年 38 巻 2 号 p. 202-207
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    脾原発血管肉腫はまれな疾患で極めて予後不良である. 今回, われわれは脾原発血管肉腫の切除後に転移巣に対しrecombinant interleukin-2 (rIL-2) を投与したところ, 肝転移巣および転移リンパ節において奏功を認めることができ, rIL-2の有用性が伺われた. 症例は52歳の女性で, 2002年9月, 巨大な脾腫瘍に対し脾摘術を行い血管肉腫の診断を得た. 術中多発肝転移を認めたため, これに対しrIL-2の肝動注を行ったところ転移巣は著明に縮小した. 2003年3月, 肝十二指腸間膜リンパ節に転移を認め, rIL-2の持続静注療法を行ったところ転移巣は著明に縮小した. 2003年5月, 脳転移と思われる病巣が出現し脳外科にて摘出手術を行ったが切除標本からは血管肉腫の所見は得られず転移とは断定できなかった. 術後, 肝転移巣と副腎転移巣が増大したが, 副作用のためrIL-2療法が続けられず, 2003年9月死亡した.
  • 須藤 隆之, 菅井 有, 上杉 憲幸, 幅野 渉, 中村 眞一, 斎藤 和好
    2005 年 38 巻 2 号 p. 208-213
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性で, 平成14年7月27日腹部膨満感があり近医を受診した. 精査にて腸間膜腫瘍と診断, 9月12日腫瘍摘出, 右半結腸切除, 小腸切除術を施行. 病理組織学的所見は紡錘形腫瘍細胞が束状に増殖していた. 免疫組織学的検査にてc-kit染色陽性で, 腸間膜gastrointestinal stromal tumor (GIST) の診断となる. 10月27日よりメシル酸イマチニブ400mg/日投与開始. 平成15年4月4日腹部CTにてGIST再発を認め4月23日腫瘍摘出術施行. 5月16日よりメシル酸イマチニブ400mg/日投与再開. 平成16年12月12日腹部CTにてGIST再発を認め12月24日腫瘍摘出術施行. c-kit遺伝子を検索し, エクソン9のcodon503と504の間に6塩基対の挿入を認めた. c-kitの遺伝子検索は, メシル酸イマチニブの効果判定のために重要であると思われた.
  • 柴崎 正幸, 万代 恭嗣, 日下 浩二, 北村 成大
    2005 年 38 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    クローン病に合併した腹壁デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は29歳の男性で, 1999年クローン病と診断され, 食事療法および内服治療中であった. 2000年クローン病変による狭窄のため回盲部切除術の既往がある. 2002年5月右下腹部腫瘤を主訴に当院を受診した. CT, MRIにて右腹直筋を置換するような大きな腫瘤を認めた. 経皮針生検にてデスモイド腫瘍と診断した. Wide local resectionにて腫瘍を切除し, 腹壁欠損部を3層構造のメッシュシートにて再建した. クローン病には種々の腫瘍の合併がみられるがデスモイド腫瘍の合併はまれで, 本例が文献上6例目の報告である. 両疾患に共通の病因は認めないが, 臨床的には, デスモイド腫瘍の発生部位により, 大量腸管切除, poly surgery, 腹壁再建における癒着回避等の問題があり, クローン病の経過観察においてはデスモイド腫瘍の発生も念頭におく必要があると考えられた.
  • 中村 泰啓, 高橋 節, 西村 興亜, 庄盛 浩平
    2005 年 38 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は肝疾患の既往がない73歳の女性で, 腹痛, 嘔吐を主訴に当院を受診した. 腹部CTで小腸の限局性浮腫を認め, 腹部所見などより汎発性腹膜炎と診断し, 緊急開腹手術を行った. Treitz靭帯より肛門側へ約50cmの上部空腸が約12cmにわたり暗赤色に発赤し, 著明に腫大していた. 漿膜面には膿苔の付着を認め, 混濁した腹水も認められたが, 明らかな穿孔や穿通部などは認められなかった. 切除標本では粘膜は浮腫状ではあるものの全体にきれいで, 数か所に直径約2mm程度の小さいびらんが認められるのみであった. なお, アニサキス, 魚骨, 薬物などの異物は認められなかった. 病理組織検査では粘膜層はよく保たれているが, 粘膜下層が著明に肥厚し, 同部にび慢性に好中球の浸潤が認められた. グラム染色では粘膜下層にグラム陽性球菌が多数認められ, 何らかの原因で粘膜に小びらんが形成され, 同部からの細菌侵入により, 局所の急激な蜂窩織炎を来たしたものと考えられた.
  • 橋本 泰司, 坂下 吉弘, 高村 通生, 岩子 寛, 渡谷 祐介, 繁本 憲文, 金 啓志
    2005 年 38 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症はまれな病態で, 開腹術を要する予後不良な徴候と考えられてきた. 我々はそれぞれ手術と保存的治療を行った腸管虚血を伴わない2症例を経験した.症例1 は78歳の男性で, 腹痛を主訴に受診し, 来院後下血を認めた. 腹部CTで小腸の拡張と回盲部の著明な壁肥厚, 門脈ガスを認めた. 腸管虚血を伴うイレウスを疑い, 緊急手術を施行した. 術中所見は, 腸管には虚血性変化を認めず, 試験開腹で終了した. 術後の下部消化管内視鏡検査で, 回盲部に多発性潰瘍を認めた. 症例2は95歳の女性で, 排便時に突然下腹部痛が出現した. 腹部CTで門脈ガスと上行結腸の著明な拡張を認めた. 発症46時間後の腹部CTでは門脈ガスは消失し, 保存的治療で回復した. 本症の存在自体は必ずしも重篤な病態を意味せず, 保存的治療でも改善する場合があることを考慮し, 治療方針の決定にはその成因を十分に考察することが重要である.
  • 水島 恒和, 大割 貢, 山東 勤弥, 位藤 俊一, 水野 均, 三方 彰喜, 野中 健太郎, 甲斐沼 尚, 山中 宏晃, 岩瀬 和裕
    2005 年 38 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性で, 虫垂炎に対する開腹既往を有する. 昼食中に突然心窩部痛が出現し近医を受診した. 腹部単純X 線検査にてNiveau像を認め, 当科に紹介された. 癒着性イレウスを疑い, 保存的治療を開始した. 翌日も症状は軽快せず腹膜刺激症状が出現したため, 腹部造影CTを施行したところ上腸間膜動脈本幹の解離と腹水の増加, 回腸末端部の腸管壁肥厚を認めた. 上腸間膜動脈解離による腸管虚血を疑い, 緊急手術を施行した. 回腸末端部の腸管漿膜面に壊死を疑わせる色調変化を認めたため回盲部切除術を施行した. 他の上腸間膜動脈領域の腸管血流は良好であり, 解離部の血管径の拡大を認めなかったため, 上腸間膜動脈本幹に対しては外科的処置を行わず経過観察した. 術後3年4か月の腹部造影CT では解離部は真腔, 偽腔ともに血流は維持されており, 血管径の拡大も認められない. 孤立性上腸間膜動脈解離の報告はまれであり, 文献的考察を加え報告する.
  • 安藤 公隆, 山田 誠, 甲賀 新, 高成 秀樹
    2005 年 38 巻 2 号 p. 237-242
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は88歳の男性で, 頑固な便秘と下腹部痛を主訴として当院を受診した腹部CT・USにて右上腹部にtarget sign を呈する腫瘤影を, 注腸造影ではカニ爪様陰影を認め, 腫瘍を先進部とする腸重積症と診断されたが, 重積は検査中に整復された大腸内視鏡では盲腸に1型腫瘍を認め, 生検結果はGroup 2であった腸重積を伴う盲腸腫瘍の診断で開腹し, 回盲部切除術 (D2) を施行した切除標本の病理組織学的検索より盲腸原発MALTリンパ腫と診断された大腸原発悪性リンパ腫による成人腸重積症の報告は, 本邦では10例のみ, MALTリンパ腫によるものは自験例のみと極めてまれであるMALTリンパ腫は基本的に低悪性度であるが, 高悪性度, リンパ節転移陽性例の報告もある大腸MALTリンパ腫は報告例が少なく症例の集積と検討が必要であるが, 進行例ではリンパ節郭清を伴う切除が必要と考えられた.
  • 松本 卓也, 長山 聡, 森 章, 土井 隆一郎, 小野寺 久, 今村 正之
    2005 年 38 巻 2 号 p. 243-248
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸全摘術を行った家族性大腸腺腫症 (FAP) 患者の経過観察で注意する点は, 十二指腸ポリープ, 特に発生率の高いVater乳頭部周辺のポリープの癌化である. 癌化に対して膵頭十二指腸切除を余儀なくされることもあるため, 予防的処置が必要とされる. 今回, 我々はFAPの大腸全摘術後, 残存する十二指腸ポリポーシスに対して膵温存十二指腸切除術 (PPTD) を施行した1例を経験した. 症例は40歳の男性で, FAPおよび併発した直腸癌に対して大腸全摘術を行った. 約4か月後に明らかとなった肝転移および密生する十二指腸ポリポーシス (管状腺腫) に対し, 肝右葉切除およびPPTD (B-I再建) を施行した. 術後, 縫合不全, 膵液漏, 胆汁漏などの合併症はなく, 食事摂取も良好で通常の日常生活に復帰できた. 根治性や機能予後につき長期の観察と評価が必要だが, PPTDはFAP の十二指腸ポリポーシスに対して有効な治療法であると考えられた.
  • 神谷 和則, 橋本 道紀, 河野 透, 斉藤 孝成, 葛西 眞一
    2005 年 38 巻 2 号 p. 249-255
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で, S状結腸癌による穿孔性腹膜炎でS状結腸切除術を施行した. 術後2年5か月で血清CEA 値が漸増したため, 再発を疑い塩酸イリノテカン (以下, CPT-11と略記) による治療を開始した. 7クール施行中, 左側腹部痛と発熱を認め, CTと大腸内視鏡検査により, 横行結腸脾彎曲部の穿孔, 穿通性膿瘍と診断した. 発症6日後に, 膿瘍ドレナージおよび人工肛門造設術を施行した. 術後約2か月で退院, 1年後の内視鏡検査では穿孔部に瘢痕を認めた. CPT-11投与中に非腫瘍部消化管に穿孔をきたした報告は本例を含めて9例のみである. 便通障害例では腸管穿孔をきたす可能性があり, CPT-11投与中は注意深く便通状態を含め, 経過観察をすることが必要であると考えられた.
  • 角南 栄二, 鈴木 聡, 三科 武, 神林 智寿子, 大滝 雅博, 中島 真人, 松原 要一
    2005 年 38 巻 2 号 p. 256-261
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    4群リンパ節転移を伴う下行結腸sm癌の1例を経験した. 症例は55歳の男性で, スクリーニング目的の下部消化管内視鏡検査にて下行結腸に径10mmのIs型ポリープを認めたため内視鏡的摘除術を施行した. 切除標本は深達度sm1であったが, 水平断端が陽性の可能性があったため, 追加切除の適応と考え根治手術を施行した. 術中所見で1群から大動脈周囲リンパ節までの広範な転移を迅速組織診断にて確認したため, 治癒切除は不可能と考え下行結腸部分切除術 (1群リンパ節郭清) を施行した. 病理組織学的診断では内視鏡的摘除術を施行した部位に癌の遺残はなかった. 術後14病日より5FU, アイソボリンによる化学療法を開始し, 計4クール施行後の腹部CTでは, 大動脈周囲リンパ節転移が消失し著効した. 大腸sm癌の中でも本例のように深達度sm1での4群リンパ節転移陽性例は極めてまれであり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 池田 貯, 唐原 和秀, 佐藤 大亮, 宮脇 美千代, 内田 雄三, 秋月 真一郎
    2005 年 38 巻 2 号 p. 262-267
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は55 歳の男性で, 下血を主訴として当院を受診した. 大腸内視鏡検査にて, 下部直腸に易出血性の1型の腫瘤を認めた. 腫瘤表面は全体的に暗紫色でびらんを呈していた. 同部位の生検にて低分化腺癌と診断され, 腹会陰式直腸切断術を行った. 切除標本肉眼所見では, 潰瘍を伴った黒色の扁平隆起性病変であった. 病理組織学的検索にて, 類上皮血管肉腫 (epithelioid angiosarcoma) と診断された. 直腸原発の類上皮血管肉腫は極めてまれであり, 国内外の文献検索ではわずかに5 例が報告されているだけであり, 貴重な症例と考え報告した.
  • 村上 昌裕, 大西 直, 加納 寿之, 木村 豊, 岩澤 卓, 東野 健, 中野 芳明, 矢野 浩司, 冨田 尚裕, 門田 卓士
    2005 年 38 巻 2 号 p. 268-272
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の男性で, 1995年にIgA欠損症を指摘された. 2003年2月左下腹部痛の精査目的で入院し, 大腸内視鏡検査にて横行結腸に全周性の狭窄を伴う進行癌を認めた. 3月24日横行および下行結腸部分切除術を施行し, 病理組織学的に中分化腺癌と診断された. また免疫染色にて正常大腸粘膜内形質細胞のうちIgA陽性細胞が著明に減少, IgGおよびIgM陽性細胞は増加していた. 若年発症であることから, マイクロサテライト不安定性 (microsatellite instability) の検索を行った結果, 調べた6 Locusすべてで陽性であった. 大腸癌の家族歴は無く, 遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (hereditary non-polyposis colorectal cancer; HNPCC) の新発生である可能性が高いと考えられた. IgA単独欠損症とHNPCCが合併した極めてまれな症例と考えられたので報告する.
  • 廣 純一郎, 井上 靖浩, 渡部 秀樹, 小林 美奈子, 三木 誓雄, 楠 正人
    2005 年 38 巻 2 号 p. 273-277
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    痔瘻癌は難治性痔瘻の経過中に発生するまれな疾患であるが, 長期経過中に発症するため, 確定診断は遅れがちとなる. 今回, 15年以上の慢性痔瘻経過中に発症した痔瘻癌の2例につき文献的考察を含め報告する. 症例1は62歳の男性で, 痔瘻根治術後17年目に再発を来し, 外科的治療にて改善せず, 粘液分泌と疼痛を伴う腫瘤を形成し紹介となった. 同部位の生検で痔瘻癌と診断し腹会陰式直腸切断術を施行した. 術後10年の現在無再発生存中である. 症例2は49歳の男性で, 約18年の慢性痔瘻の経過があり, 肛門狭窄のためS状結腸人工肛門造設術を施行後, 当院紹介となった. 瘻孔からの生検にて痔瘻癌と診断. 腹会陰式直腸切断術を施行した. 術後6年目に腹膜播種にて死亡した. 慢性難治性痔瘻においては, 痔瘻癌も念頭におき, 定期的な画像検査や生検を行い, 早期診断に努めることが重要であると考えられた.
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