日本消化器外科学会雑誌
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44 巻, 3 号
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原著(2次出版物)
  • 田中 晃司, 能浦 真吾, 大植 雅之, 真貝 竜史, 岸 健太郎, 山田 晃正, 宮代 勲, 矢野 雅彦, 大東 弘明, 石川 治
    原稿種別: 原著(2次出版物)
    2011 年 44 巻 3 号 p. 225-231
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     はじめに:直腸癌の根治切除後には局所再発が比較的高率で認められる.局所再発巣の切除は予後を改善する治療法の一つである.しかしながら,局所再発巣の切除はしばしば侵襲が大きく,慎重な手術適応を要する.方法:根治切除後の直腸癌局所再発症例に対し,1989~2007年に当院にて局所再発巣の切除を行った43例を対象に,CEA倍加時間(doubling time of CEA;以下,CEA-dtと略記)を含め予後因子の後方視的解析を行った.結果:局所再発巣切除後の5年生存率は50.8%であった.単変量解析にて,性別,遠隔転移の有無,腫瘍径,CEA-dtが予後因子として抽出された.これらの因子を多変量解析にて検討すると,遠隔転移の有無,腫瘍径,CEA-dtが独立予後因子であった.CEA-dtが150日以上で腫瘍径が5cm未満の症例の5年生存率は76.9%であった.考察:腫瘍径とCEA-dtは直腸癌術後局所再発巣の切除の適応決定に有用と思われた.
症例報告
  • 大澤 正人, 中村 毅, 小林 巌, 川崎 健太郎, 大野 伯和, 藤野 泰宏, 大林 千穂
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 232-238
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は76歳の女性で,腹痛を主訴に近医受診し,上部消化管内視鏡検査にて胸部上部食道に3cm2/3周の0-I病変を指摘された.生検にて明らかな悪性所見認めず,経過中に一部EMRされVerrucous tumorの可能性を示唆されていた.2年後の上部消化管内視鏡検査で増大傾向と生検にて悪性と判断され,当院紹介受診となった.当院での上部消化管内視鏡検査での生検では扁平上皮癌と診断された.平成19年11月胸腔鏡下食道切除術,用手補助下胃管作成,後縦隔経路再建,頸部吻合施行.胆摘を併施した.術中所見ではUt,0-1+0-IIa+0-IIb 70×40mmT1b,N0,M0,stage I,D2,R0,CurAであった.経過良好にて術後24日で退院となった.永久標本での病理組織学的検査結果では,Verrucous carcinomaと診断した.2年経過した現在,再発は認めていない.極めてまれな食道Verrucous carcinomaの臨床的ならびに病理組織学的特徴について検討した.
  • 佐々木 勉, 片山 哲夫, 政野 裕紀, 内藤 雅人, 近藤 正人, 浅生 義人, 長谷川 傑, 山之口 賢, 古山 裕章, 吉村 玄浩
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は12歳の男児で,5歳時より腹痛を繰り返し,急性膵炎とそれによる仮性膵嚢胞と診断され加療を受けていたが原因は判然としなかった.12歳時に腹痛が再燃し,CTで胃重複症と胆石症を指摘され,手術を施行した.まず胆嚢を摘出した.胃幽門部大彎の重複胃が,横行結腸間膜に沿って舌状に張り出した分葉膵と癒着していた.両者を接合部で切離すると互いに交通していたが,胃と重複胃の交通はみられなかった.分葉膵断端からの造影により主膵管が描出された.重複胃の粘膜および分葉膵を切離した.消化管重複症が胃に生じることは比較的まれであるが,重複胃と膵が直接交通した症例は,PubMedで検索したかぎり本症例を含めてこの50年で15例(本邦では4例)と極めてまれであり,診断と治療に難渋した報告が大半を占める.本症例では重複胃内容のドレナージが不良になることで分葉膵が膵炎を繰り返したと考えられた.
  • 隈元 雄介, 金井 歳雄, 中川 基人, 永瀬 剛司, 今井 俊, 和田 治, 星野 剛, 本田 朋, 浅越 辰男
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 246-251
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は83歳の女性で,認知症の既往をもつ進行胃癌にて平成20年11月,胃全摘(後結腸性Roux-en-Y再建)根治術を行った.術後は良好に経過し,食事摂取もスムーズで第19病日に軽快退院した.しかし,外来経過観察中の平成21年1月,腹痛を主訴に救急外来受診.腹部は板状硬,CTでfree airを確認した.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹術を施行した.開腹所見は,食道空腸吻合部と結腸間膜通過部位の間の挙上空腸が管腔円周方向に沿って1/2周ほど断裂し,食残が腹腔内に漏出していた.挙上空腸の結腸間膜通過部位に有意な狭窄は認めなかったため,穿孔部を一期的に縫合した.本例は過食による挙上空腸過伸展に嘔吐反射に起因した急激な内圧上昇が加わって起こった特発性小腸破裂と考えられた.
  • 田中 公貴, 田本 英司, 中久保 善敬, 奥芝 知郎, 川村 健, 宮本 正樹, 飛岡 弘敏, 久保田 佳奈子, 松野 吉宏
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 252-258
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は78歳の男性で,腫大した頸部リンパ節の生検で炎症性リンパ節炎と診断された.1年後に発見された胃癌に対する全身精査で頸部,縦隔,傍大動脈リンパ節腫大を認めた.頸部リンパ節生検では癌の転移を認めず,標準的な胃切除術を施行したところ,胃癌病変の直下に小型異型リンパ球浸潤を認めた.免疫染色の結果から,marginal zone b-cell lymphoma(以下,MZBLと略記)と診断された.生検した頸部,傍大動脈リンパ節も同様に診断され,Extranodal MZBLと診断した.退院後にリツキサンを週1回,4週間投与し臨床的完全寛解となり,1年後のCTでもリンパ節は消失していた.胃切除より2年経過し,無再発生存中である.Extranodal MZBLの自然経過が観察された症例は珍しく,治療への反応性も従来報告を支持する経過であった.進行が遅いことと治療奏効性に関係があるかもしれない.
  • 門田 一晃, 中郡 聡夫, 小嶋 基寛, 加藤 祐一郎, 後藤田 直人, 高橋 進一郎, 小西 大, 木下 平
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は66歳の男性で,62歳より他院にて肝細胞癌に対して内科的治療を受けていた.肝S5/8に対し重粒子線治療を施行後,再発なく経過していたが,66歳時に観察中に施行したCTにて胆嚢内に充実性腫瘤像を認めたため,当院紹介受診となった.画像所見では,胆嚢内腔に突出する境界明瞭な充実性腫瘤を認めた.胆嚢癌の診断にて胆嚢摘出術を施行した.摘出標本では内腔に突出する有茎性の腫瘤で,腫瘤基部以外の胆嚢粘膜面は白色顆粒状の隆起をびまん性に認めたが,主病変との連続性はなかった.病理組織像では腫瘍細胞が索状に増生し,胆嚢漿膜下層には多数の静脈内の腫瘍栓を認め,肝細胞癌の血行性による胆嚢転移と診断した.患者は術後10か月を経て無再発生存中である.肝細胞癌の胆嚢転移の経路として門脈前区域枝—胆嚢静脈間の交通による逆行性の血行性転移の可能性が示唆され,肝細胞癌の転移様式として興味ある症例と考えられたので報告する.
  • 仁平 芳人, 田原 真紀子, 森嶋 計, 俵藤 正信, 佐田 尚宏, 仁木 利郎, 安田 是和
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 266-272
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は56歳の女性で,肺癌検診精査中に肝腫瘍を指摘,当院を受診した.甲状腺乳頭癌に対し18年前に甲状腺右葉切除術を,腺腫様甲状腺腫に対し16年前に甲状腺全摘術を受けている.術前の血液検査ではサイログロブリンの著明な上昇を認めた.CTでは肝外側区域に早期相で濃染され,後期相でwash outされる,中心性瘢痕と被膜様構造を有する腫瘍を認めた.MRIでは左第7肋骨と第1腰椎に肝腫瘍と同時相で造影される腫瘍を認め,全身骨シンチでは第6胸椎と左第7肋骨に集積を認めた.以上から単発性肝腫瘍および多発性骨転移と診断したが,肝腫瘍は肝細胞癌と甲状腺癌の肝転移の可能性があった.肝腫瘍は切除可能と判断し外側区域切除と肋骨生検を施行した.病理組織学的検査で両病変は,分化型甲状腺癌の転移と診断された.甲状腺乳頭癌の単発性肝転移は非常にまれで,文献的考察を加え報告する.
  • 前田 隆雄, 平松 聖史, 櫻川 忠之, 土屋 智敬, 尾辻 英彦, 原 朋広, 田中 寛, 木村 明春, 待木 雄一
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 273-281
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は47歳の女性で,腹痛,発熱を主訴に前医受診,炎症反応およびアミラーゼ上昇と,CTにて左横隔膜下膿瘍,膵頭部嚢胞性病変,膵体尾部の浮腫を認めた.急性膵炎軽快後,膵頭部病変の精査目的に当科紹介となった.MRCP・ERCPでは主膵管の狭窄および腫瘍との交通は認めなかった.粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm),膵管内粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm)であった場合の悪性の可能性を考慮して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.5cm大の腫瘍は薄い嚢胞壁の多房性病変で,病理組織学的には単層の立方上皮からなり異型性は認めず,膵漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm;以下,SCNと略記)と診断した.膵炎発症で発見されたmacrocystic typeのSCNはまれであり文献的考察を加え報告する.
  • 板津 慶太, 塩見 正哉, 世古口 英, 高木 健司, 山口 直哉, 山内 康平, 金森 淳, 伊藤 哲, 成田 道彦
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 282-287
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     長期透析患者の透析アミロイドーシスによる小腸穿孔のまれな1例を経験した.症例は79歳の女性で,17年間の血液透析歴がある.透析導入後,右手根幹症候群手術2回,S状結腸憩室出血手術を受け,狭心症,急性心不全,肺結核の治療を受けていた.外傷歴のない右大腿骨頸部骨折にて入院し,手術を受けた.術直後より腹痛と下痢を認め,術後2日目に腹痛が増強した.CT上,腹腔内の遊離ガス像と腹水貯留を認め緊急手術を施行した.小腸に穿孔部を2か所認めたため切除吻合を行った.病理学的に穿孔部周囲の粘膜下層の小血管壁にアミロイドの沈着を認めた.術後,創感染,深在性真菌症,難治性下痢,急性心不全を発症したが保存的治療で改善し,緊急術後78日目に軽快退院した.
  • 安藤 敏典, 三浦 康, 内藤 剛, 小川 仁, 矢崎 伸樹, 羽根田 祥, 柴田 近, 佐々木 巖, 藤島 史喜, 石田 和之
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 288-294
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は66歳の男性で,2007年4月,約10cm大の回腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)に対して,回腸部分切除術を施行した.7か月後多発肝転移を来しメシル酸イマチニブ400mg/日を開始し,肝転移巣は約1年6か月間stable diseaseであった.2009年5月腸閉塞を来し,腹部CTにて腸閉塞の原因となる腫瘤を認め,GIST再発を疑い腫瘤摘出術を行った.腫瘍は8×7×4cm大で,回腸間膜内に存在し,他臓器浸潤は認めなかった.病理組織学的には,分化した繊維芽細胞の増殖からなる腫瘍性病変で豊富な膠原繊維の介在を伴い,核分裂像は認められなかった.免疫組織化学ではc-kit陰性でβ-カテニンが核内に陽性を示し,小腸間膜デスモイド腫瘍と診断された.メシル酸イマチニブ投与中に腸閉塞で発症した小腸間膜デスモイド腫瘍の報告例はなく鑑別が極めて困難であった.
  • 吉川 智宏, 藤井 大和, 小鹿 雅博, 星川 浩一, 青木 毅一, 井上 義博
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 295-303
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     非腸管壊死性の門脈ガス血症2例を経験した.症例1は79歳の女性で,脳梗塞にて入院中に腸炎による腸管拡張により発症した.症例2は48歳の女性で,抗精神病薬内服による麻痺性イレウスにより発症した.共に保存的治療にて軽快した.自験例2例を含む,本邦で1986年から2008年までに報告された非腸管壊死性の門脈ガス血症は106例を認め,全体の死亡率は4.7%で,原因疾患は,炎症性腸疾患45.3%,腸管の閉塞・拡張29.2%,敗血症9.4%,医原性・外傷4.7%,癌3.8%,その他7.5%であった.手術施行率は51.4%であった.また,腸管気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis;PCI)の陽性率は26.6%であった.非腸管壊死性の門脈ガス血症の原因は多岐にわたり,治療方針の決定には注意深い診察と,正確な画像診断が必要と思われる.
  • 菅野 雅彦, 福永 正氣, 勝野 剛太郎, 伊藤 嘉智, 大内 昌和, 吉川 征一郎, 飯田 義人, 永仮 邦彦, 李 慶文, 津村 秀憲
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 304-310
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は19歳の男性で,嘔気,嘔吐,脱水を認め精査加療目的に当科入院となった.腹部CTにて上腹部に小腸壁のターゲット状肥厚を認め,小腸造影検査にて十二指腸の第3部に蟹のつめ所見を認めた.腸重積症の診断にて腹腔鏡下手術を施行した.Treitz靭帯近傍に空腸の逆行性腸重積を認めた.腹腔鏡下に腸重積を整復すると3cm大の腫瘍を認めた.腹腔鏡下に小腸部分切除および吻合を施行した.病理組織学的検査はpeutz-jeghers(以下,P-Jと略記)型ポリープであった.単発のP-J型ポリープはまれである.本症例には,粘膜,皮膚の色素沈着および遺伝性疾患を疑うような家族歴もなく不完全型P-J症候群と考えられた.まれな逆行性腸重積を呈したP-J型ポリープに対し完全腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので報告する.
  • 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 原田 郁, 佐々木 真理, 村上 崇, 徳久 元彦, 長谷川 誠司, 江口 和哉, 仲野 明
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 311-317
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は75歳の男性で,2008年8月 排便困難感と右下腹部痛を主訴に近医を受診した.腹部X線検査でイレウスと診断され当科を紹介受診した.腹部造影CTでtarget signを認め,注腸検査では上行結腸にカニ爪様陰影欠損を認めたため腸重積によるイレウスと診断した.イレウス管を挿入し,症状改善後に施行した大腸内視鏡検査で,盲腸に2型の腫瘍を認め,生検で悪性リンパ腫と診断し待機的に手術を施行した.術中所見で,盲腸および回腸末端は腫瘍を先進部として上行結腸内に重積し,回結腸動静脈に沿って腫大したリンパ節を認め,回盲部切除術を施行した.病理組織検査では,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫であった.R-CHOP療法による補助化学療法を施行し,術後1年4か月の現在無再発生存中である.成人腸重積症は比較的まれな疾患であり,なかでも大腸原発悪性リンパ腫による腸重積症は極めてまれであるため文献的考察を加え報告した.
  • 上藤 和彦, 松本 佑介, 牟田 直
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 318-324
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は32歳男性.既往にクローン病.腹痛,腰痛を主訴に当院入院.大腸内視鏡検査にてS状結腸に全周性の狭窄病変を認め,生検でgroup5であった.MRIで脳転移,多発骨転移を認め,多臓器転移を伴う4型大腸癌と診断した.精査中に播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症したため骨髄癌症と診断し対症療法を施行中のところ,腫瘍穿孔を来したためHartmann術を施行した.術後,DICの増悪からlife-threateningな状態に陥ったため,oxaliplatin/5-fluorouracil/leucovorin(以下,mFOLFOX-6と略記)療法を開始した.その結果,初回投与で速やかなDICからの離脱がみられ,さらに継続することで転移巣の縮小や全身状態の改善がみられた.大腸癌を原発とした骨髄癌症はまれで,いったん発症すると化学療法を行っても予後不良とされる.本例は大腸癌骨髄癌症にmFOLFOX-6が奏効し延命しえた,希有な症例のひとつと考えられる.
  • 久慈 麻里子, 高橋 昌宏, 中野 詩朗, 赤羽 弘充, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 高岡 正実, 花本 尊之, 及川 太
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 44 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     症例は28歳の女性で,下腹部痛を主訴に当院救急外来受診した.視触診で腹部に小児頭大の腫瘤があり,CTで骨盤腔に巨大な腫瘤とともに右胸水,腹水貯留,直腸S状部(rectosigmoid;以下,RSと略記)の壁肥厚を認めた.下部消化管内視鏡検査でRSに全周性狭窄病変を認め,RS癌+卵巣腫瘍の診断で直腸高位前方切除術と両側卵管卵巣摘除術を施行した.術中腹膜播種を認め,病理組織学的診断はRS印環細胞癌両側卵巣転移(RS,circ,type4,pSE,ly3,v3,pN2,sH0,pP2,pM1,fStageIV)であった.術後外来にて全身化学療法施行していたが,術後12か月で癌性腹膜炎を発症し,術後13か月原病死した.
臨床経験
  • 高 賢樹, 内藤 敬嗣, 本城 弘貴, 遠藤 悟史, 太田 智之, 角田 明良, 三毛 牧夫, 草薙 洋, 山田 成寿, 加納 宣康
    原稿種別: 臨床経験
    2011 年 44 巻 3 号 p. 331-337
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     2000年4月より施行されたERCP 4,606例の中で穿孔と診断され手術に至った7症例(0.15%)を検討した.穿孔部位は十二指腸下行脚4例,球部前壁1例,傍乳頭1例,下部胆管1例であった.穿孔は4例で内視鏡による視認,2例はCT(free air)で診断された.胆管損傷の1例はERCP施行4日後,腹膜炎に対する試験開腹で発見された.穿孔が視認された例では穿孔閉鎖術2例,穿孔閉鎖術+T-tube留置2例が施行された.CTで診断された2例は穿孔が確認できず洗浄ドレナージのみであった.胆管損傷の例ではT-tube留置のみであった.手術まで4日かかった例では術後全身衰弱により死亡したが,その他の例では術後経過は良好であった.内視鏡本体による十二指腸穿孔は径が大きいこともあり,早期の縫合閉鎖術が必要と考えられる.また所見がfree airのみの場合には保存的に治療できる可能性が示唆された.
  • 金田 邦彦, 川口 勝徳, 粟津 正英, 愛新 啓志, 松田 武, 高松 学
    原稿種別: 臨床経験
    2011 年 44 巻 3 号 p. 338-346
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     膵頭十二指腸切除術時にうっ血した切除側からの出血を減少させるために膵頭十二指腸切除時にretromesenteric approachを応用した.本術式は,上腸間膜動脈の根部,背側から膵頭部への動脈血流遮断を先行することで,切除側からの出血量をコントロールすることができ,かつ後腹膜郭清や上腸間膜動脈根部の郭清も良好な視野で施行することが可能であった.2008年以降8例に対して本法を用いて膵頭十二指腸術を行った.疾患の内訳は通常型膵癌6例,intraductal papillary mucinous carninoma 1例,下部胆管癌1例であった.3例に門脈合併切除を施行した.標本摘出までの平均時間は385分,平均手術時間は651分,平均出血量は392mlで,全例が無輸血であった.本術式は,膵頭部への動脈遮断の先行および上腸間膜動脈根部の安全な郭清の2点から,非常に有用な術式であると考えられた.
  • 竹林 克士, 橋本 雅司, 春田 周宇介, 江原 一尚, 今村 綱男, 上野 正紀, 松田 正道, 渡邉 五朗
    原稿種別: 臨床経験
    2011 年 44 巻 3 号 p. 347-352
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     1症例目は30歳の女性で,平成17年,膵尾部粘液嚢胞腺腫に対する膵体尾部切除術後に,腹部CTにて膵切離面に胃を圧排する限局した液体貯留を認めた.2症例目は58歳の男性で,平成20年,膵体尾部癌に対する膵体尾部切除術後に,腹部CTで胃背側の膵切離部周囲に多量の液貯留を認めた.いずれも術後膵液瘻と診断し,内視鏡的経胃ドレナージ術を行った.ドレナージチューブを留置し,胃と内瘻化し,液貯留は縮小した.チューブは内視鏡的に抜去したが,その後,同所に液体の再貯留は認めていない.内視鏡的経胃ドレナージは仮性膵嚢胞の治療法として有効であるとの報告が多い.仮性膵嚢胞にかぎらず,胃に隣接する病変であれば,本症例のように術後膵液瘻に対しても有効な治療法として考えられた.
  • 西躰 隆太, 三浦 歓之, 江嵜 秀和, 井上 直也, 粟根 雅章, 恒川 昭二, 滝 吉郎
    原稿種別: 臨床経験
    2011 年 44 巻 3 号 p. 353-360
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2011/03/19
    ジャーナル フリー
     当院で経験した手術体位による仙骨部deep tissue injury(DTI)について報告する.当施設では2004年1月から2008年12月までに砕石位で直腸切除術を82例施行し,4例に大臀筋の圧挫を経験した.4症例ともに男性の下部直腸癌で,腹腔鏡補助下に手術を受け,手術時間は9時間25分~11時間と長かったが,術中血圧は安定していた.翌日には全例が臀部に違和感または痛みを自覚しており,翌日のCPKが6,927,3,133,1,913IU/Lと異常高値であった(1例データなし).2例は2週間後のMRIで仙骨関節周囲の両側大臀筋腫大,皮下浮腫を指摘され,他の2例は術後2~3か月目のCTで片側の仙腸周囲の大臀筋腫大を指摘された.皮膚障害は軽度で,大臀筋壊死を伴うDTIと診断した.砕石位を多用する直腸癌手術や腹腔鏡補助下手術では,術中のDTIは注意を要する合併症の一つと考えられた.
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