日本消化器外科学会雑誌
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46 巻, 11 号
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症例報告
  • 市之川 正臣, 長谷川 直人, 椎名 伸行, 東海林 安人, 飯村 泰昭, 寺本 賢一
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 799-805
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は64歳の男性で,嚥下時のつかえ感を自覚し,前医にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ中下部食道左壁を中心に架橋襞を伴う正常粘膜に覆われた平滑な腫瘤を認め,食道粘膜下腫瘍が疑われた.内視鏡下針生検では食道平滑筋腫の診断であったが,FDG-PET/CTでSUV max 11.3と高度異常集積を認め,平滑筋肉腫などの悪性腫瘍も否定できなかった.術中所見で肉眼的に悪性所見を認めず,核出術を施行した.腫瘍長径は6.5 cm,免疫組織染色検査ではα-SMA陽性,desmin弱陽性,CD34陰性,c-kit陰性,S-100陰性,Ki-67 indexは3%と低率で,食道平滑筋腫の病理組織学的診断となった.Glucose transporter-1(GLUT-1)染色では細胞膜に発現を認めた.良性腫瘍である食道平滑筋腫もFDG-PETにて偽陽性となりうることを念頭に置いて胸部腫瘍性疾患の鑑別診断を行わなければならない.
  • 山本 昌明, 小川 雅生, 豊田 翔, 水村 直人, 今川 敦夫, 出村 公一, 川崎 誠康, 堀井 勝彦, 亀山 雅男, 吉村 道子
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 806-813
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は80歳の男性で,突然出現した腹痛を主訴に当院へ救急搬送となった.搬送時,バイタルサインは安定していたものの,苦悶様顔貌を呈し,腹膜刺激症状を認めた.腹部造影CTで,十二指腸下行脚周囲,脾臓周囲,骨盤腔内にややdensityの高い液体貯留を認め,造影剤の血管外への漏出は認めなかったが,腹腔内出血による腹膜炎を疑い,同日緊急手術を施行した.開腹所見では右胃大網動脈に径10 mm大の出血を伴う動脈瘤を認めた.その他に明らかな出血源は認めなかったため,出血していた右胃大網動脈瘤を含め大網部分切除術を施行した.病理組織学的には,右胃大網動脈壁に島状の中膜の残存を認めたことから,segmental arterial mediolysis(SAM)による右胃大網動脈瘤の破裂と診断した.
  • 石場 俊之, 井ノ口 幹人, 円城寺 恩, 大野 玲, 小川 憲人, 椙田 浩文, 加藤 敬二, 根木 真理子, 小嶋 一幸, 杉原 健一
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 814-821
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は79歳男性で,心窩部痛・嘔吐を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で穹窿部に径10 cmの隆起性病変を認め,CTで原発巣とリンパ節腫大を認めるも遠隔転移はなく,AFPは263.0 ng/mlであった.AFP産生を伴う胃癌肉腫U,Post,type 1,cT3N1M0,cStageIIBと術前診断し,胃全摘術(D2郭清),Roux-en-Y再建を施行した.肉眼的に13.5 cm大で,病理組織学的には肉腫細胞が主体で腺癌細胞が混在し移行性はなく,免疫染色検査にて腺癌細胞は上皮系マーカーが,肉腫細胞は間葉系マーカーが陽性となり,真性胃癌肉腫T3(SS),N3a,Stage IIIBと診断した.AFPは腺癌細胞において陽性であった.術後3か月で肝転移再発し,術後6か月で原病死した.真性胃癌肉腫は有効な治療法がなく予後不良である.また,これまでの報告は15例とまれで,AFP産生の胃癌肉腫の報告は2例目である.
  • 橋口 真征, 上野 真一, 迫田 雅彦, 飯野 聡, 南 幸次, 安藤 慶, 又木 雄弘, 前村 公成, 新地 洋之, 夏越 祥次
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 822-829
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は16歳の女性で,肝両葉多発腫瘍(最大径10 cm)を指摘された.画像検査でfibrolamellar hepatocellular carcinoma(以下,FLCと略記)と診断した.肝両葉に10個以上の結節と,肝門部リンパ節転移が疑われたことから,肝動脈化学塞栓療法を2回先行した.しかし,腫瘍が残存していると診断し,手術療法の方針とした.門脈枝塞栓術後に右3区域切除+外側区域腫瘍ラジオ波焼灼術+肝十二指腸間膜内リンパ節郭清を施行した.最終病理組織学的診断もFLCで,腫大リンパ節は炎症性であった.術後2年3か月目に肝臓再発に対し肝部分切除術,術後3年8か月目に肺再発に対し肺右上葉切除術を施行した.現時点では新たな再発は認めず,積極的な手術療法により初回術後5年3か月の長期生存が得られている.FLCの治療法を中心に文献的考察を加え報告する.
  • 鈴木 雄飛, 鈴木 昌八, 落合 秀人, 神藤 修, 宇野 彰晋, 深澤 貴子, 松本 圭五, 齋田 康彦, 谷岡 書彦, 北村 宏
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 830-839
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は78歳の男性で,上腹部違和感を主訴に近医を受診した.腹部USにて肝腫瘍を指摘され,当院を紹介受診した.腹部CTでは肝S4からS5にかけて最大径6.7 cmの腫瘍を認めた.腫瘍のS5寄りの部分には被膜様構造がみられ,早期に濃染し,遅延相では低吸収域となった.S4寄りの病変部は周囲との境界が不明瞭で,辺縁から徐々に造影された.MRCPではS5の胆管枝への浸潤も疑われた.腫瘍マーカーはPIVKA-IIのみが854 mAU/mlと上昇していた.以上より,混合型肝癌を第一に考え,肝拡大右葉切除術,肝外胆管切除兼胆道再建術,肝十二指腸間膜内リンパ節郭清を施行した.病理組織学的には,肝細胞癌の一部に肉腫様変化をみたが,腺癌成分は認めなかった.術後37か月が経過し,再発なく社会復帰している.比較的まれな肉腫様変化を伴った肝細胞癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 岡﨑 太郎, 味木 徹夫, 篠崎 健太, 村上 冴, 吉田 優子, 松本 逸平, 福本 巧, 川上 史, 原 重雄, 具 英成
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 840-846
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     我々は肝外胆管に発生したまれな印環細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は76歳の女性で,腹痛を主訴に近医を受診し,急性胆囊炎の診断にて経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage;PTGBD)と抗生剤による保存的加療を受けた.精査の結果,MRCPにて左右肝管合流部から総胆管にかけて不整な狭窄像を認め,腹部造影CTでは同部位に一致して造影効果を伴う軟部陰影を認めた.胆管擦過細胞診では腺癌が疑われる所見であった.中部胆管癌の診断にて胆管切除術,胆道再建による根治切除術を施行した.病理組織学的には,細胞質内に粘液の貯留の目立つ印環細胞様の腫瘍細胞が小胞巣や索状の形態をとって浸潤性に増殖しており,印環細胞癌と診断した.現在術後24か月経過し,再発の兆候は認めていない.
  • 遠藤 翔, 大塚 隆生, 持留 直希, 上田 純二, 高畑 俊一, 相島 慎一, 水元 一博, 田中 雅夫
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 847-853
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は55歳の女性で,背部痛・体重減少を主訴に近医を受診し,CTで膵癌が疑われた.当科での精査の結果,Stage IVaの局所進行膵体尾部癌の診断に至った.腫瘍が非常に大きく,転移巣の出現の確認や腫瘍縮小効果を期待し,化学療法を先行させた.Gemcitabine/S-1の併用療法(以下,GS療法と略記)を2か月施行し,腫瘍は6.8 cm大から4.8 cm大へ縮小し,明らかな転移巣の出現も認めず,膵体尾部切除,D2リンパ節郭清を施行し,肉眼的に根治術を行えた.病理組織学的検査では,好酸性の腺房構造を呈し,α1-antitrypsinが陽性であり,膵腺房細胞癌と診断した.合併症なく経過し,術後13日目に術後補助化学療法としてGS療法を開始し,術後14日目に退院した.6か月間の術後補助化学療法も有害事象なく完遂した.術後9か月目に膵断端近傍に径2 cmの局所再発を認め,現在GS療法を再開している.
  • 隈本 力, 富沢 賢治, 花岡 裕, 戸田 重夫, 森山 仁, 的場 周一郎, 黒柳 洋弥, 橋本 雅司, 宇田川 晴司, 渡邊 五朗
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 854-861
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は34歳の男性で,8年前に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;以下,SLEと略記)と診断された.5年前に腹痛,腹満が出現し,下部消化管内視鏡検査で直腸S状部に狭窄・潰瘍を認め,SLEによる直腸炎・潰瘍の診断でプレドニゾロン(prednisolone;PSL)の注腸が行われた.一時症状は軽快したが1年後に再燃し,同部位の狭窄は増悪し,白苔を伴う潰瘍を認めた.潰瘍性大腸炎が疑われ,メサラジン投与が追加された.その後も大腸狭窄は持続したため,精査加療目的で当院紹介となった.不可逆性の大腸狭窄に伴う排便困難は持続したことより,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.病理結果はSLEによる血栓形成および血管炎に伴う大腸狭窄の所見であった.SLEによる大腸狭窄は極めてまれで,過去の報告例は4例のみであり,腹腔鏡下での切除の報告はない.
  • 内田 恒之, 渡辺 透, 栃本 昌孝, 澤田 幸一郎, 平沼 知加志, 加藤 秀明
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 862-867
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は50歳の男性で,下腹部痛,嘔吐を主訴に受診した.下腹部に圧痛を認め,白血球数とCRPの上昇を認めた.腹部造影CTで上腸間膜動脈は上腸間膜静脈の右側に位置し,小腸の大部分が椎体の右側に存在していたため,腸回転異常症の存在が示唆された.また,上行結腸はbirds beak signを伴い著明に拡張しており,whirl like appearanceも認めていたことより結腸軸捻転を疑い,緊急手術を施行した.手術ではnon-rotation型の腸回転異常症を認めた.盲腸と後腹膜との間に索状物を認め,上行結腸は索状物を軸として反時計方向に180°捻転しており,盲腸軸捻転症と診断した.捻転を解除し,腸管壁が菲薄化していた回盲部を切除した.腸回転異常症に腹部症状を伴う場合には,捻転や腸管壊死など緊急手術を要する病態である可能性を念頭に置き,対応することが重要である.
  • 基 俊介, 門野 潤, 田畑 峯雄, 石崎 直樹, 清水 健, 井本 浩
    原稿種別: 症例報告
    2013 年 46 巻 11 号 p. 868-873
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/16
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     症例は44歳の女性で右上腹部痛を主訴に入院となった.CTで肝下面,胆囊左側に腫瘍内出血を伴う13 cm大の腫瘤を指摘された.十二指腸の消化管間質腫瘍を疑い,腫瘍摘出術,胆囊摘出術,肝部分切除術,胃・十二指腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査では後腹膜原発の悪性線維性組織球腫と脂肪肉腫を伴う骨外性骨肉腫の診断であった.骨肉腫に対する補助化学療法を施行したが,術後1年目に胃前庭部に再発し,幽門側胃切除術,肝部分切除術を施行した.さらに,1年7か月後に膵頭部上縁に再発し,腫瘍摘出術を施行した.さらに,1年3か月後に肝S4に再発し,肝左葉切除術を施行した.初回手術後7年で再発は認めていない.2回目までは骨外性骨肉腫を主体とする悪性腫瘍の再発であったが,3,4回目は低分化肉腫であった.現在,初回手術から7年経過するが再発なく経過している.
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