情報の科学と技術
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73 巻, 8 号
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特集:サブスクリプションサービスが社会に与えた影響
  • 海老澤 直美
    2023 年 73 巻 8 号 p. 311
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    サブスクリプションサービスは一般的に,定額制でさまざまなコンテンツやサービスを利用できる仕組みとされ,これまでは主に本,音楽,映画などのデジタルコンテンツに関連して語られることが多くありました。しかし,最近ではソフトウェアやクラウドサービスなど,さまざまな分野で利用されています。

    特にコロナ禍による自宅時間の増加や外出制限の影響で,サブスクリプションサービスの利用は加速しました。所有から利用へのライフスタイルの変化が広まり,個人だけでなく企業や図書館,教育機関などでも同様の変化が起きています。

    サブスクリプションサービスは社会への影響も大きいと言えます。利用者は,低コストで多様なコンテンツやサービスを利用できるようになりました。一方,提供側は,定期的な収益の安定化や顧客との関係構築の機会を得ることができます。

    本特集では,「サブスクリプションサービスが社会に与えた影響」と題し,サブスクリプションサービスの概要を解説するとともに図書館や教育機関における具体的な事例も紹介します。

    まず谷守正行氏(専修大学)に,サブスクリプションサービスの概要をわかりやすく解説していただくとともに,購買行動の変化についても説明いただきました。

    図書館においては,学術雑誌の転換契約への移行とオープンアクセスの取り組みが重要なテーマとなっています。これについては,平田義郎氏,山崎裕子氏,金子芙弥氏,野中真美氏(大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE))に,JUSTICEにおけるオープンアクセスの取り組みとあわせて詳説いただきました。また,河井良太氏(東大阪市教育委員会)には,公共図書館における電子図書館サービスの導入経過と活用事例などについて紹介いただきました。

    教育機関では,情報基盤の変遷が進んでいます。この変化については,永田正樹氏(静岡大学)に,クラウドコンピューティングの導入事例を通じて具体的に解説いただきました。さらに,牛頭哲宏氏(神戸常盤大学),髙松邦彦氏(東京工業大学),酒井智行氏(株式会社KEI)には,大学におけるmanaba(学習支援システム)の活用事例とその教育効果などについて紹介いただきました。

    本特集が,サブスクリプションサービスや図書館,教育機関に関心を持つ読者にとって有益な情報となることを願っています。

    (会誌担当編集委員:海老澤直美(主査),青野正太,今満亨崇,長谷川幸代)

  • 谷守 正行
    2023 年 73 巻 8 号 p. 312-317
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス

    元来,定期配達や定期購読の意味でしかなかったサブスクリプションサービスが,いったいどうしてあらゆる世代の購買行動の変革を促すに至ったのであろうか。それを検討するためには,そもそもサブスクリプションとは何なのかを明らかにする必要がある。そこで,最初にサブスクリプションの定義を行い,サブスクリプションたる機能要件を明らかにした。そのうえで,商業的な意味で使われるサブスク進化形態や従来のシェアリングサービスとの比較検討を通して具体的に検証した。最後に,サブスクリプションサービスと購買行動の変化の関係性を検討し,事業者および利用者それぞれに対するサブスクリプションのメリット/デメリットを述べる。

  • 平田 義郎, 山崎 裕子, 金子 芙弥, 野中 真美
    2023 年 73 巻 8 号 p. 318-323
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス

    冊子で定期購読をしていた学術雑誌は,1990年代に電子ジャーナルが登場すると,大学図書館ではビッグディール契約と呼ばれるコレクション契約を締結するようになった。ビッグディール契約はシリアルズクライシスに歯止めを掛ける一定の効果があったが,学術雑誌の価格上昇問題は解決しておらず,その対応策として注目されてきたのがオープンアクセスである。そうした流れから,転換契約と呼ばれる,出版社に対して行われる支払いを購読料からオープンアクセス出版料にシフトさせることを意図した契約を締結する大学図書館が増えてきた。本稿では,転換契約やその課題等を解説すると共に,論文公表実態調査等のオープンアクセスに関する大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)の取り組みを紹介し,今後の展望等を述べる。

  • 河井 良太
    2023 年 73 巻 8 号 p. 324-328
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス

    東大阪市では,令和3年4月より電子図書館サービス「ひがしおおさか電子図書館」を提供している。本稿では,当該サービスの導入経過や活用事例などについて紹介する。「ひがしおおさか電子図書館」は,サービス開始当初から“日本最大級の蔵書がある電子図書館”として広報することで利用拡充を図ってきた。また,学校連携事業の一環として,市立小中学校の全児童生徒がGIGAスクール構想のタブレット端末を用いて電子図書館を利用できるようIDを付与しており,子どもたちの読書環境の充実に努めている。今後さらなる市場拡大が期待される電子図書館であるが,リアルの図書館とのバランスを考えながらうまく共存させていくことが大切である。

  • 永田 正樹
    2023 年 73 巻 8 号 p. 329-335
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス

    静岡大学では情報機器の老朽化やICT社会に関する時勢の変化などにより情報基盤を4,5年おきに全面更改している。ここ十数年のICT業界はクラウドコンピューティングの普及により情報資産は所有から利用へと変化した。静岡大学においても数回の更改を経てクラウドコンピューティングを全面適用した情報基盤に変化している。本稿では情報基盤更改に対して,クラウドコンピューティング導入前後の技術面,運用面,調達手法の変化を概説する。

  • 牛頭 哲宏, 髙松 邦彦, 酒井 智行
    2023 年 73 巻 8 号 p. 336-340
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス

    神戸常盤大学は2015年度からクラウド型教育支援システム「manaba」を活用した教育実践を行ってきた。その結果,多くの教職員がmanabaを使いこなすノウハウを身に着けた。この実践が功を奏し,2020年度のコロナ禍でも,神戸常盤大学は迅速にオンデマンド式の遠隔授業を実施し,学生の学びの質が損なわれないように工夫している。本稿では,manabaの活用によって,どのように遠隔授業が実施され,どのような教育効果があったのかについて報告する。また,manabaに蓄積された学生の学習データにもとづいた大学改革の成果についても紹介する。

連載:特許情報分析/解析/検索データベース 第5回
  • 中井 将人
    2023 年 73 巻 8 号 p. 341-345
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス

    海外特許情報とその関連情報は以前よりも地理的,時間的に広く集めることができるようになってきている。大量に集められた情報はAI技術などを利用して整理されることにより検索データベースとして多様な目的に利用できるため,特許調査のプロフェッショナルだけでなく,研究開発部門や経営企画部門などにも広く利用されるようになってきている。AI技術によって実現した機能を提供する検索データベースOrbit Intelligenceを使うことによって,特許検索に慣れていないエンドユーザーであっても目的とする特許の抽出や,多種多様な関連情報の確認,新たな洞察を得ることが可能になっている。

連載:実務者のための著作権お悩み相談室 第2回
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