情報の科学と技術
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73 巻, 7 号
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特集:10年後の知財情報検索への期待を込めて
  • パテントドキュメンテーション委員会
    2023 年 73 巻 7 号 p. 255
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    過去10年間の知財情報検索を取り巻く環境の変化を振り返ってみると,人工知能(AI)の発展と切り離せないことがよく分かります。

    AI搭載を謳った「KIBIT」の登場が2015年のことです。以降,発明の進歩性・新規性を判定するシステム(AI Samurai)や特許価値評価機能を搭載した検索システム(PatentSight他),充実した解析機能を搭載したツール(Amplified AI他),教師データを用いてノイズ特許と正解特許を切り分けるツール(Deskbee他),ニューラル機械翻訳の導入による特許公報の機械翻訳精度の向上(特許庁)と,AI技術によって各種の機能が提案され,あるいは実現され現在に至っております。

    そして昨年11月には「ChatGPT」が公開されて大きな話題となりました。「生成系AI」と呼ばれ自然な文章を作成するChatGPTの可能性は,知財情報検索をも変えてしまうかも知れないとのインパクトを持って受け止められています。

    このようにAI技術で変化してきた知財情報検索ですが,この大きな変化の中で自分は何をやればよいのかで迷われている方も多いことでしょう。さらにこれからの10年間で知財情報検索がどうなっていくのか,そして自分はどこに向かって進んだらよいのかも重要な関心事であると推察いたします。

    本企画はAIと知財情報検索との現在の関わりをまとめるとともに,次の10年の進む方向に思いを馳せるために立案いたしました。

    最初に特許庁の伊藤孝佑氏,久慈渉氏,後藤昌夫氏に,特許庁で進められているAI活用に向けた取り組みの最新動向についてご紹介いただきました。二本目は旭化成株式会社の佐川穣氏と中村栄氏に,旭化成における現在までのIPランドスケープの取り組みと,新たな価値を生み出すためのこれからのIPランドスケープ,さらにそれらを推進する人材の育成について事例を交えて分かりやすく紹介していただきました。三本目は,AIPE認定シニア知的財産アナリスト(特許)の佐藤貢司氏に,AIとIPランドスケープのこれからについてご提案いただきました。二本目と合わせて読んでいただくことでIPランドスケープへの理解がより一層深まることと思います。四本目はスマートワークス株式会社の酒井美里氏に,公報査読に際してのAI活用の可能性についてご意見をいただきました。日々,公報査読に悩まれている方にはヒントをいただける内容になっていると思います。五本目は東洋製罐グループホールディングス株式会社の岡本耕太氏に,AI搭載ソフトを知財業務に活用する際の留意点をユーザー視点でご提案いただきました。最後に株式会社日本電気特許技術情報センターの奥田慶文氏に,新しいビジネスとしてのメタバースについて分かりやすくご紹介いただいております。

    読者の皆様におかれましては,これらの論文から次の10年に向かってのヒントを受け取り,元気に前向きに歩んでいくための後押しになればと考えております。

    INFOSTAパテントドキュメンテーション委員会

  • 伊藤 孝佑, 久慈 渉, 後藤 昌夫
    2023 年 73 巻 7 号 p. 256-261
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    特許庁では,特許行政事務の高度化及び効率化を目的に,2016年度から人工知能(AI)技術の適用可能性の検討を着実に進めており,2017年及び2022年に公表された「人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プラン」に沿って,企画,実証,導入のフェーズで各プロジェクトを進めてきた。本稿では,これまで策定してきた2つの「アクション・プラン」について,経緯を含め紹介するとともに,新しいアクション・プランに沿った最新の取組として,自然言語処理分野での新たな技術を活用した,「特許事前学習モデルに関する実証的研究事業」に関して説明する。

  • 佐川 穣, 中村 栄
    2023 年 73 巻 7 号 p. 262-267
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    IPランドスケープ活動が知財業界に急速に広がり,AIを活用したツールも導入されてきている。これからのIPランドスケープは,製造業においてビジネス競争力を大きく左右する要素になっている知財・無形資産を分析・活用し新たな価値の創造に貢献する必要がある。本稿では,この貢献のポイントである経営/事業戦略の高度化への貢献(社内・社外のコネクト,戦略の提案と実行),知財情報(データ)活用の民主化(内外の環境分析,具体的な提案に落とし込み)について我が社の取り組みを例に挙げながら考察する。また,これからのIPランドスケープを担う人財,ハードスキル,ハイジェネリックスキルについても解説する。

  • 佐藤 貢司
    2023 年 73 巻 7 号 p. 268-273
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス

    近年AI技術が大きく進歩しており,知財業務で注目を集めているIPランドスケープでの活用に期待も大きい。IPランドスケープはその重要要素である情報分析(3つのプロセス,1.情報を集める,2.項目ごとに分ける,3.状況を理解する)に加え,4.提案する,というプロセスが加わる。これらの各プロセスにおいて,AI活用による正確性や効率向上への期待も大きく,本稿では,IPランドスケープに取り組んでいる立場から,それぞれのプロセスについて筆者の考え方を述べるとともに,AIに対してどのような機能向上が求められているのかを担当者の視点から述べている。

  • 酒井 美里
    2023 年 73 巻 7 号 p. 274-280
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス

    特許情報データベースにおいては,2000年代の概念検索ブームから沈静化の時代を経て,近年は再びAI技術応用の検討が盛んになっている。現在は特に特許分類や化合物インデックスの自動付与といった分類付与の領域で実用化が進み,各国特許庁での導入例も増えている。また,データベース検索における類似文書検索や,検索結果表示における可視化・クラスタリング等も一般的なものとなりつつある。その一方,公報査読を効率化する技術は模索されているとみられるものの,分類付与や類似文書検索と比べると,実用化は端緒についたばかり,と言えよう。本項では,特許調査業務における「調査の目的と公報の読み方の関係」や「現在表面化している公報査読上の問題点」に着目した。また,公報査読上の問題点はAI技術を応用する事で改善される可能性があるのか,といった点について考察を行った。

  • 岡本 耕太
    2023 年 73 巻 7 号 p. 281-286
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,人工知能技術の研究開発において,第4世代AIの取り組みが世界中で始まっている。日本国は,他国との差別化されたシステムの構築・開発,いわゆる「信頼されるAI」が日本の勝ち筋として推進を強化している。一方,世界の知的財産管理ソフトウェア市場は,2026年までに155.7億米ドル,2020年度比で2.5倍に達すると予想されている。AIが搭載された知的財産管理ソフトウェアも商用化されている。本稿では,知的財産部門業務の特性に基づき,AI搭載のソフトウェアの同部門業務への適用について検討した。知財AI活用研究会の成果と,私見ではあるが,課題と今後の展開を述べる。

  • 奥田 慶文
    2023 年 73 巻 7 号 p. 287-293
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    ITビジネスの新潮流として,メタバースへの注目が高まりつつある。本稿ではメタバースに関心があり,これからこのテーマについて調査をする人が全体像を把握できる情報を提供する。まず,メタバースの定義,市場規模,応用分野などを紹介する。ビジネスの面では,様々な企業が既に事業を進めており,代表的な企業の動向を紹介する。メタバースは複合的な技術によって実現されている。その中でも主要とされる技術を取り上げ,その技術の概要を説明する。また,メタバースに関する標準化と政策動向についても言及する。更に,米国特許の動向として,特許出願における主要企業,技術分野,企業間の注力分野の違いなどを示す。

    Editor's pick

連載:特許情報分析/解析/検索データベース 第4回
  • 早川 浩平, 佐藤 裕哉, 胡 絵美帆
    2023 年 73 巻 7 号 p. 294-298
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー

    日本パテントデータサービス㈱の提供する特許情報検索サービス「JP-NET/NewCSS」は,公報情報,審査経過情報といった国内外の特許情報を収録し,特許調査で必要な機能や効率化を図る機能を多く備えている。その中でも特徴的な機能を検索・表示・出力・情報共有のカテゴリ別に紹介,いかに漏れがなく,ノイズの少ない検索や,案件情報を正確に素早く把握し,目的の情報にたどり着けるかを紹介する。また,各種特許マップの作成,統計・分析機能や情報共有機能を活用することで,傾向や対策すべき状況の把握,事業を円滑に進められる環境構築といった特許情報を中心に重要な役割を担うサービスである点も紹介する。

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