今日,デジタル化の進展や,コロナ禍における図書館の休館等の影響を受け,インターネット上で流通する著作物としてのコンテンツのニーズはますます高まっており,それらデジタル情報資源の作成や活用をより円滑に行えるよう,法整備や制度設計が進められています。本特集では,「デジタル時代の著作権」と題し,デジタル情報資源の作成・提供・活用における権利を巡る諸課題について,最近の動向を幅広く取り上げています。
まず,福林靖博氏(国立国会図書館)に,図書館関係の権利制限規定(法第31条)のうち特に個人送信(法第31条第3項)について,令和3年著作権法改正の内容について解説するともに,国立国会図書館における個人送信サービスの検討状況について紹介いただきました。続いて,徳原直子氏(国立国会図書館)に,柔軟な権利制限規定(法第30条の4,第47条の4,第47条の5等関係)について解説した上で,デジタル化資料(画像)のOCRテキスト化,テキスト化データを用いた所在検索サービス,データセットの提供等,データの活用事例を紹介いただきました。
次に少し視点を変えて,出井甫氏(骨董通り法律事務所)には,昨今注目されている一般ユーザによって作成されたコンテンツ(User Generated Content,UGC)について,著作権法との関係と,創作及び利用にともなう課題,政府における利活用促進のための取組みに焦点を当てて解説いただきました。最後に,水野祐氏(シティライツ法律事務所)には,著作物の利活用を促進するための取組みとして,著作権に関する意思表示・権利状態表記ツールについて,クリエイティブ・コモンズ,Rights Statements等を例に挙げて解説いただきました。
本特集が,デジタル情報資源を発信・提供する側,利用する側の両面で,インフォプロの皆様の御参考になれば幸いです。
(会誌編集担当委員:中川紗央里(主査),青野正太,安達修介,炭山宜也)
令和3年改正著作権法により,国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信先の範囲が,令和4年から従来の図書館から個人に拡大されることとなった。本稿では,国立国会図書館による所蔵資料デジタル化事業及び図書館向けデジタル化資料送信サービスの現況について整理したうえで,今回の法改正に至る背景・経緯と,法改正を受けて令和4年5月のサービス開始に向けて準備を進めている個人向けデジタル化資料送信サービスについて紹介する。
最初に,平成30年の著作権法改正により新たに設けられた「柔軟な権利制限規定」について概説する。その上で,国立国会図書館が取り組んでいる当該規定に関連するものとして,デジタル化資料(画像)のテキスト化事業及びそのテキストデータを活用した本文検索サービス,並びにデジタル化資料の閲覧・検索機能の利便性向上のためのAI(機械学習)を用いたサービス開発について,平成30年の著作権法改正による影響を考察しつつ紹介する。
現在,社会全体のデジタル化が加速しており,その影響がコンテンツ業界に顕著に見られる。例えば,多分野のコンテンツがオンライン配信を通じて消費者に行き渡るようになっている。また,高精度のコンテンツ創作・編集ソリューションが普及したことで,誰でも容易にコンテンツを創作・発信することが可能になっている。その結果,創作者と利用者との境界が希薄化し,プロとアマチュアの境界も曖昧になりつつある。こうした現象を起こす重要な役割を果たしているのがUser generated contents(UGC)である。本稿では,UGCの現状を概観しつつ,UGCの創作及び利用に伴う課題,並びにそれに対する政府の取組み状況を報告し,今後の検討の方向性について考察する。
クリエイティブ・コモンズ,Rights Statements等の著作権等に関する意思表示または権利状態を表記するツールは,情報資源の円滑な流通や利活用に資する。本稿では,著作権等に関する意思表示または権利状態を表記するツールを,(1)意思表示表記型,(2)権利状態表記型の2つに大別したうえで,(1)意思表示表記型については,(1-a)ライセンス表記型,(1-b)純粋意思表示表記型に区別する,という分類を試みている。そのうえで,これらの表記ツールの仕組み,普及状況及び意義に加えて今後の課題について考察している。
書籍の巻末索引は,重要であるにもかかわらず,「本の飾り」くらいにしか思われていない傾向がある。INFOSTA分類/シソーラス/Indexing部会では,この巻末索引についての研究の一環として,一般向け書籍3冊を選び,メンバーで分担して索引作業を実施し,その結果を共有して議論した。2冊については,語による索引を付与し,1冊については,段落ごとにUDC(国際十進分類法)の分類番号を振ることにした。その結果,索引における索引語の選択基準や索引語と本文中の語との関係などの多岐にわたる問題について,検討することとなり,一定の知見が得られた。この知見は,書籍の索引を作成する場合はもとより,論文などの索引付けや文献データベースの索引部分の設計にあたっても,参考にできる。