情報の科学と技術
Online ISSN : 2189-8278
Print ISSN : 0913-3801
ISSN-L : 0913-3801
70 巻, 8 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集:RDFとSPARQL~検索とデータ可視化
  • 今満 亨崇
    2020 年 70 巻 8 号 p. 391
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

    本特集ではRDF(Resource Description Framework)/SPARQL(SPARQL Protocol and RDF Query Language)による検索と可視化について特集しますが,特集の紹介をする前にまず弊誌がこれまでRDF/SPARQLについてどのような特集記事を掲載してきたか振り返ってみたいと思います。

    RDFについては当初から扱っており,1999年には当時W3Cにて検討中だったRDFについて,Dublin Coreのメタデータ記述と関連付けて紹介しています1)。時代が進むにつれ,身近なシステムがRDFデータを提供する動きが出てきました。2014年の特集「Web API活用術」2)ではCiNiiにおけるRDFデータの提供やその活用事例を紹介する記事を掲載しています。システム側での提供が増えると,それを利活用する動きも活発となり,2017年の特集「つながるデータ」では古崎晃司氏がLOD(Linked Open Data)活用コミュニティの取り組みの中でRDFにも言及していたり3),神崎正英氏の記事ではIIIF(International Image Interoperability Framework)のデータ構造がRDFでモデル化されていること等が紹介されています4)。ここに挙げたものに限らず,RDFについてはこれまで様々な記事を掲載してまいりました。

    一方SPARQLについてはどうでしょうか。2011年頃から言及する記事自体は複数掲載していますが,その利用方法などについて具体的に言及しているのは神崎正英氏ら5)の記事や,古崎晃司氏の記事6)に留まります。

    近年ではWeb UIでSPARQLの入力を受け付けるサービスも増えつつあり,インフォプロがRDF/SPARQLを利用する機運が高まっています。そこで本特集ではインフォプロが主体的にRDFデータを収集・利活用することを想定しました。まずはライフサイエンス統合データベースセンターの山本泰智氏にRDF/SPARQLの概要を非常に分かりやすくまとめて頂きました。次に,ゼノン・リミテッド・パートナーズの神崎正英氏に,様々なWebサービスにおけるSPARQLでの検索クエリ,及び得られるRDFデータについて概観して頂きました。個々のWebサービスからデータを得られるようになった次のステップとして,大阪電気通信大学の古崎晃司氏には得られるデータをいかにしてつなげるか,その作成方法についてご解説頂きました。

    ところでRDF/SPARQLはその性質上,複数ソースのデータをつなげて大規模なデータセットを作成することが可能ですが,そのままでは役に立ちません。可視化することの重要性について,コミュニケーションの媒介としての観点からノーテーションの矢崎裕一氏にご解説いただきました。最後は多摩美術大学の久保田晃弘氏に,可視化された複雑なデータの分類について人間の認知と関連付けてご紹介頂くとともに,大量かつ複雑で一貫性に欠ける現実の情報の世界にシステム的な共通の枠組みを適用する方法として圏的データベースをご紹介頂きました。

    最近はデータ駆動型社会の到来などと言われております。インフォプロがそのような社会を生き抜くための資料として,本特集をご活用いただけますと幸いです。

    (会誌編集担当委員:今満亨崇(主査),炭山宜也,野村紀匡,海老澤直美,水野澄子)

    参考文献

    1) 杉本重雄.〈特集〉メタデータ:メタデータについて:Dublin Coreを中心として.1999,vol.49,no.1,p.3-10.

    2) 情報科学技術協会.情報の科学と技術64巻5号.2014.

    3) 古崎晃司.〈特集〉つながるデータ:コミュニティ活動を通したLOD活用の“つながり” -LODハッカソン関西を例として-.2017,vol.67.no.12,p.633-638.

    4) 神崎正英.〈特集〉つながるデータ:リンクの機能を柔軟に生かすデータのウェブ.2017,vol.67,no.12,p.622-627.

    5) 神崎正英,佐藤良.〈特集〉典拠・識別子の可能性:ウェブ・オントロジーとの関わりの中で:国立国会図書館の典拠データ提供におけるセマンティックウェブ対応について.2011,vol.61,no.11,p.453-459.

    6) 古崎晃司.〈特集〉ウェブを基盤とした社会:ウェブの情報資源活用のための技術:ナレッジグラフとしてのLOD活用.2020,vol.70,no.6,p.303-308.

  • 山本 泰智
    2020 年 70 巻 8 号 p. 392-398
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

    コンピューターで知識を処理しやすく,そしてインターネット上でデータを共有しやすいようにセマンティックウェブの関連技術であるRDFとその問い合わせ言語SPARQLが開発された。世界的に広く普及しているウェブ技術は,インターネット上で膨大な知識を共有する場として重要な社会基盤となっている。主に自然言語でウェブページに書かれているこれらの知識を,RDF技術はコンピューターにも処理しやすくするとともに,ウェブ技術と共存共栄を図れるように設計されている。本稿ではこれらの概要を紹介し,そして実際に試せるような例を挙げて解説する。

  • 神崎 正英
    2020 年 70 巻 8 号 p. 399-405
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

    多様なデータの共通点やつながりを見つけ,それを用いて狙いのデータを取り出し,分析や視覚化などによって付加価値を生むためには,複数ソースのデータを集約しても共通点が得られる語彙やモデルの設計,つながりを見出すための値の正規化やリンク,そしてそれを適切に利用できるクエリが必要になる。RDFの導入期から行なわれてきたデータ設計やリンクの工夫を,図書館を始めとするGLAMやポータルの具体例を用いて紹介する。またそれらを利用するSPARQLクエリ例を示し,他のケースに応用するヒントにもなるように解説する。

  • 古崎 晃司
    2020 年 70 巻 8 号 p. 406-412
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

    Webで公開したデータを相互につなげる(リンクする)ことにより,データのWebを形成しようとするLinked Dataの取り組みは,2010年ごろから盛んに進められている。中でもオープンなLinked DataであるLinked Open Data(LOD)は,さまざまな分野で構築されており,その有効活用が期待される。本稿では外部のLODとつながったデータを作成することで,複数のデータを統合して活用する方法について解説する。特にLinked Data用のクエリ言語SPARQLを用いて,複数のデータセットを横断して検索する統合クエリ(Federated Query)の基本的な使い方を紹介する。

  • 矢崎 裕一
    2020 年 70 巻 8 号 p. 413-418
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

    大量のデータは,ただデータとして存在しているだけでは有効活用できない。データ可視化の価値について考察した。価値は人が感じるものである。そこでデータ可視化を発信者と受信者によるコミュニケーションの媒介と捉え,そのあり方を考察した。代表的なワークフローを選出し,発信者主体のものと受信者主体のもので二分し,概観した上で,そこから浮かび上がるニーズとコミュニケーションのあり方を考察した。データ可視化は人間社会において,人が人に何かを伝えたり,誰かの課題を解決することをサポートしたりと,今後も重要な役割を担うことは間違いない。

  • 久保田 晃弘
    2020 年 70 巻 8 号 p. 419-424
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

    マニュエル・リマが『視覚的複雑性』のサイトと本で試みた,ビッグデータのアルゴリズミックな可視化の分類学を出発点に,ゲシュタルト心理学のプレグナンツの法則(人間の知覚の特性),レイコフ&ジョンソンの「イメージスキーマ」(身体的経験の概念化)を介した,大規模データからの人間の意味の読み取り可能性を考える。次に,近年さまざまな分野から注目されている,圏論にもとづく「圏的データベース」を紹介し,有向グラフによる図式という圏の基本構造が,視覚的複雑性(可視化)とイメージスキーマ(意味)のダイナミズム,さらには宇宙の構造(物理学)をつなぐ共通言語になる可能性を提示する。

連載:情報を計測し,法則化する~今に活かせる計量情報学の経験則
連載:情報科学技術に関する識別子
事例報告
  • 児玉 陽子
    2020 年 70 巻 8 号 p. 432-435
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

    近年,国内でも研究データ管理への様々な取組みが始まっているが,豪州では2007年にAustralian Code for the Responsible Conduct of Researchが策定されたこともあり,すでに多くの研究大学で行われている。著者は2017,2019年にシドニー大学図書館の研究データ管理担当者から話を伺う機会を得たので,ここに実際の運用について概要を報告する。またシドニー大学図書館のウェブサイトでの研究データ関連の情報提供の展開についても触れる。大学のポリシー,研究データ管理計画書,ストレージやツール,データの公開,広報や学内での協力体制,さらに学外の組織・ANDS(現在のARDC)との関わりや,現時点で抱えている課題についてもレポートする。

    Editor's pick

書評・新刊紹介
協会記事
feedback
Top