情報の科学と技術
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73 巻, 10 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集:ハイブリッド型情報提供の実際
  • 長谷川 幸代
    2023 年 73 巻 10 号 p. 415
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー

    コロナ禍を経て,社会ではいっそう頻繁にデジタルツールを利用するようになっています。特にオンラインで送受信できるという面で,距離や時間の制約を越えて様々な活動が可能になります。「資料」を提供する機関でも,資料をデジタル化することで,アナログではできなかったことが可能になりました。しかしながら,アナログ資料にも利点が沢山あり,今後は双方をうまく提供したり利用したりできることが重要になってきます。アナログとデジタルの双方による情報提供を「ハイブリッド型の情報提供」として,今月号では特集「ハイブリッド型情報提供の実際」を企画しました。

    本特集では,まず,根本彰氏に総論としてメディア論の観点をふまえ,アナログとデジタルの双方を含めたメディアの変遷を論じていただきました。続いて各論では,以下の5本の記事を掲載しています。間部豊氏には,公立図書館でどのようにハイブリッド型の情報提供が行われているか,電子図書館サービスの具体的な内容を絡めながら解説していただきました。前川道博氏には,地域行政文書を中心に紙で提供されていた情報がデジタル化されることに対しての知見を記していただきました。阿児雄之氏には,博物館での事例を中心にアナログとデジタルによる資料・情報提供の実際の状況をご紹介いただきました。大髙崇氏には,地域放送局によるアーカイブへの取り組みをもとに,人材育成や他機関との連携等今後の課題について述べていただきました。安形麻理氏には,マイクロ資料に焦点を当て,マイクロフィルムの特徴や提供と保存について詳細にご説明いただきました。

    インターネットが社会に台頭している現代でも,双方をうまく活用することでより充実した資料・情報提供が実現できるのではないでしょうか。本号では,そのための様々な知識を執筆者の皆さまより発信していただけたと思います。

    (会誌編集担当委員:長谷川幸代(主査),尾城友視,鈴木遼香,森口歩)

  • 根本 彰
    2023 年 73 巻 10 号 p. 416-422
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー

    紙の書物がもつ身体的特性が人の認知と密接に関わり,それが近代において書物が学術,文学,教育における特権的位置づけを獲得してきた。しかしながら,メディア論ではマクルーハン以降,書物メディアに比べてマルチメディアがもつ身体感覚的特性ゆえに影響力が大きいとされてきた。そして21世紀のネット社会においては,書物も含めてすべてのメディアがデジタルネットワークに吸収されようとしている。本稿ではメッセージを運ぶ仕組みであるコンテナとメッセージそのものであるコンテンツに分けて,メディアの変遷を歴史的に考察した。その上で,書物がもつ流通,検索,アーカイブにおける歴史的特性を活かした対応が要請されること,そして,その際に国立国会図書館デジタルコレクションの在り方が一つのモデルとなると述べた。

  • 間部 豊
    2023 年 73 巻 10 号 p. 423-429
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル オープンアクセス

    ハイブリッド図書館という概念が登場して20年あまり経つ。特に公立図書館においてはデジタル媒体による情報提供に遅れが出ていたが,近年においてバリアフリー法の施行に伴う読書支援対策やCOVID-19流行に対する非来館型サービスへの対応として電子図書館サービスの導入が進められている。本稿では電子図書館サービスを含む公立図書館におけるデジタル媒体の情報源による情報提供について現状を整理するとともに,アナログ媒体の情報源と合わせたハイブリッドな情報提供がどのように行われているのか確認した。今後の課題としてデジタル媒体の情報提供は質・量ともに拡充する必要があることを確認した上で,今後の展望について検討した。

  • 前川 道博
    2023 年 73 巻 10 号 p. 430-435
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル オープンアクセス

    社会のデジタル化が進行し,地域の行政文書の保全活用には根本的で包摂的な対応が求められている。しかし,公文書館法の制定,官民データ活用推進基本法の制定(オープンデータ促進),デジタル庁の開設,博物館法改正などが相次いだものの,行政文書等のデジタル化対応は大幅に遅れを取った状況にある。デジタル化の大きな恩恵の一つは,過去の膨大な資料がデジタル化されることにより,一般に広く開放されアクセスが極めて容易になることである。紙中心の媒体により知識を消費してきたこれまでの社会から,これまで以上に過去の文書の利活用ができる知識循環型社会へのシフトが期待される。

  • 阿児 雄之
    2023 年 73 巻 10 号 p. 436-442
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル オープンアクセス

    博物館では,収集・保管・展示などに供する資料(いわゆる収蔵資料)と,その資料および博物館活動にまつわる事項を記述した情報のデジタル管理が進められている。東京国立博物館を例にして,博物館活動を支援するデジタル管理の状況を案内し,併せて,これらの整備がもたらす資料と情報提供の実際を展示に焦点を当てて例示した。実際の展示空間とウェブコンテンツが融合した展示が一般的になりつつあり,そこでの魅力的な鑑賞体験は博物館ならではのハイブリッド型提供といえよう。

  • 大髙 崇
    2023 年 73 巻 10 号 p. 443-448
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル オープンアクセス

    NHKの放送番組アーカイブの保存と整備の経緯を振り返り,今後に向けた課題解決に向けて,地域放送局の一人の職員の取り組み事例を報告する。NHKは,1980年代まで,体系的・組織的なアーカイブ保存がなされなかった。その後,資料部(後のアーカイブス部)が一元的に保存と整備を担い,デジタル化も進捗したが,現在もメタデータ整備や,未編集のフィルムやテープの映像素材の扱いなどの課題が存在する。NHK金沢放送局のアーカイブ企画『懐かしの映像』の成功事例から,放送局におけるアーカイブ人材の育成と,地域や専門機関などとの連携・協働の必要性という教訓が浮上する。

  • 安形 麻理
    2023 年 73 巻 10 号 p. 449-454
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル オープンアクセス

    マイクロフィルムは媒体変換や省スペースの資料収集手段として活用されてきた。低温低湿の適切な保存環境であれば500年以上の寿命が期待されることから,1970年代以降は,長期保存の主たる媒体とみなされてきた。しかし,TACベースのフィルムではビネガーシンドロームという劣化が生じることが知られるようになる。1990年代になるとデジタル化による長期保存への転換が議論されるようになった。本稿では,マイクロフィルムの特徴,所蔵や利用の現状,劣化と保存の状況,新聞のマイクロフィルム化の意義と利用,デジタル資源のバックアップとしてのデジタル時代における位置付けについて概説する。

連載:特許情報分析/解析/検索データベース 第7回
連載:実務者のための著作権お悩み相談室 第3回
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