この論文は,博物館情報のための標準を開発する現在の作業に対するひとつの序説である。この論文の国際的視点は,CIDOC(国際博物館会議,国際ドキュメンテーション委員会)とAHIP(美術史情報プログラム)が作成しているパンフレットに基づいており,CIDOCとAHIPが1991年9月に英国カンタベリーで開催した,企画検討の会議を踏まえている。英国国内に関する報告の部分は,英国で全国的に支持されている,博物館情報の標準化活動を集中的に述べているが,これはMDA(博物館ドキュメンテーション協会)や個々の博物館におけるこれまでの経験に基づいて進められているものである。CIDOC自体の活動の概要を述べることで,これらの報告を補足する。現在は,情報に関わる標準化活動にとって重要な時期である。多くの博物館は,それぞれその収集資料のドキュメンテーションの改善を熱心に進めているが,往々にしてそれはコンピュータベースのシステムの採用を含んだものになっている。この10年の終わりには,大部分の博物館が,コンピュータ化されたテキストや画像のデータベースを積極的に活用するようになるだろう。合意された標準のインフラストラクチャーができあがることで,情報の質と一貫性が改善されるだろうし,スタッフと利用者にとって,情報とシステムを理解し活用することはさらに容易になり,ある機関から別の機関へと情報を受け渡す,より高度な可能性が生まれることになるだろう。世界中の博物館がそのドキュメンテーションを改善しようとしているのには,もっともな理由がある。親組織や資金提供機関は,預託されている資料に対し,博物館が実際に行っている処理に関する情報へのアクセスを要求する。専門的なガイドラインを作成するためには,収集管理の処理手順を含んだ,より一貫した手順の質が求められている。来館者や研究者たちは,展示されているものだけではなく,その機関の収集資料全体についてさらに詳しく学ぶことに関心を持つようになってきている。スタッフは,他の機関の情報にアクセスできるようになることや,共同在庫目録のような外部プロジェクトに情報を提供することを期待している。
抄録全体を表示