1997年12月から1998年4月にかけて東京湾湾口部で現地観測を行い, 黒潮系暖水波及時における湾口部周辺海域の海洋構造を明らかにすることを試みた. その結果, 観測期間中確認された暖水波及時には湾口部表層において明確な水温, 塩分フロントが形成されていたが, 従来いわれている熱塩フロント構造と異なり, 暖水が内湾水の下層に潜り込みながら湾内へ侵入する形のフロント構造であったことが明らかとなった. これは, 黒潮系暖水が内湾水よりも重かったことによるが, 外洋水が侵入する水深は, 湾内密度の鉛直分布と外洋水密度の相対的な関係で決まっている. また, この暖水波及時には, 冬季における平均的な値に比べて約5倍の大きさの外洋から湾内への熱フラックスが存在し, この熱フラックスの要因として, 残差流の水平シア成分の寄与が大きいことが明らかとなった.
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