土木学会論文集
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2001 巻, 694 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
  • 澤田 亮, 西村 昭彦
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 1-16
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 液状化による地盤の側方流動時における基礎構造物の挙動を模型実験により把握し, 基礎構造物に作用する側方流動時の荷重特性について把握することを目的とした基礎的な検討を実施した.
    本研究により, 側方流動地盤における基礎構造物に作用する荷重特性は, 過剰間隙水圧比が一定値以上を維持している場合は流動速度に依存する流体的な荷重, 水圧がある程度消散した場合は地盤変位量に依存する土圧で考慮され, 液体的な性状と固体的な性状が過剰間隙水圧値に関連して複雑に変化していることが示された. また, 流体的な性質を擬塑性流体で近似して流体的な荷重を推定し, 水圧消散後は地盤変位量に依存する土圧として荷重を推定することで側方流動荷重の時間的変化が評価された.
  • 藤原 靖, 大谷 崇, 檜垣 貫司
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 17-27
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    鉄道近接あるいは道路路面下などの施工環境では施工時間を制限した場合が多く, その大部分は夜間数時間施工を繰り返す断続的な施工である. このような施工環境では, 固化材の打設が中断したり固化材の打設に引続き応力分担材の挿入が出来ない場合が多いため, 固化材の凝結時間を制御する技術が要求される. そこで本研究では超遅延剤を用いて72時間程度まで凝結時間を遅延させた泥水セメント系材料を製造し, その凝結遅延時の特性および硬化特性について検討した. その結果, 温度計測で凝結遅延・凝結開始が確認でき, 凝結遅延と遅延終了後の強度発現に対して練り上がり温度や再撹拌の影響がないことを確認して遅延型の泥水セメント系材料による山留壁の築造工事に適用した.
  • 渡辺 英彦, 田野 久貴
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 29-39
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岩石の三軸圧縮下におけるカイザー効果について検討するために, 大谷石を用いて拘束圧下での繰り返し漸増載荷を行った. 拘束圧の大きさの違いにより異なる変形挙動を示したが, ひずみ軟化傾向を示す領域のカイザー効果は先行載荷の除荷直前の応力に対応している. また, 三軸圧縮試験での静水圧載荷過程においてもカイザー効果が観察された. AEの急増点が明瞭でない場合にはAE発生率増分を用いて急増点の判定を行った. 静水圧載荷と軸差応力の載荷時のAE急増点は, 先行載荷時の拘束圧, ピーク強度と残留強度に対応しており, 1つの供試体から3つの応力が推定可能であった. この時の各AE急増点では波形パラメータの平均周波数も変化する傾向を示した.
  • 金子 岳夫, 堀井 秀之, 吉田 秀典
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 41-50
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    原子力発電によって発生する放射性廃棄物の処分方法としては, 大深度地下に埋設する地層処分が最も有力視されている. しかし, 想定される大深度地下におけるトンネルの施工実績はほとんど存在せず, 処分坑道の設計手法の構築が課題となっている. 実績の存在しない大深度地下のトンネル設計を行う場合, 支配的な現象を再現できる設計手法が必要となるが, 本研究では不連続面性岩盤の変形において支配的なメカニズムであるジョイントのせん断変形, 開口を考慮できる解析手法であるMBC解析を採用し, トンネル支保設計手法の提案を行う. 既往地点の計測結果と解析結果の比較を行い, 変状を生じる最大せん断ひずみの限界値を定めた上で, 大深度地下トンネルの試設計を実施し, 必要覆工厚を種々の深度, ジョイント密度に対して算定した.
  • 和田 弘, 落合 英俊, 前田 良刀, 安福 規之
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 51-66
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    特殊な注入装置を持つ「繰り返し注入型アンカー工法」は, アンカー体を設置するのに不適とされてきた緩い地盤に設置可能なアンカー工法であることが, 原位置試験から既に実証されている.
    本研究では, 性状の異なる数種の地盤での原位置実証試験の結果を踏まえ, 透水係数を変化させた数種の試料での室内三軸注入試験および緩い砂地盤を用いた土槽内での注入・載荷試験によって本工法の有用性を検証した. 主要な結論は次のとおりである. 1) 緩い砂地盤において, 引抜き抵抗が効果的に改善され, 従来タイプに比べ数倍増加する. 2) アンカー体の固結形態は, 地盤の透水係数に着目して分類可能である. 3) 注入特性や補強メカニズムを明らかにすることにより, 実務での施工管理手法の提案を行った.
  • 小島 謙一, 飯塚 敦, 太田 秀樹, 舘山 勝
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 67-79
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    掘削工事では, 周辺地盤や構造物の変形が施工に対する大きな制限となる. 掘削工事では施工方法, 手順など施工時の条件によって地盤の挙動が異なるため, 周辺地盤などに与える影響を予測することが容易ではない. 現状では, 周辺地盤の沈下をいくつかの簡易予測手法や有限要素法による解析結果から推定を行っているが, 施工時の条件を事前に正確に模擬し, 予測することが非常に困難である. 各施工ステップにおける変形を新たな入力データとして用いる情報化施工においても, 解析手法が煩雑であるという問題がある. 本研究は, 実際の現場で計測されたデータから得られた周辺地盤の沈下量やその発生位置, 掘削深さから, 次の掘削ステップ以降における沈下量を容易に予測する手法を提案するものである.
  • 上田 保司, 生頼 孝博, 山本 稔
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 81-90
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    鋼管を引張り側に包含した凍土梁試験体を作成し, 曲げ載荷実験を行い鋼管補強効果を調べた. 凍土単体梁との比較から, 強度増加効果が確認できた. また, 破壊に至るまで鋼管と凍土との凍着が切れない完全合成梁としての解析手法を導出した. 凍土と鋼管との凍着が切れない場合には, 荷重~たわみ曲線及び破壊荷重の解析値は実験値と概ね一致し, 凍着切れを起こす時点の凍着応力の解析値も、凍着強度の実験値とほぼ一致したことから, 解析手法の妥当性が確認できた. 現場規模での試算から鋼管包含による凍土厚の削減量を示した.
  • 前川 秀和, 前田 憲一郎, 森川 誠司, 村上 武志, 太田 秀樹
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 91-106
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, 都市域における未固結地盤中のトンネル工事においても山岳工法を用いることが多くなっている. 都市域でのトンネル施工では, 近接構造物へ影響を与えないために, トンネル掘削時の地盤の変形予測が重要になる. 本論文では, 金沢市近郊の未固結~半固結砂層中に施工された山岳工法トンネル (卯辰トンネル) を対象に, 土・水連成弾粘塑性FEMによる地盤掘削解析を行い, 解析結果と計測値との比較を通じ本解析手法の適用性の検討を行った. 解析に用いた弾粘塑性パラメータは, すでに著者らの一人が行っていた三輪試験結果に基づき設定し, 解析領域やFEMメッシュ分割の解析結果への影響度の検討を行った後, 卯辰トンネルの解析モデルを設定した. 解析値と計測値はおおむね整合し, 本解析手法及び設定した弾粘塑性パラメータの当該地質における山岳工法トンネル掘削解析への適用の妥当性を検証した.
  • 杉山 博一, 後藤 茂, 今田 徹
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 107-116
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ECLトンネルで用いられる鋼繊維補強コンクリートは, まだ固まらない状態ではせん断剛性を持たずほぼ液体とみなすことができることから, コンクリートがまだ固まらない状態でのECL周辺地盤の応力は液体状のコンクリートの圧力によって支持されると着想した. このことを確認するため, ネオプレン製のゴム袋に水を満たしたラバーバルーンを模型地盤中に埋設し, 遠心模型実験を行ってラバーバルーン内の水圧および周辺の土圧を計測した. その結果, ラバーバルーン周辺の地盤では液体の圧力の強い影響を受けた土圧の再配分が起こっていることが確認できた. さらに, この土圧の再配分を考慮した覆工応力の解析を行ったところ, 現場で行われた計測結果と良い一致をみた.
  • 橋詰 豊, 塩井 幸武, 毛呂 眞
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 117-130
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    1994年三陸はるか沖地震における青森県八戸市の建物等の構造物被害, 水道被害と地盤の振動性状の関係を, 常時微動測定及び一次元重複反射理論に基づくモデル計算の結果を用いて検討した結果, 次のような相関関係が得られた. 1) 地盤振動のスペクトル形状はN値50程度の基盤より上の, ごく浅い地層の影響を強く反映している. 2) 水道被害は地盤のスペクトルや加速度レベルによる影響よりも主に傾斜地や切土・盛土等の人工的なものも含めた地層境の影響を受け易い. 3) 構造物の被害は, 地盤の卓越周期に影響され易い. これらの事より, 常時微動測定は構造物被害を推定するのに有効と考えられる.
  • 利藤 房男, 岡井 大八, 目堅 智久, 楠見 正人, 持田 文弘
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 131-140
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    大型供試体 (径300mm, 厚さ100mm) を用いて, 高有機質土の寸法の違いによる圧密特性の相違, 鉛直・水平方向の透水異方性, プレロード後の二次圧密特性を評価した. 一連の試験には, 圧密リングの周面摩擦の評価や, 水平方向圧密係数の評価が可能な全自動大型特殊圧密試験機を用いた. その結果, 大型供試体による試験結果は, 乱れや不均質性の影響が小さく, データの信頼性が高く評価出来ることがわかった. また, 高有機質土の圧密係数に鉛直, 水平で顕著な異方性がみられること, プレロード除荷後の二次圧密係数は, プレロード荷重を除荷時の1.5倍以上にすることにより, 正規圧密状態の1/10前後に低減できることを示した.
  • 山本 彰, 鳥井原 誠
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 141-151
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文では, グラウンドアンカー工の頭部に皿ばねを配置することによって, アンカー緊張力を保持する技術の効果と適用性を明らかにするためアンカー緊張力緩和実験とアンカーを設置した斜面模型実験を実施した. また, 地盤を粘弾性体と仮定したアンカー緊張力の予測法を示すとともに, 模型実験結果によってその妥当性を検証した. その結果, アンカー頭部に皿ばねを設置した場合の緊張力低下量は皿ばねを設置しない場合のそれの1/3~1/2程度に抑制されるという結果が得られ, その効果と適用性が確認できた. また, 地盤を粘弾性体と仮定した緊張力の予測法は皿ばね設置の有無に係わらず, 初期緊張後および再緊張後におけるアンカー緊張力の長期的な変化をよく表現できることが明かとなった.
  • 渦岡 良介, 久保 哲夫, 八嶋 厚, 張 鋒
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 153-163
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    有効応力解析に不飽和浸透流解析を組み合わせ, 一次元土柱における液状化層直上の不飽和層の地震時挙動を解析的に検討した. はじめに, 不飽和浸透解析手法を浸透実験結果に基づき検証した. つぎに, 兵庫県南部地震で液状化が発生した埋立地盤を対象とし, 地盤の不飽和浸透特性, 透水係数, 入力地震動の種類が液状化層直上の不飽和層の挙動に与える影響を検討した. その結果, 不飽和層の浸透特性を考慮したことにより, 1) 飽和層上面を排水境界とした解析よりも, 飽和層の過剰間隙水圧の消散が遅れること, 2) 不飽和層でも飽和度が上昇すれば液状化の可能性があることがわかった.
  • 稲森 光洋, 御手洗 良夫, 船曳 伸二, 鶴澤 稔, 瀬崎 満弘, 原田 隆典, 横田 漠
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 165-178
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 岩盤分類の要素の一つである「ハンマー打診による判定」の定量的評価を目的としている. 本論文では, 著者らが考案した「応答音圧パルス勾配法」の実際問題への適用として, 宮崎県東臼杵郡北郷村で採取された中新世前期~古第三紀の四万十累層群日向層群渡川層における頁岩の岩盤ボーリングコアを対象に打診音実験を実施し, ハンマーの打診音を分析した. その結果, 頁岩のような層状岩においても土質地盤のボーリングコア柱状図における標準貫入試験のN値のように,「応答音圧パルス勾配」が岩盤のボーリングコア柱状図において構成岩石の強度や変形性を定量的に表現しうる指標として有用であることや, 本指標によって頁岩の葉理面による異方性が把握されること等が示された.
  • 井尻 裕二, 深田 淳, 坂本 和彦, 内田 雅大, 石黒 勝彦, 梅木 博之, 大西 有三
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 179-194
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岩盤中の割れ目をモデル化する際に, 原位置で観察したスケールとモデル化するスケールが大きく異なる場合には, 割れ目特性のスケール依存性に注意する必要がある. わが国のトンネルやダムで観察された割れ目データを収集して, 割れ目トレース長のスケール効果について検討した結果, 割れ目トレース長の頻度分布は場所や岩種に関係なく負のべき乗分布にしたがうことが示された. また, 花崗岩を対象として割れ目ネットワークモデルの水理特性について検討した結果, 割れ目ネットワークモデルの水理特性は割れ目の大きさを表すべき乗分布のべき乗数に依存し, べき乗数が小さいほどモデル内に大きな割れ目が多くなりモデルの透水性は高くモデル内の地下水移行時間は短くなることが示された.
  • 川口 貴之, 三田地 利之, 澁谷 啓, 佐野 信房
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 195-207
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    粘性土を用いたベンダーエレメント試験において, 送信波の波形および周波数, 伝達距離の違い等が受信電圧時刻歴に及ぼす影響やせん断弾性波到達の見極めを困難にする“near-field-effect”の特徴について検討した. この結果から, せん断弾性波の伝達時間測定方法は送信開始時とせん断弾性波の到達開始時とを結ぶ“start-to-start”とすべきであることを示し,“near-field-effect”を見極めるために, 試験時には複数の異なる波形および周波数の送信波を用いるべきであり, 所定の圧密応力に達するまでの複数の応力点において試験を行うべきであることを提案した. また, 本文で提案した方法を適用して得られた低深度の自然堆積粘土のGは原位置弾性波速度探査試験より得られたGfとの対応関係も良いことを示した.
  • 利藤 房男, 大向 直樹, 田中 洋行, 田中 政典
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 209-219
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 不攪乱状態で採取した硬質粘土試料の品質を評価すること, また, その圧密特性を適切に評価するための圧密試験方法を検討することである. 本実験に用いた試料の品質は, 定ひずみ速度圧密試験により原位置の有効応力まで再圧密したときのひずみ, 及び間隙比の変化をもとに考察し, 実務上良質な品質を有していることを示した. また, フィルターペーパー法を用いた残留有効応力の測定を行い, 残留有効応力と試料品質との関係について検討した. その上で, これらの試料を用いて, 水浸, 非水浸により強制的に試料の残留有効応力を変化させ, これが圧密特性に与える影響について, 定ひずみ速度圧密試験により検討した. この結果, 今回用いた硬質粘土に関しては, 試験前の残留有効応力が変化しても, 圧密降伏応力, 正規圧密領域での圧密特性に変化がないことを確認した.
  • 林 健太郎, 善 功企, 山崎 浩之, 林 規夫
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 221-228
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    耐久性の高い溶液型薬液を用いて既設構造物の直下地盤を液状化対策する工法が開発され, 1999年度には施工現場で採用されて無事工事が終了している. 本工法で用いられる薬液の浸透性状や改良効果に関する実験結果を基に, 本論文では, 溶液型薬液による地盤改良のメカニズムや浸透に伴う薬液の希釈現象についてとりまとめている. 実験結果から, 地盤に注入された薬液が浸透に伴い間隙水により希釈されながら間隙に充填されることが明らかにされている. この結果, 注入により改良された所では室内配合試験時に比べ改良強度は低下するが, あらかじめ希釈を考慮して薬液の濃度を設定することにより, 液状化等に対して十分な改良効果が得られることが明らかにされている.
  • 井尻 裕二, 澤田 淳, 坂本 和彦, 内田 雅大, 石黒 勝彦, 梅木 博之, William S. DERSHOWITZ
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 229-243
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    高レベル放射性廃棄物の地層処分においては, 天然バリアとしての地下深部の岩盤が有する核種移行遅延機能を評価することが重要な課題の一つとなっている. 著者らは, 亀裂性岩盤を割れ目ネットワークモデルによりモデル化し, ラプラス変換有限要素法を用いて効率的に不均質岩盤中の核種移行解析を行う手法を開発した. ブロックスケールの花崗岩を対象とした核種移行解析を実施した結果, 亀裂性岩盤の不均質性が解析結果に反映されたより現実的な核種移行解析ができることが確認された. さらに, 処分場全体を対象としたサイトスケールの核種移行評価を実施した結果, 岩盤中の小さな割れ目が構成するネットワーク構造よりも断層などの大きな割れ目構造が核種移行解析結果に及ぼす影響が大きいことがわかった.
  • 齋藤 雅彦, 川谷 健
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 245-258
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    現在提案されている種々の透水係数の空間分布モデルのうち, 比較的多く用いられる指数関数モデル, 自己回帰モデル, べき乗モデルと, 著者らが提案している1/f型モデルを取り上げ, それぞれのモデルによって生成される透水場の統計的性質について比較検討した. その結果, 指数関数モデルおよび自己回帰モデルでは, 解析スケールが変化する場合には, 分散を一意的に定めることができないこと, また, べき乗モデルでは, 解像度が変化する場合に分散を一意的に定めることができないことを示した. 一方, 1/f型モデルは, スケールおよび解像度の変化に対する分散の変化が, 対数関数で近似され一意的に定まること, また実地盤の観測結果の再現性も優れていることが明らかになった.
  • 斉木 功, 田中 玲子, 池田 清宏
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 259-276
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    巨視的に均質とみなせる材料には, 特徴的な幾何学パターンがしばしば観察される. 本論文では, この種のパターンの発生メカニズムの解明の一端として, 三次元的に均質等方な材料において起こり得る分岐の仕組みを群論的分岐理論により明らかにし, 分岐により発生可能な幾何学パターンを分類する. まず, 二次元周期領域に対して得られている群論的分岐理論による既存の結果を拡張し, 三次元周期領域における分岐方程式を導く. 次いで, この方程式を解くことにより分岐解の対称性を決定する. さらに, 現実に見られる岩石の節理構造をモデル化した三次元数値データを用いて, 分岐によるパターン形成のシミュレーションを行い, 本論文で明らかにした分岐メカニズムの検証を行う.
  • 足立 紀尚, 木村 亮, 岸田 潔, 伊藤 浩志
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 277-296
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 降下床実験を中心として掘削に伴うトンネルの力学挙動の解明を行ってきた. さらに近年, 3次元降下床実験装置を開発し, トンネル交差部の力学挙動について検討を行った. 本研究では, 3次元降下床実験の改良を行い, 単一降下床下降実験および連続降下床下降実験を通じてより詳細で正確な土圧分特性および地表面沈下特性の計測を実施した. 連続降下床下降実験では, 土圧分布特性および地表面沈下特性に降下床下降過程の影響が現れる. すなわち, 既に下降した降下床により地盤のゆるみが生じており, その影響で地盤がゆるんだ方向に変形が生じ, 大きな荷重が作用するという現象が生じていることを確認した.
  • 久武 勝保
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 297-304
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    土被りの浅い砂質系トンネル切羽の安定・崩壊特性について, 3次元の静的及び動的実験を行い, 施工過程を考慮した実験の必要性を明らかにした. またその結果をもとにして, 切羽の安定性を簡易に判定する式を提案した. この切羽安定性判定式を種々の現場に適用し, 現場で観測された安定あるいは崩壊結果と本判定式の結果を比較することより, 本判定式が十分現場に適用できることを示した.
  • 八木 一善, 三浦 清一
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 305-317
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 粒子破砕によって生ずる細粒分が火山性粗粒土の強度-変形特性に及ぼす影響を調べるため, 細粒分の含有率と過圧密比を変化させた供試体に対する繰返し非排水三軸試験と一次元圧密試験を行っている. 一連の試験結果から, 非塑性の破砕細粒分が増加すると正規圧密された供試体の液状化強度は確実に低下し, それは幾何学的に求められた最大・最小間隙比で定まる相対密度の低下によって説明できることがわかった. また過圧密履歴を受けた供試体では, 破砕細粒分の含有率や過圧密比が増すほど液状化強度や圧密降伏応力は高くなり, 間隙比変化だけでは説明できない新たな強度増加がもたらされる要因を考察している.
  • 山下 聡, 喜多川 俊介, 堀 智仁, 鈴木 輝之
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 319-329
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    砂質土の初期剛性に及ぼす堆積構造の異方性の影響を調べるために, 堆積構造の異なる三軸供試体を作製し, ベンダーエレメントを用いてせん断波速度を直交する3方向から求め比較した. さらに, 応力状態の異方性の影響を調べるために, 異方応力状態での初期剛性をベンダーエレメント試験と繰返しねじり試験により求め比較した. その結果, 堆積面に平行に伝播・振動するせん断波から得られた初期剛性は, 他の2方向で得られたそれよりも高く, 他の2方向で得られた剛性は堆積構造によらず等しいことが明らかにされた. また, 異方応力状態での初期剛性は, 等方応力状態から離れ破壊規準線に近づくに従って, 既存の式で表される関係よりも低下するが, その低下を新たな関数を用いることによって説明することができた.
  • 渡部 要一, 古野 武秀, 土田 孝
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 331-342
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    深層混合処理工法に代表される従来のセメント固化処理工法では, 地盤を強固に改良することを目的としていたが, 近年では, 貧配合セメント処理土が護岸の腹付け工や廃棄物埋立護岸の中間保護層, 大規模埋立工事に採用されるなど, 淡諜泥土を建設材料として有効利用する試みが行われている. 本研究では, 貧配合セメント処理土の力学特性を評価するために, 練り混ぜ直後の試料に対するベーンせん断試験, 材齢3日以上の試料に対する圧密試験やせん断試験を実施した. 材齢とともに変化する圧密特性を各材齢において正しく評価するために, 一次圧密終了をもって次の載荷段階に移る急速圧密試験の採用を提案した. また, 三軸試験における拘束圧の影響やセメント水和物によって発現する強度特性について考察した.
  • 高田 誠, 松元 勇, 北村 良介
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 343-348
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    鹿児島県内に広く分布する火砕流堆積物の内, 沿岸域に堆積する沖積二次しらす地盤の地盤工学的特性は, 静的にも動的にも通常の砂質土とは異なっていることが明らかとされてきている. これに対し一次しらす地盤の地盤工学的特性は, 通常の砂質土地盤と異なっているにもかかわらず, 設計段階においては同様の取扱いがなされている. 本研究ノートでは, 一次しらす地盤を対象に実施した種々の原位置試験結果を紹介し, 地盤工学的特性の評価法について検討した結果をまとめ, さらには一次しらす地盤の力学特性の特異性について考察を加えている.
  • 近藤 博, 石井 督, 藤田 秀実, 本間 重雄
    2001 年 2001 巻 694 号 p. 349-353
    発行日: 2001/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    締固め管理のための重錘落下法に関する研究が各機関で行われている. 重錘落下法には, 重錘衝突時の加速度値や, 加速度と荷重値を測定し地盤の締固め度を間接的に判定する2種の方法が提案されている.
    本報告は, 動的応答特性に問題のあると言われている加速度計を用いず, 重錘衝突時の荷重値計測のみから, 静的支持力を推定し, 直接的に締固め管理に利用できる方法について提案したものである.
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