土木学会論文集
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2005 巻, 782 号
II-70
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[投稿論文]
和文論文
  • 多田 毅, 横尾 善之, 重村 利幸
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_1-782_10
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    本論文は, 代表的な集中型流出モデルであるタンクモデルにおいて, モデル定数の安定性および流出解析の精度の安定性を向上させるための手法を検討するものである. タンクモデルは, その定数の多さと柔軟性が原因となり, 特定の流域に対して最適な定数を一意に決めることが困難である. また, 定数の不安定さは長期流出解析における精度の不安定さをひきおこす. 本論文では, モデルの自由度を制限しつつ物理的な忠実度を向上させるために新たな制約条件をモデルに追加した. その結果, この新たな条件の導入によりモデルの安定性が向上し, 適切な制約条件を追加することによって, 短期間のデータからでも安定した定数を同定することが可能となることを示した.
  • 佐々木 孝, 佐藤 邦明, 和田 明
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_11-782_30
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    トリクロロエチレンなどのDNAPL (Dense Non-Aqueous Phase Liquid:水より重い難水溶性液体) による土壌・地下水汚染の研究が盛んになり, その成果が浄化対策に活かされている. 著者らは, 室内モデル実験によりDNAPL浸透を可視化・計測し, フィンガー成長過程を定式化の上, 比較・検証した. その知見にもとづきDNAPL原液を重力沈降する液滴粒子としてランダムウォーク法で表現し, 粒子の空隙内残存過程をモデル化して, 高精度TVD (Total Variation Diminishing) 差分スキームによるDNAPL溶液の移流分散方程式と組み合わせた, 新しい移行解析モデル―差分連成ランダムウォーク法 (FD-RWM) ―を提案する. これを汚染現地に適用し, 汚染範囲にわたるDNAPL溶解量, 帯水層への浸入量, 残存量を算定することにより, 手法の有効性を確認した.
  • 道奥 康治, 南條 雅志, 石垣 泰輔, 前野 詩朗
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_31-782_50
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    石礫を用いた透過水制の水理設計を目的として水制周辺と内部の流動構造を検討した. 捨石堰を越流・透過する一次元流れの解析モデルを拡張して, 水制が設置された二次元開水路流の解析モデルを構築した. 開水路と捨石多孔体からなる二層流を仮定し, 流れの連続性と運動量保存を定式化した. 水制内の運動量保存は, 粒径や間隙率など材料特性を考慮した多孔体乱流の非線型抵抗則を用いて記述された. 水制の越流部では, 水制天端を通しての質量・運動量交換が考慮された. 水制周辺の流速や水位の分布に関して数値解析と水理実験が比較され, 本解析の妥当性が検証された. 水理実験では計測できない水制内の流れや流体力の特性についても本解析によって情報が得られた.
  • 後藤 仁志, 橋本 麻未, 酒井 哲郎
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_51-782_64
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    落水は, 水塊分裂と飛沫の発生に特徴付けられる. 落水の物理ベースのCGの作成を目的に, 水塊分裂の表現に優れた粒子法の解にサブ粒子スケールの表情を付与するためのSPS表情モデルを提案する. PSの物理モデルに粒子法を, SPSの物理過程であるmistの拡散にランダムウォーク型の粒子追跡モデルを適用して, 粒子スケールでの大規模なjet breakupの表情とサブ粒子スケールでのmistの表情の両者を表現したCGをレイトレーシングにより作成するための, 具体的プロセスを詳述する.
  • 服部 敦
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_65-782_80
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    河道計画の策定においては, 植生による粗度を適切に評価する必要がある. 本研究では, 高茎草本植物を対象として, 流れを受けて倒伏していくとそれに応じて粗度係数が減少するという特性を力学的に表した抵抗則を提案する. まず, 群落内外の流速・レイノルズ応力分布および茎の変形のモデル化を試み, 流れと倒伏の相互作用を力学的に表現した. 次にヨシを繁茂させた大型水路による実大実験によって, 粗度係数の変化特性とモデルの適用性について検討した. さらに, モデルの利用にあたって必要となる植物の形状・強度・抵抗特性の概略値を整理した. 最後にモデルの構成式を無次元化することで得たパラメータを用いた抵抗則を提案し, 上記の諸特性値を代入することで粗度係数が推定できる方法を示した.
  •  
    関谷 明, 福井 吉孝, 下村 充, 打田 剛
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_81-782_91
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    近年, 河川における生態系の維持, 保全が重要視されるようになってきたが, 依然として魚類の生息, 生育に関する種々の問題は生じている. その中で魚類の迷入は早急に解決しなくてはならない問題の一つである.
    著者らは実魚を用いた模型水路の実験から, アユは (1) 走流性が強い. (2) 壁際に沿って遊泳遡上する, (3) 日陰を好むという結果を得た. また複数のリボンを流水中に浮遊させることが迷入防止に有効であるという結果を得た. 以上の知見を用いて, 流れの解析モデルと併せて魚の挙動追跡モデルを開発し, 魚の行動特性を十分配慮した魚にやさしい迷入防止装置の設計方法を構築した.
  • 梅山 元彦, 新谷 哲也, 石原 淳
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_93-782_100
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    2成層水域での密度混合構造と流況を明らかにするために, 斜面を有する2次元風洞水槽を用いて実験を行った. 研究では, 多点電気伝導度計を導入して密度の空間分布を求め, 可視化実験で得られた輝度と比較した. 流況の把握のためには, PIV法を用いて水粒子の速度測定を行った. さらに, 電気伝導度計のセンサーを水槽に沿って配置することによって, 上層水と下層水の混合水が風下側へ移流・拡散する様子も確認できた. また, PIV法による流速と多点電気伝導度計による密度の同時測定も行い, k-ε乱流モデルを用いた数値解析と比較した. その結果, 内部振動による位相のずれが密度境界面の位置や流速分布の予測を困難にしていることがわかった.
  • 津守 博通, 杉原 裕司, 増田 章
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_101-782_116
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    風波気液界面におけるCO2交換速度の評価法について実験的に検討した. 風洞水槽を用いて吹送距離ごとに気流側CO2濃度と風速の鉛直分布を測定し, プロファイル法を用いて局所的なCO2フラックスを算定した. また, 疎水性多孔質膜チューブから成る気液平衡器を用いて, 水側の溶存CO2濃度を測定した. これらの測定値から, 風波気液界面における吹送距離ごとの気体交換速度を算定した. 得られた交換速度は摩擦速度とともに増大し, 同じ摩擦速度に対しては吹送距離が大きいほど顕著に増加することがわかった. 実験結果と次元解析に基づいて吹送距離を考慮した気体交換速度のパラメタリゼーションを行い, 無次元表示された交換速度の評価式を構築した. この評価式は, 吹送距離則を用いることにより局所的なパラメータのみで表すことができる.
  • 徳永 貴久, 松永 信博, 阿部 淳, 児玉 真史, 安田 秀一
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_117-782_129
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    有明海西部海域における高濁度層の形成と貧酸素水塊の形成との関係を調べるために, 2002年9月と2003年7月の大潮時に現地観測を行った. その結果, 有明海特有の強い潮流によって高濁度層が形成され, 上げ潮最強時と下げ潮最強時における濁度は海底付近で20~40 ppmにも達することが明らかとなった. DO濃度が高い場合, 底面付近の濁度とDO濃度の間には負の相関が見られ, 酸素消費が高濁度層の形成と密接に関係していることが示された. また, 懸濁物質 (SS) による酸素消費速度を室内実験により評価し, 底泥表面からの酸素消費速度と比較した. その結果, SSによる酸素消費速度は底泥表面からの酸素消費速度の約7倍の値をとり, 貧酸素水塊の形成にはSSによる酸素消費過程が重要であることが明らかとなった.
和文報告
  • 宮崎 洋三, 田渕 政一, 児玉 敏雄, 羅 強
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_131-782_141
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    近年, 山地部から海岸域までの総合土砂管理の必要性が認識され, ダムの堆砂問題も水系全体の中で位置付けていくことが必要になるとともに, 水系内の土砂移動の把握や流出土砂量の推定が, 従来にも増して重要になっている. ダム貯水池の堆砂実績は, この推定に際し優れたデータを提供する. 本報文は, 堆砂実績データに基づき, 全国各地の貯水池における堆砂量の経年変化を整理し, その変化状況と諸要因との関係を調べることにより, いくつかの堆砂特性の傾向と流域の土砂流出の特性を把握しようと試みたものである. 検討の結果, 堆砂量の経年変化には大別して三種のタイプがあること, 種々のタイプを生ずる原因には山地の土砂生産の増減のほか背砂が関与している可能性があること等を論じた.
和文ノート
  • 二瓶 泰雄, 花山 朋令
    2005 年 2005 巻 782 号 p. 782_143-782_148
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    都市河川における二次汚濁源となる河床に繁茂する付着性藻類の剥離状況を連続計測するために, 河床より剥離し水中に懸濁している付着性藻類の水中濃度計測に対する浸水式蛍光光度計の適用性を室内実験と現地観測により検討した. 現地河川より採取した付着性藻類と土砂を蒸留水中に混合・攪拌する室内実験や, 現地都市河川における降雨時採水調査を行い, 藻類の現存量の指標であるクロロフィルa (Chl.a) に対する蛍光光度計の計測値とアセトン抽出法による分析値を比較した. これらの結果, 河川水中の付着性藻類濃度に対して, 蛍光光度計によるChl.a計測値とアセトン抽出法による分析値は概ね良好な相関関係を有しており, 付着性藻類濃度モニタリングに対する蛍光光度計の基本的な有効性が検証された.
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