(1) L-プロリン発酵生産培地にL-グルタミン酸を始発に添加した場合には,添加したグルタミン酸量に逆比例してプロリンの生成量は減少した.生育が静止期に達した24時間目添加では影響が認められなかった.
(2) 本菌の生菌体を用いた場合,高濃度ビオチン存在下においては,グルタミン酸からのプロリン生成はほとんど認められなかったが,逆にプロリンからはグルタミン酸の生成が認められ,本菌の両アミノ酸に対する透過性が異なっているらしいことが示唆された.
(3) 本菌からさらに誘導されたL-オルニチン複要求株が,いずれもNo. 14-5菌とほぼ同程度のL-プロリンを生成する能力を有していたことから,本菌ではグルタミン酸がアセチル化され,オルニチンを経てプロリンへ生合成される可能性は非常に少ないことが判明した.
(4) 本菌の無細胞標品を用いた場合,L-グルタミン酸からのL-プロリン生成が認められたが,この反応はATPおよびMg
2+によって促進された.この反応液にヒドロキシルアミンをあらかじめ添加しておいた場合にはプロリンは生成されず,γ-グルタミルヒドロキサム酸の生成に基づくpurplish brownの発色が認められた.また,ヒドロキシルァミンの代わりに硫酸アンモニウムを添加した場合にもプロリンは生成されず,L-グルタミンが生成された.上記事実から,本菌におけるL-プロリンの生合成にはglutamate kinase (glutamate-activat-ing enzyme)反応が関与すること,また本反応により生成する[γ]-グルタミルリン酸はL-プロリンおよびL-グルタミンの共通の前駆体であることが推定された.
(5) Glutamate kinase活性との関係において, glutamine synthetase存について考察し,その活性の測定法としてヒドロキサム酸法の適否を論じた.
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