日本農芸化学会誌
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45 巻, 7 号
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  • 長沢 金蔵, 松本 章義, 小島 建一, 平野 忠美
    1971 年 45 巻 7 号 p. 299-309
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    N-ベンジルFAA誘導体20種および関連化合物8種が合成され,それらについて殺虫効果その他の生物試験が行なわれた.その結果,
    (1) N-ベンジルFAA誘導体は全般的にイエバエ,ニカメイチュウ,ツマグロヨコバイ,ニセナミハダニ成虫に対する活性は低く,アブラムシ,ニセナミハダニ卵に対する活性が高かった.
    (2) N-ベンジルFAA誘導体のうちベンゼン環パラ位に電気陰性基(Cl, Br, NO2)を有する化合物はニセナミハダニ成虫および卵に対して強い活性を有する.
    (3) N-ベンジルFAAのベンジル基α位水素のメチル基による置換は,明らかにこれらの生物活性を低下させた.
    (4) N-ベンジルFAAのN-H基の置換は生物活性を低下させ,その低下の効果は
    CH3<C2H5<n-C3H7<〓-CH2の順であった.しかしN-ベンジルFAAのN-メチル基置換はツマグロヨコバイ,ニセナミハダニ卵に対する活性を増強した.
    (5) N-ベンジルチオFAA誘導体は対応するN-ベンジルFAAにくらべて一般にやや活性が低下するが,ニセナミハダニ卵に対しては活性が増強した.
    (6) N-ベンジルFAA関連化合物のうち,N-フェニルエチル, N-フェノキシエチル,およびN-フェニルチオエチル置換FAAは,ニセナミハダニ卵に対する特異牲が強い.またN-β-ピリジルメチル置換FAAはアブラムシに対して特異的に活性が強い.
    (7) FAAとそのN-ベンジル置換誘導体とでは,殺虫殺卵成績において明らかな相違が認められ,それは主として虫体内への漫透吸収およびN-ベンジル置換体からモノフルオロ酢酸遊離の差異によるものと思われる.
    (8) N-ベンジルFAA, N-4-クロロベンジルFAAのマウスに対する急性毒性(LD50,I.P.)は低く,モノフルオロアセトアミドのそれの1/10~1/20に低減される.またこれらのチオアナローグはほぼ同等の毒性を示したが遅効的であった.なおこれらの化合物の魚毒性は比較的低かった.
  • 酵素蛋白質に結合するカルシウムの存在と酵素の安定性
    林 和也, 寺田 勝, 茂木 孝也
    1971 年 45 巻 7 号 p. 310-316
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 醤油麹菌Aspergillus sojaeのアルカリプロテアーゼの熱安定性はカルシウムイオンの存在で増大し, EDTAの存在で減少した.そしてこの熱安定性に対するいずれの効果も,透析によりカルシウムイオンやEDTAを除くと失われた.
    (2) 金属分析(原子吸光分析法)の結果,十分に再留水に透析した本酵素標品には,酵素分子当り1原子のカルシウムが含まれ,他の金属は有意量でないことが示された.低温でEDTAに対し十分透析した酵素標品にも,やはり酵素分子当り1原子のカルシウムが定量された.
    (3) EDTAは50°Cにおける本酵素の失活を促進するが,これと平行して同時に自己消化を促進していることが示された.
    (4) 酸性領域における本酵素の失活および空間構造の破壊は,カルシウムイオンにより保護され,EDTAにより促進された. EDTA存在下,酸性領域における本酵素の活性の低下は過剰のカルシウムを加えても回復しなかった.
    (5) 以上の実験結果より,本酵素に結合しているとみられるカルシウムの役割と性質について考察した.
  • 宮崎 賢二, 坂口 稔, 柴本 崇行, 佐伯 美外, 橋本 直大
    1971 年 45 巻 7 号 p. 317-320
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    担子菌類を子実体から分離し,そのうちの1菌株がチャホウキタケモドキ(Ramaria apiculata var.)であるか,またはその変種であることを推定し,この菌株が炭素源としてglucoseを用いた培地からデヒドロ酢酸を生成することを確認して,培養条件の検討も行なった.
  • 分離と増殖の温度感受性段階
    村田 晃, 土橋 清, 長谷 川栄, 桜井 稔三
    1971 年 45 巻 7 号 p. 321-327
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    L. caseiのJ1野生株ファージを亜硝酸あるいはヒドロキシルアミンで処理することによって約20株の温度感受性変異株ファージを得たが,本研究ではrevatant frequency10-4以下のts 5, ts 8, ts 17, ts 18, ts 19, ts 20の6株を使用した.
    変異株は, 28°Cあるいは30°Cに増殖の適温を有し,野生株が増殖できる33~38.5°Cで増殖し得ない.温度移行実験および生理学的研究などから変異株は2グループに大別された. ts 5, ts 18の属するグループは, DNA注入以後の初期の増殖段階が温度感受性であり,高温でserum-blocking powerを有するファージ関連タンパク質が生成されない. ts 18は溶菌段階もblockされるが, ts 5はblockされない. ts 8, ts 17, ts 19, ts 20の属するグループは,後期の増殖段階が温度感受性であり,株により量は相違するが一定量のファージ関連タンパク質が生成される.これらの変異株の場合,高温でeclipseは正常に進行すると考えられ,若干量の成熟ファージ粒子が形成される.さらに,早期溶菌が生起される.
  • 塩基性部,フェノール部および非カルボニル中性部について
    金 和子, 山西 貞, 中谷 陽一, 松井 知子
    1971 年 45 巻 7 号 p. 328-336
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The aroma concentrate obtained by steam distillation was separated into basic, acidic, phenolic and neutral fractions by usual procedure. Carbonyls were removed from the neutral fraction with Girard-T reagent. The carbonyl-free neutral fraction which contained the most important aroma components of “Katsuobushi, ” was investigated intensively by GLC, IR, MS and NMR. Also basic and phenolic compounds were analysed.
    As a result, five pyrazines, one carbonyl, one hydrocarbon, five alcohols and sixteen phenols were identified.
    The most important components which contribute to the characteristic aroma of “Katsuobushi” seemed to be 1, 2-dimethoxy-4-methylbenzene, cis, cis-1, 5, 8-undecatrien-3-ol (tentatively identified) and cyclotene.
    1, 2-dimethoxy-4-methylbenzene, 1, 2-dimethoxy-4-ethylbenzene and some alcohols increased during the process of molding.
  • リパーゼ活性に対するヒジキ不ケン化物の影響
    小村 毅, 長山 英男, 和田 せつ
    1971 年 45 巻 7 号 p. 337-343
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    市販の小麦胚リパーゼ(Wako)および豚膵リパーゼ(NBC)を用い,まず酵素活性測定の基礎条件を確立し,その際,反応の特徴としてWakoでは27°C, NBCでは20°Cと至適温度が極めて低いこと,またリン酸塩により促進され, activatorを加えると,さらに活性が促進されることが認められた.第二に,基質濃度により, activatorの促進効果の著明に現われる範囲が認められた.第三に,この2酵素間に,条件によってやや異なる挙動が認められたが,両酵素活性に対して,ともにヒジキからの不ケン化物画分が極めて明瞭な促進作用を示すことが種々の検討から明らかとなった.
  • ホルモースの分別および糖組成について
    水野 卓, 浅井 正勝, 三崎 旭, 藤原 喜延
    1971 年 45 巻 7 号 p. 344-350
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ホルモースおよびその誘導体について,各種クロマトグラフ法(PPC, TLC, GLC, LSCなど)を実施し,ホルモースの糖組成を検索し,次の結果を得た.
    ホルモースは,ヘキソースを主要糖とし,副成分糖としてペントース,微量成分としてトリオース,テトロース,ヘプトースなどを含む単糖の混合体である.これらのうち, C3糖としてグリセロース,ジオキシアセトン; C4糖としてエリスロース,スレオース; C5糖としてアラビノース,キシロース; C6糖としてマンノース,ガラクトース,グルコース,グロース,ソルボース,フルクトースなどを同定した.これらはいずれもDL-ラセミ体である.
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