日本農芸化学会誌
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49 巻, 2 号
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  • 田中 米実, 林田 晋策, 本江 元吉
    1975 年 49 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    新鮮屎および,くみ取り屎尿中に1.0~3.5μの円形ないしダ円形,あるいは不定形の顆粒を多数見いだした.この新鮮屎から分離した顆粒の分析結果は,全窒素11.1%,アミノ態窒素9.7%,粗脂肪16.0%,灰分3.5%で,デンプンは検出されなかった.一方,この顆粒は新鮮屎1g中に通常約5×109個存在しており,酵母などの微生物細胞あるいは寄生虫卵とは相違していることが明確になった.このような屎中の顆粒物質については,いまだ報告を見ない.この顆粒を無希釈のまま,2700×g, 5分間,遠心分離して除去した屎尿ではBODが減少し,さらにその分離液を嫌気消化法および活性汚泥法により処理した結果, BOD減少率の向上あるいは処理時間の短縮が認められた.分離された顆粒部分を含む培地を用いて,屎尿および活性汚泥中から顆粒を分解できる微生物を検索した結果,放線菌33株を得た.
  • 金谷 昭子, 角田 万里子
    1975 年 49 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    レシチン0.2~20.0%wt./wt.を乳化剤とし,分散相であるケロシン中に溶かして,一定条件で攪拌乳化して分散相容積分率0.5のo/w型エマルションを調製し,得られたエマルションの分散状態に関して次のような結果を得た.
    1. レシチン・ケロシン溶液/水界面の界面張力を測定したところ,界面張力が平衡に達するのにかなりの時間を要した.また,平衡界面張力の値はレシチン濃度の増加とともに小さくなるが, 1.0%wt./wt.を越えるとほぼ一定となった.
    2. エマルションの分散粒子の油滴の大きさとその分布を顕微鏡法で測定した結果,どの試料も対数正規分布関数で近似し得ることがわかった.
    レシチン濃度が2.0%wt./wt.を境にして,大小いずれにずれても粒度分布は粒径の大きい方向へずれており,平均粒子直径はレシチン濃度2.0%wt./wt.で最も小さい.
    3. レシチン濃度2.0%wt./wt.で,エマルションの静置による分散相の分離最は最小値を示した.また,このレシチン濃度の両側で相分離の状態が異なっていた.
    低濃度側では主として界面張力の影響を受け,高濃度側では界面へのレシチンの吸着状態の変化が影響してくるものと思われる.
    4. レシチン濃度2.0%wt./wt.の場合に,水相に食塩を添加してエマルションを調製したところ,食塩濃度0.001Mでは影響を受けず, 0.1M以上ではレシチンの乳化作用はほとんど失われ,調製直後にエマルションは解消した.界面張力の測定によって、塩がレシチンの界面張力低下作用を妨げる作用と乳化作用を妨げる作用とは,きわめてよく一致している.
  • 小林 文男, 矢吹 稔, 星野 一雄, 坂本 政義
    1975 年 49 巻 2 号 p. 81-92
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 牛乳に対して凝乳作用を示す酵素を生成する担子菌の1菌株を分離し, Trametes ostreiformis K-1と命名した.
    (2) 本菌は褐色腐朽菌の一種で,試験管内培養が容易であり,子実体をよく形成し,特異的形態を示す胞子を着生する.
    (3) 本菌は可溶性でんぷん,コーンスターチ, CM-セルロース等の多糖類,酒粕,白糠等の食品製造粕類,あるいはスキムミルクを含む培地で振盪培養をおこなうと,凝乳酵素を多量に生成する.
    (4) 凝乳酵素をセファデックスG-75を用いるゲル濾過法, CM-セルロースカラムクロマトグラフィーによる精製を行ない,ポリアクリルアミドを支持体とするライスク電気泳動法で均一な標品を得,その性質を検討した.本酵素にpH 2~3の範囲で安定であり, pH 2において最大の活性を示す酸性プロテアーゼの一種である. 60°C付近で最大の活性を示し, 70°Cで失活する. Ca2+の存在は,凝乳活性を促進する.分子量は,ゲル濾過法またはSDSを加えたポリアクリルアミドディスク電気泳動法のいずれの方法によっても35,000を示した.
    (5) 本酵素はκ-カゼインとβ-カゼインに対して凝固作用を示すが, β-カゼインは凝固のあと溶解する.
    (6) 本酵素を用いてゴーダチーズを製造することができるが, 5カ月の貯蔵後にやや苦味を呈した.
  • 今井 正武, 加藤 牧子
    1975 年 49 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Lactobacillus bulgaricus B-62, B 5 b, L. acidophilus IAM 1043, L. casei LC-3を脱脂乳, 5%ショ糖,生クリーム, 0.9%食塩水あるいは1%ゼラチン溶液中で7~85日間, -30°Cで凍結保存したが,生き残った菌の搬傷率(酢酸塩に感受性となった細胞の割合)はいずれも小さく,生酸活性もほとんど低下しなかった.これに対してL. helveticus HNは高い損傷率を示し,とくにショ糖溶液中で85日間凍結保存した場合は,生き残った菌の99%が0.25M酢酸塩(pH 5.3)感受性となった,そして脱脂乳における酸生成は,無処理菌に比べ平均約4時間遅延した.
    このL. helveticus凍結保存菌を10%脱脂乳に接種,培養すると約4時間後に急速な回復が認められ, 7~8時間後には完全に正常状態に復帰した.
    なお, L. bulgaricusL. jugurti(無処理菌)は,ほかのlactobacilliと比べて酔酸塩に対する抵抗性が弱く,とくにL. jugurtiは0.13M酢酸塩の存在で増殖がほとんど阻止された.
  • 西元 勝也, 戸田 義郎, 山本 武彦
    1975 年 49 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    1. 鶏卵黄をRhizopus属糸状菌より得られた酸性proteinase, lipaseを含む酵素剤(“Samprose”)とともにインキュベートすることにより,イソプロパノールにより抽出される脂質の収量は増加した.
    2. 酵素処理した卵黄は,酸度,ホルモール滴定値は増加するが,その増加のある時点以後では卵黄は遠心分離のみにより上,中,下の3層に分離することがわかった.
    3. 分離した上層は中性脂質と若干のそれの分解物,中層は主としてリン脂質と若干のそれらの分解物,下層は脂質をほとんど含まない卵黄蛋白の分解物であることがわかった.
  • 青木 孝良, 今村 経明
    1975 年 49 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 実験室的に, 2群の滅菌濃縮脱脂乳を調製した. 1群は貯蔵温度を変えて,他の1群は滅菌のための加熱時間を変えて,貯蔵中に起きるカゼイン複化合物の変化を調べた.
    (2) 30°Cで貯蔵すると, 60日目に沈殿の生成とホエーの分離が認められた.これに対して50°Cで貯蔵すると, 60日目までは変化がなく, 90日目頃より粘度が著しく増大し, 150日目にはゲル化した.
    (3) 5°Cで貯蔵すると,可溶性カゼインは30日目まで増加し,その後変化しないのに対し, 30°Cで貯蔵した場合には, 60日目まで著しく増加し,その後も徐々に増加した.
    (4) 滅菌のための加熱時間の長い試料の方が,貯蔵中にカゼイン複化合物が不安定化しやすかった.
    (5) 貯蔵中に起きる可溶性カゼインの増加傾向は, 30日目までは加熱時間の長い試料の方が大きかったが,その後は加熱時間の短い試料の方が大きかった.
    (6) これらの結果から,貯蔵中の可溶性カゼインの増加とカゼイン複化合物の不安定化との間には,関連があるものと考えられた.
  • 山口 雄三, 服部 錬三, 菊地 満雄, 諸江 辰男
    1975 年 49 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    1. 大豆の有する青臭が麹菌の分生胞子で効果的に除去される事実から,脱臭機構を確立するための検討を行なった.
    2. アスペルギルス属,ペニシリウム属の分生胞子は,程度の差はあれ,いずれも脱臭効果を有する.
    3. 分生胞子により大豆中のカルボニル化合物のうち,アルデヒド類は還元されてアルコールを生成するがケトン類は作用を受けなかった.
    4. 阻害剤に対する挙動から,この還元に関与する酵素は,酵母のアルロール脱水素酵素に近縁のものと考えられる.
    5. 分生胞子の豆乳脱臭およびn-ヘキサナール還元における至適pHは6~9,至適温度は37°Cであった.
    6. 還元活性は培養5~9日頃の分生胞子が最も高く,保存により活性は低下する.
    7. 分生胞子の栄養培地中での発芽中,活性は一時消失するが,菌糸の伸長につれて活性はふたたび認められるようになる.
    8. 分生胞子を水中に懸濁した場合には,活性が約10%程度上昇して約9時間持続したのち低下する.
  • 渡辺 大蔵
    1975 年 49 巻 2 号 p. 119-121
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Effects of carbon sources on fatty acid compositions of Lipomyces sp. No. 33 isolated in our laboratory were studied.
    The yeast capable of accumulating a large amount of fats in its cells was cultivated in the three kinds of media, namely those containing glucose, D-xylose and sodium acetate, respectively.
    In any fat produced from the three carbon sources, the fatty acid compositions and general properties were essentially similar, although some differences were observed in quantities and the iodine values of the solid and liquid fatty acids obtained from the mixed fatty acids. However, five minor fatty acids were detected only on the gas chromatogram of the mixed fatty acids from the fat produced from sodium acetate. Of these minor components, the component X5, which seems to be vernolic acid, was obtained in the highest yield (7.4%).
  • 高野 三郎, 長谷川 忠男, 向秀 夫, 中村 重正, 鈴木 隆雄
    1975 年 49 巻 2 号 p. 123-124
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Control of anthracnose on fresh banana clusters by N-benzoyl-L-leucine was studied. Efficacy was juged from the number of lesions formed on banana rind inoculated with spores of Gloeosporium musarum. Soaking a banana cluster into 1000 ppm N-benzoyl-L-leucine after inoculation was more effective than preliminary treatment of the fungicide.
    The inhibitory action of N-benzoyl-L-leucine on the fungus was clearly recognized under a microscope as the inhibition of hyphal elongation.
    This information might be useful for conservation of banana during long distance transportation
  • 仁木 良哉, 有馬 俊六郎
    1975 年 49 巻 2 号 p. 125-127
    発行日: 1975年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The volume-changes produced by the reaction of HCl with β-casein were measured with a Carlsberg-type dilatometer. The experiments were carried out under the tempera-ture between 5 and 30°C at pH range from 5.5 to 7.0. Under these conditions the increased volume-changes were observed under constant temperature in all cases. The magnitude of the volume-changes was dependent on temperature, for the volume-changes were greater at high temperature than that at low temperature while similar amount of proton was bound to casein. This change of volume, which was dependent on temperature, seemed to be related to the physico-chemical properties of β-casein which had a tendency to associate with rising temperature. In oder to clarify this point, 4M urea was used, because, the association of β-casein with the increase of temperature is completely inhibited under this condition. Increasing of H+ concentration showed a decrease of volume to a minimum value 80ml per 105 g casein when 9 moles of H+ were bound. However, when the amount of H+ bound exceeded this point, a steady increase in volume as well as the H+ concentration was observed. The volume-change produced by the protonation in urea solution was substantially lower than that in solution containing 0.15M KCI. The evidence suggests a conclusion that the temperature, which affected the changes of volume in casein, was a intricate one, owing to the fact that it was associated with rising temperature.
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