(1) 牛乳に対して凝乳作用を示す酵素を生成する担子菌の1菌株を分離し,
Trametes ostreiformis K-1と命名した.
(2) 本菌は褐色腐朽菌の一種で,試験管内培養が容易であり,子実体をよく形成し,特異的形態を示す胞子を着生する.
(3) 本菌は可溶性でんぷん,コーンスターチ, CM-セルロース等の多糖類,酒粕,白糠等の食品製造粕類,あるいはスキムミルクを含む培地で振盪培養をおこなうと,凝乳酵素を多量に生成する.
(4) 凝乳酵素をセファデックスG-75を用いるゲル濾過法, CM-セルロースカラムクロマトグラフィーによる精製を行ない,ポリアクリルアミドを支持体とするライスク電気泳動法で均一な標品を得,その性質を検討した.本酵素にpH 2~3の範囲で安定であり, pH 2において最大の活性を示す酸性プロテアーゼの一種である. 60°C付近で最大の活性を示し, 70°Cで失活する. Ca
2+の存在は,凝乳活性を促進する.分子量は,ゲル濾過法またはSDSを加えたポリアクリルアミドディスク電気泳動法のいずれの方法によっても35,000を示した.
(5) 本酵素はκ-カゼインとβ-カゼインに対して凝固作用を示すが, β-カゼインは凝固のあと溶解する.
(6) 本酵素を用いてゴーダチーズを製造することができるが, 5カ月の貯蔵後にやや苦味を呈した.
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