デンプンーグルコース-CSL (SGC)培地を用いて食用きのこであるシイタケ,ヒラタケの深部培養を行い,その最適培地組成や非イオン界面活性剤の影響などについて検討し,次の結果を得た.
1. SGC培地の最適組成は,シイタケではデンプン70~90g/
l,グルコース10g/
l, CSL 15~20g/
lであり,この培地によって最大45g/
l(培養期間11日)の乾燥菌体が得られた.ヒラタケでは同様にデンプン70~100g/
l,グルコース10g/
l,CSL 20~25g/
lであり,最大45g/
l(培養期間6日)の乾燥菌体が得られた.特にヒラタケの培養期間は短かく,1日当りの菌体生育量は7g/
l以上に達した.この培地に添加される無機塩類は,リン酸カリウムと塩化亜鉛である.
2. CSL以外の有機窒素源として酵母エキス,ペプトンを用いてシイタケを培養したが, CSLの場合より菌体収量が減少した.
3. SGC培地のデンプンをアミラーゼ(Speedase CP-3)で部分分解しシイタケを培養したが,培養期間は短縮されず,分解を進めると菌体収量が減少した.
4. SGC培地のグルコースに代えてショ糖を用いると,シイタケではグルコースと同様な高い菌体収量が得られるとともに,ショ糖はグルコースと異なり7%の高濃度でも生育阻害を起さなかった.
5. 非イオン界面活性剤であるショ糖脂肪酸エステル(Ryoto sugar ester S-370)をSGC培地に添加すると,菌体収量は増加したが,繊維状菌体の増加はあまり認められなかった.
6. シイタケの生育は培養6日目頃から菌体が急増し,11~12日で最大菌体濃度に達した.全糖量は菌体最の増加に応じて減少するが,グルコースは生育の対数期に最高濃度となり,培養終了時には全糖量と同程度の3.5%まで低下した.
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