手延素麺と機械素麺,およびこれらの厄による物性変化とその原因を探索し,次の結果を得た.
1. ゆでた手延素麺または麺粉から調製したゲルは,機械素麺からのそれに比し硬い.また,厄を越すことにより硬さは増加する,一方,凝集性は厄により減少する.
2. 手延素麺から分離したデンプンで作ったゲルは,機械素麺からのものより硬い.しかし,厄による硬さの変化は麺粉ゲルと一致しない.凝集性も厄により変化しない.
3. グルテンに綿実油を加えて作った麺は,無添加の麺より硬さは大きく,凝集性は小さい.グルテンをインキュベートした後で製麺すると,硬さは増加するが,油脂添加グルテンの方がその傾向は大きい.一方,凝集性はインキュベーションにより減少する.
4. 試料を水溶性,グリアジン,グルテニン,スラッジおよびデンプン粒の5区分に分画した収量およびタンパク質の分布は,厄の有無により変わらない.
5. 各区分のSDS電気泳動パターンは,厄2回まで変化しない.
6. 手延素麺製造に用いられた油脂は,主としてグルテニン区分に,次いで水溶性およびスラッジ区分に分布した.厄前の遊離脂肪酸は,スラッジ区分にのみ存在したが,厄によりグルテニンおよび水溶性区分のそれが増加した.
7. 厄前後の手延素麺をペプシンで分解し,分解前後の水飽和ブタノール抽出量を比較すると,分解後に抽出される量は少ないが,厄により増加していった.脂質の組成は,分解前に抽出されたものはトリグリセライドが主であったが,分解後のそれは遊離脂肪酸が主であった.
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