わが国在来の白ワイン用甲州種ブドウの品質向上を目的としてブドウリーフ・ロールウィルス(GLRV)汚染母樹のGLRVフリー化を生長点組織培養法によって行い,ブドウ生育中の果汁成分の経時的変化および試醸ワインの成分分析と官能検査を行った.
GLRVフリー化した健全樹ブドウの糖分は成熟末期まで上昇を続け22%になったが,汚染母樹では成熟中途で停止し18%であった.汚染母樹ブドウの総酸はフリー化プドウより7~25%高く,リンゴ酸の減少は生育中途で停止したが,フリー化ブドウは成熟期まで減少の傾向にあった.アミノ酸含量は生育中期にピークに達し,収穫期におけるフリー化ブドウは2035mg/
l,汚染母樹は1755mg/
lであった.とくに収穫期におけるプロリン含量はフリー化ブドウで1262mg/
l,汚染母樹ブドウで565mg/
lと顕著な差がみられ,総遊離アミノ酸中のプロリン占有率は前者で62%,後者で37%であった.
フリー化ブドウからのワインの総窒素は汚染母樹からのワインより高く,とくにプロリンは前者で1225mg/
l,後者で692mg
lと顕著な差があった.フェノール成分では健全樹ワインのcaffeoyl tartrateが汚染母樹ワインに比べ15%少なかった.他のフェノール成分は差がかった.高級アルコール,エステル,アルデヒド類などの含量には著しい差が認められなかった.官能的には,フリー化ワインは“コク”と“丸味”があり,汚染母樹ブドウからのワインより優れていた.
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